真空管HPアンプの製作(設計編2)

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設計編2

前回選定した真空管でロードラインを引いてみます。

終段のロードライン

前回の記事の出力トランスの選定で検討したパラメータを前提としてロードラインを引いてみます。仮にIp=15mAとすると、出力トランスの一次側の交流の最大電流は+/-15mA(Ipmax)となります。トランス一次側のインピーダンスRL1が11.5kΩなので、この時の最大出力は以下となります。

RL1 x (Ipmax/sqr2)^2 = 11.5E3 x (15E-3/1.41)^2 = 1.3 W

この設定でロードラインを引いてみます。グラフは仕様書に掲載されていたIp-Ep特性を使わせてもらいました。ロードラインの傾きは、真空管1本当たりRL1/2となるので、5.2kΩとしました。(0V/15mAと86V(11.5k/2*15mA)/0mAを結ぶ直線を平行移動)動作点は、仮に160Vとしています。Ip=15mA時のVgは-6Vとなるので、この場合の電源電圧は166Vとなります。これで設計がフィックスではありませんが、全体の設計を見るために次は初段のロードラインを引いてみます。

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初段のロードライン

初段は12AX7を使った差動アンプとします。今回の設計は、2段構成なので初段でゲインを稼ぎたいと考えて負荷抵抗を120kΩとしてみます。仕様書に掲載されたIp-Ep特性を眺めてロードラインを引いてみます。終段のロードラインから仮設定した電源電圧を考慮すると以下のとおり引けます。

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Ip=0.55mAとすると、Vgのバイアスが-1.0Vとなります。できれば1.5Vくらいとっておきたいところですが、ヘッドフォンアンプという事で今回は妥協します。ここで一旦電源トランスを選定する為に、電源回路を検討します。

電源回路

下図は、私の真空管アンプ製作1号機のEL34ppアンプ用の電源回路です。

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この回路で特段問題なかったので、今回もトランジスタを使ったリップルフィルター方式としたいとおもいます。ロードライン検討から電源電圧要求は166Vです。リップルフィルタのトランジスタに約15Vをかけるとすると、整流後の電圧は約180V必要です。理想的には、トランスの出力電圧のルート2倍の電圧が整流後の電圧となりますが、電圧ドロップを見込み、1.35倍でトランスの2次電圧を計算してみました。

180 / 1.35 = 133V

2次電圧として130~140Vの電源トランスを探してみます。必要な電流容量は、片チャンネルあたり31mA(1 + 30mA)で、ステレオ分で62mAとなります。ヒーターの要求は6.3Vで電流は片チャンネルあたり1050mA(750 + 300)で、ステレオ分でこの2倍となります。これ以外に、バイアス&電源ランプ用に-5Vを生成するための電源が必要です。この仕様でトランスを探してみました。電源電圧が低く、電流容量の割にヒーター電流が大きいことで、適当なトランスがなかなか見つかりません。HPを検索した会社は、春日無線、東栄変成器、橋本電気などです。いまひとつ今回の仕様にしっくりこない点はありますが、下記が候補としてみつかりました。

■電源トランス仕様比較表

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どちらも定格仕様にあまり違いがありませんが、今回はPT-22Nを選択しました。備考のHPVはハムプルーフベルトの略で磁性体でコアを囲み漏洩磁束を減らします。このトランスを使ってEL34ppアンプ電源回路を修正してみます。

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ヒーターを1つの巻き線にまとめるか迷いましたが、巻き線の定格電流を5%越えるので、2つの巻き線に分けました。B電源は当初の要求電圧よりやや高く、175Vとなりました。この電源回路の設計をロードラインに反映します。具体的には、電源電圧がやや上がりましたので、微調整をしました。

■初段ロードライン

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■終段ロードライン

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次回は、アンプの回路設計を行います。

 

つづく(設計編3)

真空管HPアンプの製作(設計編1)

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設計編1

キーパーツの選定から設計を開始します。

真空管の選択

今回の製作の一番のキーパーツ、真空管を決めます。構想編でリストアップした項目のうち、真空管の選定に関連する項目を再掲載します。

・終段はプッシュプル構成とする

・終段を含めて3極管を使ってみたい

・できるだけコンパクトに納めたい

・出力は1W程度あればいい

全段プッシュプル構成とするため、初段はいままでの製作で採用した12AX7を使用します。特徴を列記します。

・双3極管で小型(MT管)

