真空管アンプのハム対策(番外編34)

f:id:torusanada98:20190717073826j:plain

番外編34

EL34ppアンプのハム対策を続けます。

EL34pp負帰還回路残骸

f:id:torusanada98:20190717073850j:plain

写真はEL34ppアンプの初段配線部です。写真ではわかりにくいですが、負帰還回路がそのまま残されていて、帰還配線が外されてショート防止の為にセロテープで絶縁された状態となっています。必要があればすぐに元に戻せるようにこのような対応となっていました。帰還なしの音が気に入った事と、マルチアンプシステムでは、それなりのアンプゲインが必要となる為、負帰還構成に戻す見込みがない事から、これを機会に不要な配線と部品を全て削除する事にしました。下記写真は、フィードバック用の配線のみ削除したもので、帰還用抵抗とコンデンサがまだ残っています。

f:id:torusanada98:20190717073922j:plain

これら不要な部品を全て取り外し、入力部の配線をシンプルにします。その結果入力部配線用に取り付けた平ラグ端子板を中継せずに入力配線を行う事ができました。

f:id:torusanada98:20190717074006j:plain

この状態で一旦ノイズを聴いてみる事にしました。ヘッドフォンを接続して電源オンします。変更前にホワイトノイズの奥にわずかに聞こえていたハムが全く聞こえなくなりました。改めて入力部の配線の影響を認識しました。今回の改造の結果、シャーシ内は以下のとおりシンプルになりました。

f:id:torusanada98:20190717074037j:plain

音聴き

ハム対策行った状態で改めてマルチアンプシステムで音を聴いてみました。その結果期待した程の効果が得られなかったスコーカーチャンネルですが、スコーカーに耳を近づけるとハムは聴こえるものの、リッスニングポイントは聞き取れないレベルになっていました。ツイーターチャンネルは、元々ハムは聞こえていませんでしたが、今回の対応でまったくハムの心配がないレベルまで改善させる事ができて、より安心して音楽を聴くことができるようになりました。音はプラシーボ効果とは思いますが、より生き生き鳴っているように聴こえます。その結果現状の課題は、先日対策したトランスのうなりです。ここの所、近隣のエアコンの稼働率が上がったためか、トランスの唸りが酷いタイミングが増えています。唸りの大半は絶縁トランス側に移ったものの、100%ではなく、唸りの状況が酷い時には、DCパワーアンプのトランスの唸りがリッスニングポイントでまだ聞こえてしまいます。抜本的な対策を行う必要がありそうです。良いアイデアがあるわけではないので、気長に検討したいとおもいます。

再び真空管HPアンプ

ほぼ同じ回路構成のEL34ppパワーアンプが無帰還状態にもかかわらず、HPで確認時にまったくハムが聴こえずにホワイトノイズだけであった事から真空管HPアンプの追加改善をしたくなり、改めて検討を行う事にしました。残留しているノイズは、プリウスの低速走行時の疑似モーター音のような音です。このノイズはヘッドフォンをした状態で電源オンすると、カソードの温度が上がる前、すなわちアンプが動作する前は大きな音で聴こえ、ヒーターが暖まりアンプが正常動作すると、負帰還によってノイズがほぼ聴こえなくなっています。この状況からノイズの原因は、出力トランスが電源トランスの漏洩磁束を拾っている事にほぼ間違いありません。「真空管アンプの製作設計編4」で触れましたが、今回の設計は出力トランスの配置で妥協していました。この際、取り付けの向きを変更して最良の状態としたいとおもいます。写真が現状の出力トランスの取り付け状態です。

f:id:torusanada98:20190717074108j:plain

これをネット上の情報にあったとおり、出力トランスの取り付け板を垂直方向に90°回転させて効果を確認したいとおもいます。次回は効果を確認した上で対策を行います。

 

つづく(番外編35)

