A級バランスHPアンプ製作(製作編23)

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製作編23

amp4の出力が-9Vに貼り付く原因を今度こそ特定して修理を完了させます。

原因の特定3

シャーシに組み込んだ状態では検討しにくいため、基板単体で確認を行います。

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シャーシ取り付け状態の確認と同様に、電圧増幅段のみ電源を入力して症状が同じ事を初めに確認しました。確認結果は以下のとおりですが、シャーシ組み込み状態とほぼ同じ電圧となっています。

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次に帰還と2段目の入力をカットして、初段単体で確認を行いました。確認結果は以下のとおりです。予想に反して、初段の状態はカット前とほぼ変わりません。定電流源のエミッタ抵抗には前の状況と同様に2mAの電流が流れていますが、これはどこから流入しているのでしょうか?

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次に簡単にできる事として、入力のJ-FETを正常動作しているamp3のものに交換してみました。二次災害も懸念しましたが、各部電圧からその可能性は低いと判断して差し替えすることにしました。

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症状は全く変わりませんでした。せっかくなのでamp4のJ-FETをamp3に挿してみましたが、正常回路と同等の電圧を確認しました。この結果、J-FETは正常と判断できました。不具合状態の電圧確認結果からVgsとVDSは、

Vgs = 0 - 0.849 = -0.849 V

VDS = 4.25 - 0.849 = 3.40 V

となっています。データシート掲載のId-Vgs特性を参照するとこの時にドレイン電流Idはほぼ0となります。

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今までの確認状況を整理してみます。

・初段定電流源エミッタ抵抗に約2mAの電流が流れている

・入力のDual J-FETは正常

・J-FETには最低限のVDSが印加されていて、Idがほぼ0となるVgsがかかっている

これらの結果から、この症状は初段の定電流源トランジスタの故障としか考えられません。エミッタ抵抗に流れる2mAはベース側から流入していて、コレクタ電流が流れていないと考えると全てのつじつまが合います。該当トランジスタを見た限りでは特段異常は認められません。

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早速トランジスタの交換を行います。初めにトランジスタ選別残り品の確認を行います。ペア品とならないNo31を選択しました。

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ユニバーサル基板を使った組立の際にいくつかルールを決めていますが、その1つが、「交換が想定される半導体の半田付けの際には、リードは曲げずにストレートの状態で半田付けを行う」というものです。配線の手間を少なくするためには、リードを折り曲げて、接続が必要な部品のリードへ接続をしたいところですが、後々の修理対応時の効率を考えていつも守っています。今回もこのルールのおかげで修理がすんなりできました。写真は半田吸い取り網で半田を取り去った状態です。この状態では該当のトランジスタは簡単に抜き取ることができます。

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交換後に再半田しようとしたところ、エミッタ抵抗のリードが簡単に折れてしまいました。理由はわかりませんが、この抵抗も合わせて交換しました。

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修理はわりときれいにできました。

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動作確認

初段のみ切り離した状態で+/-12Vを入力して、初段の動作を確認しました。各部の電圧は以下のとおりで、正しく動作していることが確認できました。

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しかし、なぜ初段の定電流源のトランジスタが壊れたか想像ができません。一部の電線を接続せずに確認を行った際い配線が接触してしまったくらいしか考えられません。続いて、初段出力と2段目の入力を接続しなおし、帰還も正しく接続して総合動作確認をおこないました。ユニバーサル電源の仕様上、終段へは+/-6Vを入力しています。確認結果は以下のとおりで、アンプが正しく動作していることが確認できました。

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結構修理に手こずりましたが、原因がわかってみればたいした事ではありませんでした。次回は修理基板をシャーシに組み込み動作確認を行います。

 

つづく(製作編24)

A級バランスHPアンプ製作(製作編22)

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製作編22

ゲイン変更後の確認で、4チャンネル目のヘッドフォンアンプで不具合が発生したため、原因を特定して修理します。

おさらい

ヘッドフォンアンプのゲインが高すぎて、ボリュームの調整範囲が狭いためゲインを9.2倍から2倍に下げました。4チャンネルあるヘッドフォンアンプの最後のチャンネルの動作確認で、出力が-9Vに貼り付く不具合が発生しました。ゲイン変更の作業時のミスを疑い、基板を外して確認を行いましたが目視の範囲では特に異常は見つけられませんでした。最初にゲインを1倍まで下げた際の動作確認で発振しましたが、その時に過電流が流れてトランジスタがとんだ可能性もあります。

原因特定1

仕方がないので、基板を再度シャーシに取り付けて、電圧増幅段の電源(+/-12V)のみを入力して、各部の電圧の確認を行いました。この基板には正常に動作しているチャンネルのアンプ(amp3)も実装されているため、正常回路の電圧の確認もできます。

