安定化電源性能改善(まとめ編)

f:id:torusanada98:20180524072316j:plain

まとめ編

製作した電源の特性のまとめを行い、載せ替えたチャンネルデバイダーの音質評価をおこないます。

特性改善結果のまとめ

音質評価の前に、今回の特性改善についてまとめをします。改めて新旧回路を掲載します。旧回路は各チャンネルトランジスタ3石(今はこんな言い方はしませんね)で構成しています。

f:id:torusanada98:20180524072415p:plain

ループゲインが低く、かつトランジスタのCobの影響を受けやすい回路構成となっていました。これらを改善するため、ドライバにCobの小さなトランジスタを選定し、かつダーリントン構成をやめました。さらに誤差アンプにオペアンプを使用してループゲインをかせいでいます。

f:id:torusanada98:20180524072446p:plain

特性比較まとめ

矩形波応答比較

波高値70mA(負電源観測時60mA)と10mA(負電源観測時0mA)1KHz矩形波状の負荷電流を流して出力電圧の応答をポケットオシロで観測しました。正電源はch1を負電源はch2の応答波形を代表して掲載します。左が旧電源、右が新電源の波形で、新電源の応答波形のみ、10倍のプリアンプを通して観測しています。

f:id:torusanada98:20180524072527p:plain

f:id:torusanada98:20180524072650p:plain

f:id:torusanada98:20180524072718p:plain

f:id:torusanada98:20180524072743p:plain

各チャンネルの過渡応答値は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180524072808p:plain

全チャンネルで改善する事ができました。

■出力インピーダンス周波数特性比較

波高値70mA(負電源観測時60mA)と10mA(負電源観測時0mA)正弦波状の負荷電流を流して出力電圧の応答をポケットオシロで観測しました。観測周波数範囲は、10Hz~100KHzで、その結果を等価インピーダンスに変換してグラフ化しました。正電源と負電源の比較結果は以下のとおりです。

■正電源出力インピーダンス周波数特性

f:id:torusanada98:20180524072839p:plain

■負電源出力インピーダンス周波数特性

f:id:torusanada98:20180524072907p:plain

旧電源の結果は、ch1とch2を代表として掲載しています。今回製作した電源は、正電源は測定範囲全域で、負電源は可聴範囲全域で旧電源に比べて低インピーダンスとなっている事が確認できました。正負電源ともにファンダメンタル帯域の改善量が大きく取れている事が特徴です。

音質比較

電源を入れ替えたチャンネルデバイダーをシステムに組み込んで音質を確認していきます。毎度代わり映えしませんが、システムブロック図を参考に掲載しておきます。

f:id:torusanada98:20180524072937p:plain

音を最初に聴いた感じは、大人しい印象です。このためボリューム位置をいつもよりもやや上げて聴きました。

■Take Me To The Mardi Gras/Bob James(BJⅡ)

f:id:torusanada98:20180524073017j:plain

中域のブラスの分離が良く、余韻が消えるまできれいに聴こえます。低音の印象はかわりませんが、普段よりボリュームを上げた事で、中域の改善とバランスが取れているように感じました。出だしのドラムが生き生き鳴ります。

■海風/風(海風)

f:id:torusanada98:20180524073056j:plain

出だしのアコースティックギターの音が暖かみがあり、リアルな感じで鳴ります。男性ボーカルも暖か感じで歌われます。

■冬京/風(海風)

ベースの音が素直に低域まで伸びます。ギラギラ感がなく、ベースの音がまろやかに聴こえます。

■卒業写真/井筒香奈江(RINDENBAUM)

f:id:torusanada98:20180524073132j:plain

ボーカルの定位が良く、音像が明瞭です。比較的ボーカルがオンな感じを受けました。余韻もきれいです。

■When You Wish upon a Star/Kenny Drew(Special)

f:id:torusanada98:20180524073204j:plain

ピアノの音がきれいに響きます。ギラギラ感が全くない為か、ハデさはありません。素直に鳴ります。

まとめのまとめ

音はハデさはなく、素直な感じです。評価の冒頭でも書きましたが特筆すべき点として、感覚的に従来と同じ音量で聴こうとした時のボリューム位置が上がった事です。電源の変更で、アンプのゲインが変わる事はありませんので、音の印象の差による変化と考えられます。さらに他の楽曲を聴いていくのが楽しみです。2018-4-15から全13回におつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編)

