A級バランスHPアンプ製作(製作編23)

f:id:torusanada98:20171023121307j:plain

製作編23

amp4の出力が-9Vに貼り付く原因を今度こそ特定して修理を完了させます。

原因の特定3

シャーシに組み込んだ状態では検討しにくいため、基板単体で確認を行います。

f:id:torusanada98:20171023121347j:plain

シャーシ取り付け状態の確認と同様に、電圧増幅段のみ電源を入力して症状が同じ事を初めに確認しました。確認結果は以下のとおりですが、シャーシ組み込み状態とほぼ同じ電圧となっています。

f:id:torusanada98:20171023121524p:plain

次に帰還と2段目の入力をカットして、初段単体で確認を行いました。確認結果は以下のとおりです。予想に反して、初段の状態はカット前とほぼ変わりません。定電流源のエミッタ抵抗には前の状況と同様に2mAの電流が流れていますが、これはどこから流入しているのでしょうか?

f:id:torusanada98:20171023121635p:plain

次に簡単にできる事として、入力のJ-FETを正常動作しているamp3のものに交換してみました。二次災害も懸念しましたが、各部電圧からその可能性は低いと判断して差し替えすることにしました。

f:id:torusanada98:20171023121714j:plain

症状は全く変わりませんでした。せっかくなのでamp4のJ-FETをamp3に挿してみましたが、正常回路と同等の電圧を確認しました。この結果、J-FETは正常と判断できました。不具合状態の電圧確認結果からVgsとVDSは、

Vgs = 0 - 0.849 = -0.849 V

VDS = 4.25 - 0.849 = 3.40 V

となっています。データシート掲載のId-Vgs特性を参照するとこの時にドレイン電流Idはほぼ0となります。

f:id:torusanada98:20171023121813p:plain

今までの確認状況を整理してみます。

・初段定電流源エミッタ抵抗に約2mAの電流が流れている

・入力のDual J-FETは正常

・J-FETには最低限のVDSが印加されていて、Idがほぼ0となるVgsがかかっている

これらの結果から、この症状は初段の定電流源トランジスタの故障としか考えられません。エミッタ抵抗に流れる2mAはベース側から流入していて、コレクタ電流が流れていないと考えると全てのつじつまが合います。該当トランジスタを見た限りでは特段異常は認められません。

f:id:torusanada98:20171023121903j:plain

早速トランジスタの交換を行います。初めにトランジスタ選別残り品の確認を行います。ペア品とならないNo31を選択しました。

f:id:torusanada98:20171023121953p:plain

ユニバーサル基板を使った組立の際にいくつかルールを決めていますが、その1つが、「交換が想定される半導体の半田付けの際には、リードは曲げずにストレートの状態で半田付けを行う」というものです。配線の手間を少なくするためには、リードを折り曲げて、接続が必要な部品のリードへ接続をしたいところですが、後々の修理対応時の効率を考えていつも守っています。今回もこのルールのおかげで修理がすんなりできました。写真は半田吸い取り網で半田を取り去った状態です。この状態では該当のトランジスタは簡単に抜き取ることができます。

f:id:torusanada98:20171023122040j:plain

交換後に再半田しようとしたところ、エミッタ抵抗のリードが簡単に折れてしまいました。理由はわかりませんが、この抵抗も合わせて交換しました。

f:id:torusanada98:20171023122121j:plain

修理はわりときれいにできました。

f:id:torusanada98:20171023122204j:plain

動作確認

初段のみ切り離した状態で+/-12Vを入力して、初段の動作を確認しました。各部の電圧は以下のとおりで、正しく動作していることが確認できました。

f:id:torusanada98:20171023122301p:plain

しかし、なぜ初段の定電流源のトランジスタが壊れたか想像ができません。一部の電線を接続せずに確認を行った際い配線が接触してしまったくらいしか考えられません。続いて、初段出力と2段目の入力を接続しなおし、帰還も正しく接続して総合動作確認をおこないました。ユニバーサル電源の仕様上、終段へは+/-6Vを入力しています。確認結果は以下のとおりで、アンプが正しく動作していることが確認できました。

f:id:torusanada98:20171023122356p:plain

結構修理に手こずりましたが、原因がわかってみればたいした事ではありませんでした。次回は修理基板をシャーシに組み込み動作確認を行います。

 

つづく(製作編24)