チャンネルデバイダ製作(製作編1)

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製作編1

チャンネルデバイダの設計方針がまとまったのでケースの加工図面を作成して製作を開始します。

リアパネル設計

US-260LHのパネル寸法は80x256mmです。前回の記事にも書いたとおり、入出力用に6個のXLRパネルコネクタを取り付けます。上下2段として上をLチャンネル、下をRチャンネルとし、後ろから向かって左側を入力、その隣をスルー出力、右をLow出力とします。残りのACインレットとヒューズホルダを右から並べます。今回もいつもお世話になっているフリー2次元CADのAR CADで図面を作成しました。

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本来であればヒューズホルダを除き、部品は内側から取り付けた方が見栄えがいいですが、パネル加工の仕上げに自信がないので全て外側から取り付けて切断部を隠すようにしています。取り付け方法によってパネルの加工寸法が変わるので要注意です。

フロントパネル設計

正面向かって左側に電源ランプと電源SWを取り付けますが、前の機種に位置をあわせました。問題は2つのボリュームの配置です。見栄えからボリュームをパネルの上下中央に取り付けるとすると、前回の記事で書いたとおり、フィルター基板上で一番背が高いフィルムコンデンサと位置が被らないようにする必要があります。さらに組立性を考慮すると基板端子台位置と被ることもNGです。下記はバランス変換ボリュームの配置です。

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増えたボリュームを加えればバランス変換ボリュームと実装部品は全て同じなので配置検討の参考になります。現在のボリューム位置を5mm左によせて、左側に55mmあけてボリュームを追加することにします。そのために、トロイダルトランスを可能な限り左に寄せます。これでパネルのほぼセンターに2つのボリュームが並び、なんとかデザイン的に許せる範囲で実装ができそうです。早々に図面化しました。

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各ボリュームの取り付けは、回り止めのφ3の穴がありますが、過去誤差を考慮してφ3.2であけていましたが、微妙な角度で本体が回り感触が悪かったので今回は注意して加工したいとおもいます。

リアパネルの加工

届いたケースの梱包が思いの他小さく、注文を間違えたとはらはらしながら梱包をあけました。全ての板金部品が分解されて小さく収められていただけでした。

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加工図をいつものとおり等倍で印刷します。

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外形寸法に沿って切り取り、パネルに貼り付けます。

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穴のセンターにポンチで印をつけていきます。パネルはフランジ部が折り曲げられているので、フランジ長よりも厚い当て木を入れてポンチの際にパネルが歪まないようにします。ACインレットの角穴はハンドニブラであけるので、刃を入れるための穴と、寸法線を画くために四隅にポンチを当てました。図面を剥がしてACインレットの角穴部に加工線を引きます。

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まずはふつうのドリルで無理なくあけられる7mmの穴をあけました。

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次に、ACインレット用の角穴をあけます。ハンドニブラの刃が入るまで加工用の穴を広げます。刃がはいったら、加工線に沿って切っていきます。この穴のサイズであればわけなく加工できます。穴が開いたら平ヤスリで仕上げ、ACインレットが外側から正しく取り付くことを確認して終了です。

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次にヒューズホルダ用の穴をあけます。回り止めのために幅11.8mm幅の長方形部分と上下にφ12.8mmの円弧が付いた形状です。初めにφ11.8の丸穴を開け、平ヤスリで両側の長方形部分の加工を行いました。最後に円弧部をヤスリを使って加工しました。ホルダ現品を使って様子を見ながら削ったのでいい感じに仕上がりました。

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残りは6個のXLRパネルコネクタ取り付け用の穴加工です。φ21の穴はシャーシパンチであけますが、そのためにはφ10mmの穴をあける必要があります。φ7からφ10mmの穴の拡大にはステップドリルを使いました。ステップドリルの刃は8mmの次が10mmなので2段ステップで10mmの穴をあけます。10mmの穴がありたらシャーシパンチをセットしてφ21の穴を開けていきます。まずは3個開けたところで、手が痛くなったので一旦休憩です。

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休憩後、残り3個の穴を一気に開けました。今日は最後にあげたφ21穴6個の穴加工で体力的に限界を感じたのでこの日の作業は終了です。次回は、パネルコネクタを収めるために6個の穴の追加加工から再開します。

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つづく(製作編2)

 

チャンネルデバイダ製作(設計編)

