マルチアンプ実験1(実験編)

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実験編

比較元となるネットワークによる2Wayスピーカーシステムを組み上げて音を聴きます。

2Wayシステムの構築

とにかく音を聴いてみたいと思い、前回の記事で紹介した格安2Wayネットワークと2組のスピーカーを使って比較元の2Wayスピーカーシステムを組み上げます。とりあえずの組立なので、通常入れる高域側のアッテネータは入れていません。(本記事アイキャッチ写真参照)早々にCDの再生を行ったところ、Lチャンネルは音が出ず、Rチャンネルの高域も音が出ていません。そうこうしているうちにLチャンネルアンプのパイロットランプが消えました。アンプはBTL A級DCパワーアンプを使用していました。

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アンプの電源を切り確認したところ、Lチャンネルアンプはヒューズが飛んでいました。ヒューズ交換後も、短時間でヒューズが飛ぶことから、どうやらアンプを壊してしまったようです。接続したネットワークを確認したところ、アンプに接続する端子間の抵抗値が0で、ネットワーク側でショートしているようです。出だしからつまづいてしまいました。禁断の手法と考えていることから、見えない力が働いたのではと勘ぐってしまいます。やれやれ

格安2Wayネットワーク

原因を特定するために、回路図を起こします。基板および実装部品が大きく、部品点数が少ないため、容易に回路図ができました。

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パターン上の不具合は見つからないので、大容量フィルムコンデンサーが怪しいです。この際なのですべて信頼できるフィルムコンデンサーに交換するため、交換用のフィルムコンデンサーを注文しました。真空管アンプの段間のカップリングに使用したCrossCapです。

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翌週、フィルムコンデンサーが届き、交換前に改めて入力端子間の抵抗値を測定したところ抵抗値に問題ありません。不思議に思い、配線を確認したところ原因はハンダ付け部のテープによる絶縁に問題がありショートしている事を確認しました。原因は私の加工にあったなんて情けない・・・。

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気を取り直して絶縁のテーピングをすべてやり直しました。

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組み上げた2Wayシステムの音出し

壊してしまったパワーアンプは別途修理します。メンテナンス性が非常に悪いため気がおもいです。修理については番外編としていづれ紹介をしたいと考えています。仕方がないので続きは、久しぶりにエルサウンドのBTLモノラルパワーアンプを引っ張り出して使用します。エルサウンドは、関西のガレージメーカー(失礼?)ですが、ビルダーから見て納得できる仕様のものが、比較的リーズナブルな価格で提供されているとおもいます。

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音の印象

16cmフルレンジスピーカーは低音の量感を稼ぐために床置きとしました。10cmフルレンジスピーカーはその上に横倒して置きます。

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初めにいつも聴いているBJ2です。床置きの効果で低音の量感は十分です。アッテネータを入れずに10cmフルレンジを接続しましたが、バランスは問題ありませんでした。思いの外良く鳴っています。印象的なのはフルレンジで使用している時に比べて音量を上げても中高域が耳障りにならない点です。続いて風の「海風」です。出だしのアコスティックギターいいです。フルレンジユニット2発としているためか、中音域の質はいい感じです。次に八神純子の「夢見る頃を過ぎても」です。ボーカルも艶やかに再生されベースの量感も十分です。比較元が思いの外いい感じで今後の展開が心配です。

次回、マルチアンプ実験2としてチャンネルデバイダの設計を行います。

 

おわり(マルチアンプ実験1)

 

マルチアンプ実験1(構想編)

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構想編

マルチアンプの効果を体感するために、所有するフルレンジスピーカー2組を使って実験を行います。

マルチアンプの構想

「ウーハーとアンプ間の配線からネットワーク素子を取り除きたい!」と漠然と思いつづけていました。気づくとステレオで5チャンネル分のアンプを所有し、計らずとも環境は整っていました。マルチアンプはシステムの汎用性を著しく損なうので、禁断の手法と思う反面、ウーハーとパワーアンプがダイレクトに接続される事のメリットを想像すると、1度は体験してみたいと考えていました。マルチアンプの経験が一切ないところから、いきなりシステム構築はハードルが高いので、小規模な実験を積み重ねて、その効果を体感して、課題をまとめてみたいとおもいます。

