安定化電源製作(評価編12)

f:id:torusanada98:20180121153056j:plain

評価編12

電源の特性測定および結果の比較の続きを行います。

矩形波応答観測条件

ダミー負荷ジグへの入力信号を正弦波から矩形波に切り替えて、波高値が矩形波状の負荷電流時の出力変動をオシロで観測します。負荷電流は平均値を40mAとし、波高値を10mAと70mAで矩形波状に振っています。矩形波の周波数は1KHzです。被電源基板は前回紹介の測定条件と同様にチャンネルデバイダに搭載し、負荷電流は測定電流以外、電源ランプのみとしています。

ディスクリート安定化電源矩形波応答

位相補償コンデンサ値の決定をした際に観測済みなので簡単におさらいします。写真は+12V電源の矩形波応答5周期分の観測結果です。青のラインがダミー負荷の印加電圧で、負荷抵抗50Ωで表示電圧を割ると負荷電流となります。黄色のラインが電源出力変動をプリアンプで10倍に増幅した波形です。

f:id:torusanada98:20180121153137j:plain

写真のとおり、負荷電流の立ち下がりで大きなオーバーシュートが発生している点が特徴です。立ち下がり、立ち上がりをそれぞれ拡大してみます。

f:id:torusanada98:20180121153240p:plain

負荷電流立ち下がり時のオーバーシュートのレベルは約72mVppです。逆に立ち上がり時は7.4mVpp程度で良好です。紙面の関係で-12Vの波形は省略します。

三端子レギュレータ電源矩形波応答

電源基板を三端子Reg.仕様に載せ替えて同様に矩形波応答波形を確認しました。写真は+12Vおよび-12V電源の矩形波応答1周期分です。

f:id:torusanada98:20180121154402p:plain

等価出力インピーダンス特性と同様に+12Vと-12Vで応答波形が大きく異なります。+12V電源はレベルが静定するまでに矩形波半周期まるまるかかっています。次の写真は立ち下がり部の拡大波形です。負荷電流の立ち下がり、立ち上がり共にほぼ同等の波形です。

f:id:torusanada98:20180121153431p:plain

変動量は上記2枚の写真からは読みとれませんが約30mVppです。立ち上がり時の応答波形も拡大してみます。

f:id:torusanada98:20180121153532p:plain

写真から変動量のトータルレベルは約33mVppです。続いて-12V電源の負荷電流変化時の応答波形を拡大してみます。

f:id:torusanada98:20180121153638p:plain

変動量のトータルレベルは立ち下がり時が40mVppで、立ち上がり時が約33mVppです。矩形波の応答波形としては、今まで確認した中で一番良好です。

定電圧電源矩形波応答

最後に定電圧電源方式の物に載せ替えて矩形波応答を確認しました。

f:id:torusanada98:20180121153740j:plain

定電圧電源は、ドライバ段のトランジスタで負荷インピーダンスをhfe倍とした1次フィルタなので、1次フィルタのステップ応答波形となっています。変動量は47mVppとなっています。-12V電源も同じ応答をするので紹介は省略します。

特性と音の考察

オリジナル電源から三端子レギュレータ電源に載せ替えたときの音の印象は、派手な感じで高音の抜けが良く、低音は基音が明瞭と言うか、芯のある鳴り方でした。定電圧方式の電源に比べて少なくとも10KHz以下の領域のインピーダンスは圧倒的に低くなっています。低音の鳴り方の違いと、高音の抜けが良く派手な鳴り方の違いは、この特性差に起因していると推察しています。さらに電源をディスクリート方式の安定化電源に載せ替えた時の音の印象は、低音の鳴り方はそのままで、中域の響きがより美しく、鳴り方に奥行きが感じられました。三端子レギュレータ電源に比べてインピーダンスはやや高くなるものの可聴帯域の特性がフラットな事に起因しているのかもしれません。機会があれば、この比較の中にバッテリーも加えてみたいと思いました。ディスクリート電源の矩形波応答が良くなかった点は、ドライバで採用したトランジスタのCob特性に関連していると考えています。スペックは以下のとおりです。機会があればこれを定電圧方式電源で使用した2SC3422/2SA1359やさらに高速スイッチング用途のものに変えて確認してみたいとおもいました。

・2SC3851A:Cob=60pF → 2SC3422:Cob=35pF

・2SA1488A:Cob=90pF → 2SA1359:Cob=35pF

まとめ

現時点は、チャンネルデバイダの電源をディクリート方式のものにしています。音の評価の記事でも紹介したとおり、今まで気に留めなかった楽器の音がきれいに聴こえたり、低音が素直に伸びていることが新鮮で、普段聴かないCDをいろいろ引っ張り出して聴きまくっています。些細な変化かもしれませんが、オーディオ製作止められません。

