DACユニットの検討(製作編1)

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製作編1

前回設計したブレッドボード用加工図面に従ってブレッドボードの加工を進めます。

ブレッドボード用板購入

製作編の1回目は、想定外の事も起こるので土日の連休に開始したかったですがあいにく土曜休出となってしまいました。現在の電気主任技術者の退職を控えて工場の変電設備自主点検に電気主任技術者としての立ち会いの引継です。数年前に2年間かけて通勤の暇な時間を利用して取得した電験三種の免状がやっと役に立ちます。と言っても点検自体は委託電気設備業者が行なうので、停電前と後の操作と確認のみです。1日電気とネット環境がない中で作業完了を待つのは結構苦痛でした。翌日曜日に近くのスーパービバホームにブレッドボード用のアルミ板を早々に買いにいきました。家に帰り板を確認したところ、間違ってステンレス板を買ってしまった事に気づきました。

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まあなんとかなるだろうとたかをくくって作業を進めます。加工図はA3用紙にプリント済みです。加工図作成時にメッシュを0.5mmに設定して作成している為、取付部品によっては穴位置が合わないものがあり、ポンチ処理前に微調整を行います。メッシュをもっと細かく設定すればこの作業は不要となりますが、あまり細かく設定すると加工図作成が大変になるため妥協しています。下記はLCDパネルの微調整の結果です。

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左右の間隔は問題ありませんが、上下の間隔を多少広げています。全ての部品について同様の確認を行い、加工図をステンレス板に貼り付けて微調整した位置にポンチで印をつけました。まずは正確な位置に穴を開けるため2mmの刃を使いました。しかしまったく刃がたちません。さすがステンレス板、通常のビットでは時間をかけても穴を開ける事ができませんでした。やな予感は的中し、今週はここまでとなってしまいました。

ブレッドボード再購入

翌週、改めてアルミ板を購入しました。t=1.0とt=1.5で約500円価格が違ったため、t=1.0を購入しました。この判断が間違っていなかった事を祈ります。

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前回と同様に穴位置を微調整した加工図をアルミ板に貼り付けます。

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それぞれの部品の取付用の穴のセンターにポンチで印をつけます。取付部品が多く、印をつけるだけでも時間がかかりました。気を抜くと上記で微調整した程度位置がずれてしまう事もあります。

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全てに印をつけて加工図を剥がすとこんな感じです。

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ブレッドボード加工

最初に2mmのビットで穴を開けます。続いてビットを3.2mmに変えて、トランスの固定穴を除き穴径を広げました。トランス固定用の穴は、ビットを4.2mmに変えて穴径を広げました。これで穴開けは完了です。次は基板1枚づつ取付用のスペーサーの位置だしを行います。最初はパルストランス用基板です。初めにゆるくスペーサを取り付けてさらに基板を取付ます。その状態でスペーサーを1本づつ締め付けていきます。締め付け後、基板の取り外しがきつくなったら、締め付けたスタッドの穴位置をやすりで調整しました。

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次は、同様の手順でSPDIFトランシーバー基板の取付を確認しました。

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さらに同様の手順で、DAC基板2枚とIV変換基板の取付確認を行いました。

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続いて標準基板を使った平衡不平衡変換基板と電源基板2枚の取付確認を行いました。

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次に、LCDパネルの取付確認を行ったところ、パネルの取付穴径がφ2.0mm?の為、準備しいたスペーサーでは取り付けられない事がわかりました。

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LCDパネルの取付は後回しにします。最後にトランス取付確認をします。トランスは直接φ4のネジで取り付けますが問題ありませんでした。これでLCDパネルを除き一通り取付確認ができました。固定しないマイコンボードも置いてみるとこんな感じになりました。

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次回はブレッドボード加工の続きと、基板の実装をスタートします。

 

つづく(製作編2)

DACユニットの検討(設計編4)