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設計編

実験4の音がいい感じだったので、チャンネルデバイダを常用するために仕上げます。

はじめに

今までの実験編で、バラック状態でチャンネルデバイダーを使用してきましたが、常用するためにケースに収めてまとめあげます。チャンネルデバイダー基板は完成していて、キーパーツのXLRパネルコネクタ、4連ボリュームはバラックで使用した物を流用します。バラック状態で使用した電源は、バランス変換ボリューム改造前に搭載されていた物を流用しましたが、トランスを含めて左右完全独立とは言え、トランスの電流容量が60mAとプアな物なので再製作します。従って、本シリーズではチャンネルデバイダを組み上げる為に下記の製作を行います。

・ケースの選定、設計と加工
・電源の設計および基板の製作
・電源トランスの選定
・組立

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ケースの選定

オーディオ全盛期と違い、オーディオ用に適したケースの選択肢が少ないとおもいます。というよりも、学生時代のように血眼になって探さないからかもしれません。ということで、今までバランスボリューム等で使用してきたケースが使用できないか、まずは確認を行いました。タカチ電機工業のUS-260LHです。

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初めにリアパネルにXLRパネルコネクタが必要数分収まる事の確認です。入出力は全てバランスで、入力2チャンネル、出力は4チャンネルなので合計6個のXLRパネルコネクタの実装が必要です。L/Rチャンネルで上下に配置できれば横に3個並べれば納めることができます。XLRパネルコネクタの高さ方向のサイズは31mmでケースのパネル高さが80mmです。

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縦2段に並べると、コネクタを除く残り寸法は18mmです。上下クリアランスを7mm、間を4mmとすればなんとか配置できそうです。他、ヒューズホルダとACインレットの実装は問題ありません。続いて、今回2個実装する4連ボリュームと基板の干渉の確認を行います。従来は、ボリュームが1個だったので、基板とボリュームが被らない位置に配置できましたが、今回はボリュームが2個なので被らない配置にはかなりの制約があります。写真はバランスボリュームの配置。

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ボリュームの正面からの投影サイズはおよそ30mm角です。ボリュームをパネルの上下の中心に取り付けると、シャーシ高さが80mmなのでボリューム下のクリアランスは約25mmとなります。基板上の部品実装高さが約20mmなので基板固定用のスタッドに5mmの物を使用すると基板実装部品とボリューム間のクリアランスは約0mmとなってしまいます。仕方がないので、基板とボリュームが被らない位置配置を検討します。

電源の設計

今回採用の回路は、ボルテージフォロワとベッセルフィルター回路でHotチャンネルトColdチャンネルが完全逆相動作します。実動作時にオペアンプ回路内バイアス電流がカットオフしない状態で動作している時は、電源の消費電流は信号に依存せず一定値となります。この前提で、実動作時の能動動作(フィードバック)をしない方式、すなわちバランス変換ボリューム2で採用したものをトロイダルトランスを含めて流用したいとおもいます。回路は以下のとおりです。

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部品の収集

タカチのケースは、アマゾンに注文しましたが4日で届きました。トロイダルトランスとボリューム用のつまみは共立エレショップへ発注しました。つまみは、パネルに2つつくことからサイズをφ45(1,902円)からφ30(977円)の物に変更しました。これにより価格も約半額に押さえられました。

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これ以外の主に電源基板に使用する部品は全て秋月電子へ注文しました。次回はケースの加工図面を作成して製作を進めます。

 


つづく(製作編1

 

マルチアンプ実験4(まとめ編)

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まとめ編

A級BTL DCパワーアンプの修理が終わったので、マルチアンプ対応改造した1000Mのウーファーをこのアンプで鳴らしてみます。

マルチアンプ実験4

マルチアンプ実験3では、マルチアンプ対応改造したNS-1000Mのウーファーの駆動をエルサウンドのEPM-30INVで行いました。このアンプもBTL方式モノラルパワーアンプで私の考え方に合った仕様でしたが、自分で設計製作したアンプで早く鳴らしてみたいと考えていました。参考にEPM-30INVの仕様を自作アンプと対比してまとめてみました。

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電源トランスの仕様と電力容量は自作アンプが劣りますが、他は勝っています。気になる点は、EPM-30INVはDCサーボをかけて出力オフセットを下げているようです。聴感上どんな違いがでるのか気になります。それでは、修理を終えたA級BTL DCパワーアンプで、1000Mのウーファーの駆動をしてみたいとおもいます。切り替え後(実験4)のシステムブロック図を掲載します。