安定化電源性能改善(製作編5)

f:id:torusanada98:20180520120557j:plain

製作編5

基板が完成したので、チャンネルデバイダーの電源を載せ替えます。取り外した電源基板は、矩形波応答の再確認を行います。

チャンネルデバイダー

製作した電源を搭載するチャンネルデバイダーを簡単に紹介します。最近手をかけたのは、「実験バッテリードライブ」記事で2018-2-23~2018-3-23に掲載した現行電源とバッテリードライブの音質比較です。回路の改造については、「女神たちの争い」(2018-1-26~2018-2-20)でアクティブフィルタに使用するオペアンプをMUSES01からMUSES03に変更しています。参考に回路を再掲載します。

f:id:torusanada98:20180520120631p:plain

電源基板の載せ替え

現行の電源基板は、こんな感じで搭載されています。

f:id:torusanada98:20180520120803j:plain

これを今回作成した電源基板に載せ替えます。端子台の位置をほぼ同じにしたので基板の載せ替えはわけありません。載せ替え前に、電源基板の外観を比較してみます。

f:id:torusanada98:20180520120845j:plain

トランジスタ式の安定化電源は、各チャンネルの入力に4.7uFのフィルムコンデンサーを実装したので基板自体に迫力があります。今回の基板用に同じフィルムコンデンサーを4個購入していましたが、実装スペースの関係で搭載を断念しました。記事を書いていておもいましたが、全波整流用の電解コンデンサに並列接続して2個のみであれば実装できました。今後の楽しみにとっておきたいと思います。新基板をシャーシに実装するとこんな感じになりました。

f:id:torusanada98:20180520120958j:plain

入れ替え前は、ヒューズホルダと放熱器のクリアランスがあまりありませんでしたが、今回、放熱器を寄せて実装したため、クリアランスが広がりました。(アイキャッチ写真参照)前回の記事でもアナウンスしたとおり、音質の比較の前に、現行基板の矩形波応答の再確認を行います。

行基矩形波応答

この基板の製作のタイミングで、評価用にジグ基板を同時に製作しています。使い方に慣れていなかったため、結果に違いがでるかもしれません。そもそも4チャンネルのうち、ch1のみしか確認を行っていないため、これを機会に全チャンネルを再確認しておきたいとおもいます。

正電源ch1矩形波応答

今回再測定した結果は以下となります。

f:id:torusanada98:20180520121039p:plain

これは正電源ch1の結果で、立ち下がり時が4.64Vで、立ち上がり時が84mVでした。下記がいままで結果として掲載してきたものです。

f:id:torusanada98:20180520121115p:plain

結果として、どちらも10倍のプリアンプをとおした波形として、立ち下がり時が440mV、立ち上がり時が7.4mVとして記事に掲載していましたが、今回の確認から当時の測定もプリアンプを使用していなかった事がわかります。数値がやや小さい点は、負荷電流の振幅がやや小さい事に起因しています。いままでの記事の記載に関しては地道に修正をしていきたいとおもいます。ch2以降の今回の観測結果を掲載します。

■ch2矩形波応答

f:id:torusanada98:20180520121152p:plain

■ch3矩形波応答

f:id:torusanada98:20180520121228p:plain

■ch4矩形波応答

f:id:torusanada98:20180520121304p:plain

今回Tr式の負電源の矩形波応答を初めて観測しましたが、レベルは異なりますが、正電源の極性違いの応答となっていました。これらの結果を整理してみます。

f:id:torusanada98:20180520121356p:plain

通常の音楽再生時にはこのような矩形波応答は発生しませんが、今回の確認結果レベルを考えると精神衛生上あまり良いものではありません。この点も今回の製作の効果が期待できます。次回は、結果の整理を行った上で音質の確認を行います。

