A級バランスHPアンプ製作(製作編8)

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製作編8

HPアンプ片チャンネルHot分の実装が終わったので通電確認を行います。よりアンプの特長を示すためにタイトルを変更しました。

通電準備

前回の記事で、通電にはユニバーサル電源を使用することを説明しましたが、私の使っているユニバーサル電源には、各出力ごとに保護用に最大出力電流の設定をする機能があります。万が一を考えて設定することにします。設定値は、各電源の要求電流に余裕を持たせて決めます。初めに12V系の電流を見積もります。初段の差動アンプが約2.1mA, 初段のツェナー用のバイアス電流がそれぞれ約1.5mAと1.0mAで2段目の差動アンプが約8mAです。合計で約12.5mAとなります。設定値は十分余裕を見て100mAとします。次に6V系の電流を見積もります。ドライバ段を6.7mA、終段を70mAに調整するので、合計で約77mAとなります。ここも余裕を見て設定値を200mAに決めました。

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通電用に配線を行います。+/-12V用に3本、+/-6V用に3本で、合計6本の配線をしました。最初に通電する際はいつも緊張しますが、先に進めるためには避けて通れません。

通電確認

まず初めに+/-12Vのみ電源を入れてみます。ユニバーサル電源には、指定した1つの出力の電圧と電流をモニタする機能がありますが、対象の出力を+12Vとしました。出力電流は10mA弱とそれなりの値となっています。モニタを-12V側に切り替えると、+12V側よりやや小さな値となっていて設計どおりの動作をしていると言えます。一旦電源を切り+/-6V系の電源も同時に入れてみます。+/-12V系の電流値に変化はなく、+/-6V系の電流値は約5mAと調整前の値となっています。

調整

暴走による破壊は、ドライバ段と終段の可能性が高いので、ユニバーサル電源の電流モニタを+6V出力に切り替えます。出力オフセット電圧が大きくずれていないことを確認し、2段目の差動アンプの電流を調整します。調整は2つの負荷抵抗(2.7KΩ)の電圧を観測して行います。ドライバに接続されている側は負帰還によりつじつまが合うように所定の電圧(約-1.3V)にほぼなっているため、反対側の負荷抵抗のコレクタ側の電圧を合わせます。電流が少ないためマイナス側に大きくずれていますが、VR2を時計まわりに回して調整します。一気にあわせずに-2.0Vくらいで他の部分の調整を行います。出力オフセットをVR1で調整します。次に終段のアイドリング電流をVR3で上げてゆきます。ここも一気に上げずに、50mAくらいまで上げて一旦様子をみます。

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発振

ここまで調整した所で、+6V電源出力の電流値が2段階に変化する事に気づきました。終段のアイドリング電流50mA調整時の電源出力電流は約55mAですが、テスタのリードを終段のエミッタ抵抗から離すと約15mA程度まで下がります。さてはとおもい、出力波形をポケットオシロでモニタしてみました。電源の電流値モニタの値が上がったタイミングで、発振波形が観測されました。

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発振周波数も150KHzと高くはなく、レベルもそれほど大きくはありません。今までほぼ同構成の回路で、2段目の位相補償22pF x2で対策できていたことからいやな予感を感じながら、対策コンデンサの1つを47pFへ容量アップしてみました。ここからは、対策検討用に購入しておいたセラミックコンデンサを使用します。変更後も不安定な状況に変化はありません。さらにもう1つのコンデンサも47pFへ交換してみました。

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発振周波数にやや変化はありましたが、不安定な状況はかわりません。あてずっぽで、帰還抵抗18KΩにパラに15pFを接続しましたが、発振レベルが上がり症状は悪化しました。帰還抵抗の15pFのみ外してしばらく思案し、試しにユニバーサル電源と終段に接続しているGNDラインのユニバーサル電源側を外して、+/-12V電源のGND入力側へ接続しなおしてみたところ、不安定な状態は見事に改善しました。位相補償用のコンデンサを元通り22pFに戻して確認しましたが、この状態でも問題ありませんでした。原因はGND配線にあった事がわかったため、急遽基板内で初段側のGNDと終段のGNDの接続を行いました。写真の灰色の電線です。

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改めて対策の効果の確認を行いましたが問題ありませんでした。ちなみに終段側のGNDラインですが、バランス動作している時には電流は流れず、パスコンの基準電圧にのみなっています。アンバランス動作時は負荷電流がこのラインを通して電源に戻りますので、それなりの電流が流れます。アンバランス出力は音質比較用のおまけなので、基板内の配線にはあまり拘らないことにします。

次回調整の続きを行いamp1の通電確認を終わらせます。

 

つづく(製作編9)