バランス方式EL34ppアンプ修理(番外編17)

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番外編17

予定を変更して、セミマルチアンプシステムのスコーカー&ツイーター駆動に使っているEL34ppパワーアンプの修理を行ったので紹介します。

きざし

昨年末(2017年12月中旬頃)にいつもの様に音楽を聴いていたところ、右チャンネルから「がさがさ」というノイズが聴こえました。すぐさまアンプの電源を切ったので原因の特定まではできませんでした。ノイズの帯域からしてスコーカーとツイーターを駆動しているEL34ppアンプが原因の可能性が高いと考えられます。しばらくして、電源を入れ直したところ特に問題はなく、その後1ヶ月以上、異常は発生していませんでした。

EL34の購入

念のため、EL34のペア品を購入しておく事にしました。現象が再現していない中、購入する事にした理由の1つは、昨年(2017年)の真空管オーディオフェアの新忠篤先生の講演です。先生が昔、レコード会社に勤めていた時に、カッティングルームのモニター用アンプとしてEL34パラレルプッシュプル構成のモニター9というアンプが使われていて、毎週末ごとにEL34を4本交換されていたとのお話をされていました。使い方によっては、EL34の寿命はこんな物かと思ったのを思い出したからです。いつものとおり、アマゾンで購入しました。購入時にいつも思いますが、アマゾンの真空管のラインナップは多彩です。今回購入したJJ Electronic社のEL34も2ペアから8ペアまで用意されています。

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各組数の単価を見ると、4本組が一番高く、2本、8本、6本の順番になっています。これは需要の順になっているのでしょうか?また、JJ以外のEL34もいくつが取り扱われています。

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掲載した中では、Mullard製が一番高価格となっていますが、ブランドのネーム以外にも差があるものなのでしょうか?一度、価格の高い真空管に差し替えて音を聴いてみたいとおもいました。私の購入したものは、購入後90日間の製品保証なので、購入してほったらかしにしておく事もリスクがありますが、高額ではないので気にしない事にしました。現品はこんな感じで届きました。

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ペア品に伴う取り扱い注意文が貼られています。緩衝材を外すとこんな感じです。

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外箱には、測定結果が貼られています。Ipを含む測定条件とGmの測定結果です。私の使用条件はIp=35mAなのでほぼ同じ条件で測定されている事になります。Gmの誤差は約0.15%とペア特性としては良好です。

再発

ノイズ発生を忘れかけていた時、チャンネルデバイダのオペアンプ変更の音質比較をするため、オリジナル状態で音楽を聴いていたところ、「がさがさ」ノイズが再発しました。今度は先にEL34ppアンプの電源を切ったところ、ノイズが消えた事から原因はEL34ppアンプと特定されました。前回現象が出てから、約1.5ヶ月が経過しています。重い腰を上げて修理をする事にしました。

EL34ppパワーアンプ

このアンプは、オーディオ趣味復帰後の大型製作1号機となります。それまで真空管アンプの設計を行った事がなかったため、参考書を購入して理解してから設計に取りかかりました。回路は以下のとおりです。

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差動2段構成のシンプルな回路ですが、真空管の安定性を生かして差動入力差動出力構成としています。この回路図ではNFBがかかっていますが、現在は帰還回路を外して無帰還として使っています。各段ともに半導体定電流源を採用し、オートバイアスとしています。従って、初段・終段の真空管を交換しても終段Ipのオフセット調整のみですみます。

終段管の交換

原因は終段管のEL34と特定できていませんが、決め打ちで交換してみることにしました。久しぶりにボンネットを開けると、普段未使用時にシートを被せているとは言え、埃が積もっています。交換前に現状の終段の終段Ipのオフセットを計ってみました。測定はシャーシにテスタリード用のチップ端子を付けたので便利です。

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結果は約0.8Vもあり調整時から真空管の特性が変化している可能性が高い状況です。この部分の等価回路は以下となり(63.5Ωは出力トランス巻き線の直流抵抗値)、測定結果からIp電流の差は12.6mAと算出できます。終段のIpを35mAとしていますので、無視できないレベルの差となっていました。

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早速、終段のEL342本を交換しました。

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新品のEL34は美しいです。ドキドキしながら電源オンし、オフセットを調整します。オフセット調整もシャーシ上からできる様に半固定抵抗を取り付けています。

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安定を待ってから調整し、おおよそ10mV以下に調整しました。

これで交換作業は完了です。重い腰をあげた割には、交換作業はあっけなく終わりました。前回のノイズの不再現期間が1ヶ月以上あったので、当面様子を見ながらの使用となります。万が一不調となっても修理が自前でできるのは、自作ならではのメリットだと改めて思いました。

 

おわり(番外編17)