真空管アンプのハム対策(番外編33)

f:id:torusanada98:20190714124229j:plain

番外編33

EL34SGLパワーアンプのハム対策検討の続きを行います。

新たな対策検討

前回は、入力回路配線変更と銅板によるシールド対策が期待した程の効果がなかった為、新たな対策を検討します。前々回の記事の最後に書いた透磁率の高い材料を磁界を誘導する形で置いてみる事にしました。まずは金属の透磁率を確認してみました。理解しやすいように真空の透磁率との比を示す比透磁率を確認してみます。空気中はほぼ比透磁率は1なので、比透磁率がその材料の空気中と比べた磁束の通し易さを示す事になります。注意点としては、一定量の磁界を越えると磁気飽和して比透磁率は1に下がるので、効果を保には、ある程度の厚みが必要となります。

f:id:torusanada98:20190714124250p:plain

手軽に入手可能な材料で比透磁率が高いものは鉄です。まずは初段の真空管にスチールの缶を被せてみる事にしました。スーパーに適当な缶を探しにいきました。目についたのは、トマトジュースの缶でした。片側を缶切りで全面カットし、洗って乾燥させて真空管に被せてみました。

f:id:torusanada98:20190714124328j:plain

最初はそのまま被せてみました。銅板の時と同様にかぶせる際には、ハムの高調波が消えて効果がありますが、手を離すと効果がなくなります。次に、シャーシに触れる缶の縁の部分に絶縁テープを貼って被せてみました。残念ながら状況は全く変わりませんでした。せっかくなので、電源トランスに対策を試してみました。手頃な缶がなかった為、16cmの鉄製の片手持ち鍋を被せてみましたが、これも効果がありませんでした。一旦シールドによる対策検討はあきらめて、他の対策検討を行います。

回路対策

だめもとの範疇ですが、手持ちの100uF/400V品の電解コンデンサを効果がありそうな部分に追加接続してみました。対象は電源回路です。

f:id:torusanada98:20190714124405p:plain

上記回路で400V品の電解コンデンサが実装されている3カ所に順番に接続して効果を確認しました。

f:id:torusanada98:20190714124443j:plain

最初はトランジスタを使ったリップルフィルター用の電解コンデンサに追加接続します。元々、100uFが接続されているので、追加接続で2倍の容量になります。ショートしないようにワニグチクリップ電線で接続して電源オンしました。結果は残念ながら効果はありませんでした。その後、初段の平滑用電解コンデンサと、大元の平滑用電解コンデンサ部に接続して確認をしましたがどちらも効果はありませんでした。対策のアイデアが尽きたので、EL34SGLアンプの対策検討は一旦終わりとします。今回の検討でやや効果があった項目は、入力の配線変更のみでした。

せっかくなので

この機会に、ハムの問題が発覚していないEL34ppアンプの確認を行ってみます。このアンプは、マルチアンプシステムのツイーター駆動用として使用しているので、万が一ハムが出力されていると、直結しているツイーターに悪影響を与える事になります。このアンプもEL34SGLアンプと同様に、製作当初は負帰還をかけていましたが、運用の途中で帰還を外しました。回路上に残骸が残っているので、不要な配線と部品を削除したいとおもいます。検討用に、ヘッドフォン接続用ジグを出力に接続し、シャーシ内をいじる為に、ボンネットにダンボールを貼り付けて検討可能な状態としました。ボトムカバーを外すとこんな感じです。

f:id:torusanada98:20190714124527j:plain

真空管アンプ製作1号機なので、最近の製作と細部が違っています。この状態でハムを確認してみました。ヘッドフォンを接続して電源オンします。ほぼホワイトノイズですが、その奥の方にかすかにハムが聴きとれます。製作した3台の真空管アンプを比較すると、初号機が一番優秀です。対策検討する必要がないレベルですが、次回負帰還の残骸の削除を行い、確認を行います。

 

つづく(番外編34)

