DACユニットの検討(製作編28)

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製作編28

製作したジグの周波数特性の測定を行い、ジグ基板を使ってDACユニットの特性を再測定します。尚、次回からは従来どおり週2回のアップロードに戻します。

ジグ周波数特性測定

初めに今回実装した2次LPF2段の周波数特性の測定を行います。入力は1Vppの正弦波を10Hz~1MHzまで変化させました。

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測定は入出力波形をオシロスコープで観測します。-60dBで振幅レベルが1/1000となり、それ以上の減衰量は正確な測定はできませんでした。結果は以下のとおりです。

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カットオフ周波数は約40KHzですが20KHzでも少しレベル低下しています。位相特性を考えると、DACユニットに内蔵する事はできないレベルですが、測定用フィルタということで割り切っています。次は最初に製作した2次のLPFを組み合わせてトータル6次のフィルタ特性を測定します。ジャンパピンを切り替えて初段LPFの出力が入力できるように切り替えましたが、接続の配線を忘れている事に気づき追加配線を行いました。

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2つのジャンパピンの間を縦にジャンパ線を通して接続しています。測定再開です。精度を少しでも上げるため、入力信号を4Vppに上げてみました。結果は以下のとおりです。

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100KHz以上の領域で減数量が大きくなっている事を確認しました。

DACユニット特性測定

前回の測定と同様に、ジグ基板を平衡不平衡回路基板の上に2段重ねに取り付けました。この基板の電源はユニバーサル電源から+/-15Vを供給しています。(本記事アイキャッチ写真参照)オシロスコープのch1にバランス出力をアンバランス変換した信号を、ch2にさらに6次のLPFをとおした信号を入力しています。信号はEIAJのテストディスクをCDプレーヤーで再生し、同軸デジタル信号として入力しています。

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最初に1KHz 0dBの正弦波を再生します。

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上がアンバランス出力で、下が6次LPF出力です。波形に違いはありません。両波形をFFT処理してみました。

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上がアンバランス出力で、下が6次LPF出力のスペクトラムです。結果に差はありませんでした。次に1KHz-60dBの正弦波を再生してみました。

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上の波形がアンバランス出力で下が6次LPF出力です。この違いを見ると6次LPFが強力に作用している事がわかります。さっそく両波形をFFT処理していみました。

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先ほどと同様に上がアンバランス出力で、下が6次LPF出力のスペクトラムです。-60dBの再生信号はどちらも約-48dBとして観測されていますが、ノイズレベルが大きく異なり、アンバランス出力は-74dBで6次LPF出力は約-99dBです。6次のLPFが有効に働いている事が確認できました。この結果からDACユニットの-60dB再生時のダイナミックレンジは約110dBと言う事ができます。さらに再生レベルを下げてみました。1KHz -90dBの再生波形です。

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アンバランス出力はノイズシェーピングによる高域のノイズで再生波形は完全に埋もれてしまっていますが、6次LPF出力は正弦波が視認できています。6次LPF出力をFFT処理してみました。

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ちゃんと1KHzのポイントに信号が確認できます。-90dB再生時のダイナミックレンジは112dBと読みとれます。最後に無音時のスペクトラムを10MHzでサンプリングしてみました。

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上のスペクトラムはアンバランス出力で、ノイズシェーピングで高域に拡散されたノイズスペクトルが観測できました。6次LPF出力は拡散されたノイズスペクトルがカットされている事がわかります。私のシステム(Mid/Highチャンネルともに真空管アンプ、本記事アイキャッチ写真参照)に組み込み事を考えると、DACユニット内に2次のLPFは入っているものの、LPFを追加するよりもノイズ垂れ流しの方が他の特性面を総合的に考えて良いと判断し、このままの構成で進める事にします。PCM1792のDレンジの仕様は132dB(9Vrms Mono)ですが、仕様で唱われている急峻なフィルタを使っていないので、112dBの結果確認でダイナミックレンジの検討は一旦終了とします。次回は待ちに待った音聴きを行います。

 

つづく(製作編29)