 

おわり(評価編12)

安定化電源製作(評価編11)

f:id:torusanada98:20180118123107j:plain

評価編11

3種類の電源の特性を測定して、結果を比較します。

概要

電源の特性測定は、製作済みのダミー負荷用のジグを使用して行います。測定項目は以下の3点です。それぞれの項目ごとに結果の比較を行い、最後にまとめとして音質の評価結果と特性の比較結果の関連について考えてみます。

(1)負荷電流(DC)と出力電圧変動特性

(2)交流負荷(正弦波)と出力変動特性

(3)矩形波応答

測定システム

すでに紹介済みですが、測定システムのおさらいを簡単にします。希望の負荷電流を流す為にジグを製作しました。回路は以下のとりです。

f:id:torusanada98:20180118123125p:plain

+電源、ー電源用が独立していますが、回路構成は同じです。ジグ中のVRでDCの負荷電流を設定できます。Sig-Inに信号入力すると、その信号で波高値を制御する事ができます。測定システムのブロック図は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180118123201p:plain

早速測定を始めます。

DC負荷電流特性

測定は5mA刻みで、0~50mAのレンジで行いました。各負荷電流を流した際の電源出力電圧はマルチメーターで測定しました。測定時の被評価電源は、チャンネルデバイダに搭載し、電源の負荷は測定電流以外、電源ランプのみとしています。各電源の測定結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180118123238p:plain

フィードバックがかかっている2種類の電源は、さすが測定した負荷電流の範囲では電圧変動しません。結果をわかりやすくするため、電圧変動量をグラフ化してみました。

f:id:torusanada98:20180118123313p:plain

この結果から等価出力インピーダンスを算出します。安定化電源は出力が50mAの範囲ではほぼ電圧変動がしなかったため以下のとおり計算できます。

測定限界10mV / 50mA = 0.2Ω以下

定電圧電源の等価出力インピーダンスも算出します。電流の流れ初めの出力変動が大きいので、上記のグラフから傾きが安定する領域として15mAと50mAの差分で算出しています。

+12V定電圧電源:40mV / 35mA = 1.1Ω

-12V定電圧電源:40mV / 35mA = 1.1Ω

DCの等価インピーダンスでは、フィードバックがかかっている三端子レギュレータを含めた安定化電源方式が圧勝となりました。

正弦波負荷電流特性

各電源は上記のDC負荷電流測定時と同じ条件で動作させています。負荷電流は、平均値を40mAとして10mAから70mAの範囲で正弦波状に振っています。測定周波数範囲は10Hzから100KHzとしました。写真は+12Vディスクリート電源の100Hz電流負荷時の観測波形です。

f:id:torusanada98:20180118123357j:plain

青のラインがダミーの負荷抵抗にかかる電圧です。負荷抵抗は50Ωなので、この電圧を50で割ると負荷電流となります。黄色のラインが出力電圧変動をプリアンプで10倍に増幅した波形です。それぞれの波形の振幅は3Vppと2.4mVpp(24/10)となっています。この測定を3種類の+/-電源に対して10Hzから100KHzの範囲で行いました。それぞれの出力変動レベルをグラフ化してみました。出力電圧変動が聴感と合うように縦軸も対数表示としています。

■+12V電源出力変動

f:id:torusanada98:20180118123443p:plain

■-12V電源出力変動

f:id:torusanada98:20180118123521p:plain

興味深い結果がとれました。せっかくなので縦軸を等価インピーダンス表示に変換します。計算の方法は、電圧変動ピーク電圧を負荷電流変動ピーク値の60mAでわり算します。結果は以下のとおりです。

■+12V電源等価出力インピーダンス

f:id:torusanada98:20180416122103p:plain

■-12V電源等価出力インピーダンス

f:id:torusanada98:20180416122147p:plain

一番の特徴的な結果は、三端子レギュレータの+12V電源の等価出力インピーダンスが200Hz付近から上昇を始め、約3KHz付近でピークに達し、さらに周波数が上がると逆に下がっている点です。参考に+12Vディスクリート電源と+12V三端子レギュレータ電源の10KHz負荷電流時の観測波形を掲載します。(左右で測定レンジが異なります)

f:id:torusanada98:20180118124113p:plain

一方、三端子レギュレータの-12V電源はこのような現象は観測されず、素直な特性となっています。次に目につくのが、+/-12V定電圧電源は、低周波数領域で等価インピーダンスが高く、200Hz付近がら下がり始め、可聴帯域外では3種類の電源の中で一番低インピーダンスとなっています。写真は100KHz時の-12Vディスクリート電源と定電圧電源の波形観測結果です。

f:id:torusanada98:20180118123827j:plain

それぞれの電源の特性には一長一短がありますが、ディスクリート方式の安定化電源が可聴帯域内で比較的等価インピーダンスが低く、且つ一番フラットな特性となっています。特性測定は途中ですが切りがいいので続きは次回に紹介します。