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設計編4

主要基板と部品の寸法確認が終わったので、検討用のブレッドボードの加工図の作成を行います。

検討用ブレッドボード概要

検討用のブレッドボードで行う事を初めに整理します。

1)各基板の動作確認

2)基板同士の接続確認

3)マイコンプログラムデバッグ

4)DACユニットとしての動作確認

上記を行う為に必要な基板と部品は全て実装します。次に搭載基板と部品を改めて整理します。

01)HDB-30(L):アナログ+/-15V電源用トロイダルトランス

02)HDB-12:アナログ/デジタル用+8V/+5V/+3.3V電源用トロイダルトランス

03)電源基板1:アナログ+/-15V電源基板

04)電源基板2:アナログ/デジタル用+8V/+5V/+3.3V電源基板

05)arduino UNOデバッグボード

06)SFE-LCD-14073:LCDパネル

07)平衡不平衡変換基板:自作標準基板

08)OPAMP_B基板1:I/V変換基板Lチャンネル用

09)OPAMP_B基板2:I/V変換基板Rチャンネル用

10)DAC_1792_B基板1:DA変換基板Lチャンネル用

11)DAC_1792_B基板2:DA変換基板Rチャンネル用

12)WM8805_G_rev2基板:S/PDIF基板

13)パルストランス基板:自作基板

上記のとおり多くの基板と部品を実装します。

ブレッドボード加工図

できるだけコンパクトになるように配置の検討をしました。配置で考慮した事項を箇条書きします。

・向かって左側に電源トランス2個を配置します。

・上記トランスの右隣に電源基板2枚を配置します。

・上記電源の手前にarduino UNOデバッグボードを配置します。

arduino UNOデバッグボードの右隣にLCDパネルを配置します。

・電源基板の右隣の奥側に平衡不平衡変換アンプを配置します。

・平衡不平衡変換アンプの手前から信号の流れに遡ってIVC基板、DAC基板、S/PDIF基板を配置します。

S/PDIF基板の右隣にパルストランス基板を配置します。

上記項目に従って、いつものとおりARCADを使って加工図を作成しました。

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サイズイメージとしては、横方向に若干余裕はありますがA3用紙に収まっています。尚、A3の用紙サイズは420 x 297mmです。次にアルミ板の調達を検討します。近所のスーパビバホームで在庫を見かけた為、ビバホームのHPを確認しました。

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ビバホームHPには商品検索ページ(上の写真)があり、そこでアルミ板を検索したところ今回の用途で使用可能な物として下記の商品が見つかりました。

1)1.5 x 300 x 400 1,780円

2)2.0 x 300 x 400 2,180円

3)3.0 x 300 x 400 4,780円

検討用にしか使わない為、ある程度強度は犠牲にして安いt=1.5品にしたいとおもいますが、最終的にはお店で現品を確認した上で決定します。

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その他部品

デジットキットの接続端子は全てピンヘッダとなっています。接続をどうしたものかと思いながら共立エレショップの通販ページを眺めていたら、ピンヘッダ用の接続ケーブルがQIケーブルとして販売されているのを見つけました。いろんな極数のソケットとプラグの組み合わせがラインナップされています。長期使用時の信頼性に不安はあるものの、取り急ぎ必要なものを注文しました。

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信号の種類によっては、ソケット部のみ使用して2芯シールド線に繋ぎかえて使用する予定です。基板固定には7mmのスタッドを使用します。今回は40個近く必要となりますが、幸い100個セット品があり、この場合の単価は単品購入時の半額(15円)となるのでこちらを注文しました。

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これでブレッドボードの製作準備は完了です。次回はブレッドボードの製作を行います。

 

つづく(製作編1)

DACユニットの検討(設計編3)

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設計編3

回路設計が終わったので、検討用のブレッドボードシャーシの設計の為に主要部品の寸法確認を行います。

主要部品寸法確認

検討用にブレッドボードシャーシに主要部品をスタッドを使って直接取付を行う予定です。デジットキットは基板の外形寸法は明記されていましたが、取り付け寸法が記載されていません。仕方がないので、主要部品の発注を行い現品確認を行う事にしました。本記事のアイキャッチ写真は購入したデジットキットです。左からS/PDIFトランシーバー、DAC、IV変換基板です。

DACキット

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DACキットは、組立説明書、プリント基板、実装用部品で構成されています。プリント基板には、あらかじめフラットパッケージのPCM1792Aが実装されています。実装用部品は、おおまかに部品別にパッケージングされていてパッケージングの間違いを減らす工夫がされています。そこから基板を取り出し、紙の上に置いて取り付け用の穴のセンターにマーキングをして寸法測定を行いました。