・高利得で2段構成の初段に適している

・現在も生産されていて、入手性が良く、比較的安価である

問題は出力管の選定です。コンパクトに納める事と、3極管にこだわりたい為、出力管として使用できる双3極管を探してみました。アマゾンで検索してみたところ1品種ヒットしました。ロシア製の6N6P(ECC99)です。未使用のオールドストック品ですが、出荷時に全管Gmテスト済みとの事です。価格は予備も含めて4本とした場合、2,463円です。早速仕様を確認してみます。

6N6P仕様

ネット上の真空管仕様書のまとめサイトから6N6Pの仕様をダウンロードしてみました。ロシア語に加えて英語併記されていました。仕様書から主なスペックを抜粋してみます。

・9ピンMT管

・双3極管

・ヒーター電圧は6.3V/750+/-70mA(傍熱式)

・最大出力4.8W(単極)8W(双極)

・最大プレート電圧300V(Ip cut off時は450V)

・増幅率μは22+/-4(12AX7と比べると小さい)

上記のとおり、今回の製作に適した仕様です。唯一の難点は、在庫が尽きた後の入手性ですが、今回は予備も含めて購入する事で対処したいとおもいます。ピンアサインを12AX7と比較してみます。

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上図のとおり、ピン配置は9ピン以外は共通です。12AX7は9ピンをGNDに落とすとヒーターが6.3V仕様となり、オープンの場合12.6V仕様となります。一方、6N6Pは、内部シールドに接続されている為、通常はGNDに接続します。続いて外観を比較してみます。

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左が6N6Pで、右がGolden Dragonの12AX7です。高さが約15mmほど6N6Pが高い程度で見た目の差は少ないです。捺印はロシア後で6N6Pとロットナンバーでしょうか?03☆82の表記のみであっさりしています。

出力トランス選定

今回の製作は、インピーダンスが45Ωのヘッドフォンが負荷となります。本作が真空管アンプ3回目という事で常識が備わっていない為、一応ヘッドフォン負荷を前提とした出力トランスがないかあたってみました。予想どおりそんな物はありませんでした。表示二次インピーダンスが合っていなくとも使用できますが、効率面で不利になるのでしょうか?できるだけハイインピーダンス前提のもとしては、16Ωのものがありました。春日無線のKA-54Pシリーズです。

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10Wクラスが想定されていて、今回の用途では余裕がありすぎる気もしますが、検討を進めます。一次インピーダンスは3.5KΩ, 5KΩ,8KΩ, 14KΩがラインナップされています。二次側のタップは、4Ω, 8Ω, 16Ωが用意されているので、普通に入手できるどんなスピーカーにも対応可能です。今回は16Ωタップを出力に使用して8ΩタップをセンタータップとしてGNDに落として使用したいとおもいます。ヘッドフォンの実効出力は約半分となりますが、ヘッドフォンと並列に47Ωの抵抗を入れてヘッドフォンが外れた時出力管の保護を兼ねてインピーダンス調整をしたいとおもいます。その場合の負荷は約22Ωとなります。一次インピーダンスとして8kΩのトランスを選定したときの一次実効インピーダンスは、約11kΩ(=8k x22 /16)となります。この設計で気になる点は、8Ωタップをセンタータップとして使用できるかです。トランスを入手したら、巻き線の抵抗値等を測定してみたいとおもいます。上記を反映したこの部分の回路は以下のようになります。

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次回も引き続き回路設計を続けます。

 

つづく(設計編2)

真空管HPアンプの製作(構想編)

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構想編

バランス方式の真空管ヘッドフォンアンプの製作を構想します。

現状のヘッドフォン再生環境

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バランス押しの私としては、ヘッドフォン再生環境もバランス化すべきと考えて2017年に環境構築しました。「A級バランスHPアンプ製作」(2017-07-11~)で紹介しています。その際に購入したヘッドフォンはパイオニアのSE-MHR5です。

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リーズナブルナ価格ながら、φ40mmのユニットが採用され、バランス接続用のケーブルも付属しているため、購入後すぐにバランス再生する事ができます。コネクタはφ2.5の4極タイプでした。ヘッドフォンアンプはこの仕様に合わせてジャックを選択しました。アンプ自体は、オーソドックスなFET入力の差動2段構成で、プリドライバとドライバはバイポーラトランジスタのコンプリメンタリ構成で、これを2台使ってBTL接続してバランス出力しています。