 

つづく(評価編12)

ポケットオシロDSO203校正(番外編16)

f:id:torusanada98:20180114113132j:plain

番外編16

ポケットオシロスコープDSO203の校正が必要な事がわかり、電源の評価前に校正を行いました。

オシロスコープ校正

私のオシロスコープはDSO203というオープンソースのポケットオシロです。

f:id:torusanada98:20180114113156j:plain

購入時にマニュアルの手順に従い校正を行いました。その後、使い勝手を良くするためにネットからダウンロードしたファームウェア、Wildcatに書き換えています。今回電源の測定を行う中で、電圧の表示値がマルチメータと大きく差があることに気づきました。気になりネット検索したところ、ファームウェアの書き換えを行った後は、必ずそのファームの仕様に従った校正が必要と言うことがわかりました。実は、前々回(評価編9)の位相補償コンデンサの決定記事の波形観測から校正済みのオシロを使用しています。それ以前の結果とレベルが異なりますが、今まで絶対値が影響する測定は行っていないので大きな影響はありませんでした。せっかくなのでファームウェアWildcat4.5使用時の校正手順を紹介します。尚、この作業が面倒な方向けに、校正済み品の販売サイトも多数見つかりました。

校正手順

通常の動作状態で「■」キーを長押しすると校正モードに入ります。

f:id:torusanada98:20180114113241j:plain

初めに周波数の校正です。ポケットオシロの発振出力の周波数を1MHzに合わせます。先日導入した発振器の周波数カウンタ機能を使います。発振器の周波数カウンタモードは初めて使うので、事前に使い方を確認しました。機能設定をMSR-SELとして、Ext.INになっていることを確認します。次に機能設定を周波数測定モード「*F=」に変更してExt.INから信号を入力します。写真は20KHzの矩形波を入力している状態です。

f:id:torusanada98:20180114113435j:plain

この結果から、周波数調整は必要ない事がわかりました。それでは調整にもどります。同様な操作と接続で周波数を読みとろうとしましたが読みとれません。しばし思案しましたが、調整時の信号出力はTTLではと思い当たり、発振器の接続を変更しました。背面パネルにアタッチメントを接続するとTTL入出力モードが使用できます。

f:id:torusanada98:20180114113521j:plain

変換コネクタは、位置がずれても装着できるので注意が必要です。発振器の入力をTTL.INに切り替えます。

f:id:torusanada98:20180114113610j:plain

この接続変更により無事周波数表示がされました。

f:id:torusanada98:20180114113648j:plain

表示は、「1.000030MHz」と予想どおり調整の必要がない状態でした。念のため+/-のレバーで変更してみましたが、なんら変化がなく周波数調整機能は動いていないようです。結果OKなので「■」キーを押して次に進めます。

f:id:torusanada98:20180114113732j:plain

次は写真の表を全て埋めていきます。最初はch-Aのゼロ調整です。ch-Aにプローブを接続し、入力をGNDに落とします。「■」キーを押すと各レンジの調整が自動的に行われます。

f:id:torusanada98:20180114114323j:plain

写真は自動実行中の画面です。「ZERO」と「DIFF」欄に順番に数字が入ります。この動作が数回繰り返し実行されます。動作完了したら「>」キーを押します。

f:id:torusanada98:20180114114440j:plain

次はch-Aの50mV/Divレンジのレベル調整です。表の上部に250mV-300mVと表示されるので、この間の電圧をch-Aのプローブに印加します。表中にはオシロスコープが認識する電圧が表示されるので、この値を実際に入力している電圧に合わせます。尚、写真は電圧未入力状態の為、3mV表示となっています。

f:id:torusanada98:20180114114536j:plain

写真は0.1Vレンジ調整時のものですが、0.6Vの印加電圧に対して表示は608.8mVとなっています。+/-レバーを使ってこの表示を600.0mVに合わせます。尚、入力電圧を上限値にすると校正誤差が減ると考えられるので、できる限り上限の電圧を入力して調整を行いました。「>」キーで次のレンジに進みます。この操作を繰り返し全レンジの校正をします。私は電圧の入力にユニバーサル電源を使用しましたが、要求電圧が高くて作れない場合(10Vレンジは50-60Vを要求)は、準備できる最大電圧を入力し、その数値に合わせました。ch-Aの全レンジの調整が終わると再度ch-Aの調整をやり直すか確認が入ります。