私がやってみたいマルチアンプ

ウーハー+小口径フルレンジの2wayスピーカーをチャンネルデバイダーを使って、ウーハーのみパワーアンプでダイレクトに駆動し、小口径フルレンジは通常のネットワークを使ってクロスさせてみたいと考えています。この方式の私が考えるメリットは以下のとおりです。

・一番効果が高いと考えるウーハーがマルチアンプ駆動される
・高価な低域用ネットワーク素子が不要
・チャンネルデバイダーがシンプルとなり、バランス対応しやすい

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ウーハーのマルチアンプ駆動

ネットワークによるマルチウェイの場合、-6dB/octや-12dB/octの減衰特性を得るためには、通常ウーハーと直列にコイルが入ります。カットオフ周波数とコイルの構造にもよりますが、例えばFOSTEXが販売する3.5mHの空芯コイルの場合、ネット情報によると直流抵抗値が0.6Ωとのことです。

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コアを入れるとコイルの巻き数を減らすことができますが、コアの質が音に影響を与えるとのことでした。一方、高価な超弩級パワーアンプには出力インピーダンスを低く抑えてダンピングファクター1000 /8Ω等唱っているものもあります。

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スピーカーシステムから見れば確かに低出力インピーダンスと言えますが、ウーハーユニットから見ると間にネットワーク素子が入るため、駆動側の実効インピーダンスが上がってしまいます。仮に上述のFOSTEXの3.5mHのコイルが入った場合、スピーカーシステムから見たダンピングファクター1000 /8Ωは、ウーハーからみると一気に約13 /8Ωまで低下してしまいます。

実効ダンピングファクター = 8 / (8/1000 + 0.6) = 13.2

ウーハーは他の帯域のユニットに比べ逆起電力の発生レベルが高いと考えられるため、実効的なダンピングファクターが上がることの効果は大きいと言えます。

実験準備

ウーハーのマルチアンプ駆動の効果を確認するために、比較元のスピーカーシステムを構築します。ウーハーの代わりに16cmフルレンジユニットを使ったスピーカーを、ツイターの代わりに10cmフルレンジユニットを使ったスピーカーで、ネットワークによる2wayスピーカーシステムを組んでみます。単なる実験なので、格安の2wayネットワークをネットで探して購入しました。クロスオーバー周波数は2KHzで、-12dB/octの減衰特性です。(本記事アイキャッチ写真参照)本当は、クロスオーバー周波数を1KHz以下に下げてファンダメンタルを10cmフルレンジで再生させたかったんですが、既製品の2wayネットワークに所望のクロスオーバー周波数のものが見つかりませんでした。

実験のねらい

組み上げたネットワーク式の2Wayスピーカーシステムの音を聴きます。その後ウーハーのみチャンネルデバイダーを使ってパワーアンプとユニット間のネットワークを削除してダイレクトに接続します。この切り替えによって音がどのように変化するかを確認してみたいと考えています。ポイントは下記の2点です。

1)ウーハーの駆動力(制動力)の変化による音への影響
2)ウーハーの逆起電力によるツイーターへの影響

使用するユニットおよび部品は間に合わせの物なので、再生される音の質というよりも構成を変えた時の音の変化に着目したいと考えています。

 

つづく(実験編1)

 

ウィークエンド・オーディオ(総集編2)

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総集編2

前回に続き総集編です。今回は残りの21記事(スピーカー組立、メンテナンス、番外編)について紹介します。

スピーカー組立記事

1.ロクハンフルレンジスピーカー導入

記事掲載開始:2016-12-23(3記事)
FE103を使ったスピーカーのメンテナンスを終えて、フルレンジの定位の良さに満足したものの、低音がもう少し欲しいとおもい、フルレンジスピーカーの王道のロクハンユニットを使ってスピーカーを組みあげました。既製品の箱を使ったため、容易にそれなりの音になりましたが、さらにユニットの実力を引き出すためにエンクロージャーの自作をしたい衝動にかられています。現在、このスピーカーを使って遊んでみたいと画策中です。

