無帰還広帯域真空管アンプ(製作編1)

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製作編1

設計がようやく終わったので製作に取りかかります。

準備

注文した部品が続々と届きました。積み上げたらこんな感じになりました。

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一番下の大きな箱はケースです。上のレターパックは海神無線から購入したフィルムコンデンサーです。中身を一通り確認します。初めにケースを確認します。

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箱をあけてみます。リードのケースの梱包の上に部品が乗っています。

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他では調達できなかった6極のLラグ端子板とリードジャックです。リードの梱包をあけてみます。

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前回は汎用の梱包材でしたがまた専用の物に戻っていました。本体を取り出してみます。

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ケースの確認は一旦ここまでとして、他の梱包の中身も確認してみました。全ての梱包をあけて中身を1つにまとめました。

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そこそこの分量となりました。設計編でごたごたした結果の残材が以下のものです。

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右がハイグレードトランスケースSで、左が出力トランスOPT-5Pです。後の製作で使いたいとおもいます。続いて加工図を印刷します。

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今回はA3用紙が使えたので分割する必要はありませんでした。加工前に気になる部品の寸法を再確認しました。初めて使用する波動スイッチも確認対象です。

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特段問題ありませんでした。最後にケース加工用にテーブルをワークベンチに入れ替えます。

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これで製作の準備は完了ですが、ここまでの作業は地味に大変でした。

フロントパネル加工

印刷した加工図を外形に沿って切り取ります。切り取った際に電源ランプ様の穴径の寸法表記が間違っている事に気づきました。間違えないように朱記訂正しました。

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忘れずに加工図も別途修正しました。

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続いてケースの加工準備を行います。

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フロントパネル加工には関係ありませんが、ボンネット保護の為にダンボールをトップに貼り付けます。梱包のダンボールをカット使用します。

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それを天面にテープで貼り付けました。

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これで養生は完成です。今回もリードにシールは短面に貼られていました。このシールはきれいに剥がせるので助かります。

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ボンネットとボトムカバーを取り外して、フロントパネル加工の準備は完了です。

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加工図をフロントパネルに貼り付けます。普通は外形の位置合わせはラフでいいのですが、取り付けるハンドルの上下位置がパネルクリアランス上、余裕がないので慎重に貼り付けました。

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次にケースをワークベンチに固定します。ポンチを使ってもケースが歪まないように固定を考慮しています。

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写真には写っていませんが、フロントパネルは細長い木片で受けています。ボンネット取り付け用のフランジを保護する為にフランジ幅より厚い木板でシャーシ上面を受けています。穴のセンターおよび角穴の頂点と真ん中にポンチで印をつけました。加工図を剥がして、ポンチを目印に角穴の外形線を引きました。穴位置の精度を出す為に最初はφ2mmの穴をあけます。

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次にφ4mmの刃に交換して全穴径を広げました。刃をさらにステップドリルに交換して穴径を6mmまで広げました。角穴のセンターは、ハンドニブラを使う為、さらに10mmまで穴径を広げます。まずはハンドルの取り付け確認です。ハンドルは1/4インチネジとなっているので6mmの穴にはそのままでは取り付けられません。シャーシ上面とボトムカバー取り付け用のフラン間のクリアランスを考慮しながら穴径を広げます。ハンドルの取り付け確認を行い、ナットが干渉する場合は、干渉を逃げる方向へ穴を削ります。左右ともに無事取り付け確認ができました。

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久しぶりのシャーシ加工の為、筋肉通になりそうですが、めげずに次回もフロントパネルの加工を行います。

 

つづく(製作編2)

無帰還広帯域真空管アンプ(設計編5)

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設計編5

出力トランスを元に戻し、設計を完了させて製作の準備を行います。

出力トランス再変更

前回の記事でハム性能を考慮して出力トランスを当初考えていた春日無線のKA-5-54Pに戻しました。それに伴い、トランスケースすも東栄変成器のトランスケースSを追加注文しました。これで出力トランスとトランスケースそれぞれ2個が残材として残ってしまいます。ここでHigh-ch用アンプでハムに拘る理由について触れておきたいと思います。現行の1000Mマルチアンプシステムのアンプとスピーカーは全て直結しています。