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早速電源を入れて確認を行います。終段の電源が入っていないため正常に動作している回路の電圧も通常動作時と異なります。各部電圧は正常動作しているamp3と修理対象のamp4の両方の電圧を確認しました。下記が確認結果です。黒文字表記は通常動作時の電圧で、朱文字が今回確認時のamp4の、朱文字括弧内がamp3(正常回路)の電圧です。

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各数値を確認していきます。初段差動アンプの総電流は2mAと正常レベルです。但し、差動アンプの両出力電圧が電源電圧に貼り付いていることから、負荷抵抗に電流が流れていない事がわかります。この初段の2mAはどこから流入しているのでしょうか?2段目の差動アンプの総電流は、エミッタ抵抗に電圧ドロップがないので流れていません。しかし、ドライバにつながる負荷抵抗の電圧ドロップからこの負荷抵抗には約4mAの電流が流れています。終段のバイアス用のトランジスタの両端には電圧がかかっていないため、ドライバのベース回路から流入しているとしか考えられません。さらにその電流は終段のベースから流れ込むとすると、この回路付近(2段目~終段)の電圧のつじつまがあいますが、その電流を供給可能なラインは帰還抵抗しかありません。仮に帰還抵抗から4mA流れ込むとすると、帰還抵抗の両端電圧とつじつまが合いません。ここでこの推論は破綻してしまいました。このままやっていても埒があかないので、再度基板単品で検討を行うことにしました。

原因の特定2

再度基板を取り出して、部品面、半田面を自由にプローブで当たれる用に基板にスタッドを取り付けました。

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電源はユニバーサル電源から供給します。終段(+/-6V)の供給のオンオフが簡単にできるので検討には好都合です。いつものとおり、過電流保護を設定しました。+/-12Vは100mAに、+/-6Vは200mAに設定しています。

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確認は帰還を外して各段ごとに行うことを考えています。初段の単体確認を行う時の2段目の入力の処理はどうすべきか悩みます。エミッタとショートして2段目のトランジスタをカットオフさせておけば問題ないでしょうか?その際に終段の電源はオンしたら問題ありそうです。具体的な対応は、仕切り直して次回に行います。次こそ原因を特定して修理を終わらせたいとおもいます。

あとがき

9月の末から台湾旅行(この記事を書いている前の週末に2泊3日で強行)進行を組んでいました。オーディオイベント記事も含めて8記事分です。8記事分の最後が今回の記事でしたが、見ていただいたとおり少し息切れしてしまいました。次回からは通常の進行に戻ります。以上、今回進展が少なかった事の言い訳でした。

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つづく(製作編23)

A級バランスHPアンプ製作(製作編21)

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製作編21

動作確認で発覚した3つの不具合の原因を特定して対策を行います。

3つの不具合

4回分イベントレポートを入れましたので、思い出すために前回の「A級バランスHPアンプ製作」記事で確認した3つの不具合についておさらいします。

・バランス出力はとんでもなく変な音

・アンバランス出力にはハムが聴こえる

・ゲインが高すぎて、ボリュームのコントロール範囲が著しく狭い

バランス出力の変な音

具体的には、音に広がりがありませんが単純なモノラルの音とも違います。ヘッドフォン出力の配線間違いの可能性が高いです。ちゃんと確認したはずなのにと思いつつ手順を思い出してみました。確認が抜けていた点に思い当たりました。4極のヘッドフォンケーブルの端子間の接続です。ヘッドフォン側が3.5mm4極で、アンプ側が2.5mm4極仕様のため、確認せずに同一の並びと考えて4極ジャックの端子仕様確認をしましたが、改めて確認をしてみました。その結果下記写真の仕様となっている事が判明しました。わざわざ両端で仕様を変えている理由は何でしょうか?

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改めて音を聴いてみました。僅かにハムが聴こえますがいい感じで鳴っています。但し、3つの不具合の3番目のゲインが高すぎて、ボリュームのコントロールがほとんどできず、ゲインが著しく高いことで、よりハムが目立っていると考えられます。

ゲインの調整

市販のヘッドフォンアンプを見てみると、いろんなヘッドフォンに対応するため、ゲイン切り替え機能を持っているものがあります。同様の対応をとる必要はないか?ともおもいましたが、たくさんヘッドフォンを買う予定もなく、万が一変更が必要な場合は設計を見直せばいいと考えて、現状のヘッドフォンに合わせてヘッドフォンアンプのゲインを見直すことにしました。音を鳴らしてうるさくて耐えられないボリュームの位置から少しあげたポイントをフルボリュームのターゲットとしました。ボリューム位置は9時の方向です。この時のボリュームの抵抗値は約130Ωでした。ボリュームの全抵抗値が2KΩなので、この比率で考えると、現状のゲインを6.5/100に下げる必要があります。一方ヘッドフォンアンプは正相アンプで、帰還抵抗が2.2KΩと18KΩなので、ヘッドフォンアンプのゲインは以下のとおりです。

