音楽の女神への挑戦(設計編)

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設計編

構想編でまとめた内容に沿ってディスクリートアンプの設計を進めます。

電源回路

BTL A級DCアンプの電圧増幅段の電源回路を流用します。特徴は負荷変動に対する制御は行わずに、入力変動とリップルを抑えるだけですが、今回の用途にはマッチしています。搭載されているトランスは、12Vx2出力のトロイダルタイプで、この出力を全波整流すると無負荷状態で16.8Vとなります。この入力からDC12Vをつくるとき、出力トランジスタの印加電圧は4.8Vとなりオリジナル回路よりも小さくなります。BTL A級DCアンプの電圧増幅段用電源では、出力トランジスタとしてダーリントンタイプを使用しましたが、トランジスタ印加電圧を少しでもかせぐために、今回は普通のトランジスタを使用します。出力12Vとするためには、出力トランジスタのベース電圧を12.6Vにする必要がありますが、丁度いい電圧のツェナーダイオードがなかったため、9.1Vと3.6Vの直列使用で12.7Vとします。平滑用の電解コンデンサはトランスの負担になりますが、出力トランジスタの入力電圧をかせぐために、大容量のものを使用します。

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アンプ回路

アンプ部もBTL A級DCアンプの電圧増幅段の回路を流用しますが、特徴は差動動作にこだわり、無理にゲインを稼がずに裸特性を優先させています。オリジナルは、13.6Vの電源で動作させましたが、今回は12.1Vで動作させるために、回路定数の見直しをします。初段の負荷抵抗に3Vをかけ、カスコードトランジスタに、4.1Vの電圧を印加し、最大振幅時にもカットオフしないようにします。終段のコンプリメンタリのドライバには、10mAのバイアス電流を流し、エミッタ抵抗を10Ωとしました。2段目の差動回路のバイアス電流を5mAとすると、初段およびドライバ段の設計から2段目の定数が自ずと決まります。これらを反映して回路図を起こします。

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部品の選定

最初に基板を選択します。秋月電子のユニバーサル基板は品質、価格共に良かったため、今回も通販のラインナップから探します。A~Dの4種類のサイズのものがあり、それぞれの寸法は以下のとおりです。

A:155x114
B:95x72
C:72x47
D:47x36

完成済みのシャーシに納めるため、ボリューム、トランスの配置を考慮してBタイプを選択しました。下の写真のとおり、電源基板用1枚と、Lch/Rch用にそれぞれ1枚を実装します。アンプ基板1枚の固定用のネジ位置1カ所がボリュームの下となってしまうため、この基板のみ3点支持とします。

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初段のdual FETは選択の余地がなく、今回もチップパッケージの2SK2145GRを変換基板に搭載して使用します。

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トランジスタは、BTL A級DCアンプで使った2SC1815GRと2SA1015GRがコンプリメンタリ品なので、これで済ます予定ですが、バックアップとして2SA2240GRと2SA970GR品も購入しました。(本記事キャッチ写真参照)

電源回路は、左右独立電源としていますが、基板へ部品実装時にスペースを確認して、独立電源の可否を改めて判断します。出力トランジスタは、40V/3A品の2SC3422/2SA1359を選択しました。回路図を元に改造基板用の部品表を作成したので参考に公開します。

■アンプ部0.5ch分部品表

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■電源部部品表

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次回は、トランジスタの選別から組立について紹介します。

 

つづく(製作編)