バランス変換ボリューム2(設計編)

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設計編

前回の構想に基づいてバランス変換ボリュームの新仕様を決定します。

ディスクリートアンプ

「パワーアンプの周波数特性(番外編7)」の記事の最後でも簡単に書きましたが、ディスクリート化したアンプを使ったバランスボリュームと、BTL方式DCパワーアンプの組み合わせの音は思いの外気に入りました。BTL方式ならではの駆動力による床を振るわす超低域、それでいて固くなりすぎない豊かな低音。弦楽器の美しい響き、管楽器の突き抜ける高音、それでいながら音量を上げてもうるさくなりません。この組み合わせの場合、バランスボリューム以降が左右完全独立電源で、回路も完全バランス動作+全段A級動作となり、信号電流が理論上電源に流れません。この音の瞬発力を生むための必須仕様だと考えています。せっかくなのでバランス変換ボリュームも同様の構成にしたいと考えました。

S1501バランス変換ボリューム

このユニットは、オーディオ趣味復帰後に製作した1号機ですが、オペアンプを使った簡単なバランス変換回路となっています。(キャッチ写真参照)当時、部品の入手に関する情報がまだあまりなく、電源トランスもチャチなものしか購入できなかった為、苦し紛れにトランスから左右独立電源仕様としてごまかしていました。そのトランスの電流容量は1機たったの60mAです。

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バランス変換アンプのディスクリート化と合わせてこれら心残りの仕様の変更も検討してみたいとおもいます。現行の回路図を参考に再掲載します。

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以上をまとめて今回の構想を改めて箇条書きします。

・現行品(S1501)を改造する
・心残りの電源回路も見直す
・バランス変換アンプをディスクリート化する
・今後の改造を考慮して、バランスボリューム同等の基板3枚+トランス配置とする

改造の効果を確認するために、最初にアンプ基板の載せ換えを行い音を確認し、次のステップで電源基板を載せ換えたいとおもいます。

ディスクリートアンプ回路

現状の回路のオペアンプを単純にディスクリート化すると、トータルで6チャンネル分のアンプが必要となります。現状のシャーシに、改造ベースで6チャンネル分のアンプ実装は無理がある為、新たに専用の回路を起こすこととしました。こう書くと大げさに聞こえますが、バランスボリュームで使ったディスクリートアンプ回路に反転出力用の終段を追加するだけです。

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2段目の差動アンプの出力として使用していない側へ反転出力終段用のバイアス回路を追加し、追加したコンプリメンタリペアの終段を駆動します。アンプの構成としては、マイナス入力が接地されたバランス入出力アンプの構成となります。このためアンプの入力は反転入力構成となるため、前段の出力インピーダンスによりアンプのゲインが変わってしまいます。ソース側のインピーダンスの影響をなくすために、バランス入出力アンプの前段にボルテージフォロワを追加します。以下が片チャンネル分の全体ブロック図です。この場合のアンプのゲインは入力に直列に入る抵抗と帰還抵抗の比率を2とすると正相および逆相それぞれ1倍となるはずです。

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左右のチャンネル分を2枚の基板に実装するため、1枚の基板にボルテージフォロワとバランス入出力アンプの搭載が必要となり、バランスボリュームのディスクリートアンプ基板よりもさらに部品点数が増えてしまうため実装しきれるか心配です。もう1点気になるのは、正相出力のみのアンプに比べて調整が難しくなる事です。正相と反転出力それぞれのオフセット電圧調整が、独立に行えないため、どこまで出力オフセットを追い込めるか心配です。調整の追い込み度合いは、実際にやってみないとなんとも言えません。

電源回路

ディスクリート化したバランスボリュームの音が良かったので、今回の電源回路もトロイダルトランスを含めてそのまま設計を踏襲する方針とします。先にも書きましたが、音の違いを確認するため、現状の電源のまま新アンプ基板の音出しを行った後で、電源回路の改造を行うつもりです。

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今回のアンプは、前回のバランスボリュームのディスクリート化と製作自体ほぼ変わりませんが、おつきあいいただけると嬉しいです。

 

つづく(製作編1)