真空管アンプのハム対策(番外編32)

f:id:torusanada98:20190707092316j:plain

番外編32

今回はマルチアンプシステムのスコーカーチャンネル用のEL34SGLパワーアンプのハム対策を行います。

EL34SGLパワーアンプ状況

製作後の確認で、スコーカーに耳を近づけるとハムが聞こえましたが、リッスニングポイントでは聞こえないレベルだったので、対策を見送っていました。その後、システムを3wayマルチアンプ化した際に、スコーカーとツィーターのアッテネータも削除した事で、スピーカーの実効的な能率が高くなり、ハム問題が健在化していました。このアンプは差動入力で初段を定電流ダイオードを使用した差動アンプ構成をとっている為、同相入力のノイズに対しては強くなっています。

f:id:torusanada98:20190707092415p:plain

ハムレベルの確認

スピーカーでハムのレベル確認では効果がわかりにくいため、ヘッドフォンで確認する事にしました。ヘッドフォン接続用にちょっとしたジグを作成しました。

f:id:torusanada98:20190707092451j:plain

この接続アダプタをアンプのスピーカーターミナルに接続します。インピーダンスをあわせる為に、並列に10Ωの抵抗も接続しました。

f:id:torusanada98:20190707092529j:plain

この状態で一旦ハムのレベルを確認します。入力を無信号状態で電源オンします。とてもヘッドフォンアンプとしては使えない状態のハムのレベルです。但しL/Rチャンネルはほぼ同等のレベルで高調波も含んでいます。気を取り直して検討の準備を進めます。検討時にアンプを逆さに置く必要があるので、ボンネット上に保護用のダンボールを貼り付けました。

f:id:torusanada98:20190707092607j:plain

これで検討用の準備は完了です。

2匹目の狢

前回の改善検討で効果のあった入力配線のループ縮小による対策を行ってみます。写真は、入力回路配線部分です。R-chの配線は外した後ですが、L-ch配線は大きなループができています。

f:id:torusanada98:20190707092645j:plain

このアンプですが製作当初は負帰還構成をとっていて、途中で無帰還に変更した事から、負帰還回路用の一部の抵抗が実装されたままとなっていました。

f:id:torusanada98:20190707092737p:plain

具体的にはR05とR06は外していましたが、R03とR04が実装されたまま残っていました。今回の対策で残った抵抗も外してしまう事にしました。写真は対策後の入力配線です。

f:id:torusanada98:20190707092818j:plain

だいぶ配線がすっきりしました。期待しつつ電源オンしてハムのレベルを確認します。やや改善したものの残念ながら抜本的な効果はありませんでした。他の対策を探すしかありません。

追加対策検討

真空管HPアンプの検討時と同様に、感電に注意しつつノイズに関連している回路を探してみました。触ればノイズが増える部分はありましたが、現状聞こえているノイズがそのまま増えるようなポイントは見つかりませんでした。

f:id:torusanada98:20190707092900j:plain

アンプの部品配置の影響

本アンプは初段に12AX71本と、終段がシングルデュアル構成の為、EL34が2本の構成です。この為、初段真空管を電源トランス前に配置し、終段をその脇に2本並べて配置しています。

f:id:torusanada98:20190707092949j:plain

初段は差動構成としていますが、ノイズに敏感な部分の為配置の影響が気になりました。試しに、前回の記事で購入した銅板を電源トランスと初段真空管の間に挿入したところ、高調波ノイズが押さえられました。但し銅板がシャーシに触れると効果がなくなります。また、銅板を絶縁した状態で間に置いても効果あがありません。

f:id:torusanada98:20190707093106j:plain

私が手に持って間に挿入している時のみ改善効果があります。理由はわかりませんが、これでは対策がとれません。他の方法を検討せざる得ません。次回は対策検討の続きを行います。

 

つづく(番外編33)

