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バランス変換ボリューム2(設計編)

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設計編

前回の構想に基づいてバランス変換ボリュームの新仕様を決定します。

ディスクリートアンプ

「パワーアンプの周波数特性(番外編7)」の記事の最後でも簡単に書きましたが、ディスクリート化したアンプを使ったバランスボリュームと、BTL方式DCパワーアンプの組み合わせの音は思いの外気に入りました。BTL方式ならではの駆動力による床を振るわす超低域、それでいて固くなりすぎない豊かな低音。弦楽器の美しい響き、管楽器の突き抜ける高音、それでいながら音量を上げてもうるさくなりません。この組み合わせの場合、バランスボリューム以降が左右完全独立電源で、回路も完全バランス動作+全段A級動作となり、信号電流が理論上電源に流れません。この音の瞬発力を生むための必須仕様だと考えています。せっかくなのでバランス変換ボリュームも同様の構成にしたいと考えました。

S1501バランス変換ボリューム

このユニットは、オーディオ趣味復帰後に製作した1号機ですが、オペアンプを使った簡単なバランス変換回路となっています。(キャッチ写真参照)当時、部品の入手に関する情報がまだあまりなく、電源トランスもチャチなものしか購入できなかった為、苦し紛れにトランスから左右独立電源仕様としてごまかしていました。そのトランスの電流容量は1機たったの60mAです。

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バランス変換アンプのディスクリート化と合わせてこれら心残りの仕様の変更も検討してみたいとおもいます。現行の回路図を参考に再掲載します。

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以上をまとめて今回の構想を改めて箇条書きします。

・現行品(S1501)を改造する
・心残りの電源回路も見直す
・バランス変換アンプをディスクリート化する
・今後の改造を考慮して、バランスボリューム同等の基板3枚+トランス配置とする

改造の効果を確認するために、最初にアンプ基板の載せ換えを行い音を確認し、次のステップで電源基板を載せ換えたいとおもいます。

ディスクリートアンプ回路

現状の回路のオペアンプを単純にディスクリート化すると、トータルで6チャンネル分のアンプが必要となります。現状のシャーシに、改造ベースで6チャンネル分のアンプ実装は無理がある為、新たに専用の回路を起こすこととしました。こう書くと大げさに聞こえますが、バランスボリュームで使ったディスクリートアンプ回路に反転出力用の終段を追加するだけです。

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2段目の差動アンプの出力として使用していない側へ反転出力終段用のバイアス回路を追加し、追加したコンプリメンタリペアの終段を駆動します。アンプの構成としては、マイナス入力が接地されたバランス入出力アンプの構成となります。このためアンプの入力は反転入力構成となるため、前段の出力インピーダンスによりアンプのゲインが変わってしまいます。ソース側のインピーダンスの影響をなくすために、バランス入出力アンプの前段にボルテージフォロワを追加します。以下が片チャンネル分の全体ブロック図です。この場合のアンプのゲインは入力に直列に入る抵抗と帰還抵抗の比率を2とすると正相および逆相それぞれ1倍となるはずです。

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左右のチャンネル分を2枚の基板に実装するため、1枚の基板にボルテージフォロワとバランス入出力アンプの搭載が必要となり、バランスボリュームのディスクリートアンプ基板よりもさらに部品点数が増えてしまうため実装しきれるか心配です。もう1点気になるのは、正相出力のみのアンプに比べて調整が難しくなる事です。正相と反転出力それぞれのオフセット電圧調整が、独立に行えないため、どこまで出力オフセットを追い込めるか心配です。調整の追い込み度合いは、実際にやってみないとなんとも言えません。

電源回路

ディスクリート化したバランスボリュームの音が良かったので、今回の電源回路もトロイダルトランスを含めてそのまま設計を踏襲する方針とします。先にも書きましたが、音の違いを確認するため、現状の電源のまま新アンプ基板の音出しを行った後で、電源回路の改造を行うつもりです。

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今回のアンプは、前回のバランスボリュームのディスクリート化と製作自体ほぼ変わりませんが、おつきあいいただけると嬉しいです。

 