DACユニットの検討(製作編27)

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製作編27

オシロスコープFFT機能について追加確認を行い、その結果から追加でジグを作成します。

FFT機能追加確認

オシロスコープFFT機能を理解している方には当たり前の仕様確認となりますが、お付き合いいただければとおもいます。確認方法は、2チャンネルの発振器を使って1KHzと51KHzの正弦波をオシロに入力して3種類のサンプリング周波数でFFT処理してみました。入力信号は以下のとおりです。

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チャンネル1が1KHz、チャンネル2が51KHzです。振幅はどちらも1Vppです。最初にDACユニットのオーディオ帯域の特性測定を行った50KHzサンプリングでFFT処理を行っていました。まずは1KHzのFFT処理結果です。

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結果は当然のごとく1KHzのポイントにピークがあります。次はFFT処理の対象チャンネルを2に切り替えて51KHzをFFT処理してみました。

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結果は、1KHz入力時と差はなく1KHzにピークがあります。想定したとおりの結果です。次は、サンプリング周波数を100KHzに上げて、51KHzの正弦波をFFT処理してみました。

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結果は51KHzの正弦波が50KHzで折り返されて、49KHzにピークが観測できました。次はさらにサンプリング周波数を上げて250KHzとしてみました。

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結果は、ピークが51KHzに観測され、初めて正しい観測結果となりました。確認結果はナイキストの原理そのものですが、このオシロFFT機能を正しく使うためには、サンプリング周波数の1/2以上の周波数をカットして信号入力する必要がある事が改めて確認できました。この結果と、前回の記事の最後に掲載したTIの資料から測定用にLPFを追加で製作する事にします。

測定用ジグ2

測定用にジグを追加設計します。カットオフは50KHz前後、通過帯域をフラットとするため、今回はバターワース特性とします。回路はジグ1と同様にサレンキーLPF回路前提です。バターワース特性の場合はK=1.6としました。

fc = 1/(2πC2R2)

C1 = KC2

R1 = R2/K

前回同様に定数検討用シートで定数決定します。

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誤差10%のセラミックコンデンサでは意味ないとおもいますが、設計上は数値にこだわってみました。設計した回路図は以下のとおりです。

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回路は、前回製作したジグ基板に追加実装します。

ジグ追加実装

写真は先日作成したジグ基板です。

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追加実装を想定していなかった為、中途半端な位置に部品を配置してしまいました。残りのスペースに2次のLPF2回路を実装します。初めに端子台とオペアンプ用のソケットの位置を決めました。

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まあなんとか実装できそうです。ジグ基板の実装は紹介済みなので実装課程は省略しますが、こんな感じに実装しました。

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端子台脇の3極のピンヘッダは、入力を端子台と左の回路の出力の切り替え用です。ハンダ面はこんな感じです。

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ジグ基板通電確認確認

まずはオペアンプを装着せずに通電確認を行いました。オペアンプ用のソケットの各端子電圧を確認します。電源端子に所定の電圧が、それ以外の端子はオープン状態の電圧の確認ができました。一旦電源をオフして、オペアンプを装着します。

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セラミックコンデンサが安っぽいですが、測定用のジグなので気にしない事にします。入力切り替え用のジャンパは気分を変えて白を使ってみました。入力をショートして、電源オンして出力オフセット電圧を確認しましたが、問題ありませんでした。次回は動作確認をかねて周波数特性の測定を行います。

 

つづく(製作編28)

DACユニットの検討(製作編26)

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製作編26

前回セットアップしたジグ基板を使ってDACユニットのバランス出力特性の測定を行います。

バランス出力特性測定

測定時のファームウェアは、各DAC基板をモノラル動作させるバランス出力モード仕様です。Rチャンネルのみ検討用にINZD=1としてゼロデータ時のディザ出力を止める設定としています。最初に1KHz 0dBを再生してスペクトラム確認を行いました。

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2つの結果を掲載していますが、上がジグの平衡不平衡出力の観測結果で、下が2次のLPF出力の観測結果です。どちらも差はなく、ダイナミックレンジ72dBとなっていました。下の結果は以前に測定したHot出力の結果です。