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確認結果は以下のとおりです。

外形寸法:56 x 33

取付寸法:48 x 25

S/PDIFトランシーバーキット

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同様に基板を取り出して寸法測定をしました。

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この基板にはフラットパッケージ2個が実装されていました。寸法の確認結果は以下のとおりです。

外形寸法:66 x 39

取付寸法:58.5 x 32

OPAMP_B基板キット

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同様に基板を取り出して寸法を測定します。この基板にはあらかじめ実装された部品はありません。

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寸法の確認結果は以下のとおりですが、組立説明書に記載された外形寸法が間違っていましたので注意が必要です。

外形寸法;51 x 38

取付寸法:43 x 30

パルストランス

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パルストランス実装基板キットは在庫切れだったため、トランス単品を購入してユニバーサル基板へ実装する予定です。実装用の基板は秋月電子で購入します。固定4カ所のD基板を選定しました。

外形寸法:47 x 36

取付寸法:41 x 30

平衡不平衡変換基板

ユニバーサル基板に回路を実装します。2個入りオペアンプが2個実装されるだけなので、私の標準基板を使用します。秋月電子のC基板です。

外形寸法:95 x 72

取付寸法:89 x 66

電源基板

+/-15V用とそれ以外の回路用の2枚構成とします。基板は標準基板を使用するのでサイズは上記の平衡不平衡基板と同じです。

LCDパネル

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LCDパネルもブレッドボードにスタッドで固定するので、同様に寸法測定を行いました。測定結果は以下のとおりです。

外形寸法:80 x 35

取付寸法:75 x 30

arduino UNO

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arduino UNOは、12チャンネルアッテネータのソフト開発の際に使用したデバッグボードをそのまま使用します。ブレッドボードへ固定はせずに、上に載せる事にします。

外形寸法:136 x 102

電源トランス

アナログの+/-15V用にHDB-30(L)を、それ以外の電源用にHDB-12を使用します。共立エレションプのHPに下記の寸法図がありました。

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頭の体操のような取付穴寸法指定ですが、下記と理解しました。

■HDB-30(L)

外形寸法:70 x 70

取付寸法:60 x 60

■HDB-12

外形寸法:65 x 65

取付寸法:55 x 55

これでブレッドボードに取り付ける部品の寸法確認は完了です。次回は今回測定した寸法を使って検討用ブレッドボードの加工図を作成します。

 

つづく(設計編4)

DACユニットの検討(設計編2)

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設計編2

残る平衡不平衡変換回路及び制御回路の設計を行います。

位相とレベル確認

平衡不平衡変換回路設計前に、各基板間の位相の確認を行います。初めにオリジナル回路を前提に確認をしました。DAC出力仕様を改めて確認します。

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上記のとおりプラス出力はデジタル値が上がるにつれて負の電流値が減ります(正の電流値が増えます)。それを下記の電流電圧変換回路に入力します。

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1ピンにマイナス信号が入り、出力はプラスに変わります。それをさらに下記の平衡不平衡変換回路に入力します。

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その結果2倍の正相信号が得られます。上記を改めて整理しました。

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今回の製作ではDACをモノラルモードで使用するため、上記の確認結果を基に修正しました。

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図はRチャンネルを選択したDAC基板のラインです。レベルも確認します。DACからは7.8mAppの電流が出力されます。それを1kΩの負荷抵抗の電流電圧変換回路に入力するので、その出力は7.8Vppに変換されます。それをゲイン1の平衡不平衡変換回路に入力するので、その出力は15.6Vppの出力となります。さらにこの信号がバランス出力される為、出力は31.2Vppとなり、実効値に変換すると約11.1Vrmsのバランス信号となります。現状のDAC-1000の平衡出力レベルは4Vrmsなので、出力を36%に絞れば現状と同等のレベルにあわせる事が可能です。

平衡不平衡変換回路

上記を踏まえてMUSES01を前提に回路を作成してみました。

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当初、反転入力と非反転入力の前段から見た入力抵抗を合わせる為に、10KΩの抵抗を反転系と非反転系で変える事も考えましたが、その場合に同相除去比が悪化する事に気づき全て10KΩとしました。半固定抵抗は出力オフセット調整用です。

