バランス入力シングルパワーアンプ製作(構想編)

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構想編

製作済みのプッシュプルアンプと聴き比べをしたいとおもい、シングルアンプ製作に向けて設計構想を開始しました。

シングルアンプ

今回のオーディオフェアの中で真空管アンプはシングルに始まり、シングルに終わる方が多いとの話を聞き、さらに実際にプッシュプルアンプとの聴き比べも体験して、シングルアンプは改めて真空管の個性の出る方式であることを実感してきました。シングルアンプの基本は終段の1本の真空管が負荷を駆動する方式です。公表されているVp-Ip特性を眺めると、ロードライン上のVgをパラメータとしたIpのラインが非等間隔にならんだ状態を見ると、その特性が再生波形にダイレクトに反映されるため、「いい音がするはずがない」というのが過去の私の考え方でした。今年(2016年)のはじめに「真空管なんて」と思いながら製作した真空管アンプ1号機の中音域の響きの美しさを体験してからは、実際につくって聴いてみなければ解らないことがあると思うようになりシングルアンプの設計を行う決心をしました。

真空管の選定

シングルアンプの電力増幅用真空管選定の王道はオーディオ電力増幅用3極管です。どんなものがあるか調べてみました。300B, 2A3, 6B4G, 6A5Gなどが候補でしょうか?これら3極管の特徴を整理してみます。
・Ip-Vp特性が5極管3結の特性に比べて良い
図は2A3とEL34の3結時のIp-Vp特性です。2A3の方が各Vgの値のラインが均等に並んでおり、波形再現性が高いと言えます。

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・出力抵抗rpの値が3極管の方が小さい
・6A5Gを除き直熱管で使いにくい
・電力増幅用3極管は価格が高い

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出力抵抗rpの特性への影響ですが、ソフトンのシングル用出力トランスRW-20の特性が公開されていますので参考として転載します。この違いを見てしまうと、rpの小さい物を選択したくなります。さらに製作済みのEL34pp機の低音が、再生するソースによっては完全にBTL A級DCアンプに負けてしまう現実を考えると、できるだけrpの小さな球で駆動したいと欲が出てしまいます。逆にEL34pp機の中音域の響きの美しさを考えると残念でなりません。

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バランスシステムとの整合

私のシステムは、USB-DACでバランス出力をしてから、スピーカーの駆動までフルバランス構成となっています。せっかくアンプを設計するのであればこのシステムへ無理なく入れられるようにしたいと考えました。当初のオーソドックスで超シンプルなシングルアンプの音を聴いてみたいとの考えが完全に吹き飛んでしまってます。無理なく組み込む為にはバランス入力仕様となりますが、この場合ステレオアンプの片chの位相を反転させて動作時の電源に対する負荷の軽減策を試してみたいとおもいます。

設計構想まとめ

いままで考えた事を総合して設計構想としてまとめました。
真空管はEL34の3結のパラレル駆動とする
真空管の入手性を考慮しつつ、コストを押さえてrpを下げるための選択です。また製作済みのEL34pp機との比較を考えると公平な仕様だと考えました。
・入力は12AX7の差動構成としてバランス入力とする
無理なくバランス入力を実現できるうえ、この選択もEL34pp機との比較時の公平性も確保できると考えました。そんなのはシングルアンプじゃないとの指摘もありそうですが、せっかく自前設計しますので、私のシステムにマッチしたこの構成で設計をスタートさせたいとおもいます。

 

つづく(設計編1)