A級バランスHPアンプ製作(製作編11)

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製作編11

amp2の製作が完了したので次の基板のamp3の製作を開始します。

amp3製作開始

ここからは先の基板のコピーの製作となります。自分の製作した手本を見ながら実装を行います。細部についてはより効率の上がる配線があれば変更します。

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amp3初段の実装

カスコード接続用のNPNのペアを選択します。コンプリメンタリペアになりにくいhfeの小さなものからNo.1と18を選びました。

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続いて初段の電流源用のNPNを選択します。このトランジスタと温度補償用のトランジスタの選択は、異端の特性の物を消費できるので選択が楽しいです。単価20円の物なのに貧乏性だと思います。

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ペアとならないNo.14を選択しました。バランス方式は同じアンプを4回路製作する必要があり、amp3の実装が一番苦痛です。amp4になると実装枚数は増えますが終わりが見えてくることで気分的に楽になります。

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amp32段目の実装

差動アンプ用のPNPペアを選択します。

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コンプリメンタリペアになりにくいhfeの大きな物からNo.13と22を選びました。次に温度補償用のNPNを選択します。

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ペアからあぶれるNo10、hfe=168を選択しました。温度補償用のトランジスタは終段のPNPトランジスタに接着させますが、終段のトランジスタと隣の列への実装では近すぎ、1列空けると離れすぎてしまい密着させる事ができません。仕方がないので写真のとおり足をフォーミングして終段トランジスタの隣の列へ実装しています。

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一通りの部品実装を終えた状態のパターンは比較的すっきりしています。

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この状態で未接続な配線および部品は以下のとおりです。

・初段出力と2段入力間配線

・負帰還配線

・温度補償用トランジスタ配線

・位相補償用のコンデンサ2個

・信号入力配線

・入力段と終段のGND配線

・初段J-FETソースと定電流源トランジスタ配線

上記の配線を行っていきますが、意外と手間がかかり時間もかかります。完了するとこんな感じになります。

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せっかくすっきりしていた配線が、かなりごちゃっとした状態になってしまいました。最初の配線に気を使わないと、完成時の配線がおそらく山盛り状態となってしまいます。

通電調整

amp3になると初通電も躊躇がありません。慣れとは恐ろしいものです。3つの半固定抵抗をプリセット状態から調整していきます。順番は前回同様に、VR2で2段目の差動アンプの電流を上げてゆき、VR3で終段のアイドリング電流を上げてゆきます。VR1で出力オフセットを調整します。それぞれ一気に上げずに途中まで上げて3つを順番に調整し、設計値に追い込みます。調整後の各部の電圧は以下のとおりです。

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次に終段アイドリング電流の温度補償特性の測定をします。今までの測定と同様に素子の温度を常温に戻して、通電開始から15秒ごとに終段のアイドリング電流を測定しました。結果は以下のとおりです。

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接着後のクリップで圧着させた状態で測定したためか、熱容量が今までの測定に比べて大きな結果となっていました。amp4測定時には考慮したいとおもいます。残すところamp4の実装となり、アンプの製作の終わりが見えてきました。正直なところ、繰り返し作業の場合、記事の作成に苦心してます。めげずに次回amp4を完成させたいとおもいます。

 

つづく(製作編12)

A級バランスHPアンプ製作(製作編10)

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製作編10

前回の記事でHotチャンネル(amp1)の実装が終わった基板にColdチャンネル(amp2)の実装を行います。

amp2実装

amp1の実装で、電源線の配線および端子台の実装が完了していて、部品の配置も決まっているので、実装の効率は上がります。amp1の実装で紹介済みの作業は省略します。

初段のトランジスタ選別

表はPNPトランジスタのhfe測定一覧です。

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amp1の実装で合計5個を使用済みです。(グレーの網掛け)amp2の初段では、カスコード接続用にペアと電流源用に単品が必要ですが、カスコード用のペアはコンプリメンタリペアになりにくく、特性の分布が厚いhfeの小さいところからNo.24と27を、電流源用には同様にコンプリメンタリペアになりにくく、比較的特性の分布が薄いhfe190のNo.32を選択しました。