つづく(製作編1)

 

バランス変換ボリューム2(構想編)

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構想編

アンバランス出力ソースの再生環境を改善したいと考えて構想します。

サルベージ

我が家にはロフトがありますが、魔窟と呼ばれるような物置となっています。普段はチョビと黒チョビ(どちらも耳の垂れてないスコティッシュホールド)の隠れ家となっているような場所です。(キャッチ写真は少し気分を変えて娘が撮ったチョビと黒チョビを掲載しています)そこには普段使わない、他人に言わせれればもう使わないものが雑然と積み上げられていますが、その中に昔使っていたオーディオ装置があることを思い出しました。どんな状態か気になり自室に引き上げてみました。

SONY K222ESJ

始めに引き上げてきたのは、SONYカセットデッキK222ESJです。

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その前に使っていたYAMAHAのK-1dが故障したため購入したものです。

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ネット上の情報によると発売は1993年で3ヘッドクローズドループデュアルキャプスタン、ダイレクトドライブ、クオーツロックとカセットデッキメカの集大成と言える仕様です。シリーズ最下位モデルということで定価65,000円とリーズナブルなお値段でした。購入時はすでに社会人となっておりオーディオの趣味から離れていたため、録りだめたソースの再生に使ったくらいで、たいして使った記憶がありません。肝心の動作は残念ながらしませんでした。開けてみたところお約束通りモードベルト起因の故障で、ベルトがコールタール状に溶けてモーター側のプーリーに張り付いていました。(写真中央)

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ネット上にはベルト起因の故障情報が溢れていて、有償修理する業者?の情報まで目に留まりました。どうしても聴きたいソースがあるわけでもなく、自前のメカ修理の自信がないので引き続き物置の肥やしとすることにしました。

SONY ST-S333ESX

次はSONYのステレオチューナーST-S333ESXで、前に使っていたパイオニア製のチューナー(TX-8800)が故障したため購入したものです。

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実はこのチューナーいつ買ったかの記憶がありませんが、すでにない相模原のオーディオユニオンで中古を購入したのかもしれません。発売は1986年でOptimaizer Technologyを複数段に搭載したとのことですが、名前から実動作が想像できません。凄いという事が伝わればいいものなのでしょうか?さすがにシンセサイザー式チューナーは可動部がないので動作は問題ありません。

S333ESXの音

私の家にはJCOMのCATVが入ってますが、それにはFM放送のサービスも含まれています。早々にチューナーをつないでみたところ、以下の7局が受信できました。

76.1MHz InterFM897
77.7MHz FMやまと
79.5MHz FM NACK5
80.0MHZ TOKYO FM
81.3MHz J-WAVE
82.5MHz NHK FM
84.7MHz FMヨコハマ

当然の事ながらこのチューナーには、バランス出力がないため、バランス変換ボリューム(S1501)と組み合わせて再生しています。音は30年前に発売になったチューナーとは思えないそこそこの再生ができています。

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局や番組によって音質が違いますが、全般的に低音が緩い印象です。原因がチューナーかバランス変換ボリュームかわかりませんが、先日バランスボリュームでオペアンプディスクリート化で良い結果がでたので、少しでもこのチューナーを良い音で鳴らしたいと思い、バランス変換ボリュームもディスクリート化の検討をすることにしました。

今回は余計な話題でスペースをとってしまいましたが、次回具体的な設計について紹介します。

 

つづく(設計編)

 

パワーアンプの周波数特性(番外編7)

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番外編7

前回につづき、製作済みのパワーアンプの周波数特性の測定を行います。

BTL方式A級DCパワーアンプ

終段およびドライバ段のトランジスタは、選別対応するためft=15MHzと特性を欲張らずに(サンケン2SC3851A/2SA1488A)入手性(安いものを大量に入手)を優先して選定しました。また、発振対策も攻めた定数選択をしたわけではなかったので、周波数特性が気になっていました。前回のプッシュプルアンプの測定では、ホット側のみの測定の考慮を忘れていたため、約0.4W出力時の測定となりましたが、今回は基準電圧を見直して約0.1W(8Ω)出力時の測定に変更しました。

