A級バランスHPアンプ製作(製作編1)

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製作編1

前回の記事で設計、および部品選定できなかった部分の検討を行い、平行して基板の製作準備を開始します。

ケースの選定

従来の製作では、タカチ電機のUS-260LHを使用してきました。今回は実装基板が1枚増えるため、このケースでは収まりそうにありません。タカチのカタログを確認したところこのシリーズにはまだ1サイズ上のものがありました。US-320LHです。シリーズ最大サイズのものとなりますが、型式が示すとおり幅が320mmとなり、今まで使ってきたものより60mm大きくなります。全体のサイズはW320xH84xD230と使用する基板を長手方向に3枚横並びが可能です。詳細の配置検討は後回しとしますが、このケースを仮決めとします。

ヘッドフォンジャック

前回の記事の部品表には、設計構想で掲げた2.5mm 4極ステレオジャックが見つからず、3.5mm 4極ステレオジャックを掲載しましたが、マルツオンラインにラインナップされていたため設計構想どおり2.5mm品を採用します。これで通常のヘッドフォンの誤挿入によるショートを防ぐことができます。

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念のためショートした際のアンプの保護用として2Ωを出力に入れていますがショートさせないに越したことはありません。

トランジスタの選別

製作編恒例のトランジスタの選別からスタートします。

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初めにオーディオ用の東芝製のバイポーラトランジスタ2SC1815GR/2SA1015GRです。(本記事アイキャッチ写真参照)すでに生産終了しているため購入できない事も覚悟していましたが、各20個入手しました。hfe測定は過去に実施した条件で行い、手持ちの残りも含めて選別対象としました。

■NPNのhfe測定回路

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■2SC1815GR hfe測定結果

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水色の網掛け部分が、使用済みで欠品していた部分で、今回購入した物の測定結果を記載しています。前回はGR品でありながらほぼ全てのトランジスタのhfeが200を割っていましたが、今回購入ロットは半数が200を越えていました。続いて2SA1015GRのhfe測定を行います。同様に残りの在庫も含めて選別対象としました。

■2SA1015GR hfe測定結果

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2SA1015GRは在庫のhfeは200を10%以上、上回っていましたが、今回購入したロットは200のすぐ上のレベルで、コンプリメンタリ品の確保には都合のいいロットと言えます。コンプリメンタリペアの選別は後日改めて行います。

セカンドソース品

東芝の2SC1815/2SA1015が在庫のみの販売になっていることから、UNISONIC TECHNOLOGIES(UTC)のものがセカンドソースとして秋月電子の通販サイトにラインナップされています。

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価格はオリジナルと同じに設定されています。通販サイト上にもFAQが掲載されていますが、要約すると以下のとおりです。

・ユニソニックは台湾の半導体製造メーカーでディスコン品を多く生産している

・このトランジスタの仕様書上にはオリジナル品との互換性に関する記載はない

・互換品として使用する時は使用者が仕様書を確認いただき判断してください

・大量に使用する際には、試作・実証実験によって動作を事前に確認してください。

ということで、仕様書を比較してみます。最初に電気的特性を比較します。上の表がオリジナルで、下がセカンドソース品です。

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掲載された数値はCob maxを除き同等です。次にftのグラフを比較します。左がオリジナルで、右がセカンドソースです。

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Ic=10mAくらいまでは同レベルとなっていますが、オリジナルはIc=50mAでft=500MHzとピーク値となりますが、セカンドソース品はIc=10mAでピーク値ft=400となります。続いてfheのIc依存特性の比較です。同様に左がオリジナルで右がセカンドソース品です。

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オリジナル品はIc=100mAまで特性をキープしますが、セカンドソース品はIc=30mAくらいからhfeの値が低下します。総じてIcが大きなレンジはオリジナル品の方が良好な特性となっていました。音質は特性に直結していませんので、最終的には音を聴いてみる必要があるとおもいますが、トランジスタの音質比較はどうやるべきなのでしょうか?今後の課題としておきたいとおもいます。次回は引き続き、使用トランジスタのパラメータ測定を続けます。

 

つづく(製作編2)

A級バランスHPアンプ製作(設計編2)