2段目のトランジスタ選別

2段目は差動アンプ用にPNPのペアと終段バイアス回路用にNPNが単品で必要です。初めに差動用のペアを選択します。表はPNPのhfe測定一覧です。

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amp1で合計3個を使用済みです。(グレーの網掛け)PNPもコンプリメンタリペアになりにくい、hfeの大きいものからペアとしてNo.28と29を選択しました。次にバイアス回路用のNPNの単品を選択します。表は選択時点のNPNのhfe測定一覧です。

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ここまでくるとどれでも良い気もしますが、せっかくhfe測定をしたので最後まで拘ります。特性分布が厚い中からペアからあぶれる物として、No.17を選択しました。

ドライバと終段トランジスタ選択

両コンプリメンタリペア選別は完了していますが、それぞれ4ペアから選択します。表は、コンプリメンタリペア選別結果ですが、ここからamp2用のペアを選択します。グレーの網掛けはamp1で使用したものです。

■ドライバコンプリメンタリ選別結果

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■終段コンプリメンタリペア選別結果

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特に選択の基準はありませんが、amp2用のドライバとしてNPN/PNPそれぞれNo.11と16を終段用としてNo.10と18を選択しました。

温度補償用トランジスタ取り付け

温度補償用トランジスタは終段のPNPトランジスタの背面に接着しますが、amp1はトランジスタの足のフォーミングが悪く、やや高めの位置となってしまいました。今回は注意してフォーミングしたため、発熱の大きなポイントにあわせることができました。

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実装完了調整

amp1をほぼ平衡移動した配置でamp2の実装を終えました。

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amp1の経験を生かして初段側のGNDと終段側のGNDをあらかじめ接続しました。調整はamp1と同様に行います。初めに3つの半固定抵抗を安全サイドにプリセットして、amp1で使ったユニバーサル電源の設定値を呼び出します。このユニバーサル電源の設定値の保存機能は便利です。4つの出力分の電圧値と保護用の電流値を1アクションで設定できます。4種の設定を保存できるので必要に応じて使っています。2段目の電流、終段、出力オフセットの順番で数回調整を繰り返します。調整が完了したらamp1と同様に温度補償動作の確認を行いました。結果は以下のとおりです。

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約45秒でアイドリング電流が最大となり、その後徐々に下がっています。温度補償用のトランジスタの接着位置をより発熱の大きなポイントに変えたことと、ドライバと終段で4つのVbeが存在しますが、温度上昇により変化するのは終段のVbeの2個のみの為、温度補償の動作が過剰に働いたと考えられます。

動作確認

電流が安定したタイミングで各部の電圧の確認を行いました。

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amp1の結果とほぼ同等で、動作的に安定していると考えられます。初段の2個のツェナーダイオードの電圧降下がどちらも仕様で唱われている電圧よりも低くなっていますが、定格条件(5mA)よりも流す電流が小さい事に起因しています。その影響で初段のJ-FETに印加される電圧が小さくなっていますが、実使用上問題ないのでこのままいきます。最後に信号を入力して動作確認をします。amp1と同様に周波数特性を確認しました。出力を0.1Vppの条件で測定を行っています。

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使用した発信器の調子が良かったので1MHzまで測定を行いました。確認を行った範囲では、ほぼフラットな特性を確認しました。参考として1MHzの入出力波形を掲載します。

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次回はamp3の実装を行います。

 

つづく(制作編11)

A級バランスHPアンプ製作(製作編9)

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製作編9

前回の記事で発振対策が完了したので、amp1を調整して動作確認を行います。

調整の続き

改めて終段のアイドリング電流を50mAまで上げて、出力オフセットおよび2段差動アンプの電流の調整を行います。この状態で終段のアイドリング電流が安定する事を確認したら、終段のアイドリング電流を設計値の70mAまで上げます。改めて出力オフセットと2段差動アンプの電流の調整を行い終段のアイドリング電流が安定する事を確認しました。