真空管アンプのハム対策(番外編31)

f:id:torusanada98:20190705071527j:plain

番外編31

2台の真空管アンプのハム対策を行います。

対象のアンプ

1台目は先日製作を完了した真空管ヘッドフォンアンプです。能率の高いヘッドフォンに変えた事で追加対策が必要となりました。2台目は、以前から記事で触れていましたが、マルチアンプシステムのスコーカーチャンネル用のEL34シングルパワーアンプです。マルチアンプ化により、スピーカーの実効能率が上がった事でハム顕在化していました。

真空管ヘッドフォンアンプ

汗ばむこの季節は、パッド式のヘッドフォンを装着したくない事が多くなり、以前購入していたインナーイヤータイプのバランス対応ヘッドフォンを引っ張り出しました。

f:id:torusanada98:20190705071551j:plain

製作記事で紹介しましたが、負帰還でゲインを下げた事でハムは気にならないレベルまで下がりましたが、このインナーイヤータイプのヘッドフォンに替えた事で能率が高いからか、気になるレベルのハムが再発しました。症状はL-chからハムの高調波が聴こえます。製作記事中でも紹介しましたが、ボリュームとL-chの段管のカップリングコンデンサ付近をシールドする事で改善する事を確認していたので、事前に対策部品を買いにいきました。1点目は銅板です。加工しやすいように0.1mm厚のものを購入しました。

f:id:torusanada98:20190705071639j:plain

100x200mmサイズで188円でした。2点目は、銅箔テープです。厚みは0.08mmです。

f:id:torusanada98:20190705071719j:plain

50mm幅x5mで1,780円です。価格を見てちょっと躊躇しましたが、作業性には代えられないと考えて購入しました。まず初めに銅箔テープをボリュームのボディーに貼ってみました。

f:id:torusanada98:20190705071804j:plain

事前の確認とは裏腹に、ほとんど効果がありませんでした。続いて段管のコンデンサ付近のシールドを銅板を置いて効果の確認をしましたが、自立させて手を離すと殆ど効果が認められませんでした。新たな対策を探すしかありません。感電に注意しながら原因と思われる部分に手を近づけて確認を繰り返した所、L-chのHotの入力ラインが影響を受けやすい事がわかりました。初段Hot側のグリッド端子への配線は写真のとおり、大きなループがあります。Cold側も同様の影響をうければ、初段は差動入力としているので相殺されるはずですが、Hot側のみのループです。

f:id:torusanada98:20190705071847j:plain

写真の赤のラインですが、このラインをできるだけループを小さくするように配線をやり直しました。

f:id:torusanada98:20190705071928j:plain

ボリューム側はHot側入力への帰還ラインのループが比較的大きくなっていました。

f:id:torusanada98:20190705072021j:plain

写真中の黒のラインです。引き回しを変えてループを小さくしました。

f:id:torusanada98:20190705072103j:plain

対策後に音を聴いてみましたが、L-chのハムの高調波はほぼ聞こえないレベルまで改善しました。ヘッドフォンを普段使用しているパイオニアのSE-MHR5に替えたところ、静かな環境でわずかに聞こえていたハムもほぼ聞こえないレベルに改善していました。当面、この状態で運用してみたいとおもいます。

その後の確認

ネットで関連情報を漁ったところ、低周波の漏洩磁界に対しては、銅版では殆ど効果がないとの事でした。透磁率の高い材料で磁束を誘導するように対策部品を配置する必要がるとの事でした。次のEL34SGLパワーアンプの対策時に考慮して対策検討したいとおもいます。次回は、EL34SGLパワーアンプのハム対策を行います。

 

つづく(番外編32)

