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真空管アンプの製作(EL34pp)設計編1

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設計編1

 前回の構想編の内容に従って、具体的にバランス入力A級EL34プッシュプルアンプの回路設計を進めていきます。定数の決定過程も簡単に紹介します。

回路の決定

 今回採用する初段差動方式は、その動作の特性上偶数次歪みが打ち消されるため。トランジスタアンプでも使ってきました。音声信号を電源に流すと、音が電源の影響を受けると考えて、初段差動アンプのカソード側は定電流とし、電源に信号電流が流れないようにしました。終段との間にフィルムコンデンサをはさみ、バイアス回路、オフセット調整回路を終段のグリッドへ接続します。終段も初段同様の理由でカソード側を定電流とします。尚、ブロック図、回路図は水魚堂さんのBSch3Vを、真空管他のライブラリはラジオシャックさんが公開している物を使わせてもらい作成しました。どちらも完成度が高く重宝しています。

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バランス入力回路をどうするかと思いつつ、ネットを検索していると、参考回路が見つかりました。Tom Ishikawaさんの「ブログのようなもの」の真空管バランスアンプの設計製作記事です。この方は普段はトランジスタアンプを設計製作されているとのことですが、初の真空管アンプの設計製作経験をアップされています。今回のアンプは、この方のフィードバックのかけかたを参考にさせていただきました。回路にはすでに定数が入っていますが、この後ロードラインを引いて決めてゆきます。

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出力トランスの選定

 音質を決定づける重要な部品なので、それなりにコスト配分して決めたいと考えましたが、初設計・初製作のため、塩梅がわかりません。余裕を取りすぎかもしれませんが、今回ソフトンのRX-40-5を選択しました。このトランスは出力容量40W, 一次インピーダンスが5kΩで、今回は使う予定はありませんがUL端子もあります。角型のケースに納められて見た目も良く、他同等のトランスに比べて割安感が感じられました。さらに各種データも提供されていて安心感もあります。次にこの出力トランス前提として出力段のロードラインを引いてみます。

出力段の設計

 出力トランスRX-40-5の一次インピーダンス5KΩは、二次インピーダンス6Ωが前提となっています。私のスピーカーは、YAMAHAのNS-1000Mなので、公称インピーダンスは8Ωです。この場合の一次インピーダンスは6.7kΩ(5kx8/6)となり、プッシュプルの真空管1本当たりの負荷インピーダンスはこの半分の3.4kΩとなります。 終段をA級動作させ、出力を8W以上得るために、プレート電流Ip=35mAに決めました。
ロードラインは、何度も引き直しましたが最終版を掲載します。動作点のプレート電圧Vpをもう少し下げた方がA級動作範囲が広くとれますが、グリッド電圧Vgの小さい範囲を使いたくなかったため、このような設定としました。

 (0.035*2/sqr(2))^2 x 3400 = 8.3W   sqr(2)はルート2を示す

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出力段のDC設計

 出力トランスRx-40-5の一次巻き線の直流抵抗値は128Ωです。従って、終段管1本当たりの負荷抵抗はその半分の64Ωになります。ロードラインからVp=250V, Ip=35mA時のグリッド電圧Vg=-20Vなので、B1電源電圧(概算値)は272Vとなります。バイアス回路は、抵抗の本数が多いですが半固定抵抗の信頼性を考慮したことと、回路自体をバランス構成としたくてこのようになりました。後述しますが初段の定電流回路のために、C電源として-5Vを用意しましたが、バイアス調整用にこの電源を流用します。カソード側の定電流回路は、トランジスタとツェナーダイオードを組み合わせた単純なものです。トランジスタ世代のわたしは、真空管アンプ中にシリコン素子を使う事に対して躊躇はありませんが、後から考えると回路の堅牢性は格段に低くなっていると考えられます。おそらく通電状態での真空管の交換はNGでしょう。それでも回路異常時を考慮してVceo=400Vの2SC3631を選択しています。

B1電源電圧=250+20+0.035*64 =272V

初段のロードライン

 2段構成のため、初段ではできるだけゲインを稼ぐ必要がありますが、現実的なところとして、初段の負荷抵抗を150KΩ、終段の入力抵抗を300KΩをターゲットにしてロードラインを引きました。初段の実効負荷抵抗値は、100kΩ(150Kと300Kのパラ)となりますが、特性図を眺めつつ動作点をVp=165V, Ip=0.7mA, Vg=-1.5Vとしました。DC的には、負荷抵抗が150kΩのため、B2電源電圧は270Vとなります。

B2電源電圧=165+150x0.7=270V

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カソード側の定電流源は、初段2回路分あわせても流す電流は1.4mAなので簡単に定電流ダイオードで済ませます。但し、定電流ダイオードバイアスとして3V以上確保したいため、-5VのC電源を用意しました。アンプの入力抵抗を、2.2kΩと低く設定していますが、問題があれば後で見直します。発振防止のため、おまじない的に2.7kΩを全真空管のグリッドに挿入。段間の結合コンデンサは、低域の特性を考慮して0.47uFに決定。これでアンプの回路は決まりました。

 

つづく(設計編2)