試作編3
矩形波過渡応答の改善検討が終わったので、出力インピーダンスの周波数特性の確認を行います。
矩形波応答まとめ
前回、矩形波応答の確認および改善を行いましたので、本題に入る前に結果を整理します。回路は、発振対策及びベース抵抗を変更したので以下のとおりです。
最終状態を、他の2方式とあらためて比較します。最初は現行のディスクリート方式安定化電源です。
立ち下がり時が4.6V、立ち上がり時が74mVです。次に三端子レギュレータの矩形波応答です。
立ち下がり時40mV、立ち上がり時33mVです。最後に今回製作した性能改善版オペアンプ方式安定化電源です。
立ち下がり時44mV、立ち上がり時65mVでした。比較しやすいように表にまとめます。
今回製作の電源の特性は、現行の基板に比べてそこそこの改善ができたと言えます。このまま比較評価を続けます。
出力インピーダンスの周波数特性測定
測定システムは前回と同じ物を使用します。
発振器から供給する信号を矩形波から正弦波に変更します。負荷電流の振幅は、70mA~10mA間を正弦波状に制御します。観測周波数範囲は10Hz~100KHzとします。それでは早速測定します。初めに100Hzの波形観測をして測定が正しくできているかを確認します。
青のラインが出力変動を10倍のプリアンプを通して見た波形です。黄色のラインは負荷抵抗50Ωの印加電圧です。3Vppとしているので、負荷電流の振幅は60mAppとなります。この時の出力変動は、24mV/10=2.4mVなので出力インピーダンスは、2.4/60 = 0.04Ωと計算できます。現行の安定化電源の100Hzの出力インピーダンスは0.1Ωを越えていましたので、いい感じの結果となっています。改めて、10Hz~100KHzで出力変動レベルを測定しました。下記は100KHz時の観測結果です。
観測結果をグラフにしてみます。
過渡応答レベルは、三端子レギュレータに比べて可聴帯域内全域で小さくなっています。この結果を負荷電流の振幅60mAで割って出力インピーダンスのグラフとしてみます。
結果は1KHz以下でほぼフラットでそれ以上の帯域でなだらかに上昇しています。まずまずの結果ではないでしょうか?残念な点は20KHz以上で他の2方式よりも出力インピーダンスが高くなっている点です。比較した定電圧方式と三端子レギュレータ版の電源の回路図は以下のとおりです。
■定電圧方式電源回路
■三端子レギュレータ版電源回路
両電源の出力に電解コンデンサを取り付けています。このコンデンサの効果の可能性があります。100uFの理想コンデンサの10KHzおよび100KHzのインピーダンスは、それぞれ0.159Ωと0.0159Ωとなるので、今回製作の電源出力に100uFの電解コンデンサを追加して同様に測定を行なってみました。最初は出力変動レベルです。
以下が出力インピーダンスの周波数特性です。
100KHzの特性は、三端子レギュレータと同じになりました。結果の特徴は、20KHz付近でなだらかなピークができています。三端子レギュレータの結果はそれがさらに顕著に現れたように見えます。影響が出ている周波数域の応答波形は以下のとおりです。
影響が出ている10KHz時の波形はいびつで出力の電解コンデンサの影響を受けているように見えます。影響が出ていない100KHzの応答は正弦波となっています。この結果から、安定化電源出力にはむやみに大容量の電解コンデンサを付けるべきではない事がわかります。次回はマイナス電源の試作を行います。
つづく(試作編4)