真空管HPアンプの製作(まとめ編)

f:id:torusanada98:20190626072518j:plain

まとめ編

アンプが完成したので、音質比較をした後、設計を改めてまとめます。

音質比較

比較対照は、先に製作したBTL方式A級DCヘッドフォンアンプです。比較に入る前に簡単に紹介します。回路は入力がDual J-FETのカスケード接続の差動アンプです。2段目は普通の差動アンプ構成で、ドライバおよび終段はコンプリメンタリバイポーラトランジスタ構成です。

f:id:torusanada98:20190626072537p:plain

電源には24VAのトロイダルトランスを使用しています。

f:id:torusanada98:20190626072611j:plain

比較で使用するヘッドフォンはいつも使っているパイオニアのSE-MHR5です。

f:id:torusanada98:20190626072643j:plain

比較の方法は、普段聴いているCDを最初にトランジスタアンプで聴いて、その後真空管アンプに切り替えます。音の印象を比較します。

■氷の世界/LINDENBAUM(井筒香奈恵)

f:id:torusanada98:20190626072707j:plain

トランジスタアンプの方が女性ボーカルがよりハスキーに聴こえます。奇数次高調波の影響でしょうか?真空管アンプは中低域が厚く鳴ります。音量を上げて聴きたくなり、音はなめらかです。

木星/惑星

f:id:torusanada98:20190626072735j:plain

トランジスタアンプは音の分離が良く聴こえました。真空管アンプは音が厚く暖かみのある音色です。トランジスタアンプも悪くありませんでした。

ファランドール/BJⅡ(Bob James

f:id:torusanada98:20190626072804j:plain

トランジスタアンプの音はベースの音に芯があり、ハリのある音がします。真空管アンプは演奏に奥行きを感じます。ブラスの音が美しく響きます。

■海風/海風(風)

f:id:torusanada98:20190626072834j:plain

トランジスタアンプはパワーで鳴らす感じのベースが特徴です。真空管アンプはアコスティックギターの響きが厚く美しい。音が厚く鳴ります。

■星に願いを/スペシャル(ケニードリュー)

f:id:torusanada98:20190626072900j:plain

トランジスタアンプはベースの基音が明瞭に鳴ります。真空管アンプはベースに迫力がありピアノが美しく響きます。

音質比較まとめ

トランジスタアンプはタイトな感じで鳴ります。ボーカルは真空管アンプと比較して、ややハスキーな感じに聴こえます。真空管アンプは全般的に演奏が厚く聴こえます。ボーカルはハスキーな感じはなく艶やかに聴こえます。この差はアンプの裸ゲインの差に伴う帰還量の違いや、素子の特性の違い(偶数次と奇数次の歪み量の差)に起因するのでしょうか?普段、ヘッドフォンアンプはデスクトップのTVの音を聴く為に使用していますが、この普段使いの場合は真空管アンプの音の方が適している印象です。機会があればヘッドフォンを買い足してまた比較をしてみたいとおもいます。

設計まとめ

最後に設計のまとめを行います。今回は初めて全て3極管を使い、コンパクトに構成するために、オール双3極管構成としました。パワートランスと出力トランスはヘッドフォンアンプ用のものがないので10Wクラスのパワーアンプ用の物を選定した為、音質にも好影響を与えています。

f:id:torusanada98:20190626073037p:plain

初段と終段のロードラインも改めて掲載します。終段は負荷抵抗を見直した為、変更を反映したグラフとしています。

■初段ロードライン

f:id:torusanada98:20190626073136p:plain

■終段ロードライン

f:id:torusanada98:20190626073205p:plain

電源回路は製作実績のある、トランジスタを使ったリップルフィルタを採用しています。

f:id:torusanada98:20190626073241p:plain

ここからは外観写真を掲載します。

■フロント写真

f:id:torusanada98:20190626073316j:plain

■フロント写真(ボンネット付き)

f:id:torusanada98:20190626073350j:plain

■リア写真

f:id:torusanada98:20190626073430j:plain

■シャーシ内部

f:id:torusanada98:20190626073506j:plain

真空管

f:id:torusanada98:20190626073542j:plain

写真を見てのとおり、シャーシは、もう1クラス小さいものでも実装できそうですが、残課題のハムの影響を考えると、このサイズが適当だったとおもいます。本製作は10連休となった今年のスペシャルなゴールデンウィークの過ごし方として設計を開始しましたが、GW中には完成できずにこのタイミングとなってしまいました。今回もおつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編)