温度補償回路の動作

ドライバ段用のバイアス回路の温度補償用トランジスタは、最終的に終段のトランジスタと熱結合させるために接着しますが、接着前に温度補償動作の確認を行います。方法は、アンプの電源を一旦切り、アンプの各素子の温度を常温まで戻します。温度が下がるのを待つ間に、終段のエミッタ抵抗(1Ω)の両端電圧を測定できるようにテスタを接続します。温度が下がったら、電源オンして、ストップウォッチ片手に電流値の変化を観測します。具体的には15秒ごとにエミッタ抵抗の両端電圧をメモしていきます。抵抗値が1Ωなので、読みとった両端電圧がそのまま電流値として読み替えることができます。測定結果は以下のとおりです。

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結果から、約1分で終段のアイドリング電流の上昇が止まり安定する事が確認できました。温度補償の設計は、Q07の負の温度係数を持つVbeが約4倍となるようにバイアスが変動します。一方ドライバと終段で4個分Vbeが存在しますので、丁度相殺されて終段のアイドリング電流が下がらずに安定したと考えられます。実は最初の測定は、単純に終段のトランジスタのエミッタ電圧のみ測定してグラフ化しましたが、出力オフセットの変動の影響が入るため歪んだ結果となっていました。改めてエミッタ抵抗の電圧降下を測定し直しましたがほぼ理想の結果となり、測定し直した甲斐がありました。安定後のアイドリング電流は設計値よりもやや高めになっていますが、正規の電源と組み合わせにて改めて調整したいとおもいます。

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温度補償トランジスタ熱結合

学生時代のアンプ製作時は、差動アンプ等のペア特性が要求されるトランジスタは全て熱結合させていました。今では熱的アンバランスの発生の可能性がない部分は、熱結合させていません。熱結合させるためには、トランジスタを対向して配置する必要がありますが、その結果配線が入れ子になってしまうからです。温度補償用のトランジスタは、終段の温度上昇により熱暴走を防止する必要があるので、熱結合をさせます。A級BTL DCパワーアンプの製作の際には、ドライバと終段用の放熱器に温度補償用のトランジスタをネジ止めで密着させて熱結合させましたが、熱の伝搬に時間がかかり、数分間は終段のアイドリング電流が上昇を続けるのをモニタしながらひやひやしました。

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今回は終段のPNPトランジスタの背面に温度補償用のトランジスタを接着します。接着剤には、2液式のエポキシ接着剤を使いますが、学生時代には、2液式のエポキシ接着材は1択で選択肢はありませんでしたが、今ではいろんな種類のものが販売されていました。その中からローコスト(448円)で接着時間が比較的短いものを選択しました。高いものは1,000円近くするものもありましたが、何が違うのでしょうか?

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2液を同量、アルミ板の切れ端に出して付属のヘラで良く混ぜ合わせます。それをトランジスタの接着面に塗布して接着します。固まるまではクリップで両トランジスタを挟んで密着させておきます。

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接着材の説明書には、25℃環境で接着まで40分と記載があったので念のため1時間放置しました。

動作確認

温度補償トランジスタの接着が完了し(本記事アイキャッチ写真参照)、改めて調整結果を確認します。測定前に安定を待ってから各部の電圧の測定をします。測定結果は以下のとおりです。

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最後に信号を入力して動作確認を行います。せっかくなので、周波数特性の測定を行いました。出力電圧を0.1Vppに調整し、そのときの入力電圧を測定しゲインを算出します。測定結果は以下のとおりです。

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ゲインの設計値は19.3dBです。測定範囲はフラットで設計どおりの結果を確認しました。ついでに矩形波応答も確認しましたが素直な波形です。

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次回はこの基板上にcoldチャンネルの実装を行います。

 

つづく(製作編10)

A級バランスHPアンプ製作(製作編8)