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設計編2

前回、プリアンプとパワーアンプの設計が終わったので、残りの設計と製作に備えて部品の発注を行います。

電源の設計

必要な電源は、プリアンプが+/-12V、ヘッドフォンアンプの電圧増幅段も+/-12V、ヘッドフォンアンプの電力増幅段が+/-9Vです。必要な電圧としては4種類ですが、これを左右独立とすると倍の8系統の出力が必要になります。4系統と8系統では実装量が大きく異なりますが、今回の目的のバランス駆動ヘッドフォンの大きな特長は、左右のユニットの片側のラインが共通とならない為、良好なセパレーションが得られる事なので、ここは少し無理をしても左右独立電源としたいと思います。8系統の電源回路は実装を考慮して三端子レギュレータを使用します。

電源の放熱設計

電源トランスの二次電圧出力をAC12Vと設定して、各レギュレータICの損失を見積もります。初めに+/-12V電源の片チャンネル分の出力電流を見積もります。プリアンプはオペアンプ2個構成で、1個当たり10mAとするとトータルで20mAとなります。ヘッドフォンアンプの初段が約2mA、二段目が約8mAなのでヘッドフォンアンプ側がBTL構成で2倍となりトータル20mAとなります。両者を合計すると+/-12V電源の出力は約40mAとなります。AC12Vの整流後の電圧は約16.3Vとなるので、+/-12Vのレギュレータの損失P12は、

P12 = (16.3 - 12) x 0.04 = 0.17 W

となります。このレベルであればレギュレータの放熱は必要ありません。次に+/-9V電源の出力電流を見積もり、同様にレギュレータの損失を計算します。終段のアイドリング電流が70mAでドライバ段のアイドリング電流が約7mAなので、BTL構成で2倍となりトータルで154mAの電流となります。12V系と同様に+/-9Vレギュレータの損失P09を計算します。

P09 = (16.3 -9) x 0.154 = 1.12 W

このレベルになると放熱処理が必要です。合計で4カ所必要となりますが検討をすることにします。負荷時の整流電圧は16.3Vより下がりますが、設計上のマージンとして無負荷時理想電圧を計算に使用しました。

放熱器の選定

基板に実装するレギュレータ用の放熱器を探します。秋月電子の通販サイトを検索したところ手頃なものが2つ見つかりました。

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高さはどちらも25mmで一緒ですが、幅と奥行きが異なります。右側が16Wx25Hx16Dで熱抵抗が20℃/W、左側が15Wx25Hx11Dで熱抵抗は37.9℃/Wです。サイズの小さな方から温度平衡値を計算してみます。環境温度を30℃とすると温度平衡値t1は、

t1 = 1.12 x 37.9 + 30 = 72 ℃

となりかなり温度が上がってしまいます。つづいてサイズの大きな方で温度平衡値t2を計算してみます。

t2 = 1.12 x 20 + 30 = 52.4 ℃

温度は高いですが、問題ない範囲と判断します。基板への実装方法は、実際に現品を入手してから考えることにします。

トランスの選定

いつも使っているトロイダルトランスは、12V/0.5A x2の二次出力をもっています。今回は、12V系の消費電流が40mA x2で9V系が154mA x2となり、単純に合計すると388mAとなります。さすがに500mA品では余裕がないと考えて、共立エレショップのサイトを検索してみました。同一系列のトロイダルトランスで1サイズ上で二次出力12V/1A x2が見つかりました。(アイキャッチ写真参照)今回はこれを採用することにします。ここまでの設計を反映した電源の回路図を掲載します。

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部品の発注

まだ細かな設計は残っていますが、基板の製作が始められるように部品の発注をかけます。そのための部品表を作成しました。プリアンプ部、HPアンプ部、電源部と3枚構成です。基板の製作と平行してケースおよび残った他部品の選定を進めたいと考えています。

■プリアンプ部部品表

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■HPアンプ部部品表(片ch分)

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■電源部部品表

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つづく(製作編1)

A級バランスHPアンプ製作(設計編1)