測定および結果

測定方法は基準入力電圧以外前回同様です。その基準入出力電圧(1KHz)は 48mV/0.44Vで、ゲインは19.2dBでした。測定結果は以下のとおりです。前回測定したプッシュプルアンプの負帰還時の特性を一緒に載せています。

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DCアンプなので低域はフラットです。高域は600KHzで-0.4dBと測定範囲内ではほぼフラットです。トランジスタアンプの特性としては、まずまずだとおもいます。真空管アンプの特性と比べると文字通り隔世の違いがありますが、今までこの高域の特性差を聴感上の差として意識したことはありませんでした。音楽ソースがCDということも影響しているかもしれません。

パラレルシングルパワーアンプの周波数特性

最後に一番最近製作したパラレルシングルパワーアンプの周波数特性を測定します。1KHz時の基準入出力電圧は、42mV/0.44Vで、ゲインは20.4dBです。測定結果は以下のとおりです。低域は30Hzあたりから下がり始め、10Hzで約5dBダウンしています。高域は3KHzあたりから下がり始め、15KHzあたりで3dBダウンしています。正直パワーアンプとしてはひどい特性です。さしずめFM放送の電送特性とでもいいましょうか?

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念のため、別チャンネル(R)も測定してみましたが、ほぼ同じ特性でした。1KHzの基準入出力電圧は44mV/0.44Vで、ゲインはぴったり20dBでした。

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パラレルシングルパワーアンプ完成時の音の印象を過去の記事にさかのぼってピックアップしてみました。

・帯域はややナロー
・NS-1000Mが欧州製のフロア型スピーカーのように鳴る
・低音は予想よりも良く鳴る
・低音の床をふるわす超低域はプッシュプル方式に分がある

それなりに、この特性を表現しているような気はしますが、これほどの特性となっているとは想像できませんでした。原因を探るために回路図を改めて確認します。

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低域の特性は、終段のカソードの電解コンデンサの容量を増やせば改善できると思います。現状100uF/50V品が接続されていますが、特性測定時の出力波形が歪みぎみなので、増やしても音質改善につながるか疑問が残ります。おそらくシングル用のトランスの特性に起因していると思われます。1000Mが欧州製のフロア型スピーカーのような音で鳴るのは、この特性にもとづく色づけのような気がします。写真は10Hz測定時のものですが、出力波形(黄色)がひずみ始めています。

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高域の特性は、2段構成のシングルアンプでゲインをかせぐために、初段の負荷抵抗値を高めに設定した事と、プッシュプルアンプの初段は、1回路で1つの終段を駆動しますが、パラレルシングルアンプの場合1回路で2つの終段を駆動するため、初段の出力抵抗値が2倍の影響を与えます。さらにグリッド回路の入力容量も2倍となっているため、このような高域特性になっていると推測します。2段構成でパラレルとする場合、初段からパラレル構成とすれば上記の影響をなくす事ができると思いますが、そもそもこの出力クラスのシングルパワーアンプではたしてパラレル構成とする意味があったのかも確認してみたい衝動にかられてしまいました。それでも気に入った音を出しているので、当面このまま使い、時間をかけて対策を考えたいとおもいます。

まとめ

今回f特測定にダミー抵抗を使用しましたが、スピーカーのインピーダンスは周波数によって大きく変わります。一方、真空管アンプの終段のロードラインは、負荷インピーダンスによって影響を受けますが、これら両事象をどのように考えたらいいか気になりました。BTL方式DCパワーアンプの特性測定した際に、前回までの記事で紹介したディスクリートアンプ化したバランスボリュームと組み合わせて久々に音楽を聴いてみましたが、なかなか良かったです。アンプの基本回路がそろった事で、良い部分がより際だった結果とでもいいましょうか?この組合せで今度はピアノ曲を聴きまくってしまいました。次回からは、バランス変換ボリュームの改造について紹介したいとおもいます。

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おわり(パワーアンプの周波数特性)

 

パワーアンプの周波数特性(番外編6)