ヘッドフォンアンプゲイン = 1 + 18 / 2.2 = 9.2

取り急ぎ、ゲインを1倍まで下げてみることとしました。

ゲイン変更改造

簡単に確認するために、帰還用の配線を帰還抵抗18KΩをスキップして差動アンプの入力へ配線し直しました。対応する回路図は以下のとおりです。

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具体的には、写真の紫のL字の配線の縦のラインが曲がっている部分が配線変更点です。

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アンプ基板を2枚とも取り外し、4チャンネル分の帰還用の配線変更を行って元通りに基板を取り付けて配線をやり直しました。緊張しつつ電源を入れると、接続したヘッドフォンからノイズが聴こえました。さてはと思い、出力をポケットオシロで確認したところ、発信波形が確認されました。帰還量が増えたため不安定になったと考えられます。

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この状態で、1枚だけ基板を外し、ゲインを少し上げて様子を見ることとしました。具体的には、上記でスキップさせた18KΩの帰還抵抗を2.2KΩに変更し、ゲインを2倍としてみます。この18KΩの抵抗の交換は比較的やりやすかったです。写真は解りにくいですが、中央の基板から長めの足が立っている部分に帰還用の紫の配線は半田付けすれば完了です。

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信号ラインの配線はせずに、電源の配線だけ行って発振の有無を確認しました。その結果ホット、コールドチャンネルともに発振が止まっていることが確認ができました。念のため、信号の配線を行って再度確認しましたが、問題ありませんでした。もう1枚の基板も取り外し同様の改造を行います。一旦電源線のみ接続し、先ほどと同様に発振の確認を行いました。コールドチャンネルは発振が止まり問題ありませんでしたが、ホットチャンネルの出力が-9Vに貼り付いていました。ホットチャンネルは、改造の際に壊してしまった可能性が高いです。再度基板を取り外し、パターン面を確認してみましたが、原因と思われる点は見つかりませんでした。なかなか思い通りいかないものです。

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私自身をクールダウンするために、続きの検討は次週とすることにしました。終段のトランジスタが壊れていない事を祈りつつ、次週原因の特定および修理を行います。

 

つづく(製作編22)

2017真空管オーディオフェア(番外編13)

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番外編13

前回につづいて、2017真空管オーディオフェアのレポートをします。

講演3

「オープンテープからデジタル録音のヒストリィ」のタイトルで加藤しげき先生の講演でした。

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企画はラジオ技術を発行しているアイエー出版です。サブタイトルは「フィールド録音から大ホールのビッグバンド録音まで」です。講演の紹介の前に恒例の再生システムの紹介をします。ラインアンプはマックトンのXX-5000です。2017年に発売された新製品です。

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パワーアンプもマックトンのMS-1500です。真空管アンプでありながら150W+150Wの出力を出すことができ、広い会場のデモにも安心して使用することができます。

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スピーカーは、講演1でも使用されたフォステクスのG-2000aです。能率90dB/Wmですがマックトンのパワーアンプが出力でカバーします。

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この講演はタイトルにもあるとおり、録音に焦点を当ててデモが行われました。私のオーディオの原点は小学生時代に買ってもらったビクターのモノラルラジカセRC-1000から始まった事もあり、録音に関しては他とは違う思いがあります。(RC-1000の写真を「ラジカセは少年の憧れだった」でみつけました。)

事前に配布されたデモのリストには、タイトル、使用楽器の他、録音形式、録音機、録音日、場所の情報が記載されていました。それでは加藤先生の講演を紹介します。

■Someday You'll Be Sorry

自己紹介もかねて選曲されたものと思われます。録音日は1998年11月でパイオニアの業務用DAT、D-9601にAIR-1を組み合わせて24bit/96KHzフォーマットで録音されたものです。加藤先生は、デジタル録音の際には今でこそ普通ですが、初期から24bit/96KHzのフォーマットにこだわってきたそうです。19年前の録音ですが、時代を感じさせない仕上がりでした。

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■Moanin'(Art Blakey In Japan)

録音日は1961年1月でAMPEX A-350を使ってモノラル録音されたものです。A-350は2スピード38cmフルトラックのオープンリールテープレコーダーです。マルチマイク録音をされたとの事ですが、コンデンサーマイクの音は良いが、当時はまだ信頼性が低く録音途中でノイズの発生を心配してドラムにのみ使ったとおっしゃってました。使用したマイクはSonyの37Aです。全くノイズはなく、ドラムもクリアに録音されていました。