 

つづく(まとめ編)

安定化電源性能改善(製作編4)

f:id:torusanada98:20180516121258j:plain

製作編4

常用基板正電源ch3のインピーダンス周波数測定を行い、続けて最後のチャンネル負電源ch4の実装および通電確認、評価を行います。

正電源ch3インピーダンス周波数特性測定

測定条件は従来と同じなので説明は省略します。測定結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180516121335p:plain

試作、ch1、ch3とほぼ同等の特性となっています。試作回路は2kHz以上の帯域でインピーダンスがやや大きくなっていますが、矩形波応答対策の位相保証コンデンサオペアンプ負荷抵抗変更をしていない為です。どれも大変素直な結果となっています。

負電源ch4実装

最後のチャンネルの実装です。他のチャンネルと異なり、一番端の実装の為、電源ライン脇にGNDラインを他チャンネルと同じように引けません。従って、ch2の実装をそのまままねる事はできません。仕方がないので、出力引き出し用の列にGNDを引き込んで対応する事にしました。

f:id:torusanada98:20180516121432j:plain

この対応でオペアンプの負荷抵抗の実装は問題ありませんでしたが、基準電圧用のツェナーダイオードの実装を工夫しました。写真のとおり被覆ジャンパー線を使わずに実装する事ができました。部品面はこんな感じです。

f:id:torusanada98:20180516121539j:plain

心配していた片寄せして実装した放熱器は以下写真のとおりです。

f:id:torusanada98:20180516121644j:plain

特に問題はなさそうです。

負電源ch4通電確認

Volを3.8KΩ対1.2KΩの位置にプリセットして通電確認をします。入力はユニバーサル電源から-16.9Vを供給します。電源オンして出力を12.0Vに調整しました。調整後の各部電圧は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180516121736p:plain

負電源ch4矩形波応答

他チャンネルと同様に60mApp/1KHzの負荷電流時の矩形波応答を確認します。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180516121830p:plain

今回の波形は黄色のラインがオペアンプ出力をモニタしています。過渡応答値は、立ち下がり時が74.0mV、立ち上がり時が40.0mVでした。両者の数値の違いがオペアンプ出力を見るとわかるかとおもいましたが、数値の違いがそのまま誤差出力としてモニタされているだけで、原因の推定まではできませんでした。この結果も過渡応答値の一覧表へ追加します。

f:id:torusanada98:20180520164905p:plain

今までの結果と比べてやや良い値となっています。

負電源ch4インピーダンス周波数特性測定

このチャンネルも同様に測定を行います。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180516121938p:plain

ch2とch4はほぼ同じ結果となっています。試作の結果は全帯域でやや悪くなっていますが、正弦波応答のレベルをポケットオシロのVpp値を使った事による影響と考えられます。

パイロットランプ回路実装

これで実装が完了したかと思いましたが、パイロットランプの点灯回路実装を忘れていました。消費電力面では不利になりますが、全波整流回路の+/-から電力供給する事で、+と-電源のバランスを崩さず、且つGNDに余計な電流を流さずに済みます。2極の端子台位置は、現行の基板に合わせました。

f:id:torusanada98:20180516122015j:plain

念のため点灯確認を行います。ユニバーサル電源から+/-16.9Vを供給します。端子台へダイレクトにLEDを接続して電源オンします。

f:id:torusanada98:20180516122054j:plain

問題なく点灯しました。+/-電源を供給は初めてだったので、念のため4チャンネル分の出力電圧の確認も合わせておこないました。これも特に問題ありませんでした。今度こそ、全ての実装が完了しました。次回、チャンネルデバイダの電源の載せ替えを行い、先日の記事で書いたとおり、取り外した現行基板の矩形波応答を再確認します。

 

つづく(製作編5)