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アンプ内には、アンバランス-バランス変換回路および、アンバランス出力も持っていますが、今までのところ全く使っていません。

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現状は机の上に設置した10インチTVの音声再生に使っています。HDMI信号から光デジタル信号として音声を取り出し、それをUSB DACに入力してバランスアナログ信号に変換しています。この用途が主なので、現状に全く不満はありませんが、真空管アンプを一番最初に自作した時に、再生音の響きが美しい事に驚きましたが、ヘッドフォンでも同様な体験をしてみたいと思った事が今回の製作の動機です。

ヘッドフォンの仕様

下記がSE-MHR5の仕様です。

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アンプの設計に関連する数値は、インピーダンス45Ωと最大入力レベル1000mWです。この数値を前提にアンプの設計を進めたいとおもいます。

ヘッドフォンアンプの構想

製作するアンプの仕様に関して漠然と思った事も含めて箇条書きしてみました。

・終段はプッシュプル構成とする

・終段を含めて3極管を使ってみたい

・できるだけコンパクトに納めたい

・出力は1W程度あればいい

・入出力は当然ながらバランス仕様

・安全に運用できるようにボンネットが必須

ざっとこんなところです。今まで2台の真空管アンプを製作しましたが、どちらも出力管にEL34を選択し、5極管を3結接続して使用しています。

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せっかくなので今回はオール3極管で設計してみたいと考えています。上記の仕様を設計製作の観点でキーとなるポイントととしてリストアップしてみました。

・出力管の選定

・アウトプットトランスの選定

・電源トランスの選定

ネット販売で入手できる部品を見てみると、トランジスタアンプに比べて真空管アンプの部品の方が遙かに入手しやすい状況ですが、ヘッドフォンアンプが前提となると、部品の選択肢一気に減ると思われます。

市販真空管HPアンプ

数年前の展示会でFostexのHP-V8を見かけた事があり、仕様を参考にするために検索してみました。すでに生産終了していましたが、仕様の確認ができました。

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主な仕様は以下のとおりです。

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価格はヘッドフォンアンプとしては破格で、880,000円でした。製品が良かったとしても、商売にならなければ生産終了とせざる得ないのは、市販品の宿命ですね。仕様には明記されていませんでしたが、終段は300Bのシングル構成だとおもいます。こんなところも参考にしつつ、次回は部品の選定を行い設計に着手したいとおもいます。

 

つづく(設計編1)

1000Mのマルチアンプ駆動(まとめ編)

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まとめ編

1000Mのバランスマルチアンプ駆動システムの構築が完了したので音を聴いてみます。

レベル調整

前回、測定結果上でフラットとなったボリューム位置にシールを貼ってマーキングしました。このポイントを目安に聴感で微調整したいとおもいます。シールはアマゾンで購入した剥がせるタイプです。格好悪いので楽天で丸シールを買い直しています。

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試聴

聴き慣れたCDを順に聴いてみます。

■Take Me To The Mardi Gras/BJ2(Bob James

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中域の弦楽器余韻が美しく、奥行き感が感じられます。管楽器の音も前にでます。

■海風/海風(風)

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出だしのアコースティックギターが甘く響き、かつ生々しい。男性ボーカルのハモリの分離が良く聴こえます。

■冬京/海風(風)

ベースの音程が明瞭です。ベースにかぶった楽器の音の分離がいいです。

■無意識と意識の間で/LINDEN BAUM(井筒香奈江)

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ピアノの響きが美しい。女性ボーカルがより自然に聴こえます。

■断頭台への行進/幻想交響曲小林研一郎

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ホール感がより感じられ、つつまれる感じがします。

■星に願いを/スペシャル(Kenny Drew

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ピアノが美しく響きます。録音時のスタジオ内のノイズがリアルに聴こえます。

■蒼氓/僕の中の少年(山下達郎

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ボーカルが甘く美しく余韻がきれいに聴こえます。

音の印象

上記のとおり、ネットワークとアッテネータを取り除いて、スコーカーとツィーターをアンプとダイレクトに接続した効果を聴く事ができたと思いますが、貧弱なボキャブラリでうまく伝える事ができません。総じて言える事は、音の分離が良くなった為に各楽器の余韻がより聴きとれる感じがします。その結果、奥行き感の再現性が上がった印象を受けました。一方、信号処理の為にアンプの段数が増えていて、スコーカーチャンネルで言えば、DAC出力とパワーアンプ入力間にオペアンプが4段入っています。(他チャンネルは3段)正直なところアンプが増えた事による音の変化は良くわかりませんでした。デジタル処理のチャンネルデバイダを使ってアンプの段数を減らす事で、違いが聴きとれるかもしれませんが今後の課題としたいとおもいます。