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全体的な音の印象

音の印象は、非常に素直です。ベースが張り出してくるような印象もありませんが、超低域までちゃんと再生されています。また、ボーカル等の中音域が癖がなく素直です。一方、EPM-30INVはマルチアンプ構成ではなくふつうに鳴らした時の音は硬目の音で、マルチアンプ駆動したときもその印象を引きずっていましたが、この比較試聴で改めて感じました。それでは具体的な楽曲の印象を紹介します。

■はげ山の一夜/BJ1

これはBob Jamesの初期のアルバムで、クロスオーバーとかフュージョンに分類されます。初期のBob Jamesは全般的に荒削りで勢いを感じる点が気に入っています。今回のシステムの再生音は全体的にマイルドな印象です。中域は素直で、低域も素直に伸びている印象です。音量を上げていってもうるささを全く感じません。

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■フィール・ライク・メイキン・ラブ/BJ1

ベースがフィーチャーされた落ち着いた楽曲で、無理なく重低音が出ています。ベースとかぶる部分の主旋律の演奏が美しく聴こえます。

■断頭台への更新/幻想交響曲小林研一郎

コバケンらしいのびのびとした演奏です。中音域の弦楽器の響きが美しく、ホールの奥行き感をより感じます。このシステムは交響曲との相性がよさそうです。

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■SPREAD YOUR WINGS/QUEEN

黄金期のQUEENのアルバムです。久しぶりに聴きましたがいい感じです。フレディーのボーカルが。生き生きと再現されます。

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■氷の世界/井筒香奈恵

井上陽水のカバー曲ですが、編曲が全く異なります。ピアノ、アコーディオンウッドベース、ボーカルのみのシンプルな楽曲です。ボーカルはいままで聴いてきた組み合わせの中で一番素直な印象です。ピアノの音がきれいでウッドベース弾む感じもいいです。

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■THE MAGIC FLUTE/ROCK vs OPERA

歌はオペラ、編曲と演奏がロックのクロスオーバー楽曲です。重低音が無理なく再生され、透明感のあるオペラボーカルが際だちます。

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■BLACK MARKET/WEATHER REPORT

ほのぼのとした演奏の感じがいいです。ライト・クラッシュ・ハイハットシンバルきれいに再生できてます。

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まとめのまとめ

エルサウンドのパワーアンプと比較して、素直な音に変わりましたが、自作アンプで採用した理想を求めた差動アンプ動作と純A級動作で高調波歪みが押さえられている事に起因しているのかもしれません。全般的に良い結果だったので、いよいよチャンネルデバイダを常用できる状態に仕上げたいとおもいます。次回からはタイトルをチャンネルデバイダーの製作として本記事のシリーズを完結させていきます。

 

おわり(実験4)

 

マルチアンプ実験4(修理編3)

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修理編3

故障個所の修理ができたので、他に故障がないことを確認して再組立します。

ドライバ段の確認

ヒューズが飛ぶ原因は、終段電源のブリッジダイオードでしたが、このブリッジダイオードの故障した原因が、他回路内にあると、再組立後に同じように故障します。組立前に全アンプの動作を確認しておきます。初めにドライバ段までの動作確認を行います。確認時のドライバ段への電源の供給は、ユニバーサル電源を使用しますが、このような時に電流制限機能があると安心して確認ができます。供給電圧は定格の+/-8.6Vとし、電流制限値はアイドリング電流を考慮して50mAに設定しました。まずはHotチャンネル側から確認を行います。+/-電源とGNDを接続します。

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アンプの電源をコンセントに挿して電圧増幅段の電源を入れます。つづいてユニバーサル電源をオンします。この状態で各部の電圧を測定します。出力オフセットはオペアンプを使ったチャンネルデバイダよりも優秀でした。各部電圧に問題なかったので次にColdチャンネルのドライバ段の確認を行います。ユニバーサル電源をつなぎ替えて電源を入れます。こちらも大きな問題はありませんでした。

■電圧測定点

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■電圧測定結果

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終段の確認

終段の確認が、今回修理の山場と考えています。実は故障の原因が終段のトランジスタとの推定から、選別用にコンプリメンタリペア分として20セット購入していました。この確認結果によっては使用せずにすみます。