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メンテナンス記事

1.DCパワーアンプメンテナンス

記事掲載開始:2016-08-20(8記事)
このアンプは、私が大学生時代に設計製作した本格的なオーディオアンプ1号機です。入力はdual J-FETを使った差動アンプ構成で、終段はコンプリメンタリトランジスタのAB級動作(A級動作範囲1W)としています。製作から30年以上経過していますが、一応動作はしていました。さすがに音は輝きを失っていたため、メンテナンスする事にしました。メンテナンスに際して、簡易LCRメーターを購入し、電解コンデンサの劣化判定の参考としました。正面パネルに大型のVUメーターが付いていますが、この記事の中でメーター用の照明の工作も行いました。このアンプ、今では貴重なNEC製のメタルキャンパッケージのエミッタバラストトランジスタ(ハイftトランジスタ)を終段に使っています。メンテナンス後は製作当時の状態に戻り、学生時代に購入したNS-1000Mと組み合わせて鳴らせば、当時の音がよみがえり、当時の記憶が戻ってきます。今後も大事に使っていきたいとおもいます。

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2.小型スピーカーメンテナンス(FE103)

記事掲載開始:2016-09-23(3記事)
就職のため社員寮引っ越し用に組み立てた小型スピーカーのメンテナンス記事です。使用スピーカーのFOSTEX FE103は、マイナーチェンジはされているものの超ロングセラーユニットで、私の年齢といい勝負をしています。何のメンテナンスもしていなかったため、エッジの接着が剥がれてしまっていたので、新品のユニットと交換しました。明るく元気のいい音がよみがえりました。帯域を欲張らないアカペラ曲などは、いい感じで鳴ります。

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番外編記事

1.インターナショナルオーディオショウ(番外編1)

記事掲載:2016-10-04
2016年9/30~10/2の3日間、東京国際フォーラムで開催された展示会の参加報告です。この記事中では、ヤマハフォステクスのブースを紹介しています。フォステクスのフルレンジスピーカーはいい感じで鳴っていましたが、既製品のエンクロージャーを使用するとお値段もいい感じになってしまいます。全盛期に比べるとオーディオ製品の価格は全般的に高くなっているとおもいます。

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2.インターナショナルオーディオショウ(番外編2)

記事掲載:2016-10-07
上記番外編のつづきです。この記事中では、トライオード、ラックスマン、アキュフェーズのブースを紹介しています。トライオードは個人的にあまりなじみがありませんでしたが、このデモを見て良い印象を受けました。

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3.真空管オーディオフェア(番外編3)

記事掲載:2016-10-11
2016年10/9~10/10の2日間、秋葉原損保会館で開催された参加型の展示会の参加報告です。インターナショナルオーディオショウとは異なり、参加者の平均年連が高く、私が若手という状況でした。この展示に触発されてシングルパワーアンプの設計製作を最終決意しました。

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4.ツール紹介(番外編4)

記事掲載:2016-12-20
私がこのブログをつくるために使っているツールの紹介記事です。アイキャッチ画像は、社会人になって唯一私が担当したオーディオ製品(マイナーチェンジ対応)の写真です。息抜きのような内容ですが、気が向いたら読んでみてください。

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5.自作アンプで年末を聴く(番外編5)

記事掲載:2017-01-03
年末恒例の放送を、この年に製作したパワーアンプを使って聴いてみました。このために、HDMI信号から光デジタル信号を分離するアダプタを購入してソースとしています。「N響の第9演奏会」は内容、音も良かったので次回も聴いてみたいとおもいます。

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6.パワーアンプの周波数特性(番外編6)

記事掲載:2017-02-13
中古でケンウッドの発振器を手に入れたので、今まで測定できなかったパワーアンプの周波数特性の測定を行い、その結果を紹介しています。この記事の中では、EL34ppパワーアンプのf特を、負帰還の有無両方の測定し、それぞれの音の印象を紹介しています。無帰還の方が好みだったため、その後は無帰還の状態で使っています。

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7.パワーアンプの周波数特性(番外編7)