f:id:torusanada98:20180114114632j:plain

次に進める場合は「>」キーを押します。同様の手順でch-Bの校正も完了させます。

f:id:torusanada98:20180114114804j:plain

表が全て埋まった状態で「>」キーを押すとch-Bの調整をやり直すか確認が入ります。

f:id:torusanada98:20180114114905j:plain

「>」キーで次に進めると、調整結果を保存するかの確認メッセージが表示されるのでバッテリーモードの結果として保存しました。これで校正は完了です。

f:id:torusanada98:20180114115000j:plain

調整後にch-Bに36Vを入力してみましたが、正しく校正が行われていました。

f:id:torusanada98:20180114115053j:plain

次回は校正後のオシロを使って3種の電源の特性測定を行います。

 

おわり(番外編16)

安定化電源製作(評価編10)

f:id:torusanada98:20180110223950j:plain

評価編10

3つの電源をチャンネルデバイダに搭載して音質の比較を行います。

3つの電源

音質比較の前に特性の測定を行う事も考えましたが、その結果により先入観をもって音質比較することに成るので先に音質比較を行う事にしました。音質比較を行う3つの電源について簡単におさらいします。

■定電圧方式電源

チャンネルデバイダオリジナル状態で搭載している電源です。回路は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180110224028p:plain

元々A級バランス方式のアンプの電源用に設計したものです。ツェナーダイオードの定電圧をトランジスタで電流増幅しています。積極的なフィードバックがかかっているわけではないので、出力インピーダンスは他方式と比べて不利ですが素直な特性が得られます。A級バランス方式のモノラル用のアンプの電源電流は理想的には一定となるので、出力インピーダンスの影響を受けにくい事を前提とした設計です。しかし、チャンネルデバイダで採用したオペアンプはA級動作をしているわけではないのでこの方式の電源は不利と考えられます。

■三端子レギュレータ採用安定化電源

三端子レギュレータは、比較的小容量の電源を構成する場合、お手軽な方法です。今回は正負ともにJRCの1.5A品を使っています。

f:id:torusanada98:20180110224118p:plain

出力には普段の使用時と同様に100uFの電解コンデンサを接続しています。三端子レギュレータ採用電源の音の私の印象は「良くも悪くもない」ですが、ディスクリート方式の電源との比較が楽しみです。

ディスクリート方式安定化電源

トランジスタを使用した一般的な安定化電源回路で、出力段にはサンケン電気の2SC3851A/2SA1488Aを使用しています。コレクタ電流の定格は4Aです。出力保護回路を搭載していないので、出力をショートすると即座にトランジスタが飛ぶので注意が必要です。

f:id:torusanada98:20180110224206p:plain

音質比較

音質の比較を行います。比較の方法はオリジナル状態(定電圧方式)で試聴ディスクを初めに聴きます。

f:id:torusanada98:20180110224308j:plain

次に三端子レギュレータ方式の電源に載せ替えて音を聴きます。

f:id:torusanada98:20180110224406j:plain

周辺部品とのクリアランスの考慮をしないで部品配置をしてしまったため、ヒートシンクとヒューズホルダの端子間のクリアランスが殆どありませんでした。仕方がないので、ヒューズホルダの端子を折り曲げてクリアランスを確保しました。

f:id:torusanada98:20180110224451j:plain

最後にディスクリート安定化電源に載せ替えて音を聴きます。

f:id:torusanada98:20180110224608j:plain

音質比較は載せ替え後の音の印象となります。

三端子レギュレータ電源

初めにBJ ONEから「はげ山の一夜」です。第一印象は音が派手に聴こえます。ブラス(高音)の抜けがいいです。音がオン状態で聴こえる為か、奥行き感が後退したように聴こえます。次にBJ TWOから「夢のマルディ・グラ」です。出だしのドラムの音に張りが感じられます。ベースの音がクリアで弦楽の響きも美しいです。

f:id:torusanada98:20180110224959j:plain

次は井筒香奈恵LINDEN BAUMから「氷の世界」です。ボーカルがオン状態で聴こえ、声に暖か味が感じられます。2曲目の「無意識と意識の間で」では、ピアノの響きが美しいく聴こえます。以上が定電圧電源を比較元とした三端子レギュレータ電源の音質比較結果でした。

f:id:torusanada98:20180110225105j:plain

ディスクリート安定化電源

BJ TWOの「夢のマルディ・グラ」を聴きます。中域の響きが美しいです。音の分離が良いからか、いままで意識に留めなかった楽器の音が聴こえます。重低音域まで素直に伸びている印象です。次にBJ TWOから「アルルの女」を聴きます。三端子レギュレータ版に比べてブラスの音が耳につかない印象です。エレキギターの音の分離がいいです。最後に井筒香奈恵LINDEN BAUMから「氷の世界」を聴きます。ピアノの音の響きがきれいです。ボーカルが比較的オン状態ですが、奥行き感もあります。