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■Strolling Doggy

録音日は1959年6月です。録音機はTRK330/339です。TKRはテープレコーダー研究会の頭文字だそうで、この録音機のトランスポートは、この研究会が定期的に郵送配布する部品を個人が組み立てて完成させたものだそうです。現在のディアゴスティーニのようなシステムでしょうか?但し、アンプはそれぞれが自作して組み上げる必要があったそうです。テープレコーダー研究会についてネットで調べたところ、個人のブログにいくつかヒットしました。個人の入会も可能だったそうで、当時高嶺の花だったテープレコーダーを少しでも安く手に入れたいために入会された方もいたようです。TKR330の写真も探してみましたが、いいものがなく、下記個人ブログの録音現場の写真にそれらしいものを見つけました。「のだっちNEWS 2nd」の2006年4月20日のブログ中の写真です。参考にURLをシェアします。

http://xps.jp/~nodachi/newpage17.htm

音は古い録音にもかかわらず、生き生きした演奏が再現されました。講演の後で、TKRについて調べていると私の子供の頃のオープンリールテープレコダーへの憧れの気持ちが蘇りそれだけでも貴重なデモだと感じました。

■鉄道ドキュメント碓氷峠に挑むED42

録音は1959年8月で、旧信越本線熊の平ED42スイッチバックを録音したものです。この音源はFMで放送されたものの素材のため、ナレーションも入っていました。録音機はTRK自作デンスケで、19cm/2trです。熊の平での録音はいろんなチームがトライしたそうですが、総じて失敗したため貴重な録音になっているそうです。失敗した理由は熊の平駅付近に変電施設があり、その影響でマイクがノイズを拾ってしまう為だそうです。逆にこの録音が成功したのは、使用した録音機の録音時のEQ特性をクリスタルマイクの特性にたよっていて、結果的にノイズに強いマイクが選択された為との紹介がありました。録音時の苦労話として、使用した録音機はゼンマイ式でアンプ系のバッテリーは30分程度保ちますが駆動用のゼンマイは5分で切れてしまい、追巻きをするとノイズが入ってしまう事を紹介されていました。今では想像もできない現場の状況です。肝心の音ですが、ひぐらしの鳴き声からスタートし、機関車が近づき、けたたましい汽笛、物売りや乗客の声など、すごく懐かしい感じで聴くことができました。

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■まとめ

上記以外、東通工(現ソニー)のKP-3録音機を使ったもの、TASCAM 38HRの8トラック全てを使って24bit/96kHzで録音されたもの等、貴重な音源を沢山聴くことができました。記事を書いていて、改めて同じ講演をもう一度聴いてみたいと強くおもいました。少ないながらも録音機知識を得た後では、もっと違った聴き方できると思います。

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講演4

タイトルは、「ホーン型スピーカーと真空管アンプによる至福の世界」で新忠篤先生の講演です。企画はステレオサウンド社です。

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デモの目玉はGIPラボラトリーの12インチフルレンジユニットGIP-4165を使ったスピーカーシステムです。

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このスピーカーは、GEが1934年に発表した励磁型12インチフルレンジスピーカーTIA4165を忠実に復元したものです。デモの開始前にGIPラボラトリーの代表鈴木さんから復元時の苦労話が紹介されました。

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コーン紙の配合からスタートし、ブラインドテストで差が感じられなくなるまでに50回以上の試作を繰り返したとのことです。フィールド電源として7V/0.8Aが必要となりますが、励磁型スピーカーの音を聴くのは初めてなんので楽しみです。このユニットがフロントロードホーン+大型バッフルに取り付けられ、必要はないとのコメントがありましたが、今回はツイーターが乗せられていました。今回使用のバッフルサイズでは低域は40~50Hzくらいは出ているとのことでした。

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組み合わせられるパワーアンプは新先生製作のWE300Bプッシュプル単段アンプです。1部のデモの選曲は雑誌「球管王国」の試聴に使われるリファレンス音源からです。

■ビバルディーバイオリン協奏曲ホ短調RV.281第一楽章

音の印象は、中域が明瞭で低音が厚いです。

ムソルグスキー組曲展覧会の絵」バーバ・ヤーガの小屋

音源はステレオサウンドリファレンスCD第1段SSPH-3001です。音はスケール感が大きく、音が良く響きます。劇場で音楽を聴いているような雰囲気です。

美空ひばり「影をしたいて」

録音は1965年と古いですが、左右に定位するアコスティックギターの伴奏と、美空ひばりの歌声が生々しく再現されました。

デモの音は全般的に良く響き心地よいものでした。まだデモは続きますが、紹介は省略させていただきます。

まとめ

1週前のインターナショナルオーディオショウとは異なり、手作り感が満載で、客層も異なりとにかく大半が元気な年輩の方でした。この中に入ると私なんか若者の部類に入ります。2週に渡りオーディオイベントを見てきましたが、それぞれ違った観点で楽しむ事ができました。

 

おわり(番外編13)

2017真空管オーディオフェア(番外編12)

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番外編12

先週に引き続き、オーディオイベント真空管オーディオフェアに行ってきましたので2回に渡ってレポートします。

真空管オーディオフェア

今年は23回目で10/8と10/9の2日間、秋葉原損保会館で開催されました。主催は真空管オーディオ協会で後援は日本オーディオ協会です。そしてオーディオ関連の雑誌を発行する5社が協賛しています。イベントルームで主に雑誌社が企画する講演と平行してメーカーブースで展示が行われました。それではイベントルームの講演を中心にレポートします。