制御用マイコン基板

DAC基板の制御用にarduino UNOを使用します。DAC基板は、SPIとI2Cの2種類の制御が選択できます。今回も12チャンネルアッテネータで7セグ基板制御で実績のあるI2Cインターフェースを選択しました。表示も同様にI2C制御可能なLCDパネルを選択します。スイッチサイエンスの通販ページを眺めてみて下記のパネルに決めました。

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型式はSFE-LCD-14073です。価格は2,844円でした。主な仕様は以下のとおりです。

表示仕様:16x2 RGB文字 黒背景

通信方式:シリアル、I2C、SPIから選択可能

I2Caddress:0x78(デフォルト)

他機能 :ソフトコントラスト調整機能

電源電圧:3.3V

という事で今回の用途では十分な機能です。5V品が希望でしたがなかったので仕方なく3.3V品を選択しました。arduino UNOのI2Cは5VトーレラントなのでI2Cラインに双方向のレベル変換回路を入れる必要があります。秋月電子のサイトで確認したところ、150円で変換基板が手に入る事がわかりました。

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回路図は以下のとおりです。

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実装は、LCDパネルのI2C端子に接続して、5V互換のI2C仕様に変換します。これで一通りの設計が完了しました。DACユニットの製作は初めてなので、最初はアルミ板金にスタッドを立てて、各基板を固定したブレッドボード状態で検討を進めたいとおもいます。本記事のアイキャッチ写真はDAC-1000の基板です。今回の製作ではこれほど実装密度をあげられない為、特性が越えられるか心配です。次回はブレッドボードの設計を行います。

 

つづく(設計編3)

DACユニットの検討(設計編1)

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設計編1

基本方針が整理できたので、ブレッドボード製作の為の設計を行います。

DACユニットブロック図

キットの応用編に掲載されたブロック図を基に、今回製作するDACユニットのブロック図を作成してみました。

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基本構成は変えていませんが、DAコンバーター基板以降を2チャンネル化しています。オーディオシリアル信号とシステムクロックを単純に分岐させていますが、問題ないか気になります。平衡不平衡変換回路は自作予定です。DAコンバーター基板をモノラルモードで動作させるために、制御用にマイコン基板を追加しています。DAIトランシーバー基板もI2C制御可能ですが、ハードウェアモードの設定範囲で事足りそうなので、制御対象から外しています。このブロック図には入れていませんが、表示用にLCDパネルも追加する予定です。

DACユニット電源

デジタルオーディオ実験基板応用篇の説明書に下記の電源回路図が掲載されていました。

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オーディオアナログ回路用に+/-12VとDAC用の+5V/+3.3Vを三端子レギュレータで生成する電源基板です。一旦、この回路を拡張してDACユニット用に下記の回路を描いてみました。

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単純にarduino UNO用に5V電源を追加しただけのものです。arduino UNOへの給電方法はいくつかありますが、USB端子経由で5V供給前提としています。

電流電圧変換回路確認

続いてデジットキットを使用予定の電流電圧変換回路の動作を確認します。TIの技術資料から電流電圧変換回路への入力は下記のとおりとなります。

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電流出力といっても全動作領域で電流吸い込みモードとなっています。この結果から電流電圧変換回路出力は下記となります。

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ピーク出力電圧は10Vを越えています。電源電圧が+/-12Vで足りるか気になりOPA2134の仕様書を確認してみました。下記は電源電圧+/-15V時の最大出力電圧を示しています。

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この結果でも+/-20Vppぎりぎりの状態を示しています。続けて平衡不平衡変換回路に使用予定のMUSE01の特性も調べてみました。下記は電源電圧+/-15V時の出力レベルvs歪み率特性を示しています。

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横軸の出力電圧がVrmsで示されていますが、出力10Vピークを安心して得るためには約7Vrmsの出力が保証されれば問題ないと言えます。この特性からもオーディオ用電源電圧として+/-15Vは必要と考えられます。この理解を基に改めてDAC_1892_Bの組立説明書を見直したところ、下記のブロック図が掲載されていました。

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この図では、アナログ回路への供給電源電圧は+/-12~15Vと表記されていて、オーディオ回路への電源として+/-15Vの必要性が表現されていました。