記事掲載:2017-02-17
番外編6に引き続き、BTL A級DCパワーアンプと、バランス入力シングルパワーアンプのf特測定を行い、その結果を紹介しています。BTL A級DCパワーアンプのf特は良好でしたが、バランス入力シングルパワーアンプのf特は、予想以上にナローでした。それでも、このバランス入力シングルパワーアンプは音楽性豊かに楽器を鳴らします。

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8.バランス変換ボリューム2(番外編8)

記事掲載:2017-03-24
バランス変換ボリューム2改造の中で設計の見直しが必要となり、検討時間を確保したかった為、記事の穴埋めのような流れで、差動2段構成のアンプに良く使われるカレントミラー負荷を私が使わない理由を紹介させたいただきました。

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以上、当ブログ現時点の全記事(88記事)の簡単な紹介でした。次回は私は禁断と考えているマルチアンプ化の実験を行う予定です。

 

おわり(総集編)

 

ウィークエンド・オーディオ(総集編1)

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総集編1

今月(2017年4月)末でブログ開設10ヶ月となり、掲載記事も88となりました。自身の整理と次の製作の準備期間を取るために総集編という形で、2回で全記事を簡単に紹介します。

パワーアンプ製作記事

1.真空管アンプの製作(EL34pp)S1503

記事掲載開始:2016-06-24(6記事)
私の初めての真空管アンプ設計製作で、さらに初めてのブログによる公開と、初めてづくしでしたが、アンプは納得できる状態にまとまったと思います。バランス入力、バランス出力、初段に双三極管12AX7を使った差動アンプ構成、終段はEL34の三極管接続A級動作のプッシュプルとし、全段バランス構成としています。出力8W+8W(8Ω)です。当初は負帰還をかけていましたが、2017-02-13「パワーアンプの周波数特性」記事で無帰還に改造しています。差動アンプ用の定電流源と電源のリップルフィルタにバイポーラトランジスタを使用したハイブリッド構成で、コストを抑えて性能を高めることができたと考えています。

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2.BTL_A級DCパワーアンプ S1604

記事掲載開始:2016-07-11(12記事)
学生時代から構想を暖めていた私自身のトランジスタアンプ集大成と言えるアンプです。トランジスタアンプ用の電源トランスが入手できずに汎用品を使ったことからトランスの唸りが課題です。入力はdual J-FET差動構成で、出力はコンプリメンタリトランジスタをパラレルでA級動作させてスピーカーの駆動力を高めています。 出力は8W/mono(8Ω)ですが終段の電源トランスに5A/mono、終段の電源平滑用コンデンサに100,000uF/monoと強力な電源を搭載しています。初めてシャーシメーカーの加工サービスを使ってリアパネルを製作しました。BTL構成という事もありウーハーの駆動力は私の所有するアンプの中で1番です。2017-02-07「パワーアンプの周波数特性」記事でf特の測定を行いましたが、良好な特性の確認ができました。

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3.バランス入力シングルパワーアンプ製作 S1605

記事掲載開始:2016-10-14(19記事)
シングルアンプに拘りを持つ方が多い事を聞き、拘りの秘密を探るために設計製作を決めました。プッシュプルアンプとの比較を考慮し、使用部品をEL34ppアンプと極力合わせました。その結果終段はパラレルシングル構成となっています。出力は5.3W+5.3Wです。2017-02-17「パワーアンプの周波数特性」記事で、ナローな周波数特性となっていることを確認しましたが、3つのアンプの中で一番音楽性豊かに鳴ります。

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アダプタ製作記事

1.バランス方式ボリューム製作 S1502

記事掲載開始:2016-07-07(2記事)
入力ソースとしてバランス出力を持つUSB DACを購入したため、急遽製作しました。アンプ部はオペアンプを使用し、電源は三端子レギュレーターを使った簡単なものです。このアダプタで拘った点は、JRCのオーディオ用高級オペアンプMUSES01の採用と、電源トランスにトロイダル型をを使った点です。設計編の記事の中で、私のシステムの機器について簡単に紹介しています。

