BTL_A級DCパワーアンプまとめ3

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まとめ3

前の記事の最後で予告したとおり、気になる点と説明が漏れていた仕様について紹介します。

気になる点

このアンプの仕様は、電源をコンセントにつなぐと電圧増幅段の電源が入り、トグルスイッチオンで、終段の電源が入ります。運用上は、電力増幅段の電源を切った状態でアンプへの電源供給のオン、オフを行っています。気になる点というのは、電力増幅段の電源オンの際に、トランスが「ブーン」と唸る点です。唸りの音量は、一定ではなく、その時々によって異なります。大きい時でも、トップカバーがかぶせてあれば、リスニングポイントでは、ほとんど気にならないレベルですが、なんとかしたいと思いネットで関連情報を検索してみました。

唸りの原因

検索の結果、その時々で音量が変わる唸りの原因はAC電源のDC成分とのことでした。AC電源にDC成分が乗っかると、トランスのコイルやコアにアンバランスな力が加わることは容易に想像できますが、それが唸りの量にどのように関係するのでしょうか?両サイド金属の壁の間でハンマーを振った場合に、壁が垂直でハンマーを水平に振った場合と、壁が水平でハンマーを縦に振った場合では、後者の方が重力(DC成分)の影響で大きな音がするように思えますが、こういうことなのでしょうか?

対策

AC電源のDC成分はどこで発生するかというと、同一ラインに接続された他負荷のプラスとマイナス側の負荷のアンバランスによるとのことでした。昨今、インバーター等の位相を制御された負荷が増えた事が影響していると思われます。この原因を断つことは難しいので、負荷側の対策を試してみることにしました。図はネットに上がっていた対策回路(http://www.mizunaga.jp/ptrans.html)ベースの試作回路です。ブリッジが使われていて動作が複雑そうに見えますが、電源双方向でダイオードの順電圧x2の電圧をここで消費させているだけの回路で、並列に入った抵抗は、順電圧x2に達するまで電流をバイパスするためのものです。供給電源にDC成分があると、その量に応じて順電圧がかかる時間がアンバランスとなりブリッジダイオードでDC分が消費されます。

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懸念

仕組みは理解できますが、負荷がアンプと直列に入ることの音への影響が心配されます。この件とは直接関係ありませんが、私の家では1Fと2F間でPLC(Power Line Comuication)を使ったネット環境を構築していますが、同じ電源ラインをオーディオ機器が使用するため、PLC通信の悪影響を排除する目的で、オーディオ機器のACラインにラインフィルターを入れたことがあります。いくら大容量のものを選択しても、音が悪くなってしまうため現在は、PLCとオーディオはなにもせずに同一ACラインを使っています。今回の対策回路でこのような事が起こらない事を祈りつつ、まずは試作してみることにしました。この試作回路にはバイパス用の抵抗と並列にトグルSWを入れ、機能をオン、オフできるようにしています。尚、本記事のキャッチ写真が試作した対策装置です。

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効果確認

まずは唸りの低減効果を確認します。機能オフ時の唸りを確認した後、機能オンします。確認した日はうなりの音量があまり大きくはなく、効果としてはやや音が小さくなる程度でした。この時の、ブリッジにかかる電圧のモニタ結果を掲載します。DC成分としては、0.28Vここで吸収していることが判ります。

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続いて、機能オンオフ時の音の違いを比較します。結論から言うと違いは僅かですがオフの方がいいです。オンすると音の広がり感がやや小さくなり、低音のバランスがやや高い方に寄って聴こえました。せっかく作りましたが、唸りがどうしても我慢できない時のみ使うことにしました。

スタンバイ状態

この記事のはじめにも書きましたが、トグルスイッチオフ状態でAC接続すると、電源ランプが赤点灯し、電圧増幅段のみ電源が入ります(スタンバイ状態)。トグルスイッチオンで動作状態となり、電源ランプが緑点灯に変わります。写真はスタンバイ時と動作状態のアンプを並べて撮ったものです。スタンバイ状態で回路へ負担がかかっていないことを念のため確認しました。スタンバイ時はドライバに電源が入っていないため、ドライバがベースとエミッタ間のダイオードと同等状態となり、動作時よりも大きなベース電流が流れてドライバに悪影響を与える事が心配です。ドライバのデーターシートを確認したところベース電流の絶対定格は十分大きく心配ないことが確認できました。尚、設計編で掲載した回路図中の括弧内の電圧は、スタンバイ時のものになります。

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まとめのまとめ

トランジスタの選別開始が2016年4月9日で、2台分のアンプがとりあえず組み上がったのが、2016年6月5日です。GW期間中はほぼ毎日作業をつづけそれ以外は週末のみでしたが、組み上げるのに約2ヶ月かかりました。その後、音質改善に1ヶ月以上かけ、実は記事にしていない故障が2回発生し(どちらもハンダ不良)修理に時間をとられたことから、現時点は実作業と記事がほぼ同時進行の状態となってしまいました。トランジスタアンプと真空管アンプの比較は、はぎれの悪い結果となってしまいましたが、とは言え学生時代から暖め続けた構想を実現でき、それなりの物に仕上がったので良かったと思っています。性格の違うこの2台、大事に使っていきたいとおもいます。BTL A級DCパワーアンプの製作、長々とおつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり