パワーアンプの周波数特性(番外編6)

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番外編6

先日手に入れた低周波発信器を使ってプッシュプルパワーアンプの周波数特性を確認しつつ負帰還の効果、影響を確認します。

気になっていた事

以前、パラレルシングルパワーアンプ(S1605)を製作し、プッシュプルパワーアンプ(S1503)との音の比較をおこないましたが、パラレルシングルパワーアンプは無帰還、プッシュプルパワーアンプは負帰還をかけていて、方式差の音質比較をする上ではフェアでないとおもいつづけていました。一般的に考えると、負帰還をかければ特性が改善するため、プッシュプルパワーアンプの方が有利になると考えられますが、音楽を楽しむ観点ではパラレルシングルパワーアンプの方が良い結果となっていました。今回は、プッシュプルパワーアンプの周波数特性を確認しつつ、負帰還の有無で音の比較をします。

周波数特性の測定

「音楽の女神への挑戦(製作編6)」で紹介したとおり、KENWOOD低周波発信器を手にいれたので、バランス入出力パワーアンプの周波数特性の測定方法を考えてみました。発信器にはバランス出力はありませんので、バランス変換ボリューム(S1501)を使って発振器出力をバランス変換してパワーアンプに入力します。ゲインはポケットオシロの実効値表示から入出力の電圧を読みとって算出します。

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電圧のモニタは、入出力を共通GNDとするため、HOT側の信号のみで行います。パワーアンプの出力にはスピーカーの代わりに8Ωのダミー抵抗を接続しました。

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簡単な測定回路のブロック図を作成しましたので掲載しておきます。

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測定

1KHzの信号を入力して出力が約0.1Wとなるように入力信号レベルを調整します。その時の入力信号レベルをメモしておき、周波数を変えた際に同じ入力レベルに合わせて出力レベルを確認します。全帯域の測定が終わった後で今回の測定は、ホット側のみということを忘れていて、出力が4倍の約0.4Wで測定をしていたことに気づきました。。結果への影響がなさそうだったので今回はこのまま進めます。結果を格好良くグラフ化したいと思い、ネット検索をしたところ、エクセルを使ったツールを公開しているサイト(JK1EP真空管アンプの自作)を見つけました。グラフ化はこのツールを使わせていただきました。測定時の基準信号(1KHz)の入出力レベルは、0.128V/0.88Vで、ゲインは16.7dBでした。

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低域は10Hzまでフラットです。段間のコンデンサを意識して選択したかいがありました。高域は20KHzまではフラットで100KHzで3dBダウンしています。ホット側のみの測定ですが、バランス出力時とf特の結果は変わらないはずです。

無帰還化

久々にプッシュプルアンプ(S1503)のシャーシを開けてみました。私自身の真空管アンプ初号機のため、2作目パラレルシングルアンプ(S1605)の配線と比べて雑な部分が目につきます。帰還信号ラインはトランジスタアンプでは考えられない程の線長となっています。暫定対応としてその配線のアンプの入力側の接続を外します。(写真の矢印4カ所)外した配線はショートしないようにテープ止めしておきます。

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この状態で負帰還時と同様に周波数特性の測定を行います。基準信号レベルは、0.068V/0.84Vでゲインは21.8dBとなります。負帰還時のゲインとの差5.1dBが帰還量となります。

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負帰還のお手本のような結果となっています。低域は10Hzまでフラットで変わらず、高域は10KHzからゲインが下がり初め、50KHzで3dBダウンしています。この特性のみを見ると負帰還は魔法のように思えますが、帰還をかけているラインの線長を考えると副作用のある薬のように思えてきます。

無帰還アンプの音

帰還をかけていたときの音は、響きがきれいで繊細な音がしました。音楽を生き生き鳴らすという面では、シングルアンプに劣っていました。帰還を外すと、響きの美しさはそのままで、繊細さは後退しますが、音楽がいきいき鳴ります。シングルアンプにはない、躍動感のある低音はそのままです。しばらくはこの状態で使いたいとおもいます。この後、70年代録音のアルバムを聴き込んでしまいました。アコーステックギターいい感じに響いています。

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次回は引き続き、製作済みのパワーアンプの周波数特性の確認を進めます。

 

つづく(番外編7)