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この確認もドライバ段と終段の電源供給はユニバーサル電源で行います。終段のアイドリング電流は0.76Aとしているので、ドライバ段と合わせて電流制限値を1Aに設定しました。ユニバーサル電源からの配線は、+/-電源ともに3本とGNDの1本です。初めに電圧増幅段の電源を入れます。続けてユニバーサル電源の出力をオンします。ユニバーサル電源の出力電流値が0.755Aとなっており、正常動作してそうです。

■+電源電流値

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■ー電源電流値

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念のためアイドリング電流確認用に各トランジスタのエミッタ電圧を測定しました。温度上昇とともに電圧値が上がり、温度補償トランジスタに熱が伝わると上昇が止まります。今回の測定は温度上昇を十分待たなかったため、値が小さめでばらつきも大きくなっています。同様に残るcoldチャンネルの確認も行います。下表は終段の各トランジスタのエミッタ電圧の測定結果です。

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これでアンプ回路には問題ない事が確認できました。以上の結果から、今回の故障の発生メカニズムは、負荷ショート時の過電流で、余裕のあまりない終段電源のブリッジダイオードがショート故障したと推定できます。

電源基板の実装

全ての回路の正常動作が確認できたので、終段の電源基板を元通り実装します。実装のためには、中継用のLラグを外し、先に+/ー電源線をLラグに接続し、電源基板とともに実装します。取り外し時よりもさらに手がかかります。なんとか配線も元通り接続が完了しました。この状態で念のため1度電源を入れました。出力オフセット電圧と終段のアイドリング電流を測定し、問題ないことを確認しました。

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最後に音質調整用に追加した10uFのフィルムコンデンサを電源中継用のLラグに取り付けて完成です。

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動作確認

実際にCDの信号を入力して音を確認します。FE103のフルレンジスピーカーに接続してモノラル状態で音出しをしました。元のとおり力強いなりっぷりです。

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4月25日の実験編記事で故障を公表して約1ヶ月強、ようやっと修理が完了しました。これでマルチアンプ対応改造済みの1000Mのウーファーをこのアンプで駆動することができます。次回は、1000Mのウーファーの駆動を修理が終わったこのアンプに切り替えて音の違いを聴いてみたいとおもいます。

 

つづく(まとめ編)

 

マルチアンプ実験4(修理編2)

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修理編2

A級BTL_DCパワーアンプのヒューズが飛ぶ原因の絞り込みを続け、原因の特定を行い修理をします。

終段用トランスの確認

前回ヒューズが飛ぶ直接の原因として、終段用電源基板またはトランスまで原因の絞り込みを行いました。次はトランスの確認を行うために終段用の電源基板を取り外してトランス単体で電源を入れてみます。狭い空間に基板を詰め込んだため、メンテナンス時の作業性が悪いです。基板への配線も全てハンダ付けされていることも、作業性の悪さに拍車をかけています。それでもなんとか基板を取り外しました。

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この状態でヒューズが飛べばトランスの巻き線の絶縁不良ということになります。ヒューズを交換して確認を行います。コンセントを入れるとLEDが赤く点灯します。SWを入れます。緑のLEDの点灯回路は終段の電源基板上にあり、それを取り外しているためLEDは消えますが、終段用のトランスから軽い唸り音が聞こえています。念のためトランスの2次巻き線の電圧を確認します。出力が確認できてヒューズは飛んでいないため原因は終段用の電源回路と特定できました。

終段用電源

終段用電源は、物量を投入しましたが単純な回路です。

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初めに外観の確認をします。写真のとおりほぼ電解コンデンサ用の基板ですが、外観上は特にショートにつながるような異常は見あたりませんでした。

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故障個所の特定

大容量の電解コンデンサがついているので、テスタで抵抗値を計ってもショートの判断が難しいです。しばし考え、ユニバーサル電源の電流リミッタ機能を利用して電源を入れてみることにしました。手始めに電流制限値を0.5Aとして+/-3Vの電圧を入力してみました。最初にA点に+3V, B点に-3Vを入力してみます。

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電解のチャージアップが完了すると殆ど電流は流れませんでした。念のため定格の電圧(+/-8V)まで電圧を加えてみましたが問題ありませんでした。次に入力を反転させ、A点に-3V, B点に+3Vを入力します。ようやっと現象が再現しました。0.5Aの電流制限が働き、入力電圧は1.23Vまで下がっています。

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この結果から、現象発生時にブリッジダイオード内の4個のダイオードのうち、逆バイアスがかかっている1個ないし2個がショート破壊していると考えられます。早々にブリッジダイオードを交換します。(本記事のアイキャッチ写真参照)

