A級バランスHPアンプ製作(製作編2)

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製作編2

引き続きトランジスタのhfe測定を行い、その結果からコンプリメンタリペアを選別します。

終段のトランジスタのhfe測定

終段にはサンケンの2SC3851A/2SA1488Aを使用します。このトランジスタBTL A級DCパワーアンプのドライバ及び終段に使ったもので、Pc=25W, Icmax=4A, ft=15MHzと特性上、特に目を引く点はありません。パッケージはTO-220タイプで、フルモールドされている点は使いやすいと思います。

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しいて言えば、このクラスのトランジスタとしては比較的安価(50円/60円)で選別して使用することを考えるとメリットがあります。DCパワーアンプを作った際の余りがありますが、当時はパワーアンプの終段で使用することから、選別時のIcを0.5Aとしてhfe測定しました。測定時の電源電圧は6Vでその際のトランジスタの発熱は無視できず、小型の放熱器を取り付けて測定を行いました。測定の効率が悪いため、在庫も含めてIc=0.1Aで測定し直します。PNPトランジスタから測定を行います。測定回路は以下のとおりですが、ジグはジャンパワイヤで組み替えて前回の記事で使用したものを流用してます。

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測定時のトランジスタには約5Vの電圧がかかり、Ic=0.1Aなのでトランジスタの損失Pcは約0.5Wになります。測定開始から1分くらいで温度が上がり、指でつまんだままでいると触っていられない程ではありませんが、かなり熱くなります。50℃は越えていると思われます。これら確認から測定時の安定待ち時間を約1分としました。(本記事キャッチ写真参照)残りの在庫を含めた測定結果は以下のとおりです。

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No.21以降が再測定を行った残りのトランジスタですが、こちらの方が全般的にhfeが高くなっています。続けてPNP品の測定を行います。測定回路は以下のとおりです。

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こちらも同様にNo.21以降が在庫の再測定品です。結果に偏りが感じられませんが、コンプリメンタリペア選別時にhfe順に並べ替えたら何か傾向が解るかもしれません。

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コンプリメンタリペア選別

今回製作するHPアンプのドライバには、2SC1815/2SA1015のコンプリメンタリペアを、終段には2SC3851A/2SA1488Aのコンプリメンタリペアを使用します。

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ヘッドフォンをバランス駆動するため、それぞれのトランジスタが片チャンネル当たり2ペア、ステレオ分で4ペア必要となります。初めに2SC1815/2SA1015のコンプリメンタリペアを選別します。選別しやすいように、それぞれの測定結果をhfeの値で昇順に並べなおしました。

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全般的に2SC1815のhfeの方が小さめですが、2SA1015のhfeの結果とオーバーラップしているため、4ペアの選別は問題ありません。2SC1815の網かけ品が今回購入したものですが、この結果からも前回購入品がはずれであった事がわかります。選別した4ペアは以下のとおりです。

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同様に終段用の2SC3851A/2SA1488Aのコンプリメンタリペア選別を行います。それぞれの測定結果を同様にhfeの値で昇順に並べなおします。

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こちらの結果も全般的にNPN品の方が小さな値となっていますが、幸い、2SA1488Aのhfe値とオーバーラップしていましたので、コンプリメンタリペア選別ができました。選別した結果は以下のとおりです。

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今回はわざわざhfe測定を行った甲斐があり、hfeパラメータによる理想的なコンプリメンタリペア選別ができました。

トランジスタの保管

前に一度紹介しましたが、測定済みのトランジスタの保管は、封止可能な部品用の小袋に1から40までナンバリングして、それぞれのトランジスタを該当するNoの小袋に入れます。それを4つに仕切られたプラケースにナンバー順に10づつ並べて保管します。現状では各袋に4個のトランジスタが入っています。アクセス性もよく、保管効率も悪くないので重宝しています。

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次回は初段のJ-FETの変換基板実装を行い、アンプ基板の製作を開始します。

 

つづく(製作編3)