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製作編8

HPアンプ片チャンネルHot分の実装が終わったので通電確認を行います。よりアンプの特長を示すためにタイトルを変更しました。

通電準備

前回の記事で、通電にはユニバーサル電源を使用することを説明しましたが、私の使っているユニバーサル電源には、各出力ごとに保護用に最大出力電流の設定をする機能があります。万が一を考えて設定することにします。設定値は、各電源の要求電流に余裕を持たせて決めます。初めに12V系の電流を見積もります。初段の差動アンプが約2.1mA, 初段のツェナー用のバイアス電流がそれぞれ約1.5mAと1.0mAで2段目の差動アンプが約8mAです。合計で約12.5mAとなります。設定値は十分余裕を見て100mAとします。次に6V系の電流を見積もります。ドライバ段を6.7mA、終段を70mAに調整するので、合計で約77mAとなります。ここも余裕を見て設定値を200mAに決めました。

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通電用に配線を行います。+/-12V用に3本、+/-6V用に3本で、合計6本の配線をしました。最初に通電する際はいつも緊張しますが、先に進めるためには避けて通れません。

通電確認

まず初めに+/-12Vのみ電源を入れてみます。ユニバーサル電源には、指定した1つの出力の電圧と電流をモニタする機能がありますが、対象の出力を+12Vとしました。出力電流は10mA弱とそれなりの値となっています。モニタを-12V側に切り替えると、+12V側よりやや小さな値となっていて設計どおりの動作をしていると言えます。一旦電源を切り+/-6V系の電源も同時に入れてみます。+/-12V系の電流値に変化はなく、+/-6V系の電流値は約5mAと調整前の値となっています。

調整

暴走による破壊は、ドライバ段と終段の可能性が高いので、ユニバーサル電源の電流モニタを+6V出力に切り替えます。出力オフセット電圧が大きくずれていないことを確認し、2段目の差動アンプの電流を調整します。調整は2つの負荷抵抗(2.7KΩ)の電圧を観測して行います。ドライバに接続されている側は負帰還によりつじつまが合うように所定の電圧(約-1.3V)にほぼなっているため、反対側の負荷抵抗のコレクタ側の電圧を合わせます。電流が少ないためマイナス側に大きくずれていますが、VR2を時計まわりに回して調整します。一気にあわせずに-2.0Vくらいで他の部分の調整を行います。出力オフセットをVR1で調整します。次に終段のアイドリング電流をVR3で上げてゆきます。ここも一気に上げずに、50mAくらいまで上げて一旦様子をみます。

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発振

ここまで調整した所で、+6V電源出力の電流値が2段階に変化する事に気づきました。終段のアイドリング電流50mA調整時の電源出力電流は約55mAですが、テスタのリードを終段のエミッタ抵抗から離すと約15mA程度まで下がります。さてはとおもい、出力波形をポケットオシロでモニタしてみました。電源の電流値モニタの値が上がったタイミングで、発振波形が観測されました。

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発振周波数も150KHzと高くはなく、レベルもそれほど大きくはありません。今までほぼ同構成の回路で、2段目の位相補償22pF x2で対策できていたことからいやな予感を感じながら、対策コンデンサの1つを47pFへ容量アップしてみました。ここからは、対策検討用に購入しておいたセラミックコンデンサを使用します。変更後も不安定な状況に変化はありません。さらにもう1つのコンデンサも47pFへ交換してみました。

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発振周波数にやや変化はありましたが、不安定な状況はかわりません。あてずっぽで、帰還抵抗18KΩにパラに15pFを接続しましたが、発振レベルが上がり症状は悪化しました。帰還抵抗の15pFのみ外してしばらく思案し、試しにユニバーサル電源と終段に接続しているGNDラインのユニバーサル電源側を外して、+/-12V電源のGND入力側へ接続しなおしてみたところ、不安定な状態は見事に改善しました。位相補償用のコンデンサを元通り22pFに戻して確認しましたが、この状態でも問題ありませんでした。原因はGND配線にあった事がわかったため、急遽基板内で初段側のGNDと終段のGNDの接続を行いました。写真の灰色の電線です。

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改めて対策の効果の確認を行いましたが問題ありませんでした。ちなみに終段側のGNDラインですが、バランス動作している時には電流は流れず、パスコンの基準電圧にのみなっています。アンバランス動作時は負荷電流がこのラインを通して電源に戻りますので、それなりの電流が流れます。アンバランス出力は音質比較用のおまけなので、基板内の配線にはあまり拘らないことにします。

