真空管HPアンプの製作(製作編13)

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製作編13

動作確認を完了させて、前回の記事の最後で触れたハムの対策をします。

動作確認残り

ハム対策の前に、残り2点の動作確認を行います。最初に入出力の位相確認です。入力をUSB-DACに接続し、ヘッドフォンを接続して電源オンします。EIAJのTEST CDをセットして1KHzの正弦波をリピート再生させます。

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恐る恐る入力のボリュームを上げていきます。装着せずに置いたヘッドフォンから1KHzの音が聞こえます。ポケットオシロを信号の入力と出力のHotラインに接続して、位相確認をしました。下記が観測結果です。

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青が入力信号で黄色が出力信号です。残念ながら逆相となっていました。一旦電源を切って出力トランスの2次配線を逆につなぎ変えました。これで位相は正しくなりました。最後は、完成後まで確認を保留していた出力のHot/Coldバランス信号の確認をします。現状の構成は、トランス2次側の8Ω端子をGNDに接続して、16Ω端子とCom端子をヘッドフォンに接続しています。確認は、GND基準に正しくバランス出力をしている事を波形をモニタします。確認結果は以下のとおりです。

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あれれ?レベルが異なります。青が16Ω端子側波形で黄色がCom側の波形です。しばらく考えて、勘違いをしていた事に気づきました。2次側の各インピーダンスの端子は、伝送される電力が一定となるように巻き線が設定されている事から、今回のアプリケーションの場合、4Ω端子をGNDに落とすべき事に気づきました。下記は、出力トランスの説明書ですが、よく見ると各端子のタップ位置が2次巻き線上にモデル化されて表現されています。(4Ωがセンター)

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早々に、GNDの接続変更を行いました。4Ω用電線(黄色)は不使用電線として短くカットしてしまっていたので継ぎ足して接続しています。

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改めて出力波形を確認しました。

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正しくバランス出力している事が確認できました。二次側はGND接続せずに浮かせておいても問題ないかもしれませんが、拘わりです。組立前に2次巻き線の抵抗値測定を行いましたが、Hot-GND間とCold-GND間の抵抗値のバランスが崩れていた事に改めて納得しました。その際におかしなコメントをしてしまった事をお詫びします。これで全ての動作確認が完了しました。

音出し

ハム対策に進むまえに、現状を確認しておきます。ボリュームを絞り電源オンしてヘッドフォンを装着します。酷いハムです。L-chの方が大きく発生していますが、R-chも発生しています。各ボリューム位置のハムの発生状況は下記のとおりです。

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実際に信号を入力して普通に音楽再生をすると音楽でハムはマスクされる状況です。音はいい感じで鳴っています。但し、アンプのゲインが高すぎて、ボリュームを8時の位置までさえも上げられません。アイキャッチ写真が音楽再生時のボリュームの位置です。ハムの一因は、このゲイン設定にもある事もわかりました。

ハム対策

ボリューム位置MidのR-chは、ボリュームのノブに触れるだけでレベルが高くなります。そう言えばシャーシGNDをとっていない事に気づき、ノイズが発生している状態でワニグチジャンパ線でシャーシをGNDに落としてみました。この対応によってボリュームのノブに触れる事によるノイズレベルの悪化は解消しました。具体的なシャーシGND接続はラグ端子を使って電源端子版のスタッド部分で行いました。

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次に負荷抵抗を変えてトータルのゲインを下げます。具体的には、現状は出力トランスの2次側に、47Ωとヘッドフォン(インピーダンス45Ω)を並列接続しています。負荷抵抗は、約23Ωとなり16Ωよりもやや高い値となっていました。そこへさらに47Ωを並列接続する事で負荷抵抗は15.4Ωとなります。この変更でアンプのゲインが15.4/23=0.65(-3.7dB)下がり、ヘッドフォンに並列に47Ωが接続される事で、入力パワーが1/2から1/3に下がります。ゲイン換算すると-1.8dBとなり、トータルで約5.5dBゲインが下がるはずです。この変更によってヘッドフォンのA級動作範囲が0.3Wまで下がるはずですが、目をつぶります。計算は自信がありませんが、回路変更してみます。先に掲載した2次側のGND接続変更の写真には、すでに47Ωが1本追加されています。結果は、音楽再生時のボリューム位置はやや上がりましたが、抜本的な対策にはなりませんでした。次回は泥沼にはまる予感を感じつつハム対策を継続します。

 