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設計編1

バランス対応ヘッドフォンを入手したのでそれ用のヘッドフォンアンプを構想して、設計を行います。

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設計構想

今回の1番の目的は、ヘッドフォンのバランス駆動時の音を聴いてみることですが、せっかくつくるので欲が出てしまいます。今は比較的環境に恵まれていて、スピーカーからそれなりの音量で音楽を鳴らすことができますが、この環境もいつ変化が訪れるかわかりません。それに備えてヘッドフォンでの鑑賞環境を整えておくことも目的としたいとおもいます。最近の設計ではいろんな制約で設計的な妥協を行っていますが、2番目の目的を加えたこともあり、ここで一旦自作の原点に戻ってできる限り設計的な妥協は排除して進めたいとおもいます。それでは恒例の設計構想を箇条書きにまとめたいとおもいます。

・A級BTL駆動方式

・DCアンプ

・入力はアンバランス、バランス選択式

・出力はバランス2.5mm 4極ジャック

トロイダルトランス+レギュレータIC電源 ・放熱設計

それでは構想に従って具体的な設計を進めます。

プリアンプ

入力は利用範囲を増やすためにアンバランスとバランスの両方を設けます。アンバランスはRCAピンジャックを、バランスは3極のXLRコネクタとします。切り替えは4回路のロータリSWを使う予定です。アンバランス入力はオペアンプを使ってバランス変換します。バランス入力は各信号をボルテージフォロワで受けます。回路図はいつものとおり水魚堂様のBSch3V回路エディタを使って作成します。(本記事アイキャッチ写真参照)書き上げた回路は以下のとおりです。オペアンプは以前購入して交換により余っているMUSES8920を使用します。

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ヘッドホンアンプ設計

回路は定番のdual JFET入力差動二段構成とします。ヘッドホンとはいえ、A級動作させるため終段にはそれなりのアイドリング電流を流す必要があるため、パワーアンプ同様にドライバ段+終段の構成とします。初めに終段のアイドリング電流を決めます。今までヘッドフォンを鳴らすことに真剣に取り組んだ事がなかったので、出力がどの程度出せれば十分かわかりません。とりあえずの値として500mWを設定しました。購入したヘッドフォンのインピーダンスが45Ωなので、最大出力時の電流の実行値Imrmsは、

Imrms = SQR (0.5 / 45) = 0.1 A

その時のピーク電流Ipeakは、

Ipeak = 0.1 x 1.41 = 0.141 A

このピーク電流をA級動作で流すためのアイドリング電流Iidelは、

Iidel = Ipeak / 2 = 0.07 A

仮に終段の電源電圧を+/-12Vとしたときの終段トランジスタの損失Pidleは、

Pidel = 12 x 0.07 = 0.84 W

電源電圧を9Vまで下げられれば、ヒートシンク無しで進められそうですが、+/-12Vの場合、簡単な放熱器の実装が必要と考えます。終段に必要な電源電圧を見積もります。Ipeakが流れる時のピーク電圧Vpeakは、

Vpeak = Ipeak x 45 = 6.3 V

ヘッドフォンはBTL駆動されるので、終段の最大出力電圧Vfpeakは、

Vfpeak = Vpeak / 2 = 3.2 V

この結果から終段の電源電圧は+/-9Vとします。この時の終段トランジスタの損失Pidelは、

Pidel = 9 x 0.07 = 0.63 W

となり、ぎりぎりヒートシンクなしでいけるレベルになりました。ドライバ段のアイドリング電流は、終段のアイドリング電流値の1/10として約7mAとします。バイアス回路は、今までラインアンプで使ってきた定数の場合、コレクタ電流が小さくなりすぎる為、定数を見直します。初段および2段目の設計は従来の設計を踏襲します。これら設計を反映して回路図を起こします。

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回路図にはすでに記入済みですが、終段はA級BTL DCパワーアンプの修理の際に購入し、結局使わずに済んだ2SC3851A/2SA1488Aを使用します。ドライバを含めた他のバイポーラトランジスタは2SC1815GR/2SA1015GRを使用します。入力のJ-FETは定番の2SK2145GRを使用します。終段はサンケン電気製ですが、それ以外は東芝製です。オーディオ用として使いやすい2SC1815GR/2SA1015GRはすでに製造が終わっていて在庫販売のみのようです。ビルダー部品の調達は生命線なので今後一層厳しい状況になっていくものと思われます。次回は残る電源設計と製作にむけた部品の調達を行います。

