安定化電源性能改善(試作編2)

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試作編2

試作した+電源の通電確認の続きを行い、続けて性能確認を行います。

試作基板おさらい

本題に入る前に、試作した基板を整理します。購入したVRの定数を間違えたため試作基板の回路は以下となっています。

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オペアンプの位相補償用のコンデンサC5は現時点では実装していません。この回路にユニバーサル電源から16.9Vを供給して通電確認を開始しました。前回記事の最後の状況は、出力が約300KHzで発振していて、かつ出力電圧調整用のVRも機能していませんでした。

発振対策

一旦電源を切り、オペアンプの位相補償用に手持ち在庫の関係から手始めに150pFを付けてみました。電源オンして出力波形を確認します。

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対策前は、約300KHzで発振していましたが150pF追加で136KHzに変化しました。容量アップで対策できそうな感触です。手持ち在庫で150pFより1サイズ容量の大きな物は1000pFでした。これを試してみます。実装して電源オンするときれいに発振波形はなくなり、出力電圧調整もできるようになりました。1000pFはハンダ面に取り付けています。

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写真右手の抵抗については後で説明します。VRまわりの回路変更時に気になっていた、出力電圧の調整感度も問題ありません。せっかく購入したVRを無駄にしたくない事と、抵抗2本の実装が省けるので、常用基板もこの回路構成としたいとおもいます。この時の各部の電圧は以下のようになっています。

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矩形波応答

性能改善項目1の矩形波応答の確認を行います。矩形波状の電流を流すために「安定化電源の製作」記事で紹介したジグを使用します。回路は3ブロック構成となります。

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3ブロックはそれぞれ正電源用の負荷回路、負電源用負荷回路、ゲイン10倍のプリアンプです。これを下記のように接続して観測を行います。

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負荷電流は、波高値70mAと10mAの1KHzの矩形波とします。ジグの負荷抵抗は50Ωなので電圧換算すると3.5Vと0.5Vとなります。性能改善されている事を期待しつつ電源オンしてみます。

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黄色のラインが電源出力をACカップルしたゲイン10倍のプリアンプを通して観測したもので、青色のラインが負荷抵抗印加電圧です。サンプリングの関係から過渡応答波形のピークが取れないので、オシロのトリガレベルを調整して負荷電流の立ち下がりと立ち上がりのピークレベルを個別に観測しました。左が立ち下がり時のピークを、右が立ち上がり時のピークを示しています。過渡応答レベルは立ち下がり時が360mV、立ち上がり時が376mVと現行の電源と比べて立下りは大幅改善、立ち上がりは大幅に悪化しています。立ち下がり時の応答波形を拡大して観測してみます。

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今度は青のラインが電源出力をACカップルしたゲイン10倍のプリアンプをとおしてみた波形で、黄色のラインが誤差アンプ(オペアンプ)出力波形です。この波形の特徴は、応答の遅れによる電圧変動となっています。回路図をじっと眺め、まずはベース抵抗の1KΩを変えてみる事にしまた。試しに1KΩのベース抵抗に470Ωをパラで仮付けしてみます。先に掲載した発振対策のコンデンサの写真右手に写っている抵抗がパラで仮付けしたものです。この場合の波形は以下のとおりです。

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抵抗追加により360mVの過渡応答が約132mVに改善しまし、対策はビンゴでした。改善のメカニズムはオペアンプの駆動力が1KΩの出力抵抗で制限を受けて、トランジスタのCobの影響を大きく受けていると考えられます。さらに抵抗値を下げてみます。写真は47Ωをパラに追加した時の波形です。

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過渡応答レベルは約53mVまで改善しました。だめ押しでさらに10Ωまで下げてみました。

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過渡応答レベルは44mVまで下がりました。同時にオペアンプ出力の電圧変動も下がっています。ベース電流がいっしょなのでベース抵抗を下げた分だけオペアンプ出力のレベル変動も下がっています。途中の確認結果も含めて効果をグラフにしてみました。

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横軸が抵抗値で縦軸が過渡応答電圧です。効果をわかりやすくするために、抵抗値軸を対数表示としています。この結果からオペアンプ保護にはあまり意味はないとおもいますが、ベース抵抗は10Ωでいきたいとおもいます。この状態で負荷電流立ち上がり時の波形を観測しました。

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過渡応答レベルは立ち下がり時よりもやや大きい約65mVとなっていましたが、良しとしたいとおもいます。

次回は、出力インピーダンスの周波数特性の確認を行います。

 

つづく(試作編3)