三端子レギュレータとディスクリート比較

改めて1枚のディスクで2つの電源の音の比較をします。音源は八神純子ベストセレクションから「夢見る頃を過ぎても」です。

f:id:torusanada98:20180110225228j:plain

最初に三端子レギュレータ版で音を聴き、ディスクリート方式の安定化電源に切り替えて音の印象を確認しました。先の印象と同じで中域の音の分離が良く、小音量の楽器の音がきれいに鳴ります。三端子レギュレータ版のボーカルは前へ出ますが、ディクリート方式は程良い奥行き感があります。

まとめ

私の印象は、ディスクリート版安定化電源の音の方が良く聴こえました。当面チャンネルデバイダの電源はディスクリート版安定化電源としたいとおもいます。次回は3方式の電源の特性比較をする予定でしたが、ちょっとしたトラブルが発生したので番外編をはさみます。

 

つづく(番外編16)

安定化電源製作(評価編9)

f:id:torusanada98:20180108104614j:plain

評価編9

安定化電源の矩形波応答を使って、位相補償用コンデンサ容量を決定します。

安定化電源位相補償

2回に渡り番外編を入れましたので、安定化電源回路のおさらいをします。正負電源回路は素子の極性以外は共通なので、正電圧電源回路のみ再掲載します。

f:id:torusanada98:20180108152147p:plain

回路図中のC3が位相補償用にコンデンサです。現状はC3を0.01uFとしていますが、容量を増やすと高域のゲインが下がり、それに連れてレスポンスも下がります。評価編4で1KHzの矩形波応答波形を掲載しましたが、改めて観測した結果を掲載します。

f:id:torusanada98:20180108104718j:plain

青のラインが負荷抵抗への印加電圧で、負荷電流を示します。黄色のラインが出力電圧の変動を示しています。負荷電流値の立ち下がりで大きな負荷変動が観測されました。

負荷電流立ち下がり時の応答

現状の位相補償コンデンサ容量(0.01uF)の状況を認識するために、2倍の容量としたときの応答波形の比較をします。コンデンサは現状付いているものと同じ物を半田面に仮付けしました。

f:id:torusanada98:20180108104801j:plain

負荷抵抗に印加した矩形波は1KHz/2.5Vppとしたので、電流換算すると50mAppの振幅となります。それでは初めに、電流立ち下がり時の応答波形をコンデンサ追加前後で比較します。最初は負荷電流が下がりでフィードバックがかかるまでの応答比較です。電圧変動は黄色の波形で、プリアンプで10倍に増幅しているため、それぞれ72mVと80mVの電圧変動量です。

f:id:torusanada98:20180108151205p:plain

次はフィードバックがかかり過度に応答している波形の比較です。

f:id:torusanada98:20180108151306p:plain

電圧変動量は、440mVと400mVで容量を増やした方が10%下がっています。続いては過度の応答からリカバリするタイミング比較です。

f:id:torusanada98:20180108151347p:plain

0.02uF時の電圧カーソル位置が間違っていますが、オリジナルの電圧変動量は、372mVで0.02uF時は320mVです。リカバリ時間は15.4uSと28.5uSで圧倒的にオリジナル容量時の方が復帰が早くなっています。このメカニズムを理解するためにC3=0.02uF時のTr3のコレクタ電圧をモニタしました。

f:id:torusanada98:20180108105038j:plain

負荷が軽くなると出力電圧が上がり、それに伴いTr3のベース電圧が上がりIbが増え、Icも増えます。C3の電荷はコレクタ電流で強制的に放電されます。出力電圧が所定の電圧に戻るとIb、Ic共に減少し、コレクタ電位が元の電圧に戻ろうとします。戻る速度はC3の容量が小さい方が早いため、終段トランジスタの寄生容量分をチャージして出力電圧を上昇に転じさせる点で不利になります。一方、C3の容量が大きい場合は出力電圧を上昇に転じさせる点では有利ですが、その後出力電圧を所定の電圧に復帰させる点では不利になります。それぞれの波形の違いを理解するために下記の時間と電圧で比較を行いました。

f:id:torusanada98:20180108151630p:plain

f:id:torusanada98:20180108151720p:plain

C3=0.01uF時のt2が大きな値となっている事で電圧変動量v2が大きくなります。一方、C3=0.02uF時のt3が大きな値となり電圧の復帰までの時間がかかります。