つづく(製作編13)

真空管HPアンプの製作(製作編12)

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製作編12

配線が完了したので、通電確認から再開します。

通電確認

まずは、終段の真空管を装着せずに通電確認を行います。確認ポイントは終段真空管用のソケットの各端子電圧です。その際に終段のIpバランス調整機能の動作確認も合わせて行います。それでは早速確認を開始します。電源オンして、まずはB電源とC電源の電圧が正しく出力されているか確認します。

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次に、確認済みの初段の状態を再確認します。確認は各プレートの電圧測定です。初段の通電確認結果と比較しましたが特に問題ありませんでした。続いて本題の終段真空管用のソケットの各端子電圧を確認します。確認結果は以下のとおりです。

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グリッド端子はハイインピーダンスの為、測定値が安定しませんでしたが、センター値は概ね設計値となっていた為問題なしと判断しました。カソードは、定電流回路がカットオフしている為、値が安定しませんでしたが概ね0Vなのでこれも問題ありません。続いてグリッドバイアス調整回路の確認を行います。ボリューム位置Min/Max時の各グリッドピン電圧を確認しました。確認結果は以下のとおりです。

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L-ch/R-chともに値が安定しませんでしたが、センター値が設計どおりなので問題なしと判断しました。

L-ch通電確認

一旦電源を切って、L-chの終段用真空管を装着します。少し力がいりましたが、なんとか装着できました。

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入力ボリュームを絞り、グリッドバイアス調整用ボリュームをセンターに合わせて電源オンします。ヒーターが音を立てて発光を始めます。ヒーターが暖まると定電流回路に電圧がかかり、定電流回路の基準電圧生成用のLEDが点灯します。

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最初に定電流回路の動作を確認します。カソードの電圧は4.6Vで定電流回路に必要な電圧がかかっています。次にエミッタ電圧を測定します。1.24Vなのでエミッタ抵抗57Ωから電流値は21.8mAとなります。基準電圧回路の電流が10mAと想定すると、プレート電流の和は31.8mAと算出できます。ほぼ設計値どおりの結果となります。

L-ch_Ipバランス調整

本アンプの唯一の調整項目の終段Ipのバランス調整を行います。参考に改めて回路図を掲載します。

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調整方法は、終段双三極管のグリッドバイアスをバランス調整します。各回路のIp値は、あらかじめ測定した出力トランスの1次巻き線の抵抗値と巻き線のドロップ電圧から算出します。

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調整は正規の姿勢に置いてシャーシに取り付けたチップジャックを使って行います。

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一旦ラフに合わせてから微調整を繰り返してIpバランスを追い込みます。調整結果は以下のとおりです。

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念のため出力をポケットオシロでモニタして、発振していない事を確認しました。

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最後に各部の電圧を測定しました。結果は以下のとおりです。

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これでL-chの製作は完了しました。

R-ch通電確認

R-chも真空管を装着して同様に確認を進めます。

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定電流回路の電流算出値は32.1mAでした。続いてIpバランスを調整します。調整結果は以下のとおりでした。

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L-ch同様に出力をポケットオシロでモニタしました。発振はしていませんでした。

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調整後のR-chの各部電圧は以下のとおりです。

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電源動作確認

アンプの各部電圧の確認が終わったので、電源の確認もしておきます。各部電圧は以下のとおりです。

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B電源は想定よりも9V下がっていますが、アンプの動作への影響はないとおもいます。念のためB電源のリップルフィルタ用トランジスタ印加電圧をポケットオシロで確認しておきます。

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最低でも13Vかかっているため動作上の問題はありません。続いてC電源の三端子レギュレータ印加電圧も波形確認します。

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動作に十分な電圧がかかっている事が確認できました。電源も設計どおり動作しています。今回の記事では触れませんでしたが、調整後に無音時の音を聴いたところ、酷いハムが発生していました。次回はハム対策を行います。

 

つづく(製作編13)

真空管HPアンプの製作(製作編11)

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製作編11

終段の配線から再開します。

終段の配線

前回実装した基板のカソード、-5V、GNDの配線を行います。L-chは電源ターミナルが基板の脇にあるので5VとGNDの配線は容易です。

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カソード配線は、終段の2つのカソードを接続して、その一方に配線しました。次は出力トランスの配線をします。プレート配線は近くにチップジャックがありターミナルとして流用しましたが、他端子の配線用にLラグ端子板を取り付けました。他の部品を取り付けた状態での穴開けなので慎重に行います。