 

つづく(設計編2)

A級バランスHPアンプ製作(構想編2)

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構想編2

バランス対応ヘッドフォンを購入しましたので現品のレビューを行います。

ヘッドフォンの購入

前回の記事でバランス対応のヘッドフォンについて調べてみました。バランス対応ヘッドフォンの統一された端子の規格はありませんが、総じてケーブルの交換ができるようになっていて、バランス、アンバランスをケーブルの交換で対応するようになっていることが解りました。今回購入したものは、価格がお手頃でバランス用のケーブルが付属しているパイオニアのSE-MHR5です。アマゾンで14,592円でした。

着荷の確認

アマゾンからはとてもヘッドフォンとは思えない大きな梱包で届きました。内情を知る友人に聞いたところ、適合した梱包のラインが混んでいると、自動的に大きな梱包箱のラインに回るとのことでした。ボーナス支給後の間もないタイミングでしたので説明どおり梱包ラインが混んでいたものと思われます。

SE-MHR5レビュー

ヘッドフォン自体の梱包はシックでありながら高級感もあり好感がもてます。

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外箱は上から被せるタイプなので、上に引き抜きます。中箱は白箱に金文字でメーカーロゴのみ印刷されています。さらに開けると、クッション材の中に携帯用バッグが納められています。携帯用バッグのファスナーを開けると、中にはヘッドフォン本体と2本のケーブルが納められていました。

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折り畳まれたヘッドフォンを取り出しイヤーパッド部分を広げてみます。

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まず目に付いたのは、イヤーカップ部ダクトです。

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メーカーのサイトによるとバックチャンバーを2重構造として遮音性を高め、なお且つ低域特性のコントロールをしているとのことです。果たしてどこまで効果があるのでしょうか?

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次に目についのが、片出しのジャックです。

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付属のケーブルをみると、4極の3.5mm端子となっており、抜け防止の鍵のような特殊な形状となっていて、位置を合わせて差し込み捻ってロックします。

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簡単な構造ですが、接続部の信頼性が高められています。話がケーブルに及んだので、付属のケーブルを確認してみます。アンバランス用とバランス用の2本が付属されてます。

■アンバランス用ケーブル

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■バランス用ケーブル

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本体側は上で紹介したとおり、4極の3.5mm端子が採用され薄ピンクの金属ボディーとなっています。他方アンプ側は、使い勝手を考慮してアンバランス・バランスケーブル共にL字の端子が採用されています。アンバランスケーブルのアンプ側は普通の3.5mmステレオ端子となっています。一方バランス用は4極2.5mm端子が採用されています。バランス方式のヘッドホンアンプの保護の観点では、通常のヘッドフォン用ステレオ端子が刺さらないように4極2.5mm端子の採用は意味があると言えます。すでに別のメーカーからもこのタイプのバランス対応のヘッドフォンケーブルが発売されており、デファクトの流れに乗るかもしれません。イヤーパッドは人工皮革のやわらかい物が採用されていますが、耳を押さえるタイプの為、ネット上には長時間の鑑賞には向かないとの書き込みがありました。

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細かな点ですが、L/Rのマーキングはオーバーヘッドバンドの根元に刻印されていて目立ちませんが、親切なデザインとなっています。

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前回の記事には書きませんでしたが、このヘッドフォンも強磁力希土類マグネットが採用されています。

携帯用バッグ

私は外で使用する予定はありませんが、付属のバッグは保管の際に埃の防止とポケットにケーブルをいっしょに保管することで必要な時に探し回る心配が減らせる利点があります。

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今回は音のレビューはしませんでしたが、作りは価格の割に良いと感じました。次回はこのヘッドフォン用のヘッドフォンアンプの構想および設計を行います。

 

つづく(設計編)

A級バランスHPアンプ製作(構想編1)