負荷電流立ち上がり時の応答

同様に両容量時の応答波形を比較します。

f:id:torusanada98:20180108151529p:plain

出力変動、リカバリ時間ともに0.01uF時の方が良好です。C3の容量が小さくTr3のコレクタ電位の応答が早い事が良好な結果に寄与しています。負荷電流立ち下がり時と同様に応答波形をパラメータ別に比較します。

f:id:torusanada98:20180108151811p:plain

f:id:torusanada98:20180108151850p:plain

まとめ

負荷変動時の電圧応答の仕組みがおおよそ理解できました。このC3容量2つの比較では一長一短があり、レベルの差も大きくないため、オリジナルの容量(C3=0.01uF)で一旦進める事にします。次回は製作した電源をチャンネルデバイダに搭載し、音の比較をします。

 

つづく(評価編10)

中華製発振器導入(番外編15)

f:id:torusanada98:20180103164240j:plain

番外編15

中華製発振器を導入しましたので経緯と使い勝手を紹介します。最後に改造もしてしまいました。

発振器

今まで使ってきた発振器は、地味な機器なのでお金をかけたくないと考えて、家内にKENWOODのAD-203Dをオークションで落札してもらったものです。1万円を渡し、落札金額との差額が手数料としました。この発振器を1年程度使ってきましたが、一番使用頻度の高い1KHz~10KHzレンジの出力レベルが不安定で、騙して使うのも限界を感じてきました。ケースを開けて基板を見てもディスクリート構成で回路図もないため手がだせませんでした。そんな時、別件でアマゾンを検索していると、中華製の発振器に目がとまり、気づけば注文を完了していました。

中華製発振器

購入したものはKKmoonのデジタル信号発生器デュアルチャンネル任意波形周波数計200MSa/s 25MHz 7,899円というしろものです。注文して中1日で商品が届きました。

f:id:torusanada98:20180103164320j:plain

無地のダンボールに最低限のシールが貼られているだけのシンプルな梱包です。中身が入っているのか心配になる程軽いです。あけてみると、本体の上にUSBケーブルと8cm CDが見えます。

f:id:torusanada98:20180103164432j:plain

中身は、本体、ACアダプタ、USBケーブル、BNC-ワニグチケーブル2本、ソケットアダプタ、8cmCDです。

f:id:torusanada98:20180103164535j:plain

これだけのセットを8千円以下で販売されてしまうと、日本メーカーは太刀打ちできないとおもいますが、あとは品質と使い勝手次第です。早速電源を入れてみます。

f:id:torusanada98:20180103164631j:plain

2列の液晶表示は視認性はいいです。その隣に3個のLED表示があります。写真ではわかりにくいですが、セット内部で光漏れしていて全てが点灯しているように見えます。上からCH1, CH2, OUTです。その横に6個のSWと、ダイヤルが配置されていますが、クリック感と回した感触ともに良好です。基本操作はPgUpとPgDnで設定項目を切り替えて、ADJUSTつまみで希望の設定を選びます。設定項目は液晶表示の下段に表示されます。希望の設定が数値の場合は、上段の三角キーで希望の桁に移動してADJUSTつまみで数値を設定します。表示上段は写真のとおり常に周波数が表示されているようです。頻繁に使用する設定は、SHFTキーと他5個のキーの組み合わせで設定します。CH1/2は操作対象のチャンネル切り替えで、設定されているLEDが点灯します。SETは2段表示される設定項目の操作対象を上下で切り替えます。WAVEは出力波形の選択項目に、AMPLは出力レベル設定項目に切り替えます。OUTは出力のオンオフ切り替えです。この切り替えはリレーが使用されていて電源オン時とオンオフ切り替え時にリレーの動作音がして格好いいです。このように操作性はよくありませんが、慣れればなんとかなる範囲です。以下主な設定と出力波形の確認です。

■1KHz位相差90°

f:id:torusanada98:20180103164721j:plain

f:id:torusanada98:20180103164820j:plain

■1KHzDCオフセット100%

f:id:torusanada98:20180103164906j:plain

f:id:torusanada98:20180103165006j:plain

■1KHzCH2矩形波

f:id:torusanada98:20180103165102j:plain

f:id:torusanada98:20180103165151j:plain

■1KHzCH2三角波

f:id:torusanada98:20180103165237j:plain

f:id:torusanada98:20180104072634j:plain

■高周波出力波形(1MHz)

f:id:torusanada98:20180104072710j:plain

■高周波出力波形(10MHz)

f:id:torusanada98:20180104072738j:plain

他にもスイープ設定や、ゲート機能、周波数カウンタなど豊富な機能を持っています。機能面で不満に思った事は出力調整のミニマム値が0.2Vな点です。ATT機能があれば尚良かったとおもいます。