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このブリッジダイオード(D4SBS6)は、ショットキーバリアダイオードブリッジで、フィン無しで2.3Aまで耐えられます。尖頭サージ順電流定格は60Aで、合計100,000uFの電解コンデンサの突入電流に耐えられない可能性を考慮して、製作時に予備と、さらに1サイズ上のものも購入してありました。今回は予備を使って修理を行いました。

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修理後の動作確認をユニバーサル電源を使って行います。方法は先の故障確認時と同様です。念のため+/-13Vまで電圧印加して問題ないことを確認しました。

■確認1

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■確認2

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今回修理はここまでで時間切れです。続きは次回に紹介します。

おまけ

ビバホームでガラス管ヒューズを探していた時に、端末保護キャップというものを見つけたので購入してみました。

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材質は軟質塩化ビニール製で、透明なものと黒の物があります。内径が2.0mmから0.5mm刻みでラインナップされていたので、黒を3種類買ってみました。価格は10個セットでそれぞれ189円です。スタッドを脚代わりにしてネットワークをスピーカーの上に載せていますが、キズ防止のために段ボールを敷いていました。このスタッドのネジ部のカバーとして使用し、キズ防止とできないか確認します。最初に内径3.0mmのものを被せましたが、緩くてはずれてしまいました。次に2.5mmを被せたところいい感じだったので、長さをスタッドのねじ部分に合わせて切断し被せてみました。いい感じに収まりました。これで見栄えに問題あった、スピーカー上の段ボールを取り去ることができます。

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つづく(修理編3)

 

マルチアンプ実験4(修理編1)

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修理編1

実験1で壊してしまったA級BTL DCパワーアンプで1000Mウーファーを鳴らすために修理をします。

実験4

前回実験3でNS-1000Mマルチアンプ駆動して良い結果が得られましたが、ウーファーの駆動にエルサウンドのBTLパワーアンプを使用しました。さらに強力なA級BTL DCパワーアンプで鳴らしてみたいと考え、重い腰を上げて修理をすることにしました。

A級BTL DCパワーアンプ

昨年(2016年)の4月頃に、学生時代から暖めてきた構想を元に設計製作したモノラルパワーアンプです。入力はdual J-FET+カスコード接続の差動方式で、出力はバイポーラトランジスタによるパラレルコンプリメンタリー方式によって低出力インピーダンスを狙いました。出力段電源のトランスはセンタータップ付きのAC12V/5A巻き線を持ち、平滑用コンデンサは10,000uF x10個を搭載し、出力8W/8Ωクラスのモノラルパワーアンプとしては破格の容量となっています。

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症状

実験1でフルレンジユニットを2個使ったネットワーク方式の2wayスピーカーを組み立ててマルチアンプシステムの比較元の音出しを行いましたが、その際に配線がショートしている事に気づかずにこのアンプを接続して出力を上げてしまって壊してしまいました。具体的な症状は電源の大元に入れている2Aのヒューズが飛びます。終段のトランジスタがショート状態で壊れている事が原因と推測しています。終段の電源トランスの2次巻き線は12Vなので、1次側の2Aのヒューズが飛ぶということは、2次側に17A以上の電流が流れていることになります。

故障個所の特定

作業に入る前に終段およびドライバ段のトランジスタを観察します。Hot/Coldチャンネルともに、外観上異常はありませんでした。

■終段のトランジスタ

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■ドライバ段のトランジスタ

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次に終段のパラレルコンプリメンタリトランジスタを切り離して、ドライバ段までの動作を確認します。

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ドライバは基板上に実装され、フィードバックも基板内でかけているので終段を外しても基板単体で動作します。Hot/Coldチャンネルを同時に確認します。終段の切り離しは、各チャンネル共に+/-電源とNPN/PNPのそれぞれベースの入力および出力の5ライン、合計10ラインを外します。早々に終段を切り離した状態で電源オンしてみます。このアンプはコンセントを挿すと初めに電圧増幅段の電源が入り、LEDが赤く点灯します。緊張しながら終段の通電の為にSWをオンしました。ブンというトランスの唸りとともに一瞬にしてLEDが消灯しました。予想に反して、ヒューズが飛ぶ原因は終段ではありませんでした。