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構想編1

バランス駆動に対応したヘッドフォンを選定して、それ用のヘッドフォンアンプの製作構想を始めます。

ヘッドフォン

今まで真剣にヘッドフォンについて考えた事はありませんでした。とはいえ、通勤中のタブレット用にパイオニアのインナーイヤータイプを、デスクトップTV用にゼンハイザーのインナーイヤータイプを使っています。今回は、少し前から情報は目に入っていましたが調べることすらしていなかったバランス駆動に対応したヘッドフォンについて調べてみたいとおもいます。所有のシステムのほぼ全てがバランス対応している自称バランス派としては、ヘッドホンのバランス駆動を1度は体験してみたいとおもいます。

バランス対応ヘッドフォン

まずはどんなものがあるか調べてみました。

■AH-D7200/DENON

発売は2017年1月で同社ヘッドフォン発表50周年を記念したモデルで、木製ハウジングを採用した同社のフラグシップモデルです。

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・ダイナミック密閉型

ネオジウムマグネット

・25Ω

・105dB/mW

・1800mW

・バランスケーブル別途

・89,792円(Amazon参考価格)

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ケーブルは上の写真のとおり、ヘッドホン側に左右独立の3.5mmミニプラグが採用されていて、バランス接続時は比較的簡単に接続ケーブルが製作できるようになっています。

■TH610/FOSTEX

発売は2016年6月でこれも木製ハウジングが採用されています。同社ではプレミアムリファレンスヘッドフォンに位置づけられています。

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・ダイナミック密閉型

・25Ω

・5~45000Hz

・98dB/mW

・1800mW

・バランスケーブル別売(4極XLRコネクタ)

・61,845円(Amazon参考価格)

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ヘッドフォン側は左右それぞれに2極の専用コネクタがついています。着脱式の祖ゼンハイザーの物とほぼ同じ仕様との事ですが、ロック機構の有無の違いでゼンハイザーのケーブルを挿した場合ぐらついて外れやすいとの情報がネットにありました。

■HD650/SENNHEISER

ドイツのオーディオメーカーで、昔からヘッドフォンやマイクロフォンを販売していました。このヘッドフォンの発売は2003年ですでにロングセラーとなっています。ヘッドフォン側は専用コネクタですが、ケーブル着脱式をいち早く採用したとのことです。

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・ダイナミックオープン型

・300Ω

・10~39500Hz

・103dB/mW

・バランスケーブル別売(4極XLRコネクタ)

・45,739円(Amazon参考価格)

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ヘッドフォン側のケーブルコネクタは左右独立で2極の専用タイプとなっています。ロングセラーとなっていることからサードパーティー製のケーブルの入手が可能なようです。

■MDR-1A/SONY

2014年1月にハイレゾ用のスタンダードモデルとして発売されたものです。40mmドーム型アルミニュウムコートポリマーフィルム振動板が採用されています。

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・ダイナミック密閉型

ネオジウムマグネット

・3~100KHz

・24Ω

・1500mW

・バランスケーブル別売(3.5mm3極 x2)

・18,268円(Amazon参考価格)

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別売のケーブルのアンプ側は3.5mmステレオ用の3極ミニプラグです。何で3極なのかは不明です。

■SE-MHR5/Pioneer

2017年2月発売で、同社の新シリーズのヘッドフォンです。φ40mmのユニットが採用されています。

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・ダイナミック密閉型

・7~50KHz

・45Ω

・1000mW

・102dB

・バランスケーブル付属(2.5mm4極ミニミニプラグ)

・15,050円(Amazon参考価格)

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本体にアンバランス用とバランス用の両ケーブルが付属されているので、買ってすぐにバランス再生が可能です。ヘッドフォンアンプ側は4極の2.5mmプラグとなっていて、デファクトを狙っているように思えます。

バランス駆動

上記のとおり、バランス駆動用のアンプ側のコネクタに統一仕様がありません。信頼性という意味では4極のXLRコネクタに分がありますが、携帯機器用としては向いていません。最近の流れとしては2.5mm4極コネクタを採用したものが複数社から発売されている状況です。Sonyの採用する3.5mm3極 x2は後は使う側で勝手に変換してね!というスタンスのものもあります。使用者の立場としては早くデファクトスタンダード化していただきたいとおもいました。

選定

正直なところ、ヘッドフォンへの思い入れはあまりないので、今回はバランス駆動の音を聴いてみることを主目的に据える事として、一番手頃なSE-MHR5/Pioneerを試してみることにします。次回はヘッドフォンを入手し、そのレビューをします。