LED表示光モレ改造

上の暗い状態の写真が、人が見た印象に近いです。購入して早々ですが、改造してみる事にしました。ケースを開けるためには、ボトムカバーの4本のねじを外します。

f:id:torusanada98:20180104072900j:plain

この状態でトップカバーを上に持ち上げるとカバーがはずれます。次にフロントパネルを外しますが、ボトムカバーにかかっている爪を折らないように注意します。フロントの基板と本体の基板は4種のハーネスで接続されていますが、外す前にマーキングして組立時の差し間違えを防ぎます。本体の基板と正面パネルの基板は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180104072945j:plain

f:id:torusanada98:20180104073022j:plain

次に正面パネルのLEDが実装された基板を外します。

f:id:torusanada98:20180104073057j:plain

案の定、光モレの対策は一切されていません。対策をどうするかしばし考えましたが、以前、ビバホームで購入した端末保護キャップが使えるのではと思い立ちました。

f:id:torusanada98:20180104073129j:plain

太さは2.0mm, 2.5mm, 3.0mmの3種類を持っていましたが、LEDの根本まで差し込むためには、3.0mmを使う必要がありました。このキャップを適当な長さに切ってLEDにかぶせました。写真は2個のLEDに被せた状態のものです。

f:id:torusanada98:20180104073209j:plain

基板をフロントパネルに取り付けると、構造上キャップは外れなくなるためキャップの固定はしません。基板を元通り取り付けますが、取り付け用のネジは、ボトムカバーのものも含めて全てタッピングのため優しく締め込みます。組立後、暗い中の表示は以下のとおり改善できました。写真はCH1が選択されています。

f:id:torusanada98:20180104073332j:plain

任意波形の機能等、まだ紹介しきれていませんが必要に応じて確認したいと思います。早速、次回の安定化電源製作の評価編から使用したいとおもいます。

 

おわり(番外編15)

自作アンプで年末を聴く2(番外編14)

f:id:torusanada98:20180101104320j:plain

番外編14

一昨年に引き続き、昨年製作したアンプで年末特番を聴きました。

昨年の製作

昨年(2017年)は、NS-1000Mのマルチアンプ駆動化とA級バランスHPアンプの製作に時間をかけたため、具体的なオーディオ製作記事としては下記の5本となりました。

・01/06公開開始「音楽の女神への挑戦」

・02/21公開開始「バランス変換ボリューム2」

・06/20公開開始「チャンネルデバイダ製作」

・07/11公開開始「A級バランスHPアンプ製作」

・11/10公開開始「安定化電源製作」

それぞれ簡単に振り返ってみます。

音楽の女神への挑戦

f:id:torusanada98:20180101104355j:plain

2017年最初の製作記事で、構想編のアイキャッチはお駄賃1000円で娘に書いてもらったミューズ神の一人、(テルプシコラー)です。正確には改造記事で、元々JRCの高級オーディオ用オペアンプMUSES01を使って製作したバランスボリュームと、三端子レギュレータを使用した電源回路をそれぞれディスクリート化して音質勝負したものです。MUSES01は単価3,500円とオペアンプとしては高価で、音もそれなりに気に入っていました。

f:id:torusanada98:20180101104438j:plain

そのオペアンプディスクリート化するために、4チャンネル分のA級DCアンプを製作しました。電源はツェナーダイオードトランジスタを組み合わせた定電圧回路構成です。元々大型の基板に全回路を実装していましたが、この改造を期に標準基板へ電源とアンプを分けて実装しました。4チャンネルのディスクリートアンプはそれぞれボルテージフォロワで動作させてその出力を4連ボリュームで受けて、パワーアンプ用にバランス出力します。独断による勝負結果は、ディスクリート方式に軍配が上がりました。現在はシステムをマルチアンプ構成としたことで、このバランスボリュームは棚に眠っています。

バランス変換ボリューム2

f:id:torusanada98:20180101104520j:plain

2017年2本目の製作記事です。構想編のアイキャッチは我が家の2匹のスコティッシュホールドの「ちょび」と「黒ちょび」です。この製作も正確には改造記事です。猫の巣窟ロフトに眠るSONYのチューナーを現行システムで少しでも良い状態で聴くためにバランス変換ボリュームをディスクリート化しました。

f:id:torusanada98:20180101104605j:plain

当初EL34ppアンプで採用したバランス方式で製作を進めましたが、DCレベルの安定性に欠けることから記事の途中で設計変更を入れて完成させました。電源は非力なトランスから、現在標準で使用しているトロイダルトランスへ変更して強化をしました。普段はアンバランス出力のソースを聴かないため棚に眠っています。