真空管HPアンプの製作(製作編15)

f:id:torusanada98:20190624122310j:plain

製作編15

製作が完了したので、設計のまとめ、音聴き、測定を行うつもりでしたが・・・。

設計のまとめ

製作の最後で何点か設計変更したので、設計情報をアップデートします。最初にアンプの回路図を更新します。変更点は以下のとおりです。

・帰還回路の追加

・トランス2次の極性変更

・トランス2次のGND接続変更

・電源電圧の変更

・入出力端子に極性追加

・トランス2次側の負荷抵抗変更

カップリングコンデンサの容量変更

f:id:torusanada98:20190624122327p:plain

続いて、電源回路を修正します。変更点は以下のとおりです。

・B電源系の電圧測定結果の反映

f:id:torusanada98:20190624122358p:plain

発振対策

製作後恒例の周波数特性の測定の測定をする為に、出力へポケットオシロを接続して出力波形を確認したところ、入力のボリューム位置により発振する事がわかりました。具体的にはボリュームを絞った状態では問題ありませんが、、上げていくと発振します。

f:id:torusanada98:20190624122426j:plain

発振周波数は167kHzで、レベルは0.5Vppです。先に掲載した回路図を眺めてみると、帰還量がボリューム位置で変化し、ボリュームを上げると、帰還量が100%以上となっていました。取り急ぎ、全ボリューム位置で帰還量が100%以下とならないように帰還抵抗R05とR06を100kΩに変更してみます。まずはL-chのみ改造して効果を確認したところ発振が止まったので、対策として採用しました。ボリューム端子付近に実装された帰還抵抗を4本交換しました。

f:id:torusanada98:20190624122456j:plain

これで発振は止まりましたが、アンプのゲインが6dB上がったため、静かな環境でかすかにハムの音がきこえます。ハムの音質はプリウスが低速でモーター走行する際の疑似モーター音のような感じで耳につきにくいですが、この音質から、あまり根拠はありませんが、電源トランスの漏洩磁束をアンプの回路が拾っている感じで、対策のハードルが高そうなので、この状態で一旦様子をみることにしました。

f:id:torusanada98:20190624122946p:plain

周波数特性の測定

改めて周波数特性の測定を行います。ヘッドフォンの代わりに47Ωの抵抗を負荷抵抗接続用ラグ端子に追加接続しました。この追加で47Ωの抵抗が3本パラレル接続される事になります。入力信号は、発信器出力をバランス変換アダプタに入力してバランス信号化してヘッドフォンアンプに入力します。入力と出力ともにHotの信号をポケットオシロで観測しました。尚、ヘッドフォンアンプのボリュームはMaxの位置で測定を行います。入力を0.5Vppとして周波数を10Hzから1MHzまで変えて出力波形をモニタしました。アイキャッチ写真がこのf特の測定風景です。

f:id:torusanada98:20190624122532p:plain

L-ch、R-chほぼ同じ特性で、ゲインは約6dB、低域は10Hzまでフラットです。段間のカップリングコンデンサを4.7uFとしている事が効いているようです。高域は約40KHzからゲインが上がり、約100KHzでピーク(約13dB程度)となりそれ以上の周波数でゲインが落ち込みます。音を効いた限りでは、高域のピークを感じさせる印象はまったくありませんでしたが、対策を検討してみました。簡単に接続できる事から、終段のグリッドバイアス用端子台にコンデンサを追加で接続してみました。

f:id:torusanada98:20190624122704j:plain

f:id:torusanada98:20190624123159p:plain

下記の特性は150pFを接続したときのものです。

f:id:torusanada98:20190624122740p:plain

この対策によってピークは5dB以下に下がりました。但し、ゲインが上昇する周波数も40KHzから30KHzに下がっています。結局オリジナルの状態で、音質上気になる点がなかったので、本対策は保留としてこのまま様子を見ることにしました。今度こそアンプは完成です。次回は改めて設計情報の整理と音聴きを行います。