電源回路見直し

せっかくDACユニットを自作するので、既製品にはできない贅沢をすべきと考えて、上記の検討結果も踏まえて回路の見直しを行いました。

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オーディオアナログ回路用の電源電圧を+/-15Vにあげて、なおかつすべてL/Rチャンネル独立電源としました。まだケースを選定していない為、回路規模を考えずに見直しを行った結果です。電源トランスの見直しも行いました。上記回路では2次巻き線として15V/1Aを2巻き線のものを選定しましたが、ワンクラス下の15V/0.2A品でもいけるかもしれません。ここも自作の贅沢として選定を行った結果です。マイコン用電源も見直しを行い8Vとして、DCジャックから供給する方式に変更しました。電源ランプ用の電源は、マイコン用8V電源の全波整流電源から供給することにしました。このランプは他の製作でも使用している自照式の電源スイッチを前提としていて、12Vの供給が必要です。次回は残った平衡不平衡回路の設計を行います。

 

つづく(設計編2)

DACユニットの検討(構想編3)

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構想編3

構想編2で行ってきた選択が、私の要求にマッチしているか、さらに調査をしてみます。

バランス出力対応

PCM1792Aでバランス出力する方法について確認をしてみます。下記はTIの技術資料に掲載されたPCM1792のブロックダイヤグラムです。

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DACからは、各チャンネル差動の電流出力され、それをアンバランスに変換してオーディオ出力としています。ブロック図上の最後のアンバランス変換を省略すれば、バランス出力が得られます。技術資料には、DAC電流出力ブロックとして下記等価回路が掲載されていました。

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この図を見ると、先のブロック図のアンバランス変換をする事で特性の改善を行っているようにも読みとれます。さらに技術資料を読み進めていくとバランス出力について下記の説明がされていました。

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最高の性能を得るためには、1つのDACをモノラルモードで動作させて各アンバランス出力を差動出力に設定してバランス信号を生成する事が推奨されています。このような動作をさせる方法ですが、同資料に掲載されているユーザープログラマブル機能一覧に答えがありました。

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このレジスタ20のMONO BITを制御してモノラルモードとして、CHSL BITで出力チャンネルを選択し、バランス-アンバランス変換への入力位相を反転させればバランス信号が生成できる事がわかりました。

デジットキットのバランス出力対応

上記のTI技術資料で確認した方法がデジットキットで対応可能か調べてみました。下記はDAC_1792_Bデジットキットの組立仕様書の抜粋です。

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このキットはデフォルトでハードウェアモード(決まったデフォルト仕様)で動作しますが、JP1Bのジャンパピンを外すと、マイコンからI2Cコマンドを受け付けるモード(ソフトウェアモード)になります。この状態でレジスタ20のMONO BITを書き換えるとモノラルモードの動作に変更する事ができそうです。I2Cのコマンドの出力は、12チャンネルアッテネータで使ったarduino UNOマイコンボードを使用する予定です。(本記事のアイキャッチ写真参照)

外部クロック入力

これができれば、仕様上クリアになります。まずはDAIトランシーバ独立実験基板キットのドキュメントを確認してみました。DAC基板キットと同様にソフトウェアモードの選択もできますが、搭載ICのWM8805のデータシートの機能一覧を見ても、多様なクロック仕様に対応できる事は読みとれますが、私はフォローしきれませんでした。ハードウェアモードにおいて、ジャンパ設定でマスターモードとスレーブモードの選択ができるようになっています。スレーブモードにすると外部からクロック入力できるとの事ですが、DAIレシーバーとして動作させる場合は、マスターモード設定とするように記載があり、これ以上はやってみないとなんともいえない状況です。最初はマスターモードで立ち上げる予定なので、直近の対応は問題ありません。

その他のキット

ローパスフィルタOPAMP_B基板

この基板はオペアンプを使った電流-電圧変換にローパスフィルタ機能を持たせたものです。

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ローパスフィルタを構成する為には一部追加部品が必要となります。簡単な回路なのでわざわざキットを買わなくても製作できますが、見栄えも考えて購入する事にしました。