システムの課題

最初の音だしの際に気づいたハムは、スコーカーチャンネル用のEL34シングルアンプ起因でした。アンプ製作の際にも気づいていましたが、リッスニングポジションでは聞き取れなかった為、放置していました。今回マルチアンプ化の際にアッテネータを削除した事で、スコーカーチャンネルの能率が3dB以上上がり、ハムの不具合が顕在化しました。(下記がスキップしたアッテネータで、減衰ゼロ時のメモリは3dBを越えています。)

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簡単には直りそうにないので、別途番外編にて改善検討の報告をしたいとおもいます。

システムまとめ

NS-1000Mのウーハーは重く、躍動的に鳴らす為にはアンプの駆動力が必要と言われてきました。今回使用したLowチャンネル用アンプは、出力は8Wながらも強力な電源と終段をパラレルコンプリメンタリ方式のBTLモノラルアンプ構成として駆動力を高めています。

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さらにマルチアンプ構成とする事でネットワークを介す事なくウーハーにダイレクトに接続する事で理想的な駆動環境とする事ができました。一方、スコーカーとツイーターは響きの美しい真空管アンプを使う事で、DCオフセット出力によるユニットへの悪影響を気にせずにダイレクトに接続しています。アンプの異常時を考慮すると直列にコンデンサーを入れておくべきかもしれません。DAC出力以降のアナログ信号は全てバランス電送とする事で、GNDの影響を軽減しています。このようなシステムの構築を市販の機器で行うのは難しい事から、オーディオ製作の趣味として構築しがいのあるシステムではないかと思います。まだ課題は残っているので引き続き改善を進めていきます。長らく1000Mのマルチアンプシステム構築におつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編)

1000Mのマルチアンプ駆動(構築編3)

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構築編3

すべてのユニットの製作と改造が完了したので1000Mバランスマルチアンプ駆動システムを組みあげて音だし確認を行います。

システムアップ

アンプ4台を6本のスピーカーケーブルを使ってスピーカーと接続します。

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他の配線も再度確認します。アッテネータとアンプ間およびチャンネルデバイダとアッテネータ間はそれぞれ6本のXLRケーブルで接続されています。

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チャンネルデバイダとUSB DAC間は2本のXLRケーブルで接続されています。接続を間違えると、スピーカーユニットに過大入力を入れてしまい壊してしまう恐れがあるので、細心の注意を払って接続確認を行いました。さらに接続間違えを防ぐ為にケーブルにtagを付けてみました。アマゾンで検索してみたところ、各種のケーブル用tagが販売されていて、その中から比較的安価なものを購入しました。

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実際ケーブルに取り付けてみるとこんな感じです。

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音だし確認

電源をオンする順番は、以下のとおりです。

1)チャンネルデバイダ

2)アッテネータ

3)DCパワーアンプのメイン電源

4)DCパワーアンプの終段電源

5)EL34シングルアンプ

6)EL34ppアンプ

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真空管のヒーターがチンチンと音を立てながら暖まったところで、ハムがわずかに聞こえます。チャンネルデバイダに原因として思い当たる点があるので、後で確認する事にして音だしを進めます。聴き慣れているBJ2のCDをセットして再生をスタートさせます。チャンネルデバイダのスコーカーおよびツイーター用のボリュームを調整して聴感により周波数特性のバランスをとります。全機能が正常に動作していてホットしました。

レベルバランス調整

今回1000Mのフルバランス駆動化にあたり、スコーカーとツィーター用のアッテネータをバイパスしました。アッテネータの表示からそれぞれのユニットの再生レベルは3dB以上あがっています。駆動用のアンプのゲインも微妙に異なるため、そのレベル差をチャンネルデバイダのボリュームで調整する必要があります。

■アンプのゲイン

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調整方法は、スィープ信号を再生してその音をマイクで拾ってシステムトータルの周波数特性を測定します。2018-03-27「スピーカー周波数特性測定」で紹介した方法です。概要のみ紹介します。(詳細は当時の記事を参照ください)