安定化電源性能改善(製作編3)

f:id:torusanada98:20180513085553j:plain

製作編3

常用基板負電源ch2の実装および通電確認が完了したので、特性の測定を行います。引き続き、正電源ch3の実装、通電確認を行います。

負電源ch2矩形波応答

今までの測定と同様にジグを使って矩形波応答を確認します。負荷電流は波高値60mAと0mAの1KHzの矩形波です。下記が観測結果です。

f:id:torusanada98:20180513085612p:plain

立ち下がり時の過渡応答値は、78.0mVで立ち上がり時は、46.0mVでした。前回の記事で作成した「結果一覧表」へ本結果を追加します。

f:id:torusanada98:20180520164420p:plain

今回の結果を見ると、試作基板負電源と全く同じ結果となっていました。転記ま違いかとおもい、波形のキャプチャを見直しましたが、微妙に数値が異なっている部分があり、この結果は正しい事が確認できました。傾向的に立ち下がり時の過渡応答値が大きく(78.0mV)なっていますが、ch4の結果に注目したいとおもいます。

負電源ch2インピーダンス周波数特性

今までの測定と同様に波高値0mAと60mAの正弦波を10Hzから100KHz振って応答波形を観測しました。

f:id:torusanada98:20180513085731j:plain

レベル観測は、前回の記事で説明したとおりポケットオシロのカーソル機能を使います。下記がインピーダンスの周波数特性の結果です。

f:id:torusanada98:20180513085826p:plain

結果を見ると、試作回路、三端子レギュレーター版と比べて可聴帯域内では、一番良い特性となっています。20KHz以上で三端子レギュレータ版の特性が良くなっているのは、出力段に取り付けた100uFの電解コンデンサの効果によるものです。音質比較がますます楽しみになってきました。

正電源ch3実装

ch3の実装は、完全にch1実装をまねるだけで済みます。正直なところ惰性の実装です。この油断がミスを招いてしまうのですが。唯一、考えた点は、全波整流回路から安定化電源への+電源の引き込みです。ch4のー電源の引き込みを考慮しつつ、配線が容易となるように、ブリッジダイオードの+出力へ配線を行いました。

f:id:torusanada98:20180513085907j:plain

ch3実装後の写真を取り忘れてしまい、一部ch4の配線がされていますが、ch3の電源引き込みラインをch4の電源およびGNDの配線にジャンパーを使って逃がしている部分が確認できます。部品面はこんな感じです。

f:id:torusanada98:20180513085958j:plain

今回の製作では、試作基板と常用基板用にオペアンプを4個しか購入しませんでした。当初は、ch1とch3およびch2とch4でそれぞれ1つのオペアンプを共用する予定でしたが、実装面で現実的ではないとの判断から、各チャンネルで専用にオペアンプを実装する方針としています。このため、オペアンプが足りなくなってしまい、試作基板に実装した分を使い回して、対応する事としました。

正電源ch3通電確認

ch3の確認のみを行うため、ユニバーサル電源から+16.9Vのみを供給して確認を行います。ここまでくると、ミスもなくなり出力電圧調整も問題なくできました。下記が調整後の各部電圧確認結果です。

f:id:torusanada98:20180513090045p:plain

ch1の電圧と比較して、やや高めの電圧になっていました。

正電源ch3矩形波応答

測定条件は、他のチャンネルと同じにして観測しました。下記が観測結果です。

f:id:torusanada98:20180513090130p:plain

左が負荷電流立ち下がり時で、過渡応答値は46.0mVで、右が立ち上がり時で、58.0mVでした。一覧表に結果を追加しました。

f:id:torusanada98:20180520164523p:plain

試作基板の結果、ch1の結果と傾向的には同じですが、ch3の結果はややおおきな値となっていました。次回は、ch3のインピーダンスの周波数特性の測定とch4の実装、通電確認をおこないます。

 

つづく(製作編4)