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バランス出力させるために2個購入する予定です。

バランス-アンバランス変換

キット化されていましたが、簡単な回路なので自作する予定です。その方が気に入ったオペアンプが使用できるので。全体をざっくりと確認した範囲では、なんとかDACユニットが作れそうです。細かな点の確認を行いながら進める必要があるので、最初はブレッドボードで動作を確認した上で、ケースへ組み込みを行いたいとおもいます。

 

つづく(設計編1)

DACユニットの検討(構想編2)

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構想編2

前回の調査でTIのPCM1792Aを採用したデジットキットが良さそうだったので詳細を調べてみます。

DACチップ実力

前回の記事では、入手可能な出来合い基板間でDAC ICのスペック比較を行いましたが、次は現行のUSB_DACに搭載されたチップとの比較を行います。onkyoDAC-1000はTIのPCM1795を2個搭載しています。検討中のLSIよりも数字が大きい=新規設計=高性能と嫌な予感が頭をよぎりました。念のため、DAC-1000の仕様をピックアップします。

周波数特性:2Hz~48KHz(+0/-0.5dB)

全高調波歪率:0.003%(-90dB)

SN比:116dB

続いてDAC IC自体の性能比較を行ってみました。

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これを見ると、DAC-1000搭載のPCM1795の方が対応入力信号の分解能は高いですが、それ以外はデジットキット採用のPCM1792Aの方勝っています。特にデジタルフィルタの性能は格段に違っています。TI発行の技術資料に特性のグラフが掲載されていたので転載します。

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これらの結果からPCM1759からPCM1792Aへの乗り換えはDAC性能上ありと判断しました。技術資料にも記載がありましたが、これらスペックで唱われている数値の実現は、ICのスペック以上に、アナログ回路、電源回路および使いこなしで決まるレベルのものです。

DAC_1792_Bデジットキット

次に共立エレショップで販売されているデジットキットDAC_1792_Bについて調べてみました。

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資料がWeb上で公開されていて助かりました。デジットは大阪のメカトロ&エレクトロパーツ販売店で、そこがキット化した商品です。組立説明書の日付は2014年8月となっているので、約6年前に商品化されたもののようです。組立説明書記載の唱い文句と主な仕様をピックアップします。

・24ビット192kHzサンプリングに対応

・超低歪み(0.0004%)

・試作実験用D-Aコンバータ単独基板

・使用IC:PCM1792A(TI社)

・サンプリング周波数:10kHz~200kHz

・対応フォーマット:24ビットI2S(デフォルト)

 レジスタ設定で他のフォーマットも使用可

・出力:電流出力(差動)

・電源電圧:3.3V(デジタル)/5V(アナログ)

・基板寸法:約56 x 33mm

・M3ねじで取り付け可能

・PCM1792Aのみはんだ付け済み

参考に組立説明書に掲載されている回路図も転載させていただきます。

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上記のとおり、今の私レベルに丁度良いキットです。この回路図が示すとおり、この基板単独でCDプレーヤーのデジタル信号をアナログ化する事はできません。そこは考えられていて、周辺回路もブロックごとに分解されてキット化されていました。

WM8805_G Rev.2デジットキット

このキットは「S/PDIF信号の受信機能と送信機能を1チップにまとめたWM8805(Wolfson社)使用DAIトランシーバ実験基板」として販売されているものです。

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この組立説明書に下記のブロック図が掲載されていました。

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上記ブロック図に掲載されたキット群を購入する事で、S/PDIF信号をアナログ化する事ができます。このキットの主な仕様を転記します。

・仕様IC:WM8805(Wolfson社 トランシーバ)

・対応サンプリング周波数:32kHzから192kHz

・動作設定:ハードウェアモード(ジャンパ設定)、ソフトウェアモード

・対応フォーマット:16ビットI2S、24ビットI2S、24ビット左寄せ16ビット右寄せ

・電源電圧:3.3V(デジタル部、PLLクロック部とも)

・基板寸法:66 x 39mm

・M3ねじで取り付け可能

・フラットパッケージICと高精度水曜発信モジュールはんだ付け済み

ブロック図が示すとおり、ブロック毎にキット化されていて、価格の面では高くなりますが、改造の自由度は高そうです。さらにこれらキットについて検討を進めてみます。

 

つづく(構想編3)