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この場合のダイナミックレンジは57dBでした。バランスモードの動作によってダイナミックレンジが15dB改善したと言えます。次は1KHz -60dBの再生を行って上記と同様の確認を行いました。

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アンバランス変換後のダイナミックレンジは86dB、LPF出力のダイナミックレンジは約94dBと読みとれます。しかしLPFのカットオフ周波数は約120KHzなので、オーディオ帯域で差が発生するはずがありません。この結果について考えてみました。測定結果画面下の表示から、この測定時のサンプリグ周波数は50KHzです。本測定時に25KHz以上の信号(ノイズ)が入力されると折り変えされて結果に加算されてしまいます。今まで漠然とこのFFT機能がFFTアナライザと同じ用に使えると考えていましたが、オシロFFT機能にはアンチエイリアスフィルタがないと考えるとつじつまが合います。高い周波数の正弦波を低い掃引速度で観測した時に低い周波数の正弦波として見える事を思い出しました。オシロFFT機能を使う場合には、サンプリング周波数に応じて入力信号の帯域をカットする必要がありそうです。これが正しいとするとFFTアナライザーと大きな違いとなるので、別途検証を行ってみたいとおもいます。上記が正しいとすると、現状のDACユニットのダイナミックレンジの実力はLPF出力で観測した94dB以上あると言えます。別途行う検証結果によりますが、測定用にさらに帯域外を減衰させるためにLPFを製作して本来の実力測定を行いたいとおもいます。次の結果は1KHz -60dB再生時のLPF出力を2.5MHzサンプリングしたものです。

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オシロスコープFFT機能の折り返しが発生する1.25MHz以上は、LPFによって十分減衰されているので、この結果は実体を示していると考えられます。60KHz近辺で-60dB再生信号基準で-40dB以上下がっているように見えます。この結果からも追加でLPFジグを作成して再測定をすべきとの結論となりました。次は1KHz-60dB再生時の波形比較結果です。

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LPF出力の方が波形の再現性が格段に良くなっています。本結果に関連しますが、次は無音時の波形モニタ結果です。

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上が平衡不平衡回路出力で、下がLPF出力です。LPFによってディザ信号が抑圧されている事がわかります。DAC ICの説明資料にこのあたりがどのように説明されているか気になり、改めて確認してみました。下記は関連内容の抜粋です。

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この資料は1KHz -60dB再生時の正確なダイナミックレンジを測定するには、fs/2以上を急峻にカットするフィルタを使用する事が説明されています。この説明に従って追加でカットオフ周波数50KHz程度の2次のLPFを2回路製作して追加測定を行ってみたいとおもいます。

 

つづく(製作編27)

DACユニットの検討(製作編25)

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製作編25

前回の記事で設計を紹介した測定用のジグの製作と動作確認を行います。

測定用ジグについて

前回設計したジグを簡単におさらいします。下記が設計したジグの回路図です。

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オペアンプの片チャンネルは、平衡不平衡変換回路です。DACユニットはバランス出力なので、実用時の特性の測定を行う為にアンバランス変換します。もう一方のチャンネルは、2次のアクティブLPFとしました。カットオフ周波数は約120KHzです。アンバランス変換したDAC出力のΔΣ変調ディザ波形の除去の強化が狙いです。オペアンプは手持ちで余っていたJRCのMUSES8920を使用します。

ジグ基板実装

基板はサイズに余裕がありますが、標準基板を使用します。最初に四角にスタッドを取り付けました。

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回路図中のジャンパピンは4極を使用し、LPFの入力を外部入力とアンバランス出力の選択をショートジャンパの取り付けによって切り替えられるようにしています。

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入力用の端子台は3極のバランス入力とアンバランスLPF入力用に2極の端子台を実装しました。出力は平衡不平衡回路出力と、LPF出力をさせる為に3極の端子台を実装しまています。アクティブフィルタ用のコンデンサは、測定用と割り切って手持ちのセラミックコンデンサを使用しました。