 

つづく(構想編2)

チャンネルデバイダ製作(番外編)

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番外編

部品の手配漏れで電源基板の組立ができなかったためバランス変換ボリュームから基板を流用しましたが、組立途中の電源基板を組み上げて元通りに戻します。

おさらい

前回の記事でチャンネルデバイダの製作は終わりましたが、組み上げの最後の電源基板の組立で定電流ダイオードの購入忘れに気づき、バランス変換ボリュームの電源基板を流用してチャンネルデバイダを組み上げました。

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時間を開けてしまうとこのままになってしまいますので、組立途中の電源基板の組み立てを再開し、完成させてバランス変換ボリュームに元どおりに戻します。写真は中断時の基板の状態です。

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組立再開

出力トランジスタベースの基準電圧生成回路の組立から再開します。基板の実装スペースに余裕がないので基準電圧生成用のダイオード3個は立てて実装します。その際に通電時に電圧を確認したいポイントのリードが基板上に出るように実装すると後で便利です。基準電圧平滑用の電解コンデンサは実装可能なMUSEの最大限の容量の物を選択しています。並列に接続するフィルムコンデンサも容量の割にはサイズが大きいです。出力回路は、平滑用のコンデンサと放電用の抵抗10kΩです。実装スペースの余裕がないので前回の実装を忠実に守ります。出力段の電解コンデンサは、在庫の有効利用のため、今回はFG品470u/25Vを使用しましたが、オリジナル品よりも径が大きくさらに実装が難しくなりました。ー電源の構成も+電源と同じなので同様に実装を進めます。

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もう1チャンネル分の+/-電源も同様に実装します。ほぼ同じ回路を4つ実装したことになりますが、繰り返しにより作業は効率は上がりますが作業に飽きてしまい効率が下がり差し引きゼロという状況です。そんな事を考えつつ全ての回路の実装が終わりました。

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通電確認

通電確認前に、実装チェックをしたところ2回路ある+電源の基準電圧生成用の定電流ダイオードの向きが反対となっている事に気が付きました。写真トランジスタのセンターの足がコレクタ、向かって右がベースで、電源側(コレクタ)からベース側に電流を流す必要がありますが定電流ダイオードのマーキングが逆になっています。通電前に気づき良かったですが、この基板で一番細かな実装部なので修理を考えると頭が痛いです。

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修理は、取り外す定電流ダイオードのハンダ付け部分にハンダ吸い取り線を当ててハンダを吸い取ります。これで部品が外れなかったら足をカットします。なんとか2カ所の実装間違いの修理が終わりました。それでは改めて通電確認を行います。基板への電源入力はトランスの代わりにDC電源を使います。AC入力のピーク電圧に相当する16.8Vをユニバーサル電源を使って入力しました。

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いきなり出力電圧の確認を行います。最初のチャンネルは出力がほぼ+/-12Vで問題ありませんでした。次のチャンネルを確認したところ-出力はほぼ-12Vで問題ありませんでしたが、+出力が約6Vと規定の電圧が出ていません。もしやとおもい、基準電圧生成用のツェナーダイオードの電圧を確認したところ、9.1Vツェナーを実装したはずの部品の両端電圧に約3.6Vしかかかっていない事が判明しました。おそらく9.1Vツェナーの代わりに誤って3.6V品を実装してしまったものと思われます。先ほどハンダを吸い取った部分を改めて吸い取る事となり、気分消沈です。めげずに部品交換し、改めて通電確認を行いました。出力電圧は表のとおりです。尚、表にはバランス変換ボリュームに搭載後の電圧値も合わせて掲載してます。

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基板の再実装

完成した電源基板をバランス変換ボリュームへ搭載します。同じユニバーサル基板を使用したので固定用のスペーサー4カ所に併せて乗せるだけで完了です。1次側の配線とPower LEDの配線をすませます。出力用の電源線はチャンネルデバイダで流用してしまったので、改めて電線を切り出して使用します。左右チャンネルともに電源の配線で再組立完了です。

