A級バランスHPアンプ製作(製作編21)

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製作編21

動作確認で発覚した3つの不具合の原因を特定して対策を行います。

3つの不具合

4回分イベントレポートを入れましたので、思い出すために前回の「A級バランスHPアンプ製作」記事で確認した3つの不具合についておさらいします。

・バランス出力はとんでもなく変な音

・アンバランス出力にはハムが聴こえる

・ゲインが高すぎて、ボリュームのコントロール範囲が著しく狭い

バランス出力の変な音

具体的には、音に広がりがありませんが単純なモノラルの音とも違います。ヘッドフォン出力の配線間違いの可能性が高いです。ちゃんと確認したはずなのにと思いつつ手順を思い出してみました。確認が抜けていた点に思い当たりました。4極のヘッドフォンケーブルの端子間の接続です。ヘッドフォン側が3.5mm4極で、アンプ側が2.5mm4極仕様のため、確認せずに同一の並びと考えて4極ジャックの端子仕様確認をしましたが、改めて確認をしてみました。その結果下記写真の仕様となっている事が判明しました。わざわざ両端で仕様を変えている理由は何でしょうか?

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改めて音を聴いてみました。僅かにハムが聴こえますがいい感じで鳴っています。但し、3つの不具合の3番目のゲインが高すぎて、ボリュームのコントロールがほとんどできず、ゲインが著しく高いことで、よりハムが目立っていると考えられます。

ゲインの調整

市販のヘッドフォンアンプを見てみると、いろんなヘッドフォンに対応するため、ゲイン切り替え機能を持っているものがあります。同様の対応をとる必要はないか?ともおもいましたが、たくさんヘッドフォンを買う予定もなく、万が一変更が必要な場合は設計を見直せばいいと考えて、現状のヘッドフォンに合わせてヘッドフォンアンプのゲインを見直すことにしました。音を鳴らしてうるさくて耐えられないボリュームの位置から少しあげたポイントをフルボリュームのターゲットとしました。ボリューム位置は9時の方向です。この時のボリュームの抵抗値は約130Ωでした。ボリュームの全抵抗値が2KΩなので、この比率で考えると、現状のゲインを6.5/100に下げる必要があります。一方ヘッドフォンアンプは正相アンプで、帰還抵抗が2.2KΩと18KΩなので、ヘッドフォンアンプのゲインは以下のとおりです。

ヘッドフォンアンプゲイン = 1 + 18 / 2.2 = 9.2

取り急ぎ、ゲインを1倍まで下げてみることとしました。

ゲイン変更改造

簡単に確認するために、帰還用の配線を帰還抵抗18KΩをスキップして差動アンプの入力へ配線し直しました。対応する回路図は以下のとおりです。

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具体的には、写真の紫のL字の配線の縦のラインが曲がっている部分が配線変更点です。

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アンプ基板を2枚とも取り外し、4チャンネル分の帰還用の配線変更を行って元通りに基板を取り付けて配線をやり直しました。緊張しつつ電源を入れると、接続したヘッドフォンからノイズが聴こえました。さてはと思い、出力をポケットオシロで確認したところ、発信波形が確認されました。帰還量が増えたため不安定になったと考えられます。

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この状態で、1枚だけ基板を外し、ゲインを少し上げて様子を見ることとしました。具体的には、上記でスキップさせた18KΩの帰還抵抗を2.2KΩに変更し、ゲインを2倍としてみます。この18KΩの抵抗の交換は比較的やりやすかったです。写真は解りにくいですが、中央の基板から長めの足が立っている部分に帰還用の紫の配線は半田付けすれば完了です。

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信号ラインの配線はせずに、電源の配線だけ行って発振の有無を確認しました。その結果ホット、コールドチャンネルともに発振が止まっていることが確認ができました。念のため、信号の配線を行って再度確認しましたが、問題ありませんでした。もう1枚の基板も取り外し同様の改造を行います。一旦電源線のみ接続し、先ほどと同様に発振の確認を行いました。コールドチャンネルは発振が止まり問題ありませんでしたが、ホットチャンネルの出力が-9Vに貼り付いていました。ホットチャンネルは、改造の際に壊してしまった可能性が高いです。再度基板を取り外し、パターン面を確認してみましたが、原因と思われる点は見つかりませんでした。なかなか思い通りいかないものです。

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私自身をクールダウンするために、続きの検討は次週とすることにしました。終段のトランジスタが壊れていない事を祈りつつ、次週原因の特定および修理を行います。

 

つづく(製作編22)