A級バランスHPアンプ製作(設計編1)

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設計編1

バランス対応ヘッドフォンを入手したのでそれ用のヘッドフォンアンプを構想して、設計を行います。

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設計構想

今回の1番の目的は、ヘッドフォンのバランス駆動時の音を聴いてみることですが、せっかくつくるので欲が出てしまいます。今は比較的環境に恵まれていて、スピーカーからそれなりの音量で音楽を鳴らすことができますが、この環境もいつ変化が訪れるかわかりません。それに備えてヘッドフォンでの鑑賞環境を整えておくことも目的としたいとおもいます。最近の設計ではいろんな制約で設計的な妥協を行っていますが、2番目の目的を加えたこともあり、ここで一旦自作の原点に戻ってできる限り設計的な妥協は排除して進めたいとおもいます。それでは恒例の設計構想を箇条書きにまとめたいとおもいます。

・A級BTL駆動方式

・DCアンプ

・入力はアンバランス、バランス選択式

・出力はバランス2.5mm 4極ジャック

トロイダルトランス+レギュレータIC電源 ・放熱設計

それでは構想に従って具体的な設計を進めます。

プリアンプ

入力は利用範囲を増やすためにアンバランスとバランスの両方を設けます。アンバランスはRCAピンジャックを、バランスは3極のXLRコネクタとします。切り替えは4回路のロータリSWを使う予定です。アンバランス入力はオペアンプを使ってバランス変換します。バランス入力は各信号をボルテージフォロワで受けます。回路図はいつものとおり水魚堂様のBSch3V回路エディタを使って作成します。(本記事アイキャッチ写真参照)書き上げた回路は以下のとおりです。オペアンプは以前購入して交換により余っているMUSES8920を使用します。

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ヘッドホンアンプ設計

回路は定番のdual JFET入力差動二段構成とします。ヘッドホンとはいえ、A級動作させるため終段にはそれなりのアイドリング電流を流す必要があるため、パワーアンプ同様にドライバ段+終段の構成とします。初めに終段のアイドリング電流を決めます。今までヘッドフォンを鳴らすことに真剣に取り組んだ事がなかったので、出力がどの程度出せれば十分かわかりません。とりあえずの値として500mWを設定しました。購入したヘッドフォンのインピーダンスが45Ωなので、最大出力時の電流の実行値Imrmsは、

Imrms = SQR (0.5 / 45) = 0.1 A

その時のピーク電流Ipeakは、

Ipeak = 0.1 x 1.41 = 0.141 A

このピーク電流をA級動作で流すためのアイドリング電流Iidelは、

Iidel = Ipeak / 2 = 0.07 A

仮に終段の電源電圧を+/-12Vとしたときの終段トランジスタの損失Pidleは、

Pidel = 12 x 0.07 = 0.84 W

電源電圧を9Vまで下げられれば、ヒートシンク無しで進められそうですが、+/-12Vの場合、簡単な放熱器の実装が必要と考えます。終段に必要な電源電圧を見積もります。Ipeakが流れる時のピーク電圧Vpeakは、

Vpeak = Ipeak x 45 = 6.3 V

ヘッドフォンはBTL駆動されるので、終段の最大出力電圧Vfpeakは、

Vfpeak = Vpeak / 2 = 3.2 V

この結果から終段の電源電圧は+/-9Vとします。この時の終段トランジスタの損失Pidelは、

Pidel = 9 x 0.07 = 0.63 W

となり、ぎりぎりヒートシンクなしでいけるレベルになりました。ドライバ段のアイドリング電流は、終段のアイドリング電流値の1/10として約7mAとします。バイアス回路は、今までラインアンプで使ってきた定数の場合、コレクタ電流が小さくなりすぎる為、定数を見直します。初段および2段目の設計は従来の設計を踏襲します。これら設計を反映して回路図を起こします。

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回路図にはすでに記入済みですが、終段はA級BTL DCパワーアンプの修理の際に購入し、結局使わずに済んだ2SC3851A/2SA1488Aを使用します。ドライバを含めた他のバイポーラトランジスタは2SC1815GR/2SA1015GRを使用します。入力のJ-FETは定番の2SK2145GRを使用します。終段はサンケン電気製ですが、それ以外は東芝製です。オーディオ用として使いやすい2SC1815GR/2SA1015GRはすでに製造が終わっていて在庫販売のみのようです。ビルダー部品の調達は生命線なので今後一層厳しい状況になっていくものと思われます。次回は残る電源設計と製作にむけた部品の調達を行います。

 

つづく(設計編2)