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スピーカーユニットの保護の観点では、スコーカーおよびツイーターの接続にはハイパスフィルター用のコンデンサを直列に接続すべきですが、コンデンサによる音の色づけを避けるため自己責任でコンデンサを省いて直結しています。直結で一番問題になる点はアンプの出力DCオフセットですが、どちらのチャンネルも出力トランスがあるためDCオフセットは原理的に発生しません。次に問題になるのはハムです。ハムは音を濁すだけではなく、最悪スピーカーユニットにダメージを与えてしまいます。現行機では、高能率のヘッドフォンを接続しても聞き取れないレベルに収まっている為、直結しています。

出力トランス変更対応

まず初めにシャーシ加工図を完成させます。幸い真空管の配置変更まで行った図面をそのまま使用する事ができました。

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次に回路図を変更します。最後に修正した回路図の出力トランスのみ元に戻しました。

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最後に部品表を変更します。電源部品表は影響ないのでアンプ部品表のみの修正です。

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トランスケースと出力トランスを変更しました。変更部品の追加注文も合わせて行いましたが、東栄変成器様へは、あまり間をあけずに下記のとおり3回注文を行ったので変な客と思われたかもしれません。

1)ハイグレードトランスケースS 2個

2)出力トランスOPT-5P 2個

3)トランスケースS 2個

その都度送料907円がかかってしまいました。とほほ・・・

製作準備

製作に入る前に、簡単なジグを製作します。私の真空管アンプ製作では、フォーミングのしやすさと、半導体アンプに比べて回路内のインピーダンスが高い事から、導線径0.65mmの単線ワイヤを内部配線に使ってきました。具体的には秋月電子の2m10色セット協和ハーモネット製のもので620円です。

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被覆の色により使用率が事なるため無駄が発生していました。アマゾンで検索したところ同じ物が50mで1,882円で販売されていました。単価は秋月電子が31円/m、アマゾンは37.6円/mと割高となりますが、無駄がなくなる事から3色(赤、黒、青)を注文しました。

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写真のとおりラップを外すと電線がばらけてしまい使い勝手が良くありません。仕方がないのでジグを製作しました。材料は梱包用ダンボール、棚の背面板で余ったパルプ圧縮パネル、長尺のφ4のネジ2本とナット2個、ガムテープです。詳細な製作は省略します。下記が完成写真です。

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軸は、両サイドのパルプ圧縮板に長尺のネジ2本をナットで固定しています。

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この構造は、真ん中のリールを交換する際に両方のネジを緩めなければならない欠点がありますが、ありもので作ったので割り切っています。話をアンプ製作に戻します。構想検討および設計でかなり時間がかかってしまい、記事の余裕が全くなくなってしまいました。次回から製作を開始します。

 

つづく(製作編1)

無帰還広帯域真空管アンプ(設計編4)

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設計編4

前回の記事で決めた方針に従って加工図を作成して部品発注を進めます。

出力トランス配置変更

まずはトランスケースの寸法を再確認します。

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取り付け穴4点は、正方形の頂点配置となっているため、最悪後で向きを変える事ができます。選定しなおした東栄変成器の出力トランスOPT-5Pの寸法を確認します。

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トランスケースへの取り付けは、トランスの高さ方向がトランスケースの短手方向となります。東栄変成器のページに取り付け写真が掲載されていました。

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一旦取り付けの向きは現行機に合わせてシャーシ加工図を作成したいとおもいます。取り付け位置は、トランスケースが現行機よりも小さい事と、電源トランスを後方に10mm移動した事から、トランスケースおよび終段バイアス電流調整基板も後方へ10mm移動しました。上記を反映した加工図は以下のとおりです。

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部品表の作成

部品発注用に部品表を作成します。初めにシャーシ外装を含む電源部品表を作成します。チョークインプット電源の臨界電流を流す為の抵抗は、ラインナップを考慮して4.7kΩ/3W品と10kΩ/3W品を選定していましたが、実験用に5組注文する予定です。すでに注文済みの物も含めて改めて作成しました。