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番外編6

先日手に入れた低周波発信器を使ってプッシュプルパワーアンプの周波数特性を確認しつつ負帰還の効果、影響を確認します。

気になっていた事

以前、パラレルシングルパワーアンプ(S1605)を製作し、プッシュプルパワーアンプ(S1503)との音の比較をおこないましたが、パラレルシングルパワーアンプは無帰還、プッシュプルパワーアンプは負帰還をかけていて、方式差の音質比較をする上ではフェアでないとおもいつづけていました。一般的に考えると、負帰還をかければ特性が改善するため、プッシュプルパワーアンプの方が有利になると考えられますが、音楽を楽しむ観点ではパラレルシングルパワーアンプの方が良い結果となっていました。今回は、プッシュプルパワーアンプの周波数特性を確認しつつ、負帰還の有無で音の比較をします。

周波数特性の測定

「音楽の女神への挑戦(製作編6)」で紹介したとおり、KENWOOD低周波発信器を手にいれたので、バランス入出力パワーアンプの周波数特性の測定方法を考えてみました。発信器にはバランス出力はありませんので、バランス変換ボリューム(S1501)を使って発振器出力をバランス変換してパワーアンプに入力します。ゲインはポケットオシロの実効値表示から入出力の電圧を読みとって算出します。

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電圧のモニタは、入出力を共通GNDとするため、HOT側の信号のみで行います。パワーアンプの出力にはスピーカーの代わりに8Ωのダミー抵抗を接続しました。

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簡単な測定回路のブロック図を作成しましたので掲載しておきます。

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測定

1KHzの信号を入力して出力が約0.1Wとなるように入力信号レベルを調整します。その時の入力信号レベルをメモしておき、周波数を変えた際に同じ入力レベルに合わせて出力レベルを確認します。全帯域の測定が終わった後で今回の測定は、ホット側のみということを忘れていて、出力が4倍の約0.4Wで測定をしていたことに気づきました。。結果への影響がなさそうだったので今回はこのまま進めます。結果を格好良くグラフ化したいと思い、ネット検索をしたところ、エクセルを使ったツールを公開しているサイト(JK1EP真空管アンプの自作)を見つけました。グラフ化はこのツールを使わせていただきました。測定時の基準信号(1KHz)の入出力レベルは、0.128V/0.88Vで、ゲインは16.7dBでした。

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低域は10Hzまでフラットです。段間のコンデンサを意識して選択したかいがありました。高域は20KHzまではフラットで100KHzで3dBダウンしています。ホット側のみの測定ですが、バランス出力時とf特の結果は変わらないはずです。

無帰還化

久々にプッシュプルアンプ(S1503)のシャーシを開けてみました。私自身の真空管アンプ初号機のため、2作目パラレルシングルアンプ(S1605)の配線と比べて雑な部分が目につきます。帰還信号ラインはトランジスタアンプでは考えられない程の線長となっています。暫定対応としてその配線のアンプの入力側の接続を外します。(写真の矢印4カ所)外した配線はショートしないようにテープ止めしておきます。

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この状態で負帰還時と同様に周波数特性の測定を行います。基準信号レベルは、0.068V/0.84Vでゲインは21.8dBとなります。負帰還時のゲインとの差5.1dBが帰還量となります。

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負帰還のお手本のような結果となっています。低域は10Hzまでフラットで変わらず、高域は10KHzからゲインが下がり初め、50KHzで3dBダウンしています。この特性のみを見ると負帰還は魔法のように思えますが、帰還をかけているラインの線長を考えると副作用のある薬のように思えてきます。

無帰還アンプの音

帰還をかけていたときの音は、響きがきれいで繊細な音がしました。音楽を生き生き鳴らすという面では、シングルアンプに劣っていました。帰還を外すと、響きの美しさはそのままで、繊細さは後退しますが、音楽がいきいき鳴ります。シングルアンプにはない、躍動感のある低音はそのままです。しばらくはこの状態で使いたいとおもいます。この後、70年代録音のアルバムを聴き込んでしまいました。アコーステックギターいい感じに響いています。

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次回は引き続き、製作済みのパワーアンプの周波数特性の確認を進めます。

 