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2.音楽の女神への挑戦

記事掲載開始:2017-01-06(11記事)
これは上記のバランス方式ボリュームの改造記事です。オペアンプよりディスクリートアンプの方が音が良いと言われていますが、実際に製作して検証を行いました。併せて、電源回路もディスクリート化しています。製作の結果、ディスクリートアンプの音の良さを体感できました。タイトルの「音楽の女神への挑戦」はJRCオペアンプMUSES01に挑むという事でつけました。構想編のアイキャッチ画像は、娘に音楽の女神として書き下ろしてもらったものです。

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3.バランス変換ボリューム S1501

記事掲載開始:2016-08-13(2記事)
オーディオ趣味復帰後、最初に製作したものです。まずはリファレンス環境を整えるために市販のBTLパワーアンプを購入したため、バランス変換アダプタが必要となり製作しました。アンプ部にオペアンプを、電源は三端子レギュレーターを使用した簡単なものです。非力な電源トランスを使ったこともあり、間に合わせの仕様です。製作したすぐ後に、バランス出力を持つUSB DACを購入したことで、実使用期間は短かったです。

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4.バランス変換ボリューム2

記事掲載開始:2017-02-21(15記事)
上記の間に合わせ仕様だったバランス変換ボリュームを、バランスボリュームと同様にディスクリート化しました。きっかけは、ロフトに眠るチューナーの音を良い状態で聴いてみたいとおもい、改造を決意しました。記事の途中で設計見直しのハプニングがありましたが、無事製作完了しました。構想編のアイキャッチ画像は、ロフトの主ということで娘が撮った我が家のスコティッシュホールドの写真です。この改造により、満足のできる状態となり、心おきなくアンバランス出力のソースを楽しめるようになりました。

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以上が全88記事中の67記事の簡単な紹介でした。次回はスピーカー組立、メンテナンス、番外編と残りの21の記事を紹介します。

 

つづく(総集編2)

 

バランス変換ボリューム2(まとめ編)

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まとめ編

バランス変換ボリュームの改造が完了したので、音を聴いてみます。

音出し

最終改造前に、製作編8で紹介した現行電源+ディスクリートアンプの組み合わせの状態で改めて音を聴きました。その時の音の確認と同様に、ソースはCDで、USB DACのアンバランス出力を使いました。

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製作編8でオリジナルと上記状態の音の比較を行いましたが、それから1週間が経過しています。その間にオリジナル状態の音の印象が薄れ、通常使用状態(フルバランス)の音の記憶が比較元に変わってしまったためか、この状態の音の印象が変わりました。一言で表現すると、まとまった感じの音で、こちらの方が高級コンポの音のように感じました。続いて同日中に最終改造を終えて中間改造状態の音との比較を行いました。

電源の違いによる音

最終改造後の音の印象は以下のとおりです。尚、比較元は上記の中間改造状態です。

・芯のある音
・量感ある低音
・重低音まで伸びている
・華やかな高音

その後、一旦フルバランス状態に戻して比較元をバランス変換ボリューム2として音の比較をしました。下記はフルバランス状態の音の印象です。

・全帯域で素直な音
・低音の量感がやや後退する
・高音の華やかさがやや後退
・音の印象の差は小さい

このよう結果となった事について考えてみました。DACによる反転信号の生成は今まで特性面の検証を行った事はありませんが、常識的に考えると、デジタル信号の遅延やDACの特性差による、Hot/Cold間の波形差は上限周波数20KHz程度の範囲では考えにくいとおもいます。一方、バランス変換ボリューム2を使用した場合は、Hot/Cold間のわずかな信号間の遅延はあるものの、ソースはまったく同一波形(アナログ信号)です。両者の違いの検証方法があれば試してみたいとおもいますが、良い方法がおもいつきません。バランス変換ボリューム2の高域の華やかさは、Hot/Cold信号間の遅延起因からくるものなのでしょうか?低音の量感がバランス変換ボリュームの方が勝る点は、基準電源用のツェナーダイオードに抱かせている電解コンデンサMUSE KZ品に変更したことによる効果かもしれません。

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それでは再度バランス変換ボリューム2に戻していろんな楽曲を聴いてみます。