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合計24,197円でケース、電源トランス、チョークコイルで全体の89%の金額となっています。続いてアンプ部品表を作成します。終段の定電流源用の抵抗62Ωのラインナップがなかった為、在庫の特殊抵抗57Ωで代用する事にしました。これにより全抵抗は在庫で対応できるため、部品表から省いています。作成した部品表は以下のとおりです。

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合計26,210円です。こちらは出力トランスとそのケースおよび真空管で全体の約80%となりました。(在庫分は金額から除外)変更点を回路図に反映してみました。

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具体的な変更点は出力トランスおよび定電流源用抵抗の変更です。それでは部品表に従って発注を進めます。パスコンや端子台等の細かな部品は、必要以上の数量を注文してしまうので、部品代が部品表以上に嵩みます。海神無線様は日曜の注文だったためか、営業時間外との事で注文ができませんでした。明日改めて注文が必要です。一通りの注文を終えて一段落したところで加工図を見直してみました。

出力トランス再々検討

加工図を見直してみたところ、果たして出力トランスは同じ取り付け方法でいいのか気になり再確認をしてみました。下記が両トランスの写真です。

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左が今回選定した東栄変成器のOPT-5Pで、右が春日無線のKA-5-54Pです。コアの配置が異なる事から巻き線の向きも事なります。OPT-5Pは上下方向に磁界が発生しますが、KA-5-54Pは取り付けフランジ方向(写真の左右方向)に磁界が発生します。電源トランスの磁界は現状の取り付け方法の場合、前後方向に発生するため、OPT-5Pを取り付けフランジを後面に縦型取り付けを行うと、ハムに対して最悪の位置関係となってしまう事が判りました。現行機と磁界の向きを同じに配置する為には、取り付けフランジを前後方向として通常取り付けをする事になります。その為にはトランスケースをあきらめなければなりません。見栄えだけであればあきらめる事も考えられますが、シールド効果もある為、簡単にはあきらめられません。さてどうしたものか?現行アンプの構成に戻すとどうなるかまとめてみました。

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案4は案2と同一構成ですが、すでに追加で東栄変成器製の出力トランスの発注をかけてしまった為、残材が増えています。一頻り考えて、追加発注してしまったOPT-5Pは無帰還ヘッドフォンアンプの製作につかう事として、当初の予定どおり出力トランスをKA-5-54Pに戻してトランスケースSを追加発注する事にしました。やれやれ・・・。次回はこの方針変更を部品表および加工図に反映して製作の準備を行います。

 

つづく(設計編5)

無帰還広帯域真空管アンプ(設計編3)

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設計編3

選定した部品情報を元にケースの加工図を作成します。

フロントパネル加工図

現行機の加工図(下記)を元に修正を行います。

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変更点は電源スイッチと電源ランプです。電源スイッチはパドルスイッチから前回の記事で選定した波動スイッチに変更します。

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電源ランプは変更した意識はありませんが、穴経を選定部品の仕様に従って変更しました。ハンドルはいつものとおり近所のスーパービバホームで角型配管固定用の金具を調達しました。

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1個148円です。ネジ径は1/4インチです。このハンドルはボンネットを取り付けていない状態の運搬用とスイッチ類のガードが目的です。修正後の加工図は以下のとおりです。

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リアパネル加工図

リアパネルも現行機の加工図(下記)を元に修正をします。

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変更点はスピーカーターミナルのみです。穴径変更と回り止めの削除です。他部品は現行機と同じものを使用するため変更不要です。

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シャーシ加工図

これも現行機の加工図(下記)から変更します。

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変更点が多い為、分割して修正を加えていきます。最初は電源回路部です。変更点は電源基板が小さくなる代わりに、チョークコイルが追加となります。電源基板の位置を継承すると、チョークコイルは電源トランスの前の配置となります。現行機は、電源トランスを見た目の安定感からシャーシセンター配置としましたが、約10mm後ろにずらして、チョークコイルの設置スペースを確保しました。電源基板も合わせて後方に10mmずらしました。下記が修正した1次修正加工図です。