つづく(番外編7)

 

音楽の女神への挑戦(決着編)

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決着編

組み上がったディスクリートアンプバランスボリュームの音だしを行い、オペアンプとの音の比較を行います。

出力オフセット

前回、基板をシャーシ実装後にオフセット調整した結果を紹介しましたが、その結果を不思議に思われた方もいたかもしれません。1つのチャンネルが-2.9mVと追い込みきれていませんでした。私自身も不思議に思い、出力をオシロスコープで確認したところテスタのリードを当てると、微小な発振波形が観測されました。左がリードを当てた際の発振波形で、右はリードを当てない状態の出力です。

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現状の発振対策はC06=なし、C01=22pFとしていましたが、C06=10pF、C01はそのままとしたところ発振波形は消えてオフセット調整も安定しました。写真は微小発振を観測したチャンネルに10pFを追加したときのものです。

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他のチャンネルも同様の対策を念のため行いました。この状態で改めて出力オフセットの調整を行いましたので結果を掲載します。

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おさらい

勝敗の決着の前に簡単におさらいをします。オーディオ全盛時代の売り文句に、「音のいいディスクリート方式のアンプを採用!」なんてコピーがありました。今はどうかと探してみたところありました。2016年9月発売のマランツ「HD-CD1」CDプレーヤーです。

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もともとオペアンプは演算用に作られたことから、GB積をかせぐ事が至上の命題となっていたため、音質への配慮はありませんでした。あれからうん十年がたち、音質を追求したと宣伝されているMUSESが販売され、使ってみると確かに悪くはありませんでした。一方、パワーアンプで採用した私なりのこだわりの回路をラインアンプに適用してみたいと考え、果たして最新のオーディオ用オペアンプに音質面で勝てるのか確認したいと考えたのが、今回の挑戦のきっかけです。

ディスクリートアンプについて

今回製作したアンプは、S1604_BTL方式モノラルDCパワーアンプで採用した回路構成とほぼ同じですが、改めて特長を紹介します。初段はDual J-FETを使った差動アンプで、ペア性能および温度特性は良好です。それをカスコード接続で使用しJ-FETを理想的な状態で動作させています。トランジスタを使用した定電流回路を採用して初段の差動アンプを安定動作させます。2段目はオーソドックスな差動回路ですが、選別品のペアトランジスタを使用しています。バイアス回路もトランジスタで構成して終段のコンプリメンタリペアを安定動作させます。終段も選別トランジスタでコンプリメンタリ構成として裸特性の改善を狙いました。終段はバイアス電流を10mA流していますが、600Ω負荷とした場合に理論上は12Vpp出力までA級動作をします。いろいろ書きましたが、回路はオーソドックスな差動2段+ドライバ構成のアンプです。そのすべてが裸特性の改善につなげるために取った対応です。発振対策の追加を反映した最終回路図を改めて掲載します。

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挑戦相手

勝敗の決着の前に、MUSES01についても改めて言及しておきます。「従来音質向上を実現する際の障害になっていた材料、チップサイズ、生産性などを意識せず音質を追求したオペアンプ」と唱われています。回路に関する情報は一切公表されていませんが電源電圧範囲や、電圧利得のスペックが他オペアンプに比べて劣っていることから、オーディオ用の回路を意識した設計となっていると推測されます。出力段は私が使用する負荷範囲(1~2KΩ前後)において、おそらくAB級動作をしていると考えられるため、簡単な確認をしてみました。負荷1KΩを接続して消費電流をモニタしながら正弦波を入力します。入力電圧を上げていくと消費電流が8mAから9mAに増えることを確認しました。この結果からも、いくらオーディオ用設計とはいえLSI設計のしがらみが残っていると推測でき、そこに勝機があると考えました。