・Wave Generatorでスィープ信号のwavファイルを作成します。

・Wave Spectrumで上記のスィープ信号の再生とマイクで拾った信号を周波数解析してピークレベルを表示します。

・音声信号の入出力はSound Blaster Digital Music Premium HD2を使用します。出力はtoslinkでUSB DACと接続します。入力はSound Blasterのマイク入力を使用します。

・マイクは測定用に購入したAudio TechnicaのAT2020を使用しました。比較的広帯域で、特性が公開されていた事が選定理由です。

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・再生レベルは、スピーカーにダメージを与えないように上げすぎずに、かつ環境騒音を上回るレベルに設定しました。アッテネータユニットの最低レベル-36dBの設定で充分でした。まずは聴感でレベルをとった状態で測定しました。下記が結果です。

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スコーカーとツィーター帯域のレベルがやや高くなっていました。チャンネルデバイダのボリュームを調整してレベルを取り直して測定した結果が以下です。

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音の印象は、オリジナル状態にくらべてキラキラ感が後退した印象です。ちなみに下記がマイクロフォンの周波数特性なので、特性的にはオリジナル状態の方がフラットに近いのかもしれません。

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剥がせるシールを買って正面パネルに貼り、フラット状態のボリューム位置に印を付けて、調整の参考にしたいとおもいます。

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次回は実際にCDを再生して音の印象を報告します。

 

つづく(まとめ編)

1000Mのマルチアンプ駆動(構築編2)

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構築編2

1000Mをフルマルチアンプ駆動できるように追加改造します。

1000Mの追加改造

現状の1000Mはセミマルチアンプ駆動用に改造された状態です。具体的には、ウーファーは、アンプとダイレクトに接続されていますが、スコーカーとツイーターはアッテネータとネットワークを介してアンプと接続されています。ネットワークは、スピーカーから取り出して、スピーカーの上に置いて改造したスコーカーおよびツイーター用のターミナルと接続しているため、単純に取り外すだけですみます。

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残るアッテネータは、スピーカー内部でそれぞれのユニットと接続されているため、ユニットを取り外して配線変更が必要です。ユニットの取り外しは何年ぶりでしょうか?ちょっと緊張します。まずはスコーカーを取り外します。スピーカーを倒した方が作業がしやすいですが、重量が約30kgと重く、改造ターミナルを壊してしまう恐れがあるので、そのままの姿勢でトライします。取り外したユニットを置くために、スピーカーを台にしてみました。

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スピーカーの内部配線は、学生時代にケーブル変更した経緯があり、日立電線のSX-104を使って無理して配線されていました。

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端子はなんの絶縁もしてなく、見た目は危ない感じでした。配線変更時にチューブを被せて対策をしたいとおもいます。端子のハンダを外しますが、ユニット側に極性表示がないため、外す前に写真を撮るか印を付ける必要があります。現有のコテは15Wと非力で、長時間当てないとハンダが溶けませんでした。ユニットに悪影響を与える恐れがあるので、一旦作業を中断して、急遽40Wのコテを購入しました。次はアッテネータ配線を外します。

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さらに強引に配線されていました。バッフル近くのハンダ作業はバッフルを汚す恐れがあるので、スピーカーターミナル側を外して、スピーカーからアッテネータを取り外した状態で作業を行う事にします。ツイーターも同様にユニットを取り外し、配線を外しました。

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バッフルのスピーカー開口から見えている電線がSX-104です。スピーカーを反転させて自作のターミナル板を取り外します。ツイーターとスコーカー用ターミナル電線を外すと、アッテネータが電線ごと取り外せます。

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今では絶対にやらないような強引な配線がされていました。入力側、出力側の電線をきれいに取り外して、元通りにアッテネータを取り付けました。ツイーター用アッテネータも同様の作業を行いました。次は、ユニットとターミナル間の配線を行います。電線はアマゾンで購入したスピーカーケーブルを使います。ツイーターとスコーカー配線用電線への太さへの拘りはあまりないので、作業性を考慮して無難な太さの電線を選択しました。先にユニット側に電線をハンダ付けして、適当な長さにカットしてユニットを仮り止めします。電線をターミナル側から引っ張り、それぞれのターミナルにハンダ付けしました。

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ターミナル板を一旦仮止めして動作確認を行います。

スピーカー配線後の動作確認

ユニットを壊してしまったら正規調達はできないため、手間を厭わず慎重に確認を進めます。手順は以下のとおりです。

1)フルレンジスピーカーを用意してスコーカーチャンネルのみ再生を確認します。スピーカーはFE103、アンプはEL34ppをスコーカーチャンネルに接続して正しくスコーカー帯域が再生される事を確認しました。

