フィルター用コンデンサの接続に誤りがあり、回路図を修正しました。詳細は、2018-02-09「女神たちの争い(製作編3)」を参照ください。
設計編
前回組み上げた2Wayスピーカーのウーハー駆動用のチャンネルデバイダーの設計をします。
初めに
前回組み上げたフルレンジユニットを使ったネットワークによる2Wayスピーカーの音が思いの外良かったです。中音域はNS-1000Mとは違った良さを感じました。低音にほんの少しゴリゴリした感じが出せればさらに1段クラスアップする印象です。そこをチャンネルデバイダーを使ったマルチウェイでウーハーをダイレクトに駆動したときにどのように変わるのか楽しみです。中高音域の駆動には響きが美しい真空管アンプを使う予定です。ネットワークをつかってクロスさせますが、ウーハーの逆起電力による電圧の戻りがなくなることから、さらに中高域の質の向上が期待できます。
チャンネルデバイダー
設計に入る前に、既製品を確認してみました。まずヒットしたのは楽器/PA用のものを格安で提供しているベリンガーのものです。入出力はXLRバランス/アンバランス、24dB/Oct外いろんな機能が実装されて実売1万円からという感じです。アナログ式とデジタル式の両方があり、デジタル式の方が高機能ですが、価格設定は高くなっています。残念ながらネット上のレビューをみる限り、HiFiオーディオ用としては問題ありそうです。
次に、FOSTEX製のおもちゃのようなチャンネルデバイダーもヒットしました。EN15で定価9000円です。2Way用で-12dB/Oct、クロスは1KHz~6KHzの連続可変です。簡単にマルチアンプを始めるには手軽なアイテムだとおもいます。当然ながら入出力はアンバランスのみです。
あとはオーディオメーカーが過去に発売したものが中古でヒットするくらいでした。写真はアキュフェーズが1987年に発売したバランス入出力をもつチャンネルデバイダーです。
チャンネルデバイダーの設計
仕方がないので自作することとします。今まであまりフィルターの設計はしたことがなかったのでネットから情報を仕入れ、オペアンプを使ったsallen-key2次LPFの設計してみることにしました。基本回路は本記事のアイキャッチ画像のとおりです。ここで、K=2.4とするとバターワース特性となり、K=1.4とするとベッセル特性に、K=1とするとCR2段のフィルターと等価の特性になるとのことです。それぞれの特性の特徴は以下のとおりです。
■バターワース特性
通過域の周波数特性が平坦で遮断周波数付近の減衰が比較的良好な点が特徴です。市販のチャンネルデバイダーに多く使用されているようです。欠点としては遮断周波数付近の位相の群遅延特性が良くないことからステップ応答でリンギングを生じる点です。
■ベッセル特性
通過域の群遅延特性が平坦なため、ステップ応答でリンギングを生じることがありません。その代わりに遮断域での減衰はバターワースよりも劣ります。このような特性から波形の伝送が必要な場合に使用されます。
■RC2段の特性
こんな特性の分類はありませんが、参照したトランジスタ技術の記事にはRC2段フィルタと等価な特性のため自然な音と表現されていました。
LPFの設計
LC構成のネットワークの置き換えるため、RC2段等価の特性(K=1)でLPFを設計してみます。R=8.2kΩ、C=0.01uFとするとfc=1.94kHzとなります。その前段にボルテージフォロワを入れてHigh側(スルー)はその出力を使います。バランス方式とするためには8連ボリュームが必要となりますが、そんなものはないので、今回の実験では4連ボリュームを2個並べて使います。この点はバランスシステムのチャンネルデバイダを組み込む場合の大きな課題です。
今回はRC2段等価特性でLPFを設計しましたが、いずれベッセル特性やバターワース特性も体験してみたいので、アクティブフィルタのCRは容易に交換できるようにしておきます。
次回はフィルタを製作してその特性を確認してみたいとおもいます。
つづく(製作編1)