音楽の女神への挑戦(製作編3)

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製作編3

電源基板の実装を行います。

2SC3422/2SA1359

電源回路実装に入る前に、出力トランジスタについて紹介します。東芝製のコンプリメンタリ品で、データシート上に用途として「電力増幅用」、「低速スイッチング用」と記載されています。秋月電子の在庫の中で見た目と価格(40円)が手頃のため選択しました。40V/3A, Pc=1.5W(Ta=25℃)hfe=80min, ft=100MHzと今回の用途としては十分な特性です。代表して2SA3422のデーターシート抜粋を掲載します。

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実装方針

左右独立電源の実装可否を検討します。+/-の2電源を左右独立とするには、大きく回路系は4ブロックとなります。これ以外にトランス出力を全波整流するブロックも必要です。基板の長手方向に4ブロックを並べ、その4ブロックの手前側に全波整流ブロックを実装することとします。

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部品実装

シングルアンプの電源基板で使用して大変重宝した基板端子台を今回も使用します。実装スペースを取ってしまう事が欠点ですが、それを差し引いても採用のメリットが大きかったからです。基板の長手側の端に入力用の端子台、全波整流用のブリッジと電解コンデンサを配置しました。現行の電源では、一般品の4700uF/50V品を計4個搭載していますが、今回は実装スペースの関係からニチコンのオーディオ用4700uF/50V品を2個としました。続いて、基板の短辺にそって+電源回路を実装します。アンプ片チャンネル当たり、約34mAを消費します。電源回路放電用に1mAを流しているので、トータル35mAが電源回路出力トランジスタに流れます。トランジスタの印加電圧は約5Vなので、トランジスタの消費電力は175mWとなります。このレベルであれば、トランジスタの放熱は不要です。続いて、ー電源回路をその隣に実装します。電源入力部と反対側に電源出力用に3極の基板端子台を実装し、片チャンネル分が完成です。

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ここにも音楽の女神が

製作から話が脱線しますが、今回電源基板にはニチコンのオーディオ用標準品電解コンデンサKWとオーディオ用ハイグレード標準品FG(Fine Gold)を採用しました。KWは黒のスリーブに金文字で、FGは金スリーブで黒文字と、どちらも高級感のある外観です。ニチコンには、さらにハイグレード品としてミューズを唱うKZとES(両極性)電解コンデンサがあります。このミューズは挑戦相手のオペアンプのミューズ(MUSES)と綴りが異なり、単数形の「MUSE」です。いまさらですが、記事のネタとしてKZ品を採用すべきだったと少し後悔しています。ニチコンHP上には、オーディオ用電解コンデンサとして11品種が本記事公開時点で掲載されていますが、ミューズシリーズの2品種を含めて8品種(下図型式脇に※表示のあるもの)が生産終息予定品種となっており、ここでもオーディオパーツ不遇の時代を実感させられました。

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動作確認

話を戻します。本来であれば、トランスのAC出力を基板に入力して動作確認をしますが、改造予定のバランスボリュームは、まだ運用中のためトランスを接続することができません。仕方ないので、AC12Vのピーク電圧約+/-16.8Vをユニバーサル電源から入力して動作確認を行いました。確認のポイントがあまりないので、いきなり出力電圧を確認します。+側が12.1V、ー側が-12.1Vでした。ユニバーサル電源の電流表示値は5.5mAとなっていて設計どおりの値です

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もう片チャンネル分の実装と確認

基板上に回路ブロックが均等に配置されるように残りのチャンネル分の回路を実装します。最初に実装した配線を参考にするため、短時間で実装が完了しました。懸念していた、左右独立電源実装は写真のとおりきれいに納めることができました。

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先の回路と同様に動作確認を行います。電源自体が消費する電流値は先の動作確認時の倍の、11mAとなっています。出力電圧は+が12.3Vでーが11.9Vでした。+/-のばらつきが大きいですが、ツェナーダイオードのばらつき起因と考えられます。今回の用途では影響がないのでこのまま進めます。リップル特性等の評価は、トロイダルトランス接続時に改めて実施します。

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次回はアンプ回路の実装を行います。

 

つづく(製作編4)