 

つづく(まとめ編)

真空管HPアンプの製作(製作編14)

f:id:torusanada98:20190623010937j:plain

製作編14

ハム対策を継続します。

ハムの原因の特定

ハムの音をよく聴いてみると、低周波成分はL/Rで同レベルで、ジーという高調波成分はL-chの方がやや大きく聞こえます。この状態で各部配線や部品に触ってみてノイズの変化から原因を特定してみます。トランジスタアンプの感覚でいろんな部分に触ると感電するので慎重に行いました。その結果L-chの方がやや大きい高調波成分は、ボリュームと段間のカップリングコンデンサ部で発生している事がわかりました。GNDに落とした銅板をその2カ所に入れるとL-chの高調波成分のレベルが下がり、ノイズがセンターから聴こえるようになりました。ボリュームは、L-chがトランスに近い側にあり、影響を受けやすくなっているようです。一方、L-chの段間のコンデンサのフロント側は、AC電源の1次ラインがトグルSWへ配線されていて、その影響を受けているようです。v

f:id:torusanada98:20190623011000j:plain

これでL/Rのバランスは取れるものの抜本的な対策とはならないため、この改造は躊躇しました。頭を冷やすために毎週末の定例のポタリングにでかけました。

試しに

いままでの検討で、かなり悲観的な気持ちになってきていましたが、基本方針の変更も含めて最後のわるあがきをする事にしました。音の観点から、今まで無帰還構成で考えていましたが、ゲインを下げる為に負帰還をかけてみる事にしました。試しに、47kΩ抵抗を4本(バランス入力アンプなので)取り付けて、100%帰還をかけてみました。改造はL-chのみで、抵抗をボリュームに取り付けて、配線はワニグチケーブルで仮接続しました。あまり期待せずに電源オンしました。この結果、うそのようにハムが消えました。この状態で音楽を再生したところ、ボリューム位置が10時あたりで通常音量となり、ゲイン設定もよさそうな感じで、対策としていけそうです。無帰還の伸び伸び鳴る感じは捨てがたいですが、いたしかたありません。意を決して正規改造する事にしました。帰還ラインは、ベルデンの2芯シールドケーブルを使用します。シールドラインはトランスの2次側は接続しますが、ボリューム側はカットします。

f:id:torusanada98:20190623011046j:plain

帰還抵抗は両チャンネルで合計8本になりますが、ボリュームの端子に取り付ける事にしました。ボリューム端子とボトムカバー間のクリアランスはあまりないので、端子をよけてボリュームのボディー面に取り付けました。見栄えはよくないですが、なんとか取り付けができました。

f:id:torusanada98:20190623011136j:plain

この状態で音を聴いてみます。電源オンして無音状態でヘッドフォンを装着しました。先ほどまで、あれほど悩まされていたハムがきれいに消えました。おそらく今回の負帰還で20dB程度フィードバックがかかったため、電圧換算で1/10くらいにノイズレベルが下がったものと思われます。後でアンプの周波数特性の測定をしてみる予定ですが、その際にオーバーオールのゲインから、無帰還時のゲインも算出してみたいとおもいます。

仕上げ

今回のハム対策で、無意味なものも含めていくつか配線変更を行ったため、束線をやりなおしました。最終的には以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20190623011225j:plain

最後にボトムカバーの処理をします。最後に追加した帰還抵抗とボトムカバーのショートを防止するために、ボトムカバー側に絶縁テープを貼りました。

f:id:torusanada98:20190623011314j:plain

見栄えはよくないですが、使用時には見えない為、気にしない事にします。アイキャッチ写真はボトムカバーを取り付けた完成写真です。次回は設計情報のまとめと、音聴き、特性の測定を行います。

 

つづく(製作編15)