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続いて真空管ソケットの取り付け加工です。片チャンネル3本をフロントに並べました。フロントにはチョークコイルがあり、間隔を縮めなければ並べられません。幸い、同じ真空管を使っている現行アンプ及び、ヘッドフォンアンプともに発熱量は少ないので問題ないと判断しました。修正した2次加工図は以下のとおりです。

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次は出力トランスのケースの取り付け加工部を修正します。寸法を再確認したところ、あっ!やらかしてしまいました。選定したケースでは、選定した出力トランスが入りません。トランスケースSとハイグレードトランスケースSでは対応する出力トランスが異なり、サイズの違いを見逃していました。本来であれば加工図を作成してから部品発注を行うべきですが、記事の余裕がないため、ハイグレードトランスケースSは発注済みです。トランスケースと選定済みの出力トランスの外形を整理します。

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ハイグレードトランスケースSは税込みで1万円弱と高額です。どうしよう・・・?。対応案を整理してみました。

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案2は、現行アンプ同一構成となりますが、高額なハイグレードトランスケースSが在庫として残ってしまいます。案3は、幸い出力トランスの発注をまだかけていなかった為にとれる選択肢です。出力トランスは東栄変成器製のハイグレードトランスケースSに適合するプッシュプル用出力トランスです。仕様は以下のとおりです。

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両トランスの特性の違い(特に周波数特性)が気になりますが、無駄な在庫発生がなくなる事と、新たな部品を試してみる事ができるので、案3で進める事にします。今回の教訓は名称のみで仕様を思いこんでしまう事はトラブルの素ということでした。次回はシャーシ加工図の出力トランス取り付け部の修正から再開します。

 

つづく(設計編4)

無帰還広帯域真空管アンプ(設計編2)

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設計編2

回路設計が終わったので部品の選定を行い加工図の作成準備をします。

準備

ケースは、現行のHigh-ch用アンプと同じリードのMK-380を使用します。

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現行機のケース選定当時、真空管ヘッドフォンアンプと同じサイズの(現行機よりも1サイズ小さいMK-350)ケースの検討も行いましたが前後方向の寸法が短く断念した経緯があります。また真空管ヘッドフォンアンプは出力トランスと電源トランスの間隔が離せずに電源トランスの漏洩磁束によるハムに悩まされました。これら経験からケースを選定しました。加工図を作成するにあたり、部品の寸法確認が必要ですが、まずは自前の大物部品の在庫を確認してみます。

在庫確認

真空管用9ピンソケット4個を見つけました。

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今回の製作では6個必要なので追加で2個購入が必要ですが、非ブランド品をアマゾンで都度購入しているため、同じ物が手に入るかわかりません。とりあえず図面は在庫品の寸法をもとに作図しておきます。

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万が一形状が異なった場合、新規購入品を終段管用に当てる等工夫したいとおもいます。続いて12AY72個を見つけました。

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electro-harmonix製のものです。今回は4個必要なので同じブランドのものを2個購入します。次は6N6Pです。

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在庫は4個です。この真空管もノーブランド品をアマゾンで都度購入しています。いつ在庫切れになるかわから球なので、今回使用する2本を購入する事にします。

一次部品選定

加工図作成に必要な部品の選定を行います。今回も出力トランスを縦型取り付けする為にトランスケースを使用します。前回は東栄変成器のトランスケースSを使用しましたが、取り付けに少し苦労しました。今回は少し値段は高くなりますが、ハイグレードトランスケースSを使用する事にします。

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違いはトランス取り付け用のフランジとケースが別ピースになっている点です。この構造により取り付けがだいぶ楽になります。寸法は以下のとおりです。

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次は電源基板用のユニバーサル基板を選定します。今回搭載する回路はC電源(-5V)のみなので終段のバイアス調整回路を実装する基板と同じもの(秋月電子両面ユニバーサル基板Dタイプ)を使用したいとおもいます。

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次は電源スイッチを選定します。現行機はパドルスイッチを採用しましたが見た目が今一つでした。会社の同僚が担当製品でかっこいいロッカースイッチを使っているのが目にとまり探してみました。秋月電子で検索しましたが、ヒットしませんでした。続いて共立エレショップで検索したところ波動スイッチの名称のものがヒットしました。念のため秋月電子で波動スイッチで再検索したところ同じものが見つかりました。