次回調整の続きを行いamp1の通電確認を終わらせます。

 

つづく(製作編9)

A級バランスHPアンプ製作(製作編7)

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製作編7

HPアンプの2段目のバイアス回路以降の実装を行います。

発注ミス再び

前回につづき、またしても発注ミスが発覚しました。発振防止用のディップマイカ22pFを購入したつもりが、150pFを購入していました。

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今回は部品表上は正しく記載されていましたが、発注自体をミスしていました。購入先はマルツオンラインで、ここは以前指定したものとは違う商品が買い物カゴに入るトラブルを経験していますが、今回がこの症状かは定かではありません。とはいえ、発注確定時に確認が漏れたのは自分のせいなので、あきらめるしかありません。ディップマイカは1個108円で8個で900円弱、150pFは死蔵の可能性が高いです。勉強代と考えて次回以降気をつけたいとおもいます。幸い、手持ち在庫があったので今回は追加発注せずに済みました。せっかくなので、私がよく使うネット通販サイトのサービスについて整理しておきます。

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表は2017年8月現在のものですが、圧倒的にアマゾンのサービスが良いことがわかります。3社に送料無料のサービスがありますが、アマゾン以外は適用された事はありません。会社運営上良い金額設定をしているとおもいます。運送会社の労働条件改善のため、今後送料が上がる傾向にあるとおもいますが、利用者の立場としては、できる限り維持してもらいたいとおもいます。

バイアス回路以降の配置

これまでの実装で、残りの実装エリアがあまりなくなってきていますが、ここに以下の大物部品の実装が必要です。

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・バイアス調整用の半固定抵抗

・ドライバ用コンプリメンタリトランジスタ

・終段用コンプリメンタリトランジスタ

・温度補償用トランジスタ

・+/-9V電源入力用3極端子台(基板に1個)

・アンバランス出力用2極端子台(基板に1個)

・バランス出力用3極端子台(基板に1個)

かなり量が多い上に、温度補償用トランジスタは、終段のトランジスタと熱結合したいと考えています。上記を踏まえて実装位置を検討します。実際に大物部品(端子台、終段トランジスタ、半固定抵抗)を基板に置いてみます。検討のポイントの1つに、配線の交差が少なくシンプルに実現できる事も考慮します。検討の結果は以下のとおりです。

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なんとか全部品を納めることができました。温度補償用のトランジスタは、終段の2SA1488Aの背面側に配置し、最終的には接着剤で密着させる予定です。

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配線も比較的シンプルになりました。被覆線を使った部分は電源GNDを除き、温度補償用トランジスタ配線3本(黄)と、負帰還ライン(紫)だけで済みました。

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通電確認の準備

半固定抵抗が全部で3個実装されていますが、安全サイドにプリセットしておきます。オフセット調整用のVR1は、センターに調整します。2段目の電流調整用のVR2は、抵抗値を大きく設定しておきます。VR2は実装時に考慮していませんでしたが、時計回りに回すと抵抗値が小さくなり、2段目の電流が大きくなります。細かい点ですが、このあたりの考慮が後のトラブルを減らすと考えます。バイアス調整用のVR3は、実装時に時計回りでバイアス電流が増えるように考慮して実装しました。プリセットは反時計回りに回して抵抗値を大きくしておきます。

電源の準備

製作したHPアンプは、4電源(+/-12V, +/-9V)が必要です。まだ電源回路の製作を行っていないため、通電確認にはユニバーサル電源を使用します。私の使っているユニバーサル電源は4電源出力は可能ですが、各出力の最大値は以下のとおりです。

・+18V/1.8A

・-18V/1.8A

・+8V/2A

・-6V/1A

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要求にはマッチしませんが、終段側に+/-6Vを入力して確認を行うことにします。終段はエミッタフォロワなので、動作および調整結果は電源電圧にあまり依存しません。唯一、終段のトランジスタの発熱量が下がる為、温度補償用のトランジスタおよび終段トランジスタの温度平衡時の動作が変わる為、正規の電源と組み合わせ動作時に再調整する必要があります。

次回は組み上げたHPアンプの通電確認を行います。

 