USB DACアンバランス出力の音

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風の「冬京」のベースの量感は、バランスボリュームに勝っています。惑星では、従来のバランス変換ボリュームでは表現が難しかった奥行き感を感じ、弦楽の響きも美しいです。ケニードリューのピアノは華やかに鳴ってます。「夢見る事を過ぎても」は八神純子のハイトーンも華やかに聴かせます。ベースの量感も印象的でした。

ST-S333ESXの音

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最後に今回の改造の発端となった、チューナーST-S333ESXでFM放送を聴いてみます。私の学生時代とは違い、トーク主体の番組が多く楽曲の音の評価がやりにくいです。好みの楽曲が流れている放送を探し、切り替えて聴いてみました。どの局も100Hzあたりをブースとしているような鳴り方で、小音量で聴く際にはバランス良く聴こえます。流し聴きして、好みの楽曲に巡り会うにはいいですが、学生時代のようにエアチェックしてそれをソースにするまでの事はないとの印象でした。

まとめ

私のシステムはバランス電送・バランス駆動が基本ですが、大半の機器はアンバランス出力しかもたないため、接続の際には必ずバランス変換ボリュームが必要となります。従来は間に合わせと言われても仕方がない状態でしたが、今回の改造で納得できる状態とすることができました。今後はこれを使っていろんなソースを試したいとおもいます。

 

おわり(バランス変換ボリューム2)

 

バランス変換ボリューム2(製作編10)

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製作編10

電源基板の部品実装が完了しましたので、電源基板とトランスを載せ替えます。

バランス変換ボリュームの状態

製作編8で、バランス変換アンプ基板の載せ替えが完了しています。今回は電源基板を取り外し、その代わりに新たに製作した電源基板とトランスの実装を行います。写真は現状(最終改造前)のシャーシの状態です。

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改造開始

基板固定用のねじ4本を外し、基板をフリーな状態にします。電源基板への配線は、全てハンダ面にハンダ付けされているため、基板を裏返して配線のハンダを外していきます。続いて基板固定用のスタッド4本を取り外します。

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バランス変換アンプ取り付けの際と同様に、未実装の基板をシャーシに置いて、スタッド固定用の穴を現物合わせで位置出しをします。その隣に、トロイダルトランスの現品を置き、固定用の穴の位置出しも行いました。その固定位置は、無理のない範囲で、バランス変換アンプから遠ざけました。位置出しした8カ所にφ=3.2の穴をあけます。基板固定用の穴4カ所に基板固定用のスタッドを取り付けます。スタッドは電源基板を固定していたものを流用しました。バランス変換基板の固定は、部品クリアランスの関係で10mmのスタッドを使用しましたが、電源基板は流用した為15mmとなっています。

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次はトランスを取り付けます。バランスボリュームの製作で使ったものと同じもので、出力として12V/500mA巻き線を2つもっています。共立エレショップで2057円で購入したもので、型番はHDB-12(L)です。1次巻き線として120Vのタップをもっていますが今回は使用しないため、後の流用を考慮して適当な長さに切断してショート防止の保護をして束ねておきます。全ての配線を流用しようとしましたが、電源LEDと片チャンネル分の電源線が基板端子台の位置が従来の接続位置と変わったため届きませんでした。その2カ所のみ新たに線材を準備し、所定の基板端子台に接続して改造完了です。

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通電と調整

初めに電源部の動作を確認します。実動作時の出力電圧は以下のとおりです。

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続いて動作時の出力トランジスタに印加される電圧を確認します。片チャンネル分のトランジスタ印加電圧波形を+電源とー電源ともにモニターしました。

■+電源Tr印加電圧波形

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■ー電源Tr印加電圧波形

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結果をみると+電源側がVdc=4.16V、Vpp=0.40Vでー電源側がVdc=4.80V、Vpp=0.32Vとそれぞれのトランジスタには、動作のために最低限必要な電圧がかかっていることが確認できました。値は+とー電源間で異なっています。この原因は、アンプの初段のカスコード接続の基準電圧を+電源から作っていて、1つのアンプあたり約1.4mA、片チャンネル分でその倍の2.9mA分+電源の方が余計に電流を流している為に、+電源のリップル電圧Vppが大きくなり、逆に平均印加電圧Vdcが小さくなっています。別チャンネルも同様に確認しましたが、同じ結果なので紹介は省略します。電源か変わったことで電源電圧が微妙に変わるため、改めてアンプの出力オフセットの調整を行います。バランス変換アンプのシャーシ実装時と同様の手順で、非反転出力側から調整します。調整の結果は以下のとおりです。

