EL34ppパワーアンプ製作2(設計編1)

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設計編1

先に設計製作したEL34ppアンプの設計を見直します。

アンプ回路図の見直し

あらためて現行のEL34ppアンプの回路図を掲載します。

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この回路を2号機用に見直します。

初段差動アンプ

初段は双三極管12AX7を使った差動アンプ構成です。カソード電流は1.5mAの定電流ダイオードを使って定電流化して差動アンプを理想動作に近づけています。入力抵抗は47kΩと他のアンプに比べて高くなっているので、どの程度影響があるかわかりませんが今回は10kΩに下げたいとおもいます。次に初段の利得を計算してみます。下記等価回路の真空管アンプの利得は以下のとおりとなります。

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Gain = μ x RL / (RL + rp)

設計したアンプの負荷抵抗は150kΩですが、終段の入力抵抗が並列に接続される事となるので、交流の負荷インピーダンスはおおよそ100kΩとなります。(150Kと330Kの並列)12AX7のμは100、内部抵抗rpは80KΩ(プレート電圧100V時)なので初段のゲインは以下となります。

Gain = 100 x 103E3 / (103E3 + 80E3) = 56(E3はx10の3乗)

参考としてプレート電圧250V時のゲインの計算式も掲載します。

Gain = 100 x 103E3 / (103E3 + 63E3) = 62

初段回路の無信号時のプレート電圧は約160Vなので、ゲインは上記2式の間の値となります。続いて現行アンプ設計時の初段のロードラインを確認します。

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見直した結果そんなにおかしな点はありませんでしたが、修正版を参考に掲載します。ポイントは、バイアス設計時は、終段入力抵抗は無視してRL=150KΩとし、交流設計時はRL=103KΩとする点でしょうか?

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上記で計算した利得と、ロードラインから読みとる利得は計算値とほぼ同じとなっています。

終段プッシュプルアンプ

終段も呼び方は異なりますが、初段と同じ差動アンプ構成です。違いは入力段のバイアス調整回路と、負荷が抵抗からトランスを介したスピーカーとなっている点です。ソフトンのトランスは、スピーカーインピーダンス6Ωに対して5KΩなので、8Ωのスピーカーに対して、約6.6KΩの負荷となります。終段はプッシュプル構成の為、その時の負荷は2倍となるので、終段の負荷インピーダンスは3.3KΩと考えます。終段は5極管(EL34)を3極管接続して使っています。利得を計算するために仕様書を見ても3極管接続時の定数は掲載されていません。いろいろと探したところ、ありました。私の真空管アンプ設計のバイブル「情熱の真空管アンプ」の付録にEL34の3極管接続時の実測パラメータが掲載されていました。gm=8.7mS,μ=8.7,rp=1KΩ(プレート電圧300V時)これを使って利得計算すると以下となります。

Gain = 8.7 x 3.3E3 / (3.3E3 + 1E3) = 6.7

次は現行アンプのロードラインです。

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特に見直す必要はなさそうです。このロードラインから利得を読みとると約6倍で、上記の結果とそこそこ合っています。

総合利得

出力トランスは巻き数比で利得が下がります。巻き数比はルート(6Ω/5KΩ)で求められます。結果は0.034倍です。従って総合の利得は以下のとおり計算できます。

Gain = 56 x 6.7 x 0.034 = 12.7 (22dB)

利得実測

せっかくなので、現行アンプを使って各段の利得を再測定してみました。テストディスクの1KHz/0dBトラックを再生し、8Ωのダミー負荷を接続したアンプに入力して波形を観測しました。各点の波形はHotチャンネルをGND基準で観測しています。出力が1Vppになるように入力レベルを調整しました。下記の波形は黄色が入力波形で青が出力波形です。

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上記を含めた観測ポイントは以下のとおりです。

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左右ともにHotチャンネルの観測を行い利得をまとめてみました。

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測定値は設計値に近く、真空管は選別品を購入した為、L/Rチャンネル間のゲインもほぼ同じとなっています。次回はシャーシ設計の確認を行います。

 

つづく(設計編2)