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続いてトランスの2次配線を行います。comと16Ω用電線を出力用に、8Ω電線をGNDに接続します。私が使用しているヘッドフォンのインピーダンスは45Ωと高いため、負荷抵抗を下げる為に、出力に47Ωの抵抗を並列に接続しています。

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トランス2次巻き線の4Ω用の電線は使用しない為、端末キャップを被せて他の電線といっしょにインシュロックで結束しました。次はトランスの1次配線を行ったチップジャックと終段のプレートの配線を行います。真空管ソケットの橙と灰色の電線です。真空管ソケット端子配線が混んできたので運用中にショートしないように電線の被覆の剥きしろの長さに気を使いました。

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続いて基板に実装したグリッドバイアス回路と終段のグリッド抵抗間の配線をします。あまり美しくありませんが、最短の配線をしました。写真の黄色と白の配線です。

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もう一方のチャンネル(R-ch)も同様に配線します。R-chは電源用の端子板と離れているので、GNDと-5Vの配線の取り回しに気を使います。

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出力トランス配線用のLラグ端子板は勘違いしてL-ch用に取り付けたものより1端子多いものを取り付けてしまいました。体勢に影響ないのでそのまま進めます。

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ヘッドフォン出力配線

ヘッドフォン出力配線は、入力配線にも使用したベルデンの2芯ケーブルを使用しました。出力トランスの巻き線の極性はよくわからないので、com側をHotに、16Ω側をcoldに、8Ω端子をシールドに接続しました。動作確認時に極性チェックを行い、間違っていたら繋ぎ直す予定です。

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次は4極のヘッドフォンジャック配線です。トランジスタヘッドフォンアンプ製作の際に、配線間違いをしたので、確実に配線を行いたいとおもいます。私の使用するパイオニアのバランスヘッドフォンケーブルを未配線のジャックに差して端子の確認を行います。以前に確認したヘッドフォンケーブルの仕様を再掲載します。

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ヘッドフォン側(右)とアンプ側(左)の端子の並びが異なっていて、前回は思いこみで同じ並びと考えてしまい、間違った配線を行ってしまいました。確認結果を反映して配線を行いました。

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尚、シールド電線は被覆を剥いた点でカットしています。これで全ての配線が完了しました。この状態で配線をインシュロックで束線します。

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ヒータ配線の処置に迷いましたが、他の電線と一緒に束線してしまいました。

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束線すると配線がだいぶすっきり見えます。束線完了後のシャーシ内部はこんな感じです。

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次回は終段の通電から全体の通電確認および音だしを行います。

 

つづく(製作編12)

真空管HPアンプの製作(製作編10)

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製作編10

初段の配線が終わったので、終段用のバイアス基板の実装を行います。

バイアス基板

バイアス基板には2つの回路を実装します。1つ目は、終段のIpのバランス調整用の回路です。終段の2つのグリッド電圧のバランスをボリュームとC電源を使ってとります。2つ目は終段のプッシュプル回路の電流の和を一定にする定電流回路です。下記の点線枠内の回路を実装します。

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基板上には3極(GND, -5V, カソード)と2極(2つのグリッド抵抗)の端子台を実装します。

バイアス基板実装

最初に端子台の位置を決めます。配線の取り回しを考慮して、グリッド抵抗接続用の2極の端子台は終段の真空管側に、3極の端子台はアンプのリア側の位置に配置しました。

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端子台を仮留めしたら次はボリュームの位置出しをします。ボリュームは運用状態でボンネットだけ外せば調整できるように端子台と反対面に実装します。基板のスルーホールの数の関係でボリュームのセンターが基板のセンターからずれてしまいました。

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シャーシのボリュームアクセス用の穴位置をそこまで考慮しておくべきでした。基板を取り付けるとこんな感じになります。

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それでもシャーシ外からボリュームへのアクセスができ調整は問題ありませんでした。グリッドバイアス回路から実装を行います。ボリューム以外は抵抗のみですが、全て端子台取り付け面に実装します。いまひとつすっきり実装できませんでしたが、完了しました。続けて定電流回路を実装します。エミッタバイアス用の2Vのツェナーダイオードの購入が漏れていました。在庫を確認したところ3.6V品があった為、定数変更して実装を続ける事にしました。回路は以下のとおりです。

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なんとか実装完了しました。

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続けて2枚目の実装を行います。アンプのレイアウトは左右対称の為、基板の部品実装も左右対称とします。