つづく(製作編8)

A級バランスHPアンプ製作(製作編6)

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製作編6

プリアンプ基板の製作が終わったので、HPアンプ基板の製作を開始します。

部品の準備

製作用の部品は、早いタイミングで一気に注文することにしています。全て通販で準備していますが、送料がばかになりません。購入漏れした場合、漏れたもののみの発注をすると、対象部品にもよりますが部品代よりも送料の方が高くなる場合もあります。普段使用する注文先は、秋月電子、マルツオンライン、共立エレショップ、アマゾンですが、荷物が届いてすぐに内容を確認すればいいのですが、忙しさを理由に使う直前までほったらかしの事が多く、今回もHPアンプ基板製作の直前に部品確認を行ったところ、ミスが発覚しました。下記が発注時に使用した部品リストです。

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発覚したミスは、500Ωと2KΩの半固定抵抗の数量が1アンプ分しかカウントされていませんでした。手持ち在庫対応可能としていた7.5KΩの抵抗も在庫がありませんでした。半固定抵抗は、ステレオ分として2倍注文した事から片チャンネル分はあるので、製作に影響なく追加発注がかけられます。7.5KΩの抵抗(初段の基準電圧生成用ツェナーダイオードのバイアス電流用)ですが、在庫のある抵抗値に設計変更することで対応することにします。電流値を上げるべきか下げるべきかを決めるために、データシートを確認しました。

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現状の設計の場合Izは0.92mA((12-5.1)/7.5)です。今までツェナーダイオードの電流値はあまり気にしていませんでしたが、特性図から定電圧特性上はもう少し電流をながすべき事がわかりました。手持ちの在庫を確認して4.7KΩに変更することにしました。この場合の電流値は1.47mAとなります。変更後の回路図を改めて掲載します。

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HPアンプ電源ライン実装

初段とバイアス回路を除く2段目までは従来製作したアンプと共通の配置とします。製作の手順も従来の手順を踏襲します。始めに2回路分の+/-の電源線を引いてエリアを2つに分割します。線材は0.65mm単線の芯線を使用しました。

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続いて電源入力用の3極の端子台と各電源ラインに100uF/25のFineGoldと0.47uFのフィルムコンデンサパスコンとして実装します。さらに電源の端子台と各電源ラインを接続します。

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初段の実装

アンプ回路は初段のプラス電源側に接続される部品から実装します。初めにオフセット調整用の500Ωの半固定抵抗、初段の負荷抵抗を実装します。次にカスコード接続用のトランジスタを実装します。このトランジスタのペア選別ですが、後々の事を考えてコンプリメンタリペアになりにくい物を選択します。下表は2SC1815GRのhfe測定結果一覧です。

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表中の水色の網かけは、コンプリメンタリペア用に予約したトランジスタを示します。今回は、hfeの値が小さい範囲にまとまった分布があり、このレンジの特性ではコンプリメンタリペアになりにくいと考えられるため、hfeの小さい順に選別していくことにします。今回はNo.39とNo.40のトランジスタを選択しました。トランジスタの実装は、後々の交換を考えて足を曲げずに(ストレート)ハンダ付けしてゆきます。故障の可能性がほぼない、抵抗などのリードは、できる限り回路の配線に利用します。続いてカスコード接続の基準電圧生成用のツェナーダイオード、dual J-FET実装用の8pin dipソケットを実装します。次に実装する定電流源用のトランジスタは、ペア等の特性の要求がありません。先ほどのhfe測定結果の再確認をします。使用済みのものは、灰の網かけをしています。この一覧からペアにならない個体No.2を選択しました。

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基準電圧生成用のツェナーダイオード、電流設定用のエミッタ抵抗を実装して初段は完成です。

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2段目実装

こちらも+電源側に接続される部品から実装を進めます。初めに差動アンプの電流設定用の2KΩの半固定抵抗を実装します。続いてPNPトランジスタのペア選別をします。PNPと同様に後々コンプリメンタリペアになりにくい物を選択します。下記がhfe測定結果一覧ですが、NPNと同様に水色の網かけがコンプリメンタリペア用に予約されたトランジスタを示します。

