A級バランスHPアンプ製作(設計編2)

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設計編2

前回、プリアンプとパワーアンプの設計が終わったので、残りの設計と製作に備えて部品の発注を行います。

電源の設計

必要な電源は、プリアンプが+/-12V、ヘッドフォンアンプの電圧増幅段も+/-12V、ヘッドフォンアンプの電力増幅段が+/-9Vです。必要な電圧としては4種類ですが、これを左右独立とすると倍の8系統の出力が必要になります。4系統と8系統では実装量が大きく異なりますが、今回の目的のバランス駆動ヘッドフォンの大きな特長は、左右のユニットの片側のラインが共通とならない為、良好なセパレーションが得られる事なので、ここは少し無理をしても左右独立電源としたいと思います。8系統の電源回路は実装を考慮して三端子レギュレータを使用します。

電源の放熱設計

電源トランスの二次電圧出力をAC12Vと設定して、各レギュレータICの損失を見積もります。初めに+/-12V電源の片チャンネル分の出力電流を見積もります。プリアンプはオペアンプ2個構成で、1個当たり10mAとするとトータルで20mAとなります。ヘッドフォンアンプの初段が約2mA、二段目が約8mAなのでヘッドフォンアンプ側がBTL構成で2倍となりトータル20mAとなります。両者を合計すると+/-12V電源の出力は約40mAとなります。AC12Vの整流後の電圧は約16.3Vとなるので、+/-12Vのレギュレータの損失P12は、

P12 = (16.3 - 12) x 0.04 = 0.17 W

となります。このレベルであればレギュレータの放熱は必要ありません。次に+/-9V電源の出力電流を見積もり、同様にレギュレータの損失を計算します。終段のアイドリング電流が70mAでドライバ段のアイドリング電流が約7mAなので、BTL構成で2倍となりトータルで154mAの電流となります。12V系と同様に+/-9Vレギュレータの損失P09を計算します。

P09 = (16.3 -9) x 0.154 = 1.12 W

このレベルになると放熱処理が必要です。合計で4カ所必要となりますが検討をすることにします。負荷時の整流電圧は16.3Vより下がりますが、設計上のマージンとして無負荷時理想電圧を計算に使用しました。

放熱器の選定

基板に実装するレギュレータ用の放熱器を探します。秋月電子の通販サイトを検索したところ手頃なものが2つ見つかりました。

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高さはどちらも25mmで一緒ですが、幅と奥行きが異なります。右側が16Wx25Hx16Dで熱抵抗が20℃/W、左側が15Wx25Hx11Dで熱抵抗は37.9℃/Wです。サイズの小さな方から温度平衡値を計算してみます。環境温度を30℃とすると温度平衡値t1は、

t1 = 1.12 x 37.9 + 30 = 72 ℃

となりかなり温度が上がってしまいます。つづいてサイズの大きな方で温度平衡値t2を計算してみます。

t2 = 1.12 x 20 + 30 = 52.4 ℃

温度は高いですが、問題ない範囲と判断します。基板への実装方法は、実際に現品を入手してから考えることにします。

トランスの選定

いつも使っているトロイダルトランスは、12V/0.5A x2の二次出力をもっています。今回は、12V系の消費電流が40mA x2で9V系が154mA x2となり、単純に合計すると388mAとなります。さすがに500mA品では余裕がないと考えて、共立エレショップのサイトを検索してみました。同一系列のトロイダルトランスで1サイズ上で二次出力12V/1A x2が見つかりました。(アイキャッチ写真参照)今回はこれを採用することにします。ここまでの設計を反映した電源の回路図を掲載します。

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部品の発注

まだ細かな設計は残っていますが、基板の製作が始められるように部品の発注をかけます。そのための部品表を作成しました。プリアンプ部、HPアンプ部、電源部と3枚構成です。基板の製作と平行してケースおよび残った他部品の選定を進めたいと考えています。

■プリアンプ部部品表

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■HPアンプ部部品表(片ch分)

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■電源部部品表

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つづく(製作編1)