安定化電源性能改善(製作編2)

f:id:torusanada98:20180509221421j:plain

製作編2

通電まで終わった正電源ch1の性能確認を行い、引き続き負電源ch2の実装を行います。

矩形波応答

今までの確認と同様に、負荷電流を10mAと70mAの波高値の1KHzの矩形波とします。立ち下がりと立ち上がりの過渡応答波形は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180509221448p:plain

それぞれの過渡応答電圧は、41.6mVと52.0mVでした。結果の比較がしやすい様に、今までの結果と今後確認する結果と合わせて表を作成しました。

f:id:torusanada98:20180520164137p:plain

表中の空欄は今後確認予定分です。今回のch1の結果は、試作基板の結果とほぼ同じとなっていました。現行基板の負電源の結果がありませんので、基板載せ替え時に確認してみます。

インピーダンス周波数特性

これも今までの測定と同様に、負荷電流のピークを10mAと70mAの正弦波状に制御し、10Hzから100KHzの正弦波応答を観測してインピーダンス特性の測定を行いました。最初に100Hzの応答波形を確認しました。

f:id:torusanada98:20180509221626j:plain

試作基板の特性測定時と同様に微少な発振波形のような物を確認しました。この発振波形ですが測定対象の電源基板をオフしても観測されるため、外来ノイズと考えて無視する事とします。従来、レベルの観測はポケットオシロのVpp値を使っていましたが、このノイズが応答波形に重畳された波形を拾ってしまうため、画面上のVpp値は40mVとなっています。一方、ポケットオシロのカーソル機能を使った結果ΔVは28mVとなります。測定に多少時間はかかりますが、今回からカーソルを使った測定に切り替えました。下記がこの測定方法を使った結果です。

f:id:torusanada98:20180509221721p:plain

試作基板の結果は、定数変更前(位相補償=1000pF, オペアンプ負荷抵抗=10kΩ)のものを掲載しています。変更後の結果は発振波形により中低域の結果が悪くなっている為です。2KHz以上の周波数域でch1の結果が良くなっているのは、定数変更の効果と考えられます。ここには掲載していませんが、現行ディスクリート方式の安定化電源に比べて測定した全帯域で良好な特性となっている事が確認できました。音質比較が今から楽しみです。

負電ch2源回路実装

続いて、負電源ch2の実装を行います。実装の基本方針は正電源ch1回路と同様です。試作基板実装の際に配線を間違えたオペアンプへの電源供給を考慮して、オペアンプの向きを反転して配置する事としました。この方が電源端子への配線が短くて済みます。これに伴ってオペアンプの使用回路もチャンネル2からチャンネル1に変更しました。製作編1に掲載した常用基板全回路図はすでにこの方針を反映しています。

f:id:torusanada98:20180509221817j:plain

このオペアンプ反転実装に伴い、オペアンプ回りの部品実装に気をつかいました。

f:id:torusanada98:20180509221913j:plain

実装が終わってみると、ch1よりも素直に配線できた感じがします。

f:id:torusanada98:20180509222019j:plain

上記写真では、各チャンネル間にGND配線がされている事が確認できます。また各チャンネルの電源線とGND間に出力配線用(トランジスタエミッタと電源出力接続)に1ライン空けた事も実装面で有利となりました。

負電源ch2通電確認

正電源ch1の通電確認と同様に、ユニバーサル電源からDC電圧を供給します。今回は負電源の確認なので-16..9Vを供給しました。VRを約3.8KΩにプリセットして、電源オンします。出力は-11V台だったのでVRを調整して12.00Vに合わせ込みました。ch1の通電とは異なり、何の問題もありませんでした。ch2通電時の各部の電圧は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180509222114p:plain

次回は負電源ch2の性能測定を行います。

 

つづく(製作編3)