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この構造であればシャーシ加工部がフランジで隠れるためかっこよく取り付けができそうです。ロッカースイッチと波動スイッチの違いを検索したところ、メーカーによる呼び方の違いのようです。やれやれ。続いてスピーカー端子を選定します。今回は共立エレショップで写真のものを選定しました。

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仕様は以下のとおりです。

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回り止め構造はなさそうですがバナナプラグの使用を前提としているので問題ありません。すでに選定済みの電源トランス(PMC-130)とチョークトランス(PMC-1010H)の寸法情報も掲載します。

■PMC-130

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■PMC-1010H

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ケース購入

最後にケースの購入先を決めます。ブランド品なのでいろいろなルートから購入ができます。下記が2021年1月10日時点の価格一覧です。

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予想に反して、マルツオンライン様の価格が一番やすい事がわかりました。送料は確認していませんが、今回は他にも購入するものがあるため送料の確認を省略しています。これでシャーシ加工図作成に必要な部品が確定しました。今回選定した一次部品リストを参考に掲載します。

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次回は選定した部品寸法を元にシャーシ加工図を作成します。

 

つづく(設計編3)

無帰還広帯域真空管アンプ(設計編1)

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設計編1

設計構想がまとまったので、実際に設計を進めていきます。

電源回路

前回選定したトランスとチョークトランスを使って電源回路を設計します。電源回路の設計を進めるに当たり、暫定で描いたアンプの回路図を再掲載します。

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初めに使用する真空管のヒーター電流を整理します。

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今回選定した電源トランスのヒーター巻き線は2A x2なのでヒーター接続の選択肢は広がります。現行のHigh-ch用アンプで発振に悩まされた事から、初段と終段のヒーター回路を別回路にします。-5VのC電源回路の電源は、負荷の軽い初段のヒーター巻き線から供給します。B電源回路は、前回の記事の基本回路を忠実に置き換えています。臨界電流を流す負荷抵抗は、入手性を考慮して仮設定しました。設計した回路は以下のとおりです。

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B電源回路の電源電圧が想定よりも下がってしまいました。チョークインプット電源方式は出力電圧がトランスの2次の定格電圧になると言われています。但し、負荷電流によるチョークトランスの電圧のドロップを考慮した結果です。

出力電圧 = 180 - 187 x 0.08 = 165 V

アンプ回路見直し

最初に初段の負荷抵抗のロードラインから見直します。

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上図は先にSPRR回路4負荷抵抗真空管用に描いたロードラインです。このロードラインはkrとバイアス電流により決まるため、電源電圧が変化しても変わりません。続いて初段のロードラインを再掲載します。

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このロードラインでは動作点のVpは75Vとしていますが、電源電圧が165Vに下がる為動作点の電圧も下がります。

Vp = 165 - 108 = 57V

初段のロードラインの動作点電圧を60Vとして描き直してみます。

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動作点のVgが-1Vとなってしまいましたが、ギリギリいけそうです。SPRR回路構成とする場合、さらに確認が必要な点があります。それは負荷抵抗に置き換える真空管のヒーター回路とカソードの耐圧です。12AY7の仕様書を確認してみました。

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+/-ともに90Vです。上記の初段のロードラインを見ると理論上カソードの電圧は150Vまで上がってしまいます。そこで実用状態について検証してみました。下の表はSPRR回路4のゲインの一覧表です。

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この表は未公表でしたが、SPRR回路4のゲインはSPRR回路3と同じため単純にコピーしたものです。今回のアンプのA級動作範囲は約0.6W/8Ωですが、余裕を見て仮に出力を1Wとしてその時の入力電圧を求めてみました。

1W時出力振幅レベル = SQRT( 1 x 8 ) x 1.41 = 4.0V(ピーク電圧)

アンプのゲインが10.5倍なのでその時の入力電圧は

1W時入力電圧 = 4.0 / 10.5 = 0.38V(ピーク電圧)

一方、初段のロードラインからはヒーターカソード電圧Max90Vをクリアする為にはVgを-2V以下に抑える必要がありますが、上記の計算結果から-1.38V(-1-0.38)以下とクリアできそうです。続いて終段のロードラインへの影響を確認します。