講演1

タイトルは「RCA845とWE300B/K Choke Drive Single Amp聴き比べ」です。企画は真空管オーディオ協議会で、昨年に引き続き柳沢先生の講演でした。

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初めに使用された機器の紹介をします。RCA845 K-Chole Drive Single Ampですが、講演前に配布された資料に詳細が掲載されていました。ビルダーにとってありがたい配慮だと感じました。

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RCA845に関して、イベント前に予習しておきましたが、その内容を簡単に紹介します。直熱3極管で、プレート電圧max=1250V, プレート損失=100Wです。送信管RCA211のグリッドピッチを変更して変調や音声電力増幅用に開発されたとのことで、送信機の変調部や劇場用のアンプに使用されたそうです。10V/3.25Aのトリタンフィラメント仕様で、ヒーターで30W以上も消費します。ここからは柳沢先生のお話ですが、最近RCA845はお目にかからないそうです。お金を積んでも無いともおっしゃっていました。その後cetron社が生産を引き継いだとのことですが、検索をしたところ、セトロン製のものでも1本\80,000の値段がついていました。

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つづいてWB300B K-Choke Drive Single Ampの詳細は以下のとおりです。

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WE300Bは紹介するまでもありませんが、Western Electric社製の音声増幅用の直熱3極管です。ヒーター仕様は5V/1.2Aで、プレート電圧max=350V, プレート損失=36Wです。あまりにも有名な球なので、柳沢先生のコメントは特にありませんでした。

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スピーカーは、FostexのG-2000aです。能率が90dB/Wmと広い部屋での真空管アンプの試聴には能率面で能力不足の懸念がありましたが、出力8Wの300Bのアンプでもなんとか鳴っていました。

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デモの中に、monoLPやSPレコードが含まれていましたが、それらの再生にはGEのバリレラカートリッジが使用されました。Variable Reluctanceが正式名称で、1940年代頃にRPX-040(シングルプレイ)、1950年代前半にRPX-050(トリプルプレイ/シングル)が販売されていました。それらカートリッジを使った再生時にはMJ2015.06で記事になったバリレラEQアンプが使用されました。

いろんな曲を聴かせていただきましたが、印象に残ったのは、BEN WEBSTER KING of THE TENORSからTenderlyです。monoLPなのでGRバリレラが使用されました。柳沢先生のベンウェブスターのテナーのサブトーンが良いとのコメントのとおり、人と楽器がいっしょになって絞り出しているようなサブトーンが魅力的な曲でした。RCA845+G-2000aの組み合わせは、中音域の厚みがもう少し欲しい気がしました。

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300Bの試聴で印象に残ったものは、1960年代に発売された超HiFiシリーズのレコードからTony Mottola/A LATIN LOVE-INのThe world of Your Embranceです。通常6mm幅のテープで録音されるものを、35mm幅のシネテープを使用し、LPサイズの盤を45回転で回す仕様となっています。音は、当時の頑張って録音された感が伝わり楽しめました。

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昨年に続き、青江三奈をもってこられました。昨年は伊勢佐木町ブルースですが、今回は、デビュー曲の「恍惚のブルース」です。発売は1966年とのことです。再生はLP盤が使用されましたが、青江三奈のハスキーな歌声が魅力的に再生されました。

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最後に瀬戸カオリさんのライブが行われました。瀬戸さんのプロフィールを見ると、舞台女優からジャズ歌手へ転身されたとのことです。柳沢先生から事前に告知がありましたが、10/19に東京タックでゲストボーカルとして、11/29にKEYSTONE CLUB東京で福井ともみトリオとライブが予定されていると紹介されました。全3曲を歌っていただきましたが、ファン層を広げるには良い機会だとおもいました。

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再生のデモの全体の感想は、柳沢先生の録音当時の演奏者が伝えたい物をより良く聴く事への拘りが感じられて良い講演だとおもいました。

メーカーブース紹介

ここからは、メーカーブースを回り、気になった物を紹介します。

■美音技研

全段バランス増幅のフォノイコライザーアンプを展示していました。MCカートリッジの信号を初段FETで受けてE88CCをカスコード接続させています。特徴は、RIAA以外にffrr(Decca)、Columbia、SPレコード用の計4種類のイコライザーカーブをもっています。実際にそれぞれのレコード再生をデモしていましたが、対象のレコードを持っている方には魅力的なアンプだとおもいました。発売は2018年予定とのことでした。

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■花田スピーカー研究所

振動板がボイスコイルというキャッチフレーズで、新たなスピーカーユニットをデモしていました。

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比較試聴のスタイルで、B&W 508 Diamondと切り替えて音を聴かせていました。ユニットの手前にガードがあり、その後ろにユニット見えます。(写真は削除要請がありましたので差替えました。2017.10.12)