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音だし勝敗

組み合わせるパワーアンプは、最近常用しているS1605 パラレルシングルパワーアンプです。音を聴いた最初印象は、「なんて芯のある音がするのだろう!」です。音楽が安定して聴こえます。初めに私の音質確認定番のBJ2を聴きました。低音の量感もあり、中域も今まであまり聴こえてこなかった音が聴き取れます。音の分離が良いということでしょうか?高域はレベル感がありますが、素直なためうるさくなりません。ディスクリート電源+オペアンプの組み合わせにて、電源にMUSESを追加してバランスをとりましたが、その際にはボリュームを上げる必要がありました。ディスクリートアンプとの組み合わせでは、ボリュームを上げずとも、バランスがとれています。つづいてアコースティックギターを聴きます。弦をつま弾く感じが生々しく、響きも美しいです。女性ボーカルのハイトーンもうるさくならず、透明感があります。ビッグバンドの管楽器も生き生きなります。時間も忘れていろ聴いてしまいました。この結果から、私の主観的な判断ですがこの勝負、ディスクリートアンプに軍配が上がりました。(バランス変換ボリューム2設計編の冒頭にBTL方式DCパワーアンプとの組み合わせ再生時の音の印象も紹介しています。2017.02.28)

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まとめ

2017年最初の製作に約1ヶ月間おつきあいいただきありがとうございました。前の記事でコメントしたとおり、結果が良かったので今回の設計をオペアンプ相当の標準基板としたいとおもいます。まだまだ私自身のオーディオへの興味は尽きません。時間、場所、お金があれば・・・なんて考えてしまいます。引き続きおつきあいいただければ嬉しいです。

 

おわり(音楽の女神への挑戦)

 

音楽の女神への挑戦(製作編8)

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製作編8

残り1チャンネル分の実装完了させ、シャーシ上の基板を載せ換えます。

JRC MUSES

本題に入る前に挑戦相手のJRC MUSESシリーズについて改めて紹介をします。繰り返しになりますがMUSESはギリシャ神話に登場する文芸を司る女神たち(9神)です。文芸の神アポローンが彼女たちを主宰するとのことです。JRCのMUSESシリーズは2017年2月現在、8品種がラインナップされていて、ギリシャ神話に合わせるとなると、もう1品種加わることが期待されます。ラインナップは、高音質オペアンプ、高音質電子ボリュームと昨年(2016年)秋に新登場した高音質オーディオ用sic-SBD(シリコンカーバイトショットキーバリアダイオード)の3カテゴリに分けられます。簡単に8品種についてまとめてみました。

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どの部品も大変良いお値段です。それぞれWeb上の特設サイトから秋月電子通販サイト上の各部品にリンクが張られていて簡単に購入できます。私はこの中で、MUSES01とMUSES8920を今までに使いました。どちらもJFET入力のオペアンプですが、価格差が示すとおり全く別物の音がしました。機会があれば、別の品種も試してみたいとおもいます。

channel-4実装・調整・確認

それでは本題に戻ります。4回路目の実装となると、実装上の注意点やこつが頭に入っていて効率良く実装ができました。記憶に頼った実装がミスの原因となる事も事実なので油断大敵です。尚、channel-3の実装が一番苦痛だった気がします。channel-4の使用トランジスタは以下のとおりです。NPNトランジスタは、考えずに選別用として20個購入しましたが、使用数ピッタリでした。初段の定電流源Q04と2段目のバイアス回路Q07はペアをとる等の特性を合わせる必要がないのでうまく配置する事ができました。

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前の回路同様に、初段が組み上がった時点で通電確認してから、残りを組み立てます。調整の最初にVR2/3をプリセットしますが、誤ってchannel-3の半固定抵抗を回してしまいました。調整はchannel-3からやり直しとなりました。channel-4の調整結果は以下のとおりです。

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調整後に2channel分の消費電流を確認しました。+電源が40mAで-電源が37mAです。この差は、初段のカスコード接続用の基準電圧を+電源から作っていることに起因します。オペアンプ基板の消費電流が8mAなので、5倍の電流を消費していることになります。

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当初基板面積に対して部品実装が厳しくなると予想していましたが、それほどぎっちりという感じにはなりませんでした。結果が良かったら、オペアンプのリファレンス基板としたいと考えています。