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最初に実装した基板を見ながら実装を進めましたが、左右対称の為に頭が混乱します。

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通電確認

通電確認前に、シャーシに実装してみました。

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他の実装部品との干渉もなく問題なく取り付けができました。一旦基板を取り外して通電確認を行います。電源はユニバーサル電源から供給しました。初めに定電流回路の動作を確認します。終段真空管のカソードの想定電圧が6Vなので、カソード接続用の端子台に6Vを印加しました。ユニバーサル電源の電流の読み値は約28mAでした。ほぼ設計どおりの結果です。続いて、グリッドバイアス回路の動作確認をします。ユニバーサル電源から-5V端子に電源を供給します。一部ハンダ不良があって手直しをしたものの動作上は問題ありませんでした。ボリュームセンター位置でグリッド抵抗用の端子台電圧が2つともに約-3,8Vで、ボリュームを回すと各端子電圧は対称に動作し、0Vまで変化します。ここではたと問題に気づきました。バランス調整用のバイアス回路が約-3.8Vとなるので、この時のカソード電圧は約2.2Vまで下がり、定電流回路のトランジスタに電圧がかかりません。もっと考えてから定数変更をすべきでした。

バイアス回路設計変更

バイアス回路と定電流回路ともに定数の見直しをしました。

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ツェナーダイオードの代わりに、LEDの順電圧(約1.8V)を使用する事にしました。定電流ダイオードと併用なので、実用になると考えます。グリッドのバイアス回路は分圧抵抗を4.7KΩから47KΩに変更しました。この変更で調整の範囲は小さくなりましたが、ボリュームセンター時のグリッド電圧が約-1.2Vとなります。見直した回路に従い実装を変更しました。

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改めて通電確認を行います。初めに定電流動作の確認をします。電流値は31mAで問題ありません。

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ユニバーサル電源から供給する電圧を下げてゆき、動作限界を確認しました。その結果3.5Vまで印加電圧を下げても動作する事を確認しました。もう1枚の基板も同様に実装変更を行い動作確認を行いました。最近ミスが多いので、気を引き締めねば!次回は終段回路の配線を行います。

 

つづく(製作編11)

真空管HPアンプの製作(製作編9)

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製作編9

電源基板の実装と通電が完了したので、初段から配線を再開します。

電源ライン配線

初段の配線前に、電源系ラインの残りを配線します。具体的には、電源用ラグ端子板へB電源の配線と、電圧モニタ用のチップジャックへB電源とGNDの配線です。初めに電源基板B電源出力とラグ端子板間の配線をします。空中の配線は、後で束線しやすい用に位置を決めています。続けてB電源とGNDのチップジャックへの配線をします。電源・GNDと配線済みのラグ端子板と接続します。

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これで電源系の配線は完了したので本題の初段の配線を行います。

初段配線

過去の製作では、初段部の配線用にラグ板を使用しましたが、今回は初段の真空管ソケットに直接部品を取り付けて、ラグ板を使用しませんでした。初段に取り付ける部品は以下のとおりです。

・グリッド入力抵抗2.7kΩ2個

・定電流ダイオード1mA1個

・負荷抵抗120kΩ2個

・出力カップリングコンデンサ4.7uF2個

一番大物部品のカップリングコンデンサの実装からスタートします。使用するコンデンサは、以前のネットワークの実験で購入したCross Capです。容量は0.47uFでも十分ですが、在庫の有効利用するために4.7uFとしています。実装は初段真空管のプレート端子と終段真空管のグリッド抵抗間に接続します。他の部品の実装の妨げにならないようにポジション決めをしました。

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ポジションが決まったら、終段のグリッド抵抗(2.7kΩ)も合わせてハンダ付けします。

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次は負荷抵抗120kΩ2個を実装します。上記で実装したCross Capが接続されているプレート端子とB電源間です。プレート端子と反対側の端子は2本を接続して、B電源へは1本の電線で配線します。

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続いて定電流ダイオードを実装します。2本のカソードをショートしてそこからC電源に配線します。

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初段の最後は、グリッド抵抗を実装します。接続先はボリュームです。それぞれのグリッド端子に2.7kΩを実装します。ここで合わせて入力信号配線と、GND配線を行います。入力信号配線は、いつも使用しているベルデンの2芯シールド線1503Aを使用します。初めにパネルコネクタ側を配線します。

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続いてボリューム側の配線をします。ボリュームはフロントパネル側をR-chとしました。

