製作編10
前回の記事でHotチャンネル(amp1)の実装が終わった基板にColdチャンネル(amp2)の実装を行います。
amp2実装
amp1の実装で、電源線の配線および端子台の実装が完了していて、部品の配置も決まっているので、実装の効率は上がります。amp1の実装で紹介済みの作業は省略します。
初段のトランジスタ選別
表はPNPトランジスタのhfe測定一覧です。
amp1の実装で合計5個を使用済みです。(グレーの網掛け)amp2の初段では、カスコード接続用にペアと電流源用に単品が必要ですが、カスコード用のペアはコンプリメンタリペアになりにくく、特性の分布が厚いhfeの小さいところからNo.24と27を、電流源用には同様にコンプリメンタリペアになりにくく、比較的特性の分布が薄いhfe190のNo.32を選択しました。
2段目のトランジスタ選別
2段目は差動アンプ用にPNPのペアと終段バイアス回路用にNPNが単品で必要です。初めに差動用のペアを選択します。表はPNPのhfe測定一覧です。
amp1で合計3個を使用済みです。(グレーの網掛け)PNPもコンプリメンタリペアになりにくい、hfeの大きいものからペアとしてNo.28と29を選択しました。次にバイアス回路用のNPNの単品を選択します。表は選択時点のNPNのhfe測定一覧です。
ここまでくるとどれでも良い気もしますが、せっかくhfe測定をしたので最後まで拘ります。特性分布が厚い中からペアからあぶれる物として、No.17を選択しました。
ドライバと終段トランジスタ選択
両コンプリメンタリペア選別は完了していますが、それぞれ4ペアから選択します。表は、コンプリメンタリペア選別結果ですが、ここからamp2用のペアを選択します。グレーの網掛けはamp1で使用したものです。
■ドライバコンプリメンタリ選別結果
■終段コンプリメンタリペア選別結果
特に選択の基準はありませんが、amp2用のドライバとしてNPN/PNPそれぞれNo.11と16を終段用としてNo.10と18を選択しました。
温度補償用トランジスタ取り付け
温度補償用トランジスタは終段のPNPトランジスタの背面に接着しますが、amp1はトランジスタの足のフォーミングが悪く、やや高めの位置となってしまいました。今回は注意してフォーミングしたため、発熱の大きなポイントにあわせることができました。
実装完了調整
amp1をほぼ平衡移動した配置でamp2の実装を終えました。
amp1の経験を生かして初段側のGNDと終段側のGNDをあらかじめ接続しました。調整はamp1と同様に行います。初めに3つの半固定抵抗を安全サイドにプリセットして、amp1で使ったユニバーサル電源の設定値を呼び出します。このユニバーサル電源の設定値の保存機能は便利です。4つの出力分の電圧値と保護用の電流値を1アクションで設定できます。4種の設定を保存できるので必要に応じて使っています。2段目の電流、終段、出力オフセットの順番で数回調整を繰り返します。調整が完了したらamp1と同様に温度補償動作の確認を行いました。結果は以下のとおりです。
約45秒でアイドリング電流が最大となり、その後徐々に下がっています。温度補償用のトランジスタの接着位置をより発熱の大きなポイントに変えたことと、ドライバと終段で4つのVbeが存在しますが、温度上昇により変化するのは終段のVbeの2個のみの為、温度補償の動作が過剰に働いたと考えられます。
動作確認
電流が安定したタイミングで各部の電圧の確認を行いました。
amp1の結果とほぼ同等で、動作的に安定していると考えられます。初段の2個のツェナーダイオードの電圧降下がどちらも仕様で唱われている電圧よりも低くなっていますが、定格条件(5mA)よりも流す電流が小さい事に起因しています。その影響で初段のJ-FETに印加される電圧が小さくなっていますが、実使用上問題ないのでこのままいきます。最後に信号を入力して動作確認をします。amp1と同様に周波数特性を確認しました。出力を0.1Vppの条件で測定を行っています。
使用した発信器の調子が良かったので1MHzまで測定を行いました。確認を行った範囲では、ほぼフラットな特性を確認しました。参考として1MHzの入出力波形を掲載します。
次回はamp3の実装を行います。
つづく(制作編11)