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すかすかの実装です。ハンダ面はこんな感じです。

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左右に渡っている3本の被覆電線は電源線です。茶色の被覆電線は、アンバランス信号をLPFの入力部のジャンパピンに接続しています。

通電&動作確認

電源はユニバーサル電源から+/-15Vを供給します。初めにオペアンプを装着せずにソケットの各ピンの電圧を確認しました。問題なかったので、オペアンプを装着しました。

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この状態で電源オンして、出力オフセット電圧のみ確認を行いましたが問題ありませんでした。

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続いて動作確認をかねて周波数特性の測定を行います。入力は1Vppの正弦波を10Hz~1MHzとしました。(本記事アイキャッチ写真を参照)下のグラフが測定結果です。

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平衡不平衡変換アンプは、400KHz以上でややゲインがあがっていました。2次のアクテッブLPFフィルタは、設計どおり120KHzでほぼ-3dBとなっています。ここでDAC出力以降の特性を一旦整理します。IV変換回路に1次フィルタ特性を持たせています。

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その後段の平衡不平衡変換回路も同様に1次フィルタ特性を持たせています。

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さらに今回作成した測定用治具に2次フィルタ特性を持たせています。今回のジグを使って測定を行った場合の伝達特性をグラフ化してみました。計算を簡略化する為にフィルタは全て1次として最大4段の直列接続として計算しています。

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グラフは、治具のLPFを使用しない場合と使用した場合の2通りです。参考として4fs=176KHzの減衰量も記載しました。

DACユニットの特性準備

製作したジグ基板ですが、作業台の余裕がなかったため、DACユニットの平衡不平衡変換回路基板の取り付けネジにさらにスタッドを取り付けて2段重ねとしました。

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2芯シールド線を使ってDACユニット出力とジグ基板に入力させました。これで測定準備完了です。次回は製作した治具を使ってDACユニットの特性の測定を行います。

 

つづく(製作編26)

DACユニットの検討(製作編24)

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製作編24

全ての基板の実装と接続が終わったのでユニットトータルの動作確認を行います。

動作確認

平衡不平衡変換回路出力は、単体動作確認時に0dB再生時に6Vpp出力となるように調整してあります。まずはL-ch 1KHz 0dB再生波形を確認しました。

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この状態で周波数スペクトラムを確認してみます。

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次に1KHz -60dB再生時の波形を確認してみました。

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あまり良い状態ではありませんが波形は視認できています。カーソル位置設定が悪く、本来12mVppとなるべきところ、大きめな数値が表示されています。続けてこの状態のスペクトラムを見てみます。

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この結果から、Dレンジは約82dBと読みとれます。オシロのMATH機能を使ったバランス出力波形をみると各相単体出力よりもノイズが相殺されているので本来の実力を確認するためには、ジグ基板をつくってバランス波形のスペクトラム解析が必要です。後で製作して確認してみたいとおもいます。続いて無音時のスペクトルを確認します。

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-60dB観測時からカーソルを動かしていませんが、1KHzのスペクトルが消えただけで他の帯域に変化はありませんでした。次にこの状態で観測する帯域を広げてみました。

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約250KHz付近でノイズレベルが最大となり、-60dB再生時のレベルを越えています。High ch用のパワーアンプ真空管アンプの為、この帯域のノイズがスピーカーまで伝送される事はありませんが、あまり気持ちのいいものではありません。次はRチャンネルの確認を行います。1KHz 0dBと1KHz -60dBの波形および-60dBのスペクトラムです。

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-60dB観測時にプローブ倍率をx1に切り替えた為、FFT結果の表示の値は変わっていますが、DレンジはLチャンネルと変わりはありませんでした。次は無音時のスペクトラムを確認してみます。

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INZD機能が働いて5KHz以上のノイズレベルが格段に下がっています。この結果からINZD機能オフとした状態のノイズレベルの改善の余地があると考えられます。一旦現状を整理してみます。