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■ハットオーディオラボ

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かわったデモを行っていましたので紹介します。この会社は真空管アンプや出力トランスを製造して販売していますが、今回のデモのソースとしてパイオニア製のカセットデッキを1.5倍速に改造した物をつかっていました。私の聴いたコマでは、一切アンプの紹介なしで、1.5倍速の再生をさせていました。ひさびさにカセットの音を聴きましたが、懐かしい音でした。1.5倍速の効果なのかしっかりした音でした。

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■SOLUTION LABO R

SLR方式を使ったスピーカーシステムのデモを行っていました。平面振動板を使ったドロンコーンとアシストウーファーの技術を使って、小口径ながらバランスの良い低音再生をねらっています。

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私が聴いたものは、SLR-EXTREMEで定価が650,000円のものです。写真の一番外側のスピーカーです。見た目のコンパクトさからは想像し難い、バランスの良い低音が再生され魅力的な音にまとまっていました。

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次回は、イベントルームの講演を中心にレポートします。

 

つづく(番外編13)

2017東京インターナショナルオーディオショウ(番外編11)

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番外編11

前回に続き、2017東京インターナショナルオーディオショウをレポートします。

ステラゼファン

このブースは初めての体験ですが、今回一緒に見学している仲間の提案によって訪れました。ここはStella Inc.とzephyrn inc.の共同ブースでどちらも海外オーディオ製品の輸入商社のようです。入場してまず目についたのは、VIVID AudioのスピーカーGIYA G1です。フェラーリイエローのカメレオンを連想するような独特な筐体、価格は約800万円もします。

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音に関するコメントは後に回します。入場した時には、イギリスのアナログシステムブランドSMEのCEOスチュアートさんが挨拶をしていました。ゼファンが取り扱いを始めたことによります。写真はSMEの新製品のレコードプレーヤーです。

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このブースの特徴ですが、アナログ展示に力を注いでいます。SMEはこのブースの新参ですが、ステラが企画開発を行っているTechDASのターンテーブルがメインです。さらにそれを強烈に印象付けたのは、その後に登壇したゼファン西川社長の紹介によるラッカー盤の演奏です。

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そのソースは、ステレオサウンド社からリリースされている「谷村新司<ベスト>」、ハリーベラフォンテ、以前にもデモして好評だった美空ひばりなどでした。特に谷村新司とファリーベラフォンテは、この講演の日ごとにカッティングしたものとの事で、スクラッチノイズがありませんでした。どの演奏もアナログオーディオ特有の安定した骨の太い音でしたが、再生に使用されたTechDASのターンテーブルによるところが大きいとおもいます。

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この再生音を支えるパワーアンプは、Constellation AudioのヘラクレスⅡです。バランス構成のモノラルパワーアンプで、出力段にN-MOS FETをつかった125Wのアンプを8基組み合わせて、総合出力1KWを叩き出す仕様となっています。なんとお値段はペアで29,000,000円でした。このような展示会でなければ体験できない高額なシステム構成です。ラッカー盤の再生が始まると、目の前にまるでステージが浮かぶような印象を受けました。

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このブースは初めてでしたが、会場は広く、超高級品が沢山並べられていて、それらを使った他では体験できないデモが良かったとおもいます。

パナソニック

日本の総合家電メーカーで唯一出展しています。昨年同様に、D棟1Fの離れた場所にポツンとブースを構えていました。パナソニックに関する事前情報は、SL-1200シリーズのターンテーブルが復活した事くらいでしたが、訪れてみるとターンテーブルの展示に一番スペースがとられていました。

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私が学生の頃に販売されていたSL-1200シリーズのモデルは、SL-1200mk2です。ネットで確認したところ発売は1981年で定価が75,000円とのことでした。ストロボスコープ、クオーツシンセサイザー連続ピッチコントロールダイレクトドライブモーターが特徴でした。

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現在販売されているものは2機種でSL-1200G(2016年9月発売、定価330,000円)とSL-1200GR(2017年5月発売、定価148,000円)です。

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両者の1番の大きな違いは、SL-1200GRでモータがダブルロータからシングルローター化されてトルクが下がり、影響を軽減するためプラッターの総重量を1Kg以上軽くしているとの事です。プレーヤ以外のラインナップはアンプ、スピーカーと揃っています。訪れた時間が早く、音は聴いてきませんでしたが、試聴室のセッティングは良さそうでした。

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LUXMAN

ブースに入ってまず目に付いたのが、focalのスピーカーMAESTRO UTOPIA EVOです。

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LUXMANで取り扱いを始めた為にデモに使用されていました。昨年は、B&Wの802 D3が使われていましたが、私の音の好みではありませんでした。講演前のフリーの演奏の音は、いい感じでしたが、スペックを確認したろころ、比較的広帯域を受け持つツイーターに、ピュアベリリウムインバーテッドツイーターが採用されていました。ベリリウムツイーターの音が耳になじんでいるのかもしれません。2017年10月発売予定で、価格は6,800,000円(ペア)です。講演が始まる前にデモのシステムを確認します。

