DCパワーアンプメンテナンス改修編1

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改修編1

アンプをばらして部品の状態を確認しながら改修を進めます。

基板の取り外し

基板を取り外すために詳細確認を行っていたところ、配線の噛み込みを見つけました。基板と放熱器に実装されたドライバ間の配線が、シャーシと放熱器に挟まれていました。30数年間この状態でよく持ちこたえてくれたものです。放熱器取り付けねじをゆるめて噛み込んでいる配線を外しましたが、被覆はつぶれているものの絶縁は保たれていました。当時の雑な作業が露呈してしまいました。

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基板の詳細が確認できる状況となったので、改めて回路を確認します。前回掲載した回路にはいくつか誤りがありましたので修正しています。ドライバのバイアス回路は、ダイオード4本+半固定抵抗で構成されていました。細かい事ですが、信号レベルによってドライバと終段のコンプリメンタリトランジスタの動作点がずれてしまうので、現在の私はこの回路を採用しませんが、実際の影響レベルはわかりません。基板の組立に着目すると、初段の定電流回路のトランジスタは熱結合されており安定動作へのこだわりが感じられます。2段目の差動アンプのトランジスタも同様に熱結合されています。前回紹介したBTL A級DCパワーアンプでは実施しなかった対応です。

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回路図に各部電圧の測定結果および電流の計算結果を追記しました。終段のエミッタ抵抗の両端電圧からA級動作範囲を計算しておきます。アイドル電流Iidleは、
Iidle = (0.085 + 0.083)/0.4 = 0.42 A

 

A級動作時のピーク電流Iapeakは、Iidleの2倍なので、
Iapeak = Iidle x 2 = 0.84 A

 

A級動作Max時の電流の実効値Iarmsは、
Iarms = Iapeak / SQR(2) = 0.60 A

 

RL=8Ω負荷時のA級動作Max電力Pamaxは、
Pamax = RL x (Iarms)^2 = 2.88 W

 

能率90dBのNS-1000Mを前提とした常用の環境では、ほぼA級動作をしていると思われます。また、8Ω負荷時のAB級動作瞬間最大出力も算出しておきます。瞬間最大出力は、トランスのDC電流出力仕様2.2Aから、
Ppeak = (2.2 / SQR(2))^2 x RL =19.4W

 

8Ω負荷時ステレオの定格出力Pは、
P=(2.2 /(2 x SQR(2)))^2 x RL = 4.8W

 

ケースが大きく重いアンプですが、定格出力では前出のBTL A級DCパワーアンプに負けています。但し通常の音楽信号の聴感上の音量は、ピーク信号レベルが支配的と考えられるので、このアンプの聴感音量の方が大きいと推測します。

基板実装電解コンデンサ

アンプ基板の+/-電源にルビコンの100uF/63V品が実装されていました。取り外して状態を確認します。+/-それぞれに1個、L/Rチャンネル分でトータル4個ありますが、全て確認しました。比較する為に交換用として準備したニチコンのFGシリーズ100uF/50V品の結果も掲載します。測定は5回行い平均値を結果としています。耐圧が大きい方がESRが小さくなる傾向にありますが、この結果を見ると耐圧の大きなルビコンの方が微妙にESR値が大きくなっており、劣化傾向を示していると考えられます。この結果から4本ともニチコンのFG品に交換する事としました。

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Before

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After

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電源平滑コンデンサ

続いて端子がネジ止めで簡単に確認ができる2種類の電源平滑用電解コンデンサの確認を行いました。(本記事キャッチ写真参照)対象は電圧増幅段電源のニチコン15000uF/40V品と終段電源のNTK47000uF/50V品です。結果は表のとおりです。テスターの性格上大容量のコンデンサの方がESR値が小さく表示される傾向にありますが、NTK品のESR値は比較すると大きく、劣化の可能性が考えられます。一方ニチコンはESR値が小さく劣化が少ない傾向を示しています。この電解は電圧増幅段チョークインプット電源用の平滑コンデンサであることと、そもそも消費電流が小さいため、平滑コンデンサへの負担が小さい事から劣化が少なく抑えられているのかもしれません。大容量のブロック電解コンデンサの正規品の値段は高いことと他電圧増幅段平滑用コンデンサも同様の状態であろうと考えて、今回は劣化が認められた終段用電源の電解コンデンサのみを交換することにします。

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次回は交換用のブロック電解コンデンサの選定および他改修について紹介したいとおもいます。

 

つづく(メンテナンス改修編2)