バランス入力シングルパワーアンプ製作(設計編2)

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設計編2

前回引いたロードラインに従い、電源から具体的に回路設計を進めます。

電源回路設計

先に行ったロードライン設計から電源回路への要求をまとめます。
・B1電源=215V
・B2電源=225V, Iidel=160mA(ステレオ分)
・C電源=-5V(電圧は5Vでなくても良い)

 

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前回の記事の最後で触れたとおり、EL34pp機(S1503)の電源回路のトランスのタップ切り替えだけで実現できないか考えながらロードラインを引きました。S1503では電源トランスの220Vタップを選択していましたが、本機では180Vを選択します。真空管の構成も同じため、ヒーター回路もそのまま使用できます。プッシュプル機との比較を行う事を考えると共通設計は好都合です。尚、図中の電圧は見込み値のため、完成後に実測値で修正予定です。

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アンプ回路設計

前回記事の基本回路に沿って定数を決めていきます。始めに終段の定数を決めます。ロードラインからアイドル時のIp=40mAを流すためのVgは-15Vとなるので、カソード抵抗Rkは以下となります。(B2=225VではVg=15Vを考慮するとターゲットのVp=220Vを割ってしまいますが現時点では出力トランスの電圧降下を含めて無視します)アイドル電流はVg=0バイアスで最大となるので、調整(Vgをマイナス電位にして電流Ipを下げる事しかできない)を考慮して抵抗値を小さ目にして電流を多めに流す設計としておきます。

Rk = 15 / 0.04 = 375(330Ω)

 

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カソード抵抗には交流をバイパスするためのコンデンサを並列接続します。仮に容量を100uF,220uFとした場合のカットオフ周波数fcは以下となります。

fc = 1/(2 x 3.14 x 330 x 100e-6) = 4.8Hz
fc = 1/(2 x 3.24 x 330 x 220e-6) = 2.2Hz

 

両周波数ともに出力トランスの特性を考慮すれば十分ですが、今回は余裕をとって220uFで進めます。さらに音質改善用にフィルムコンデンサを並列接続しておきます。次にバイアス回路ですが、真空管のばらつきを考慮して2本独立調整とします。Vgをマイナス側に振るために5KΩの半固定抵抗で電圧を調整できるようにします。接点不良を考慮して5.1kΩの固定抵抗でGNDへ並列に接続しておきます。この保護ですが、働いた場合にIpが最大になってしまうためあまり良い回路ではありませんが、電圧が不定になるよりは良いと考えてこれで進めます。Rgの値は真空管の仕様上700KΩまで上げられますが、余裕を取って470kΩとしました。初段のロードラインはRL=100kΩで引いているため、2本分の実効グリッド抵抗値を300KΩとする必要がありますが(初段のRL=150kΩ前提)240kΩで我慢しました。このため初段真空管の交流時負荷抵抗RLは92kΩに下がっています。続いて初段の定数を決めます。ロードラインの見直しにより、Ipを0.75mAから0.5mAに下げたたため、定電流ダイオードを1mA品に変更しました。それ以外の定数はS1503を踏襲し、問題があれば後で見直します。これで電源およびアンプ回路がフィックスしました。次回はシャーシ設計および加工準備を行っていきます。

 

つづく(設計編3)