バランス入力シングルパワーアンプ製作(まとめ編2)

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まとめ編2

ハム対策が完了し、アンプの各部の動作確認が終わったので改めて音の比較を行います。本製作のしめくくりとして、まとめ編のまとめを行います。

改めて音出し

ハム対策後の音を聴きましたが、対策前後で音の印象に変化はありません。前回の音聴き同様に、のびのびと音楽が鳴ります。プッシュプル方式のアンプに比べて音に奥行き感をより感じます。歪み特性上不利なシングル方式のアンプのこの音の違いは何に起因するのでしょうか?この他印象的な音の違いとしては、シングルアンプ方式の方が音に暖かみがあるように聞こえます。これは偶数次の高調波歪みレベルに関係しているのかもしれません。低音の床を振るわす超低域は、プッシュプル方式に分がありますが、このシングルアンプは、パラレルシングル構成としたためなのか、思いの外いい感じで低音が鳴っています。

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プッシュプル方式との音の違い

私がシングルアンプを製作することを知った、大学時代のオーディオ仲間から、「音の余韻を聴いてみて!」とアドバイスがありました。プッシュプルアンプの出力トランスは、コア内の磁界が0を中心に動作していますが、シングルはバイアスがかかっていて磁界が0となりません。磁界0クロス時の動作に何か秘密があるのではということだとおもいます。単に音楽を聴くだけでは確認できませんでしたが、確認用に出力管ごとに出力トランスを独立させたプッシュプルアンプ、さしずめdual single push-pull構成とでもいいましょうか?下記回路図のアンプを作れば、何かわかるかもしれません。この構成の場合、トランスの2次巻き線にセンタータップも確保可能なのでバランスアンプ製作には好都合です。

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実際つくるとなると、何の確証もない思いつきの回路に高価な出力トランス(シングル用)がステレオ分で4個必要となるので、それ相応の覚悟が必要です。誰か作って結果を教えてもらえないものかと都合のいいことを考えています。もしかすると、音楽の奥行き感がプッシュプル方式に比べてより感じられるのは、このあたりが関係しているのでは?とも考えてしまいます。今回音の比較をしている中で特によかったのは、アコースティックギターの演奏です。せまってくるような生々しさ、暖かみがあり、奥行き感の表現もよくできていました。海風の出だしやゴンチチのアルバムを何回も聴いてしまいました。ひとしきり聴いた上で、純粋に音楽を楽しむ上ではシングルアンプは良い選択だと感じました。EL34でシングルアンプを語って欲しくないとおっしゃる方もいるかとおもいますが、これら特徴からシングルにこだわる方が多い事を私なりに理解できました。

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まとめのまとめ

今回、プッシュプルアンプとの音の比較ということで、先に製作したS1503と出力トランスを除きほぼ部品を共通にして製作し、比較できたことが良かったとおもいます。そのため、市販品にはあまりないバランス入力パラレルシングル構成となり、自作しがいのあるものとなりました。シングルアンプの音の秘密に関しては、永遠の命題とでもいいましょうか?解き明かすことはできませんでしたが、少なくともシングルアンプの音の特徴を体感できたことは大きな収穫でした。10/9に真空管アンプオーディオフェアに参加して触発され、設計を開始して約2ヶ月で完成しました。後半にミスによるトラブルを頻発させてしまいましたが、大事に至らずホッとしています。2ヶ月に渡り、製作におつきあいいただきありがとうございました。最後に改めて最終版の回路図と部品表を掲載します。

■アンプ部回路図

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■電源部回路図

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■アンプ部部品表

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■電源部部品表

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おわり(バランス入力シングルパワーアンプ製作)