2)片チャンネルのみ改造した1000Mのスコーカーターミナルにスピーカーケーブルをつなぎ変えます。スコーカーから再生音がでている事を確認しました。

3)スピーカーケーブルを元のとおりFE103に接続し直し、アンプをツイーターチャンネルにつなぎ変えます。正しくツイーター帯域が再生される事を確認しました。

4)片チャンネルのみ改造した1000Mのツイーターターミナルにスピーカーケーブルをつなぎ変えます。ツイーターから再生音がでている事を確認しました。

これで接続が正しくできている事が確認できました。仮止めされたユニットおよびターミナル板を正しく取り付けて配線変更は完了です。もう1本のスピーカーも同様の手順で改造を行いました。これですべての改造が完了しました。次回は学生時代から構想を温め続けた1000Mバランスマルチアンプ駆動システムの音出しをします。

 

つづく(構築編3)

1000Mのマルチアンプ駆動(構築編1)

構築編1

システムを1000Mマルチアンプ駆動できるように組み替えます。

システムの組み替え

現状のシステムは1000Mのセミマルチアンプ駆動状態となっています。これをフルマルチアンプ化します。作業は、アンプの追加&入れ替えと、スピーカーの追加改造です。スピーカーの改造は、スコーカーとツィーターに入っているネットワークとアッテネータの削除です。

アンプ追加と入れ替え

初めにラック側の対応を行います。私のラックは、比較的堅牢なTV台を流用しています。上段TV台のはキャスターを外してTV台2個を積み上げていますが、今までは単純に積み上げていただけでした。この機会に固定をしたいとおもいます。ホームセンターで手頃な金具を購入しました。

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この金具を使って4角を固定しました。

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金具のネジ穴は4個ありますが、穴の位置が悪く上段側は1本のみの固定となりました。それでも必要な強度は確保できました。次は不要なユニットを片づけます。現状は一番下段に普段使っていないELSOUNDのBTLモノラルパワーアンプがあり、ハンドメイドの仕切を設置してその上にUSB DACを置いていました。

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ここにEL34シングルアンプを入れる為に、仕切を取り外してユニットも取り出しました。上段ラック内も同様にハンドメイドの仕切を設置して、下段にCDプレーヤー、上段には使用していないバランスボリュームユニットと、リモコンユニットが置かれています。

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下段のCDプレーヤーはそのままとして、上段のユニットを取り出し、代わりに先ほど取り出したUSB DACを設置しました。最上段はEL34ppパワーアンプなのでそのままとします。

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今回のシステムで使用しないユニットは棚に保管しましたが、今後出番があるのでしょうか?

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アンプの極性確認

今回のマルチアンプ駆動は、オリジナルのネットワーク接続時に合わせてすべて正相接続する予定です。アンプの極性は、製作時に確認を行っているはずですが、結果を残していなかった為に改めて確認をします。EIAJのテストCDを再生してパワーアンプの入出力の波形をオシロで観測します。

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セミマルチ駆動システムとなっているので、Lowチャンネル用DCパワーアンプ測定には62HzをMid/Highチャンネル用はスルーとなっているので1KHzを使用しました。3つのアンプの確認結果は以下のとおりです。

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3つのアンプともに問題はありませんでした。真空管アンプは、出力トランスの巻き線により極性が決まるので間違える可能性が高くなりますが、最初は真空管アンプも負帰還をかけていたため、その回路から極性判断した事を思い出しました。DCパワーアンプの出力波形にノイズが乗っていますが、念のためHot/Cold間の出力波形を確認しましたが問題がありませんでした。

ユニット間配線

アッテネータユニットにはリモコンがないため、ラック手前に設置したテーブルにチャンネルデバイダとアッテネータを設置します。

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ラックに設置したユニットを含めてXLRケーブルで配線しました。1.5m~3.0mまでのケーブルを持っているので、適切な箇所へ接続変更しました。テーブルにおいたチャンネルデバイダとアッテネータユニットの配線はこのとおりです。

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上段がアッテネータユニットで下段がチャンネルデバイダです。これだけXLRケーブルが集中すると壮観です。次回は最後に残ったスピーカーの改造と接続を行います。

 

つづく(構築編2)