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このロードラインの見直しの影響は軽微です。電源電圧の変更に合わせて、終段のバイアス回路も見直します。従来、調整用ボリュームの接点不良を考慮して複雑な回路としていましたが、現行のHigh-ch用アンプ製作の際に調整しきれない真空管があった事と、いままでにボリュームの不良事例がなかった事から回路を簡略化する事にしました。この変更により終段管のVgの調整範囲は0V~0.5Vに拡大できます。逆にカソード電圧が少し下がるため、定電流回路の設計が苦しくなりますが誤差範囲と考える事にします。修正を反映した回路図は以下のとおりです。

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この回路図を元にさらに設計を進めていきます。

 

つづく(設計編2)

無帰還広帯域真空管アンプ(構想編8)

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構想編8

SRPP回路4も改善効果が大きくなかったので、引き続き改善検討を行います。

SPRR回路4

前回の検討を行ったSPRR回路4の周波数特性のシミュレーション結果を再掲載します。

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上が初段で下がトータルの周波数特性のシミュレーション結果です。両図を見ると出力トランスの周波数特性の影響が大きいように思えます。SPRR回路4では春日無線のKA-5-54Pを採用しています。

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KA-5-54Pの周波数特性は、メーカー資料から-0.5dB/60KHzを元に一次フィルタ前提としてシミュレーションしました。他に候補がないか確認したところKA-3.5-54Pの特性が目に止まりました。

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上記のメーカー仕様から-0.5dB/70KHzとわずかですが周波数特性が良くなっています。この出力トランスに変更できないか改めてSPRR回路4の終段のロードラインを眺めてみました。

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SPRR回路4のロードラインは現行機よりも立っていて直線性がいまひとつです。これをKA-3.5-54Pに変更するとさらにロードラインが立ってしまい、特性が悪くなってしまいそうです。バランス的には現行機のロードラインが一番良さそうです。無帰還方式で特性を維持したままこれ以上の帯域確保は難しいのでしょうか?

SPRR回路4

という事で一旦SPRR回路4について改めて確認をしてみます。周波数特性のシミュレーション結果を再掲載します。

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カットオフ周波数を確認してみました。現行機(シミュレーション結果)がfc=100KHzに対してSPRR回路4がfc=110KHzでした。改善効果がわずかなので想定外の要素が加わると、逆に悪化の懸念もあります。せっかく製作するとなると、他に新たなチャレンジもしておかないと作った意味がなくなってしまいそうです。

電源回路

そこで以前からやってみたいと考えていたチョークインプット電源を検討してみます。学生時代に研究室の教授にそそのかされて、ラジオ技術紙掲載用の終段を含めた電源をチョークインプット方式としたBTL方式のDCパワーアンプの製作を行いました。特注の大型のチョークトランスを搭載しましたが、完成後の音聴きで圧倒的な駆動力に衝撃を受けました。今回の製作では広帯域化に失敗した時のバックアップとして採用検討を行います。

チョークインプット電源

チョークインプット電源の基本回路は以下のとおりです。

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全波整流後にチョークトランスを接続してその出力に平滑用電解コンデンサを接続します。出力部の抵抗は、チョークトランスに臨界電流を流す為の負荷抵抗です。まずはチョークインプット電源用のチョークトランスを確認してみました。ざっと探してみましたが選択肢がありません。見つかったものは、定格電流値が大きく値段が高いもののみでした。

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一方、チョークトランスのラインナップは豊富です。違いはチョークインプット電源用のものは、高リップル電流を流しても唸りが小さく押さえられています。選択肢がないのでうなりに苦労しそうですが、通常のチョークトランスから適当なものを探してみる事にしました。

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写真はゼネラルトランスのPMC-1010Hです。臨界電流をどの程度とればいいかわからないので、実験して決めたいとおもいます。電源トランスは、平滑後の電圧が定格二次電圧より下がり、ざっと回路検討した電圧よりも低くなってしまいますが、ヒーター巻き線等を考慮してゼネラルトランスのPMC-130Mを選定しました。

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次回は構想した仕様をもとに詳細な回路設計を行います。

 

つづく(設計編1)