・1KHz -60dB再生時のダイナミックレンジは約82dB

・上記はアンバランス出力時なのでバランス出力で改善の可能性がある

・通常動作無音時のノイズレベルも約-82dB

・INZD=1とした時の無音時のノイズレベルは約-110dB程度

・現状の2次フィルタの段数を増やす事で通常動作時のノイズレベルが下げられる

測定ジグの作成

上記のまとめから、バランス出力の特性測定とさらに2次のアクティブフィルタを追加した場合の特性の測定をする事にしました。これらの測定を行うためにジグを製作します。構成はオペアンプを使った平衡不平衡変換回路と2次のアクティブLPFを製作します。LPFはチャンネルデバイダで採用したサレンキー方式とします。下の図がサレンキー2次LPF基本回路です。

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fc = 1/(2πC2R2)

C1 = KC2

R1 = R2/K

カットオフ周波数を150KHz前後、K=1.4(ベッセル特性)として定数を検討しました。表は手持ちのコンデンサ、抵抗を使って定数検討するためのツールです。

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左列に手持ちのコンデンサ容量を入れてその右に手持ちの抵抗値を入れるとカットオフ周波数が計算されます。さらに右隣にK=1.4としたときのR1とC1が算出されます。さらに右隣に算出されたR1とC1の値を参考にして手持ちの定数を入力すると、その値を使った場合のK値が計算されます。そのK値が1.4に近いものを選定しました。この結果を基に回路図を作成しました。

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次回はこのジグを製作して特性の測定を行います。

 

つづく(製作編25)

DACユニットの検討(製作編23)

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製作編23

平衡不平衡変換回路の入力配線を行い全基板をバランスモードで動作させます。

平衡不平衡基板

前回の記事で無音トラック再生時に残留していた波形は、PCM1792Aが生成しているディザ信号である事が確認できました。この信号をそのまま出力させない為にフィルタの追加が必要と考えていたところ、TIの資料中の特性測定用の回路に参考情報を見つけました。

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この回路はバランス動作モード用の特性測定回路です。この回路図を見ると平衡不平衡変換回路に一次フィルタ特性を持たせています。カットオフ周波数fc=162KHzと記載されています。この回路を参考に実装済みの平衡不平衡変換回路を改造する事にしました。上記カットオフ周波数を参考として、以下のとおり回路を変更します。

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この回路のカットオフ周波数fcは164KHzで、上記の測定用回路とほぼ同等です。手持ちのコンデンサを探したところ、あまり良質ではありませんが在庫を見つけました。基板を取り外して改造を行いました。トータル8個のコンデンサを取り付けました。4個は部品面に取り付けられましたが、残り4個は半田面取り付けです。

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単純な改造なので、単体の通電確認は省略しました。

IV変換基板出力ケーブル作成

IV変換基板と平衡不平衡基板接続用のケーブルを作成します。1枚のIV変換基板から2系統のバランス信号が出力されます。接続端子は3極のピンヘッダです。平衡不平衡変換基板の入力は端子台です。ピンヘッダ接続用に3極のQIケーブルのコネクタを使用し、それを2芯シールドケーブルにつなぎ替えます。この仕様で4本のバランス用のケーブルを作成します。写真は作成したケーブルです。

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端子台側の電線も3本とも繋ぎかえて、Hotを赤,Coldを緑,GNDを黒としています。ちょっとうんざりしましたが、一気に4本作成しました。作成したケーブルでIV変換基板と平衡不平衡変換基板を接続しました。

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結構配線が込み合っていますが、これで全基板の接続が完了しました。

通電確認

通電用のソフトは、前回の記事でInfinite Zero Detect機能確認に使ったものをそのまま使用します。R-chのみINZD=1の設定です。無音状態で電源オンして、平衡不平衡変換基板のオフセット調整を行いました。一番オフセットの大きなチャンネルで約15mV程度でした。残念ながら現状の調整回路ではオフセットが取り切れませんでした。一度定数変更して調整範囲を広げたものの、このレベルは想定していませんでした。一旦平衡不平衡変換基板を取り外して、再度定数変更を行う事にします。現行の回路は本記事で掲載していますが、現状20KΩとなっているR07とR17の定数を再調整します。20KΩに1KΩを並列接続して様子をみました。最大55mV程度のオフセット調整ができる事を確認しました。本記事のアイキャッチ写真は確認時の様子です。この回路ですが、調整量が大きい場合、半固定抵抗の接点に最大で15mA程度電流を流す事になってしまうため、あまり良い回路とは言えませんが、いまさらなので目を瞑る事にしました。修正回路図は以下のとおりです。