チャンネルデバイダ製作

f:id:torusanada98:20180101104707j:plain

2017年最大の製作記事です。実験1でフルレンジユニット2本を使った2Wayスピーカーシステムを構築し比較元のスピーカーとしました。実験2でバラックで組み立てたチャンネルデバイダを使ったお試しのマルチアンプシステムで実験1のスピーカーシステムを鳴らして音質の比較を行いました。結果が良好だったため、意を決してNS-1000Mをマルチアンプ使用できるように実験3で改造し仮の音だしをしました。

f:id:torusanada98:20180101104750j:plain

実験4で実験1で壊してしまったA級BTL_DCパワーアンプを修理し、チャンネルデバイダの製作でこのシステムを常用できるようにバラック状態のチャンネルデバイダをケースに納めました。このシステムが現在(2017年末)の常用システムとなっています

A級バランス方式HPアンプ製作

f:id:torusanada98:20180101104840j:plain

ヘッドフォン使用を前提とした高音質を謳うポータブルオーディオがいくつか発売されていて、特色を出す為にバランス出力を持つ物が少なからずあります。そのヘッドフォンアンプに対応したバランス接続のヘッドフォンがそれに対応して販売されています。

f:id:torusanada98:20180101104932j:plain

A級バランス増幅のメリットを紹介している当ブログとしてはこのバランスシステムを無視はできないと考えてバランス対応のヘッドフォンの導入とA級バランス方式のヘッドフォンアンプの製作を行いました。結果は良好でしたが、普段音楽再生にはヘッドフォンを使わないため、現在は主にデスクトップTVの再生用に使用しています。

安定化電源の製作

f:id:torusanada98:20180101105024j:plain

今まで安定化電源回路設計、製作をした事がありませんでした。簡単に安定化電源を構築できる三端子レギュレータの実力判断の為にもアナログ安定化電源を設計製作をすることにしました。搭載対象は先に紹介したチャンネルデバイダ用の電源です。オリジナルで搭載された低電圧回路方式の電源を含めて3種類を比較評価して、3方式の中から改めて電源を選択します。本記事公開時点(2017-01-02)では記事は完結していません。今回はこれらの製作からA級バランスHPアンプを選択して、昨年に続き年末にデジタル放送される特別番組を聴いてみたいとおもいます。

システム

初めに昨年とほぼ同じですがシステムを紹介します。ソースはパナソニックのBDレコーダーからHDMIで映像音声を送り出し、それをHDMI CONVERTERで音声を光トスリンク分離し、USB_DACへ入力し、それをdual DACでアナログバランス出力します。この信号を2017年に製作したA級バランスHPアンプへ入力します。放送開始時間が待ち遠しいです。

f:id:torusanada98:20180101105120j:plain

視聴

前回に引き続き、まずは紅白聴きます。

f:id:torusanada98:20180101105214j:plain

前回はスピーカーで聴きましたが超低域ブーストで紅白はいまひとつでした。ヘッドフォンではあまり気になりません。曲によっては超低域がゆるい感じはしますが総じてあまり気になりません。デジタル放送になり生放送のメリットはあまりありませんが、それでも、バンドメンバー+紅白特設ユニットの演奏は楽しいと思います。印象に残ったのは、SHISHAMOの「明日も」です。高校生のブラスセクションとの競演でリード、ベース、ドラムスのバンドを厚くしています。演奏のうまい下手ではなく緊張+楽しさが感じられて良かったとおもいます。

f:id:torusanada98:20180101105314j:plain

紅白は途中ですが、Eテレの第九の演奏会に切り替えます。今回は2017年12月22日収録でクリストフ・エッシェンバッハ指揮の演奏です。昨年同様に超低域のブーストはされていないようです。ヘッドフォンならではの環境S/Nで演奏に没頭できます。バランス駆動ならではの明瞭な低音再生されますが、少し物足りません。やはり耳からのみのインプットからなのでしょうか?学生時代にオーディオ仲間が発売間もないパイオニアのボディソニックチェアを使っていましたが、今改めて試してみたいとおもいました。上の写真ではカナル方式のイヤフォンが写っていますが、少し前に買い足したものです。同じパイオニア同士ということもあり、2.5mm4極端子仕様も同じため、差し替えのみで使用可能です。

f:id:torusanada98:20180101105412j:plain

普通のヘッドフォンはセットした髪型が崩れるとおもい購入しましたが、そもそも崩れてこまるような事態があまりなく、装着感がいまいちの為あまり使っていませんでした。今回改めて聴きましたが、カナル方式による豊かな低音と明るい音作りがされてカジュアルユースには良いかもしれません。来年は何を作ろうかと考えつつ番組を終わりまで聴き続けます。

 

おわり(番外編14)