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私の設計するアンプでは、PNPが単品使用されないので、最低でもペア選別されないと、ずっと売れ残ってしまいます。幸い単価が安いので当面対応は考えない事にします。今回はトランジスタはNo.32とNo.6を選択しました。次に負荷抵抗27KΩを実装したところで実装を一旦中断し、実装部品の配置の検討をします。

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次回は終段用バイアス回路、ドライバ、終段と実装を進めていきます。

 

つづく(製作編7)

A級バランスHPアンプ製作(製作編5)

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製作編5

前回の記事で途中まで製作したプリアンプ基板を組み上げて通電確認を行います。

オペアンプ

今回の製作には、過去の製作でMUSES01への換装により余っていたMUSES8920を使用します。使用するに当たり改めてMUSESをネット検索したところ、MUSESシリーズに新たなオペアンプが追加されている事を知りました。

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J-FET入力1回路のみのMUSES03です。2017年の3月に情報公開されたようです。どのようなオペアンプか気になるのでMUSESシリーズの他のJ-FET入力オペアンプと比較をしてみます。

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MUSES01を受け継ぎ、音質に配慮した設計となっているとの事ですが、MUSES01では目をつぶられた特性も見劣りしないものとなっています。表中の価格は、秋月電子での販売価格ですが、1回路あたりの単価は、シリーズ中一番高くなっています。試しに音を聴いてみたいのですが、1回路タイプなので、従来のMUSESシリーズの差し替えができません。秋月から変換基板が発売されればすぐに試す事ができるのですが・・・。下記はプレスリリースに掲載されたMUSES03の特長です。

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この中で一番気になるのは、フルバランス型差動増幅回路採用です。全高調波歪率特性が格段に良い値となっているのは、この構成に起因しているのかもしれません。入力段と出力段を別チップ構成もその効果を確かめてみたいと思いました。私のシステムは全てバランス構成となっていて回路が倍必要な為、1回路タイプのオペアンプの採用は回路実装上不利になりますが、公開されている特性を生かしてチャンネルデバイダ用のアクティブフィルタに採用してみたいと思いました。

プリアンプ基板の製作

それでは前回記事の続きで、プリアンプ基板の信号の入出力ラインの配線を行います。後で確認がしやすいように、アンバランス信号をオレンジで、バランスホットを白、バランスコールドを灰で配線しました。

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始めにテスタで導通確認を行います。+/-電源が所定のソケットの端子に接続されていることを確認します。つづいて入力の端子台とソケットの所定の端子が接続されていることを、出力の端子台とソケットの所定の端子が接続されていることを確認します。問題がなければ、次は+/-12Vを入力してピンソケットの各端子が所定の電圧になっていることを確認します。一部の端子はフローティング状態になっていますがそのフローティング状態を確認しました。

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通電確認

ここで初めてオペアンプを装着します。足を曲げてしまわないように慎重に押し込みます。

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片チャンネルづつ電源を入れて各端子が所定の電圧になっていることを確認します。電源端子は+/-12Vが、入力端子は0V、出力端子は出力オフセット電圧が観測されます。この確認も両チャンネルともに行います。最後に信号を入力して入出力の確認を行います。発信器で正弦波を入力し、ポケットオシロで波形を観測して確認をしました。

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L-ch用アンバランスバランス変換回路は周波数特性の確認を行ってみました。入力は1Vppとして正相出力と反転出力間の伝達特性を測定しました。

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ゲインが1なので予想どおり測定の範囲内はフラットな特性です。他のチャンネルも同じ特性と推測される為、周波数特性の測定は省略し、入出力の波形観測のみを行いました。下記の波形は1KHz入力時のアンバランスバランス変換出力のホットとコールド出力の観測結果です。

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正しくアンバランス変換されていることが確認できます。ついでに矩形波を入力して応答波形の確認を行いました。ホットとコールドで若干応答波形は異なりますが、概ね素直な出力波形となっています。

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プリアンプ基板の確認はここまでです。次回はHPアンプ基板の実装をスタートさせます。

 

つづく(制作編6)