バランス変換ボリューム2(製作編5)

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製作編5

前回バランス変換アンプの調整ができなかったので、原因を特定して調整を完了させます。

おさらい

非反転出力終段のコンプリメンタリトランジスタの実装の向きを間違え、終段のアイドリング電流の調整ができませんでした。新品のコンプリメンタリペアを正しく実装し直しましたが、それでも調整ができなかったため私自身の冷却期間を1週間とりました。その時測定した各部電圧を1週間眺めましたが、それほど異常な値となっていませんでした。

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原因の特定

仕方がないので、一旦反転出力側の帰還ラインを外して調整をしてみることにしました。この場合のフィードバックループの動作は、2倍の非反転アンプと等価となるので、ボルテージフォロワの調整経験が参考となります。再調整の結果、非反転出力側は、ボルテージフォロワと同様に調整できました。反転出力側は出力オフセットは無視して、終段のアイドリング電流を初めに調整します。その後、VR2で2段目のバイアス電流を調整してオフセット電圧を合わせ込みました。反転出力のオフセット電圧は、回路がフィードバックループ外のため安定せず、約150mV程度変動します。温度が安定した状態で、-10mV程度までに合わせ込んで反転出力の帰還をもとどおりかけます。出力オフセットは反転非反転出力共に約30mV程度変動しましたが、バランス出力で観測すると変動自体は1mV以下と非常に安定していました。尚、バランス出力のオフセット調整はVR1で容易にできました。温度平行した時の各部電圧の測定結果は以下のとおりです。

■非反転帰還切断時

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■非反転帰還接続時

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この回路の場合、非反転・反転出力ともに出力オフセットはある程度変動しますが、両出力がほぼ同じレベルで変動し、バランス出力として見るとオフセット電圧は押さえ込まれているようです。帰還を完全にかけた状態で調整ができなかったのは、この変動によって調整値がわかりずらかったためでした。反転出力側の帰還を外し、非反転側の調整を安定した状態でできる今回の手順は理にかなっていると言えます。次にこの状態で非反転、反転アンプの周波数特性を確認します。基準電圧(入力)を1Vppとして測定をおこないました。写真は測定時の非反転・反転アンプの入出力波形(画面上段が入力、下段が出力波形)ですが、正しくバランス変換されている事が確認できます。

■非反転アンプ入出力波形

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■反転アンプ入出力波形

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発振器の出力インピーダンスは50Ωですが、入力抵抗手前で入力電圧を見ているので、出力インピーダンスの影響はありません。周波数特性は以下のとおりです。

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100KHz以上で、非反転アンプはゲインが下がり、反転アンプは逆に上がっていました。この特性は、2段目の発振対策用コンデンサ容量のアンバランス起因と推定し、反転側の対策用のコンデンサも22pFに変更して再度周波数特性の確認を行いました。対策後の回路定数は以下のとおりです。

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予想が的中し、非反転・反転アンプともに確認を行った周波数範囲ではフラットな特性となりました。

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アンプの出力のオフセットは、次段のボリュームにとって良くありませんが、今回はこの設計で製作を進めます。仮にオフセット電圧が50mVとした場合、2KΩの抵抗に流れる電流は25uAと小さい事が唯一救いです。

次回は入力段のボルテージフォロワを実装し、片チャンネル分の実装を完了させます。

 

つづく(製作編6)