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BTL_A級DCパワーアンプ設計編1

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回路

構想編で宣言したとおり、初段はFETの差動2段構成で、終段はコンプリメンタリパラレル構成でいきます。初段は、FETのVdsを押さえるためにカスコード接続とします。今回は小出力のBTL構成のため、電源電圧を低く押さえる事ができ、カスコード接続の効果がどれほどあるかわかりませんが理想動作を狙って採用しました。カスコードブートストラップ接続も考えましたが、メリットとデメリットを考慮して今回は採用を見送りました。差動アンプのカレントミラー回路はゲインを稼げますが、差動動作を阻害するためこのアンプでは採用しません。終段用のバイアス回路はトランジスタを使って温度補償します。回路図にはすでにトランジスタの型式と定数が記載されていますが、決定の経緯を続けて紹介します。

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終段のアイドル電流の決定

真空管アンプに合わせて最大出力を8Wで設計します。最大出力時のスピーカーに流す電流の実効値Irmsは、
Rl x Irms^2=8(W), Irms=1A(Rl=8Ω)

このときの電流のピーク値Ipeakは、
Ipeak=Irms x 1.41, Ipeak=1.41A

A級動作の終段のアイドル電流Iidleは、ピーク電流Ipeakの半分とすれば良いため、
Iidel=Ipeak /2, Iidle=0.7A

終段はパラレル構成とするため、トランジスタに流すアイドル電流はさらにその半分の0.35Aとなります。実際の設計は少し余裕をみて0.38Aにを設定しました。

終段の電源電圧の決定

8Ω負荷に上記のピーク電流を流すために必要な電圧Vppは、
Vpp=Rl x Ipeak = 8 x 1.41 = 11.28V

BTL方式の終段トランジスタの出力に要求される最大電圧Vmaxは上記Vppの半分となり、
Vmax=Vpp / 2 = 5.64V

トランジスタを動作させるためのバイアス電圧を2V見込むと電源電圧Vは、
V=Vmax + 2 = 7.64V

実際の設計は、少し余裕をみて電源電圧を8.6Vとしました。終段のトランジスタアイドル時の消費電力Pidleは、
Pidle = V x 2 x Iidle =8.6 x 2 x 0.7 = 12W

トランジスタ1個あたりの消費電力は、3W(12/4)となります。また、片ch当たりの終段トランジスタの消費電力は、その2倍の24Wとなります。終段トランジスタのエミッタ抵抗は、小さい程アンプの出力インピーダンスが下がりますが、熱暴走の防止効果、パラレルプッシュプルとしたときのトランジスタのばらつき吸収の効果を考慮して0.47Ωとしました。ほんとは0.22Ωで攻めてみたかったですが我慢しました。

ドライバ段の設計

終段トランジスタのhfeを仮に150とすると、Iidle=0.7Aなので終段トランジスタのベース電流のトータルは約5mAとなります。この電流を十分駆動するために、ドライバ段のアイドル電流を30mAとしました。オームの法則からドライバ段のエミッタ抵抗は33Ωとなります。

2段目差動アンプの設計

ドライバ段のトランジスタのhfeを150とすると、アイドル時ドライバのベース電流は0.2mAとなり、この電流を十分駆動するために、2段目の差動アンプのアイドル電流を5mA(差動合計で10mA)としました。ドライバのベースを7V(ピーク出力時)程度まで駆動するために、2段目のエミッタ電圧を12Vとしました。2段目のエミッタ抵抗を仮に200Ωとすると電圧増幅段の電源電圧は13.5Vとなります。

初段差動アンプの設計

初段の電流を1mA(差動合計で2mA)に設定し、FETとカスコード用のトランジスタにそれぞれ約5Vづつかけることとして各部の定数を決定しました。初段FETのソース側は、トランジスタとツェナーを使用した定電流源とします。初段のオフセット調整回路は、FETのソース側に半固定抵抗をもってきたかったのですが、DualFETに選択の余地がなく(部品選定は別途説明しますが、ソース端子が内部接続されてが1つのみ)、負荷抵抗側に半固定抵抗をもっていきました。これでアンプ回路が完成です。

トランジスタの選定

選定でこだわったのは下記の3点です。

1.通販で購入する
送料を考慮して全てを一括購入できる秋月電子1店舗の在庫で選定しました。

2.初段はDualFETを使う
回路設計の際にも触れましたが、選択の余地がありませんでした。それもチップ形状のものしかなく、一緒に販売されていたdip変換基板を購入して使用しました。

(本記事のキャッチ写真参照)

3.特性を満たせば安いものを選択する
私が学生の時には選別品が普通に販売されていましたが、今回の部品選定時には選別品が見つけられず、必要数量の1.5倍から2倍の数を購入して選別使用するため、極力値段の安い物を選定しました。

上記をふまえて選定した結果を表にまとめます。また、選別対応については、製作編で改めて説明します。

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つづく(設計編2)