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基板の載せ換え

容易に基板の載せ換えができる設計としましたが、何回も交換したくないので、交換前に改めてオペアンプ基板の音を聴いて記憶にとどめます。各基板の3極の端子台3カ所と基板固定のねじを外し基板を交換します。基板上の一部の部品と配線が干渉しましたが、端子台の位置を合わせたので大きな問題はなく配線ができました。

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通電確認

今回組み立てたディスクリート電源と組み合わせての初通電となります。ユニバーサル電源をつかった通電時は、+/-12.1Vを供給していましたがやや低めの電圧となっていました。供給電圧の違いから各チャンネルの出力オフセット電圧が最大で10mVくらいまでずれていたので、出力オフセット電圧のみ再調整しました。

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電源の確認

消費電流がオペアンプ基板の5倍となっているので、念のため電源の出力トランジスタ印加電圧のリップルを確認しておきます。オペアンプ基板接続の際の99mVppと比べ146mVppと約1.5倍となっていましたが、このトランジスタの印加電圧4.4Vに比べて小さいので問題ありません。

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これでやっと組立が完了しました。次回は音だしを行い音楽の女神との勝負を決着させます。

 

つづく(製作編9)

 

音楽の女神への挑戦(製作編7)

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製作編7

ディスクリートアンプの部品実装を進めます。

channel-2実装

製作編5で、channel-1の実装および動作確認まで紹介しました。基板の状態は写真のとおりです。

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その際に、発振対策部品としてセラミックコンデンサを使用しましたが、記事中でコメントしたとおりディップマイカ品に交換しました。セラミックコンデンサ秋月電子で1個5円、ディップマイカコンデンサはマルツオンラインで108円です。検討用にいろんな容量を準備するには、セラミックコンデンサが好都合です。また、今回使用したコンデンサの容量誤差はどちらも+/-5%品で載せ替えに問題ありません。尚、セラミックコンデンサとディップマイカコンデンサの音への影響についていままで確認を行ったことはありません。

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つづけて同じ基板にchannel-2を実装します。部品はchannel-1を平行移動した配置に実装しますが、端子台関連回路(電源入力と信号入出力)のみchannel-1/2で共通部品となるので実装に注意が必要です。前回同様、初段の差動回路の実装が終わった時点で通電確認を行いました。製作編5でコメントが漏れましたが、完成後に帰還信号が戻る入力を、一時的に10kΩでGNDに接続して通電確認を行いました。特に問題なかったので、全部品の実装をさらに行います。2段目の発振対策用のコンデンサは、最初からディップマイカ22pFを実装しました。使用したトランジスタは、以下のとおりです。

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channel-2調整と動作確認

channel-1と同様に2段目のバイアス電流を絞り、終段をカットオフさせるように半固定抵抗をプリセットして電源を入れます。調整の手順はchannel-1と同様です。調整後の各部の電圧は以下のとおりです。

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念のため、channel-1と同様に信号を入力して動作確認を行います。本記事のキャッチ写真は、600KHzの正弦波を入力して出力確認を行っているときのものです。特に問題はありませんでした。せっかくなので、100KHzの矩形波も入力してみました。インピーダンスマッチングをとっていないので、入力信号自体の立ち上がりがなまっていますが、出力はリンギング等なく、そのままの波形が出力されています。

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組み上がった基板をオペアンプ基板と比較してみました。写真のとおり実装部品点数、実装面積は大きく異なります。

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記事のまとめ編で紹介するつもりでいましたが、私としても気になるので、ここで紹介します。オペアンプの機能に相当する部品表をまとめました。

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ディスクリートアンプ2チャンネル分で、部品が61点で部品代が1776円でした。MUSES01の値段が3500円なので、部品原価自体は約半額でディスクリートアンプに、実装面積や手間はオペアンプに軍配が上がりました。肝心なのはその音なので勝敗は持ち越しです。

channel-3実装

同じ作業の繰り返しは、作業自体の効率はあがりますが、精神的にしんどいです。同様のステップを踏んで動作確認を行いました。

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今週はここで時間切れとなってしまいました。記事としてまとまりませんでしたが、次回channel-4の実装を完了させて音だしを行いたいとおもいます。写真はここまでの成果です。

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つづく(製作編8)