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ボリュームと真空管のグリッド間の配線も2芯シールド線を使用します。Hot/Coldともにグリッド抵抗に接続し、シールド線にGND配線します。GNDラインはこのルートの配線でループの発生はありません。

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これで片チャンネル分の初段の配線が完了しました。残りのチャンネルも同様に配線を行います。真空管の配置が左右で異なるので配線時に混乱します。とはいえ、配置が決まっているので気分的に楽に配線できました。初段配線完了時は写真のとおりです。

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これで両チャンネルともに初段の配線が完了しました。

初段通電確認

初めに真空管を挿さずに通電確認を行います。確認は初段真空管ソケットの各端子の電圧を観測します。電源コードを繋ぎ電源オンしますが、電源電圧が高いため、トランジスタアンプ以上に緊張します。

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結果は以下のとおりです。

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特に問題はありませんでした。次は真空管を装着して確認します。まずは1本のみ装着します。

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電圧確認は逆さの状態で行います。ネットで検索したところ、傍熱管の動作時の姿勢は寿命に影響を与えないとの事でしたので、配線時と同様に電源トランスで支えた状態で通電確認を行いました。差動回路のIpにやや差はありましたが、特に問題はありませんでした。残りの1本も装着して同様に確認を行いました。以下が確認結果です。

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カソード電圧がやや低いですが、大きな信号入力をしない前提でこのまま進めます。初段までの確認が完了しました。次回は終段の配線を行います。

 

つづく(製作編10)

真空管HPアンプの製作(製作編8)

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製作編8

B電源の配線を行い、電源の通電確認を行います。

基板外部回路の実装

初めに平滑用コンデンサの実装と配線を行います。560uF/400Vの電解コンデンサ実装済みなので、0.47uF/450Vのフィルムコンデンサを並列に接続して基板端子台へ配線します。Lラグ端子の上部にコンデンサはハンダ付けして、下部端子から配線を引き出しました。

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無駄なく配線できたとおもいます。続いて隣に、リップルフィルター用のコンデンサを実装します。実装方法は平滑用コンデンサと同じです。電解コンデンサの容量のみ異なり100uF/450V品です。

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次にリップルフィルタ用のトランジスタを実装します。前の記事で説明が漏れてしまいましたが、B電源電圧確認用にチップジャックを2個実装しました。実装位置は、先にトランジスタ固定用に穴を空けた近くです。

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チップジャックの間にトランジスタを設置する予定ですが、トランジスタ固定用に空けた穴位置ではチップジャックと干渉してしまいます。仕方がないので上記確認の位置に固定用の穴を開け直しました。

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すでに写真に写っていますが、トランジスタの配線はB:白、C:橙、E:赤で配線済みで、ショート防止としてハンダ部を熱収縮チューブでガードしています。トランジスタの固定は、絶縁放熱シートを挟みプラネジを使用しました。

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さらにもう2点ミスが発覚です。1点目は、端子台の並びをトランジスタの端子配置に合わせたつもりでしたが、ハンダ面から見て合わせてしまった為、並びが逆になってしまいました。配線をクロスさせて対処します。

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メンテ時のミス防止の為に、先日購入した剥がせるシールで配線の並びを明記しています。最後の1点は極めつけ、トランジスタの購入間違いです。前回の製作で使用した東芝製の2SC3309を購入したつもりが、MOSPEC製の2SC3039を購入していました。なんでこんな間違いをと思い確認したところ、このトランジスタも耐圧が400VのTO-220形状のものだった為にちゃんと確認せずに指定してしまったようです。基本スペックを比較してみます。

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仕様書上の数値では、2SC3309を上回っているので、このままこのトランジスタを使用する事にしました。最後にトランスからの電源配線を行い、B電源の配線は完了です。

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通電確認

高圧の電源回路なので、通電確認はいつも緊張します。念の為、テスタを使って配線の確認を行います。基板上の部品の端子と各端子台間の導通確認を行いました。特に問題はありませんでした。電源ケーブルを接続して緊張しながら電源オンしました。

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特に何も起こりません。ふ~、一安心です。各部の電圧を確認します。確認結果は以下のとおりです。