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アンプは、昨年のデモにも使用されたM-900uです。モノラルで使用されていますが、アンプの詳細は、2016年10月7日の記事を参照ください。

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それでは、和田博巳先生の講演を紹介します。

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和田先生は、数年前にフランスのフォーカル社を数日に渡り表敬訪問した事があり、その時のフォーカル社の印象は、とにかく良い環境で設計生産されているとのことでした。デモは持参された音楽ソースに対して持参した理由を説明した上で聴かせていただきました。印象に残ったのは、2017年版のサージェントペパーズロンリークラブバンドです。4トラックの4本のマスターテープを一旦デジタル化して、それをデジタル処理でミックスダウンしたものだそうです。私が持っているオリジナルのCDと明らかに違う事がわかり、自宅のシステムでも違いを聴いてみたいと思って帰宅後にアマゾンで注文してしまいました。

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もう1枚は、2年前のアメリカのオーディオショウで多くのブースで演奏されていた物ということで、アラバマシェークスの「Sound & Color」から「Don't Wanna Fight」が演奏されました。このバンドは、黒人の女性ボーカル、ドラム、ベース、ギター構成のロックファンクバンドで、日本のオーディオショウでは演奏されないような曲とのコメントのとおり、HiFiシステムでじっくり聴くようの曲ではないと感じましたが、国民性の違いでしょうか?講演全体が単純に「いい音でしょう?」という聴かせ方でなかった点が良かったです。

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ヤマハミュージックジャパン

昨年のリベンジということでブースを訪れました。デモのやり方は昨年同様にコンパニオンの方の曲紹介による演奏形式です。昨年とは異なり部屋の低音の処理も気にならず、NS-5000はいい感じで鳴っていました。

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昨今のアナログレコードブームの影響なのか、アナログプレーヤーが参考展示されていました。

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私が学生時代に欲しくて買えなかったGT-2000を彷彿とさせるスタイルです。GT-2000は1982年発売で138,000円でしたが、このモデルの価格は遙かに高くなると予想されます。

まとめ

昨年と比べて人出がやや少ない印象でしたが、客層は外人、女性と昨年同様に多様でした。但し、若者が殆ど目につかず、オーディオは高級な趣味と再認識させられました。これだけの展示や講演を無料で体験できる事を考えると良いイベントだとおもいます。

 

おわり

2017東京インターナショナルオーディオショウ(番外編10)

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番外編10

HPアンプ製作は佳境ですが、昨年に引き続き東京インターナショナルオーディオショウを見学してきましたので、2回に渡ってレポートします。

2017東京インターナショナルオーディオショウ

今回は35回目で、9/29(金)~10/1(日)の3日間、有楽町の東京国際フォーラムで開催されました。私の自宅は小田急沿線ですが、新百合ヶ丘多摩急行に1回乗り換えで日比谷まで行き、そこから5分程で会場につきました。アクセスが良いです。今回は高校時代の同窓の仲間と事前に連絡をとって現地合流していっしょに見学してまわりました。

トライオード

昨年は、山崎社長の講演が大変良かったので、今回も訪れてみました。せっかくなので朝倉怜士先生の講演時間に合わせて入場しました。今回の講演の対象製品はミュージックサーバーcocktail audio X50とX35です。

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フロントには、スロットインのCDプレーヤと、7インチのTFTディスプレイがあり、内蔵するストレージに保存されたオーディオファイルをリモコンとこの表示パネルを使って検索して再生します。背面にHDMI端子を持ち、市販のテレビに接続すれば表示パネルの内容を大画面に写すことができます。

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X50とX35の違いは、X35はオールインワンタイプで100W+100Wのデジタルアンプが内蔵されているため、スピーカーを接続するだけで利用可能です。一方、X50はDACすら内蔵しないため、別途USB-DAC等のD/Aコンバーターが必要となります。無駄なくユーザーのこだわりのDACを使うことができる仕様となっています。価格はX50が380,000円で、X35が280,000円といいお値段です。朝倉怜士先生の講演の紹介の前に、今回デモで使用された機器を確認しておきます。スピーカーはスペンドールのSP200で、パワーアンプはTRX-M845です。昨年の講演で使用されたものと同じです。詳細は2016年10月7日の記事を参照ください。

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デモはX50で行われたため、D/A変換としてDAC212SEが使用されていました。オランダのDiDit High-End社製で、定価は450,000円です。DAC出力でバランス信号を生成するバランス出力タイプのDACで仕様面で好印象です。

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それでは、朝倉怜士先生の講演を紹介します。

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スピーカーやパワーアンプのデモと比べてミュージックサーバーのオーディオ的なデモは難しい面があると思いますが、それをカバーするように冒頭からゲスト紹介がありました。ケンバニストの塚谷水無子さんです。