安定化電源性能改善(製作編1)

f:id:torusanada98:20180506175820j:plain

製作編1

試作が終わったので、常用する基板の製作を行います。

常用基板

常用する基板は、AC12V2巻き線の出力を持つトロイダルトランスから電力供給します。ブリッジダイオードニチコンのオーディオ用電解コンデンサKW4700uF/50V品で全波整流を行い、それを試作した安定化電源回路に供給します。電源基板の全回路は以下となります。

f:id:torusanada98:20180506175840p:plain

実装場所や、部品在庫の関係から試作時の回路からやや変更しています。それでは、全4チャンネルと全波整流回路を72x95mmサイズの基板に実装していきます。

実装準備

私が使用している標準基板には、スルーホールが36x27個あります。基板の長辺に4チャンネル分の回路を並べる為、1チャンネルあたりのスルーホールは9x27個となります。全波整流回路実装分に9個分を確保すると1チャンネル分に割り当てられるスルーホール9x18となります。試作基板では、1チャンネルあたり14x27個を使っていたので、かなり詰めた実装が必要です。(写真)

f:id:torusanada98:20180506175929j:plain

試作基板をじっと眺め、基準電源線を一番端に配線し、電源ラインを8列目に、出力を9列目として4チャンネル分を並べることに決めました。こうすると都合が良いことに、各チャンネル間に必ずGNDラインが配線される事になり、部品実装の自由度が上がります。この配置の欠点は、放熱器を偏った位置に配置する必要があり、一番端のチャンネル用の放熱器が基板から約2mmはみ出してしまう事です。

f:id:torusanada98:20180506180011j:plain

シャーシ実装上の問題はないので、このまま進める事としました。部品の実装エリアを稼ぐため、出力用の端子台は基板の一番端によせて、放熱器は端子台ぎりぎりまで寄せて取り付けました。

全波整流回路実装

前に製作した三端子レギュレータ版の電源基板の実装を踏襲しました。

f:id:torusanada98:20180506180104j:plain

平滑用の電解コンデンサは基板から約1mm程度はみ出して実装し、他の部品の実装スペースを確保します。写真はまねして実装した製作基板です。

f:id:torusanada98:20180506180150j:plain

写真の放熱器はボスで挿さっているだけなので曲がって基板に載っています。次に、入出力端子台のGND配線を行いました。この配線は、正電源ch1と正電源ch3のGND用配線と共用となります。

f:id:torusanada98:20180506180232j:plain

続いて、出力トランジスタを含む出力回路部分の実装を行います。正電源ch1は基板の右端のため、他のチャンネルに比べて放熱器右の実装スペースが広くとれます。他のチャンネルの実装も考えて、コンパクトに実装しました。

f:id:torusanada98:20180506180319j:plain

続けて残りの部品の実装も行います。VRとオペアンプソケットの位置関係は試作基板に合わせましたが、それ以外の部品は、とにかくコンパクトに実装ができるように工夫をしました。

f:id:torusanada98:20180506180403j:plain

ハンダ面は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180506180446j:plain

じっくり考えたので、被覆ジャンパー線は使わずにすみました。これに位相補償用のセラミックコンデサ470pFをオペアンプ入出力端子間に取り付けて完成です。

正電源ch1通電確認

オペアンプを取り付けて通電確認を行います。基板への電源供給は、トランスの代わりに、ユニバーサル電源から+16.9Vを入力しました。緊張しつつ電源オンしました。無情にも、ユニバーサル電源の過電流保護回路が働いています。電源を落として実装に間違いがないか見直します。複雑な回路ではありませんが、いくら見ても実装のおかしな部分が見つかりません。休憩を挟んで根本的な思い違いはないか確認したところ、あ!!、またやってしまいました。実装は正電源ですが、参照していた回路図が負電源用のものだった為、定電流ダイオードの向きが間違っていました。ツェナーダイオードは無意識のうちに正しい実装をしていました。先に掲載した部品実装写真のVR脇に立てて実装されているものが定電流ダイオードです。込み合っていて一番触りたくない部分でしたが、なんとか交換しました。気を取り直して通電再開です。出力電圧調整も正しく機能し、動作確認はなんとか完了しました。確認時の各部電圧は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180506180533p:plain