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通電確認

電源SWをオンし、Power LEDが点灯することを確認し、電源の出力電圧をざっと確認しました。問題なかったので念のためアンプの出力オフセット電圧を確認しました。調整機構があるためディスクリートアンプのオフセット電圧の方がオペアンプよりも優秀でした。音だし確認もしたかったですが、簡単に準備できる環境がないので確認はここまでとします。今度こそチャンネルデバイダを使ったマルチアンプ関連の記事はこれにて終了です。次回の記事については現在思案中です。

 

おわり(番外編)

チャンネルデバイダ製作(まとめ編)

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まとめ編

チャンネルデバイダの組立が完了したので、通電確認をして音を聴いてみます。

組み上がり

前回触れる事ができなかったので組み上がりについてコメントします。部品配置に苦労しましたが、なんとか収めることができました。ボリュームと基板の配置もねらいどおり、ボリュームが基板端子台に被ることなく配置できました。LPF出力用のボリュームと電源基板、トロイダルトランス、ヒューズホルダの配置もうまくいきました。唯一2枚のフィルター基板が対向する辺の基板端子台の位置が重なり、配線がやりにくかった事が反省点です。

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リアパネルのXLRパネルコネクタ間のクリアランスがあまり取れず、特に上下間は4mmと狭くなっています。コネクタの抜き差しの使い勝手が心配でしたが、特に問題ありませんでした。

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正面パネルのボリュームの配置は、内部の部品配置の関係から他に配置のしようがなく写真のとおりになりました。格好良いとは言えませんが最低限許せるデザインとなったとおもいます。

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通電確認

組み上がった状態で、電源の出力電圧とアンプ各出力オフセット電圧を念のため確認します。

■電源出力電圧

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■出力オフセット電圧

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電源出力は問題なく、出力オフセットは多少大きいですが、バラックで運用していた時とほぼ変わりません。

音聴き

音の印象は、バラック時と変わりませんが、より腰の座った鳴り方をしていると感じました。電源トランスの余裕度から来ているのでしょうか?それではいつものとおり、いろんな楽曲を聴いてみます。

Teo Torriatte/Queen

1977年リリースの華麗なるレースに収録されています。この曲はバンドの人気の火が日本からついた事に対する感謝の意を日本語で直接伝える為に日本語の歌詞が入ったと言われています。落ち着いたメロディー進行にサビの厚いコーラスが素直に再生されます。腰の据わった低音で安定して聴こえます。

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木星/惑星

このシステムは交響曲との相性がいいです。響きが豊かに、ホールの奥行き感が再現されます。

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■WESTCHESTER LEADY/BOB JAMES THREE

アルバムタイトルどおりボブジェームス3枚目のアルバムに収録されている楽曲です。低音が豊かに鳴ります。弦楽器の音の離れがいい感じです。

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展覧会の絵/EMERSON,LAKE & PALMER

1972年リリースのライブ版です。床を振るわす低音、ボーカル独唱、ライブの臨場感がいい感じで再現されています。アンコールのクルミ割り人形はテンポ良く走り気味の進行が一層ライブ感を再現しています。ベースの基音が明瞭です。

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■曙/Moony Night

風のセカンドアルバムに収録された楽曲です。ベースが豊かに鳴りますがダンピングが効き膨らみすぎません。ベースに被った部分のボーカルも明瞭に再生されてます。

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使用感

ウーファーとそれ以外(スコーカー、ツィーター)の音量調整が独立になっていますが慣れると音質調整と同じイメージで、思いの外使い勝手は悪くはありませんでした。この操作仕様の為ウファーのみや、スコーカー・ツィーターのみの再生も簡単にでき、それぞれ単独で鳴らして聴いてみましたが、高音側のレベルで低音の印象が大きく変わる事を体感しました。比較的小容量のパスコンを電源に入れる事で低音の印象が大きく変わる事を今まで経験していますが、どちらも音の印象が高調波に影響を受ける事例だと思いました。

最後に

電源とフィルタ基板の回路図を改めて掲載します。マルチアンプの実験1から2ヶ月以上おつきあいいただきありがとうございました。

■フィルタ部回路図

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フィルター用コンデンサの接続に誤りがあり、回路図を修正しました。詳細は、2018-02-09「女神たちの争い(製作編3)」を参照ください。

■電源回路図

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つづく(番外編)