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トランジスタのエミッタ-コレクタ間の電圧は約14Vでした。リップルフィルタ用トランジスタの実働時の損失は0.87Wです。10Vくらいまで印加電圧を下げるべきでしょうか?その他はほぼ設計どおりに動作しています。負荷電流が100KΩの抵抗だけなので、実使用時には全体的にやや下がると思われます。また、基板に実装されている1kΩ1W品の抵抗の温度を非接触温度計で測定してみましたが、約30℃と問題ありませんでした。参考として、電源回路の最終版を掲載します。

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変更点は以下のとおりです。

・C電源の平滑コンデンサを1000uF/16Vに変更

・C電源の出力の電解コンデンサを10uF/16Vに変更

・電源ランプの電流制限抵抗を330Ωに変更

リップルフィルタのTrを2SC3039に変更

本記事のアイキャッチ写真は、現時点のシャーシ内実装状態です。次回は初段の配線を行います。

 

つづく(製作編9)

真空管HPアンプの製作(製作編7)

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製作編7

ヒーター回路の実装が終わったので電源回路を実装します。

電源回路

改めて電源回路を掲載します。

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電源はプレート用175V電源(B電源)とバイアス用-5V電源(C電源)の2系統です。実装する基板のサイズは47x36mmです。従って、大型の電解コンデンサや放熱が必要なトランジスタは、基板外へ実装します。初めに大枠の部品レイアウトを決めます。

基板端子台の配置

そんなに複雑な回路ではないので、基板端子台の位置が決まれば、概ね部品の配置も決まります。初めに基板端子台の配置を検討します。搭載する基板端子台は以下のとおりです。括弧内は接続先です。

・B電源電入力:2極(電源トランス)

・C電源入力:2極(電源トランス)

・平滑コンデンサ:2極(電解コンデンサ

リップルフィルタコンデンサ:2極(電解コンデンサ

リップルフィルタTr:3極(トランジスタ

・電源出力:3極

・電源ランプ:2極(LED)

配線が短くなるように各端子台の位置を決めました。

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1点問題に気づきました。C電源のトランス巻き線は12Ax7のヒーター電源と共用していて、ヒーター配線の際に0VタップをGND接続していました。今回C電源用にGND配線を行うと、大きなループができてしまいます。C電源用のノイズを優先させるため、折角配線しましたが12AX7のヒーター配線のGND接続を外しました。

基板実装

初めに基板内のGND配線をします。基幹となるラインはポリウレタン被覆の銅線で配線する事にしました。被覆をあらかじめヤスリで剥がさないと、15Wのコテではハンダできません。手間はかかりますが後の作業を考えて実施します。

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次に整流出力配線をします。平滑用の電解コンデンサは基板外なので、配線用の端子台へ接続します。

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続いて、整流出力に接続されるトランジスタと分圧用の抵抗と出力用の負荷抵抗を実装しました。

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これでB電源用の部品実装は完了です。

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次はC電源実装です。C電源は三端子レギュレータによる単純な電源です。部品は基板センター部に実装し、リア側となる写真下の部分を空けました。

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実装完了時のハンダ面は以下のとおりです。

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C電源通電確認

単純な回路ですが、念のため動作確認をしておきます。ユニバーサル電源からAC6.3Vの波高値に相当する-8.5Vを入力して確認しました。

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出力電圧は-4.98Vで問題ありませんでした。過去の製作で-12Vの三端子レギュレータが微少発振を経験していたので、念のため出力を確認しました。

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問題ありませんでした。次ににLED点灯確認をします。電源用端子台に直接LEDを接続して電源オンします。

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問題ありませんでした。基板単体で確認できる項目は以上です。

基板装着

実装した基板をシャーシに取り付けます。スタッド取付け時に位置だしをしているので、すんなり取り付けができました。

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初めに、-5V系を使用する電源ランプ系の配線を行います。2芯の平行電線をシャーシの端に敷線しました。

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LED部配線はショート防止の為に熱収縮チューブでガードしました。

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電源入力配線を行い、電源オンしてみました。写真のとおり問題なく電源ランプが点灯しました。

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三端子レギュレータ印加電圧が設計上小さいので念のため確認しておきます。-5V系電源の負荷大半は電源LEDです。LED点灯時のレギュレータへの印加電圧を確認します。点灯時の三端子レギュレータ入力電圧波形をDC/ACモードで観測しました。

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左がDCモード観測結果で、DC電圧は約-8.5Vとなっています。右はACモード観測結果です。リップルは約0.2Vppです。この結果から、三端子レギュレータには8V以上の電圧がかかっている事が確認できました。次回はB電源系の配線を行い動作確認を行います。

 

つづく(製作編8)