ドライバ段の確認

次はドライバ段の確認をします。ドライバ段を切り離して同様に確認をします。

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この状態の終段用の電源の負荷は電源LEDのみです。先ほど同様に確認を行います。コンセントを挿すとLEDが赤く点灯します。今度は大丈夫と思いながらSWをオンしました。またしても悪夢の繰り返し、ブンというトランスの唸りとともにLEDが消灯しました。こうなると、原因は終段用の電源回路もしくはトランス自体ということになります。予備用のヒューズが底をつきそうです。

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次回、さらに原因の絞り込みを行い修理を続けます。

 

つづく(修理編2)

 

マルチアンプ実験3(まとめ編)

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まとめ編

1000Mのセミマルチアンプ駆動暫定環境の構築が完了したので音出しを行い、その音の印象を紹介します。

実験3環境

音出しの前に、改めて構築したシステムの特徴を箇条書きにまとめます。

・NS-1000Mを使用したセミマルチアンプ駆動システム
 ウーファーはチャンネルデバイダー+アンプダイレクト駆動
 ツイーターとスコーカーはネットワークによる帯域分割駆動
・フルバランスシステム(USB-DAC~スピーカーユニット)
ウーファーの駆動はBTL DCパワーアンプ
・ツイーターとスコーカーの駆動はEL34ppパワーアンプ(バランス入出力)
・ベッセル特性アクティブフィルター採用のチャンネルデバダー(バランス入出力)
 Low出力:fc=500Hz, -12dB/Oct
 バッファとアクティブフィルターにMUSES01オペアンプ使用

簡単にブロック図を描いてみました。

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実験3システムの狙い

今回音を聴くにあたり、そのポイントを改めて整理します。

・NS-1000Mの重く鳴らしにくいと言われているウーファーユニットを低インピーダンスで駆動することどのように鳴るのか?
・EL34ppアンプの中域の美しい響きと、BTL DCパワーアンプの低域の駆動力の両立
・ツイーター、スコーカー信号伝送経路からウーファーによる逆起電力の影響の排除

このようなポイントを意識して音を聴いてみたいとおもいます。

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音の印象

最初に音を聴いた時の全般的な印象を紹介します。中高域はEL34ppアンプの美しい響きと、低域はBTL DCパワーアンプの駆動力に基づく力強い音がします。中域はEL34ppパワーアンプによる通常駆動時より響きが美しく聴こえますが、ウーファーの逆起電力の影響を受けずにスコーカーとツイーターを駆動している為でしょうか?低音の音の表情は、オリジナル状態とだいぶ変わりました。楽曲によっては低音の量感は後退したように聴こえますが、レベルおよび帯域は十分あります。ウーファーユニットの低インピーダンス駆動により制動が効き余計な共振が押さえられた為と考えられます。アコースティックギターやドラムの胴の部分の響きが聴きとれます。海外のカラっとしたスタジオで録音された楽器の音とでもいいましょうか?NS-1000Mの音の最終調整はネットワーク込みで行われているはずなので、設計者とは違った音を聴いていると思いますが、私はこの音の方が好みです。もしかするとネットワーク設計時にNS-1000Mもマルチアンプ駆動されていたのではとも考えてしまいました。それでは具体的な楽曲の音の印象を紹介していきます。

 ■アズ・ライト・アズ・レイン/BJ2

音の響きが美しく特に中音域の奥行き感をより感じます。ストリングスがきれいに鳴ります。ベースの基音が明瞭に聴きとれます。

■卒業写真/井筒香奈江

ウッドベースのアタック音がリアルで音も明瞭。ボーカルは素直な印象です。

ゴンチチ

アコスティックギターがよく響きます。ギターの胴の響きが感じられ、他弦楽器が響き、奥行き感もより感じられます。

■Highway star/MACHINE HEAD

ベースとドラムが軽快に鳴り、リズムがより安定して聴こえます。

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木星/惑星

ホールの響きがより感じられ、演奏の奥行き感が増して聴こえます。

■冬音/海風

ベースの音がクリアで量感と芯のある音がします。

という事で、いくらでも聴き込んでしまいます。キリがないので一旦まとめます。

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まとめのまとめ

今回聴いた音はよりモニター調の印象で、私の好みの方向に変わりました。今回も実験3という事でまだ試験運用状態でしたが、このシステムを普段使いできる物へとブラッシュアップしていきたいとおもいます。4連ボリューム2個の音量調節は意外と操作性は悪くなかったので、この仕様ままケースに納めて次のステップに進めたいと考えています。

次回は、常時運用できるようにセットアップを進めたいとおもいますが、具体的に何をするのか現時点では未定です。

 

つづく(??編)