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これでバランス変換ボリューム2の改造がようやっと終わりました。次回は音を聴いてその印象を紹介します。

 

つづく(まとめ編)

 

バランス変換ボリューム2(製作編9)

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製作編9

アンプ基板のシャーシ実装が終わったので今回は電源回路の実装を進めます。

改造の方針

前の記事でも紹介しましたが、現行電源のトランスは非力なため、バランスボリュームの電源で採用したトロイダルトランスに変更します。電源回路もバランスボリュームのものを踏襲し最低限納得できる状態にします。

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電源回路

簡単に設計をおさらいします。回路はバランスボリュームの電源と同じです。今回バランス変換の設計を途中で変更したことでアンプ部はバランス動作となり、理想的には電源電流は一定(直流)となりました。言い換えると負荷変動がないため、出力電圧のフィードバックはかけていません。一部欲がでてしまい、部品を変えたことで前回と同じ実装ができませんでしたが、詳細は組立の中で紹介します。

電源回路実装

入力側から実装を開始します。全波整流、平滑部までは部品を含めてバランスボリューム電源と変わりません。ハンダ面の作業用に2カ所20mmのスペーサーを2段積みとして取り付けました。ハンダ面の作業時は平滑用電解コンデンサと3点支持となり、安定した作業ができます。

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次にツェナーダイオードを使った基準電圧生成部ですが、バイパス用の電解コンデンサとして、ニチコンFGタイプの代わりにニチコンMUSE_KZを購入してしまいました。どちらも470uF/25V品ですが、ハイグレードを唱うKZ品の方がサイズが大きくなっています。

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下表はKZとFG品の仕様比較結果です。

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仕様の中でtanδについて補足します。KZは、0.12(120Hz)、FGは0.14(120Hz)となっています。これは、規定された周波数における無効電流と有効電流の比率を表し、この値が小さい程理想的なコンデンサの動作をします。図はコンデンサの等価回路で、漏れ電流等の損失分を抵抗で表しています。tanδは電流の虚数部と実数部の比で値が小さいほど損失が小さく、理想コンデンサに近い動作となります。

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基準電源バイパス用コンデンサは、+/ーの各電源に1つ必要なため、トータル4個を実装します。基板上に並べてみたところ、なんとか実装できそうなのでこの選択で進めます。バランスボリュームでは、出力のバイパス用のコンデンサとしてあとからMUSE KZ 100uF/25V品を追加しましたが、今回は最初から実装します。悪い癖で、リピートの製作ごとに部品をごてごてと追加してしまいます。シンプルな方がいい場合もある事を、肝に銘じておきたいとおもいます。この変更の結果出力段のトランジスタの向きを変えざる得なくなり、バランスボリュームの電源部品実装と大きく変わってしまいました。

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通電確認

全波整流回路の評価にはなりませんが、トランス出力のピーク電圧に相当するDC電圧(+/-16.8V)をユニバーサル電源を使って入力して動作確認を行います。その際の各部の電圧は以下のとおりです。

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別チャンネルの回路実装

引き続き残りのチャンネルの実装を行います。見栄えを考慮して基板上の配置が均等になるように位置出しをしました。バランスボリューム時の電源実装と比較のために両実装の写真を掲載します。ご覧いただくと、これ以上実装サイズが増える変更はできない状態となったことがわかります。

■バランスボリューム電源実装

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■バランス変換ボリューム2電源実装

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参考としてハンダ面の写真も掲載します。

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残りのチャンネルの通電確認

先のチャンネルと同様にDC電圧を供給して通電確認を行いました。確認結果は以下のとおりです。

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先のチャンネルとほぼ同等の結果となっていました。これで基板の製作が全て完了しました。次回はこの基板とトランスをシャーシへ実装して音の確認を行います。

 

つづく(製作編10)