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9/13(2017年)にキングレコードからリリースされたばかりの新譜BACH ORGAN WORKS2から「トッカータとフーガ」がデモに使用されました。

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このアルバムは、オランダの聖ローレンス協会のパイプオルガンが使用されたとの事ですが、1725年に製作されたもので、ヨーロッパ屈指のオルガンだそうです。小柄な塚谷さんが、大型のパイプオルガン挑むときの苦労話など楽しく聞かせていただきました。音は荘厳な感じで、使われたシステムと良くマッチしていました。その後は通常どおり朝倉先生持参の音楽ソースの演奏となりましたが、その中でStereo Soundが今年(2017年)の8月にリリースした太田裕美「心が風をひいた日」から木綿のハンカチーフが演奏されました。リマスタの際にダイレクトにDSD化されたとの事で、70年代の音源とは思えない鳴りっぷりでした。

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全般的に、パワーアンプTRX-M845とスピーカーSP200の音を聴いた印象ですが、オーディオサーバーX50を印象付ける講演の工夫が感じられました。

リンジャパン

老舗のメーカーなので知っていましたが、ブースを訪れるのは初めてです。写真のとおりすごくシンプルな試聴室です。

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今回聴いたものはEXAKTシステムです。構成としては、ヘッドユニットとEXAKTエンジン搭載のスピーカーです。スピーカーまで音楽信号をデジタル伝送し、スピーカーの中のEXAKTエンジンでデジタル処理で帯域分割して、スピーカー毎にD/A変換するマルチアンプのシステムです。

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デモされていたのは、フラグシップのKILIMAX EXAKTで、ヘッドユニットが機能により1,600,00~2,800,000円です。

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EXAKTエンジン搭載スピーカーは350/1でペアで7,500,000円もします。スピーカー内には6チャンネル分のアンプを内蔵しています。非常に高額なシステムですが、音は色付けがなく、こんな高いシステムに対しておこがましいですが、私のシステムの狙う音の方向と同じ様な印象で好感がもてました。

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フォステクス

オーディオ製作を行っている人にはこのブースは外せません。このコマのデモ対象は、先月発売された20cmフルレンジユニットFE208-Solとその関連製品です。その本題に入る前にYT88-Sol+FE88-Solのデモが行われました。

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従来のエンクロージャはYK-88-Solで、塗装色がパーシモンオレンジで好き嫌いが出そうな仕様でした。YT88-Solはショウ開催時点では公式発表されていないようですが、写真のとおり落ち着いた色の仕上げになっています。

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デモは永井龍雲のギターの弾き語り曲で、このスピーカーにマッチした選曲でした。ボーカルが明瞭で、フルレンジならではの定位感がよかったです。それでは本題のFE208-Solのデモを紹介します。20cmフルレンジユニットですが、-Sol型番が示すとおり、2層抄紙ESコーン、大型フェライト外磁型磁気回路、銅キャップが使用されています。マグネットは通常使用される物を2段重ねされていてユニット重量が8.7kgもあります。

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マグネットの内側には銅キャップが挿入されて低歪みの磁気回路に仕上げられています。

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この強力な磁気回路と軽量な振動系により、Q0=0.15の特性となっていてバックロードホーン用としてまとめられています。今回のデモでは、いっしょに製品化されたバックロードホーン型スピーカーボックスに取り付けられていました。ホーン長は190cmでこの組み合わせの際の能率は100dBを越えるとのことでした。ユニットが35,000円でスピーカーボックスが1台200,000円と1本あたり235,000円といい値段になっています。

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音は中域が明瞭で、低音はふっくらした感じで鳴ってました。合わせて製品化されたホーンツィーターT90A-Superが途中から追加されました。

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内磁型のマグネットが採用されていますが、最初はアルニコマグネット3個で企画スタートしましたが、価格が10万円を越える状況となり、2個に見直された経緯が説明されました。それでもオリジナル製品T90の2倍となっています。ネットワークは0.68uFのコンデンサ一発で接続され、その際のクロスオーバーは30KHzとの事でした。こんな高いクロスオーバーで有無の違いがでるか疑問でしたが、付けた時は低音も生き生きなっているように感じました。ツイーターの定価が39,000円なので、組み合わせ価格は274,000円となり、私の使っているNS-1000Mの2倍以上の価格になります。昔の感覚では高級スピーカーとなります。製品によらず1980年代の常識で考えると製品価格はありえない程高くなっています。売れる数を考えたら仕方ないでしょうか?少し残念だった点は、技術系の方の説明に共通している言えるようにおもいますが、せっかく部品等の現品を持参されて手に持つのであれば、もっとしっかり見せて欲しいとおもいました。部品現品を見られるのはこのような講演の魅力の1つだと思います。次回、つづきのレポートをします。

 

つづく(番外編11)