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4カ所ともに実装されている20KΩの抵抗を取り外して、代わりに1KΩの抵抗を付けなおしました。改造基板をブレッドボードに取り付けて、無音状態で改めてオフセット調整をやりなおしました。全チャンネルともの+/-0.2mV以下に押さえる事ができました。今度こそ、全基板の動作確認ができます。現状のブレッドボードの状態は以下のとおりです。

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次回は全基板の動作確認を行います。

 

つづく(製作編24)

DACユニットの検討(製作編22)

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製作編22

前回の記事で作成したバスケーブルを使って、2枚のDAC基板のモノラルモードの動作確認を行います。

モノラルモード動作確認

確認用に簡単なプログラムを作成しました。アドレス4FhのDAC基板に対して10秒毎にMONO-L, MONO-Rのコマンドを発行して、L-ch 1KHz 0dBのトラックを再生してDAC基板出力を確認します。作成したプログラムのソースは以下のとおりです。

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改造したバニラシールドにバスケーブルを接続しました。

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電源オンして、L-ch 1KHz 0dBのトラックを再生します。波形モニタのポイントは、IV変換基板出力の下記のポイントです。

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最初の10秒は波形が出力され、続く10秒はゼロ出力となる事を確認しました。下図が出力波形です。

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DACは単純にモノラルモードで動作するだけではなく、バランス出力を前提としてch2を反転して出力している事が確認できました。念のため、1KHz -60dB再生時のノイズレベルの確認も行いましたが、ステレオモード時と変わりはありません。

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バスケーブルをつなぎ替えて、もう1枚のDAC基板も同様の確認を行いました。下図は1KHz -60dB再生時のノイズレベルの確認結果です。

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1枚目の基板と結果に違いはありませんでした。

ステレオバランス出力モード確認

これが最終的な動作モードとなります。具体的には2枚のDAC基板にそれぞれMONO-L/MONO-Rの設定を行います。この為にI2Cアドレスが4Ehとなるバスケーブルを作成しました。バス用のピンヘッダの1ピンを空いている電源用ピンヘッダを利用してGNDに接続します。写真は作成したケーブルのコネクタ部です。

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写真右側の3極のコネクタを空き電源ピンヘッダに接続します。次の写真が実際に接続した状態です。

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使用したプログラムのソースのMain関数は以下のとおりです。

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IV変換基板出力は全部で8chありますが、全て正常に出力されている事が確認できました。以上の確認によって、この構成でステレオバランス出力ができた事になります。

無音時の確認

以前の確認で無音トラックの再生時も波形出力されている事を確認していましたが、この波形がディザか否かを確認します。確認はPCM1792AのInfinite Zero Detect Mute Control機能を使用します。この機能はレジスタ19で設定できます。

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この一覧中のINZDビットで上記機能を制御できます。下記がINZDビットの詳細です。

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NZD=1とする事で無音時に完全にMute状態となります。この設定をMono R-chのみに行って、2枚のDAC基板出力を比較してみます。下記が確認用に作成したプログラムのソースコードです。

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このプログラムを使って無音トラック再生時の出力波の確認を行いました。下図が比較結果です。

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下の波形がINZD設定を行ったDAC基板出力です。思ったとおり、Mute処理をすると波形出力が止まる事が確認できました。この結果から上の波形はPCM1792Aが生成しているディザ信号である事が確認できました。現状はIV変換回路の1次のフィルタのみで量子化ノイズを落としていますが、追加でフィルタが必要となりそうです。次回はIV変換基板出力と平衡不平衡基板を接続して、全基板の動作確認を行います。

 

つづく(製作編23)