次回は、今回実装したch1の矩形波応答と周波数特性の確認を行います。

 

つづく(製作編2)

安定化電源性能改善(試作編5)

f:id:torusanada98:20180503150216j:plain

試作編5

マイナス電源の周波数特性測定と、マイナス電源で適用した対策をプラス電源にも適用してみます。

マイナス電源周波数特性

過去記事の「安定化電源の製作」で測定したマイナス電源の測定結果をおさらいしてみます。

f:id:torusanada98:20180503160637p:plain

マイナス電源で採用した三端子レギュレータは、負荷に追加した100uFの電解コンデンサの影響をプラス電源ほど受けず、全帯域で良好な結果となっていました。現行の安定化電源は、全帯域でインピーダンス面で三端子レギュレータに劣っています。それでは早速特性の測定を行ってみます。

周波数特性の測定

矩形波応答測定時と同様に、ジグのダイナミックレンジの関係から、正弦波電流の波高値を0mAと60mA(60mApp)として測定を行いました。電圧変動の周波数特性は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180503150829p:plain

この結果を60mAで割ってインピーダンスに変換します。

f:id:torusanada98:20180503151006p:plain

結果を見ると10KHz以下の帯域では、現行の安定化電源よりも良好な結果となっていますが、それ以上の帯域では逆転しています。三端子レギュレータの結果との比較では、全帯域でやや劣っています。プラス電源の結果と比較しても、中低域で劣った結果となっています。(下記はプラス電源の測定結果)

f:id:torusanada98:20180503151326p:plain

マイナス電源で適用した追加対策の弊害の可能性も捨てられないため、2個の対策(位相補償コンデンサオペアンプの負荷抵抗)を元に戻して測定を行いました。下記が比較結果です。

f:id:torusanada98:20180503151603p:plain

僅かな差ですが、追加対策によって中低域で悪化、高域で改善していますが、結果がプラス電源ほど良くない事の原因ではありませんでした。念のため測定時の波形を比較してみます。

f:id:torusanada98:20180503151923p:plain

左がプラス電源、右はマイナス電源測定時の波形です。測定波形に微少な発振波形が乗っていることで、電圧変動のPP値が大きく観測される事が結果悪化の原因でした。GNDの配線等変えて確認しましたが、状況に変化はありませんでした。一旦、この状態で先へ進める事とします。

プラス電源追加対策

マイナス電源で適用したオペアンプ位相補償コンデンサ容量変更と、オペアンプの負荷抵抗の変更をプラス電源にも適用して確認をしてみます。

f:id:torusanada98:20180503152020j:plain

負荷抵抗10KΩにパラに接続した抵抗を1.2KΩとした意図は、最終仕様で負荷抵抗を1KΩとする事を考慮したためです。1.1KΩの抵抗があれば万全でしたが。測定波形は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180503152152p:plain

今回の効果を理解するために、今までの結果を整理してみました。

f:id:torusanada98:20180520123815p:plain

大幅改善したものの、三端子レギュレータ版にはいま一歩届いていません。検討を先に進めますが、ひきつづき改善について考えたいとおもいます。

追加対策プラス電源周波数特性

念のため、追加対策した状態でプラス電源の周波数特性の測定を行います。手順は今までと同じなので省略します。下記が電圧変動の周波数特性測定結果です。

f:id:torusanada98:20180503152703p:plain

この結果を60mAで割ってインピーダンスの周波数特性に変換します。

f:id:torusanada98:20180503152937p:plain

マイナス電源の測定結果と同様に中低域で微少は発振波形のようなもので、結果が悪化しています。記事を書いていて1点気づきましたが、ポケットオシロの電圧変動観測チャンネルがプラス電源測定時とそれ以外で異なっています。これから常用基板の製作を行いますが、その特性測定時に測定に使用するチャンネルの影響を確認してみたいとおもいます。次回は、常用電源基板の製作にとりかかります。

 

つづく(製作編1)