安定化電源製作(評価編9)

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評価編9

安定化電源の矩形波応答を使って、位相補償用コンデンサ容量を決定します。

安定化電源位相補償

2回に渡り番外編を入れましたので、安定化電源回路のおさらいをします。正負電源回路は素子の極性以外は共通なので、正電圧電源回路のみ再掲載します。

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回路図中のC3が位相補償用にコンデンサです。現状はC3を0.01uFとしていますが、容量を増やすと高域のゲインが下がり、それに連れてレスポンスも下がります。評価編4で1KHzの矩形波応答波形を掲載しましたが、改めて観測した結果を掲載します。

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青のラインが負荷抵抗への印加電圧で、負荷電流を示します。黄色のラインが出力電圧の変動を示しています。負荷電流値の立ち下がりで大きな負荷変動が観測されました。

負荷電流立ち下がり時の応答

現状の位相補償コンデンサ容量(0.01uF)の状況を認識するために、2倍の容量としたときの応答波形の比較をします。コンデンサは現状付いているものと同じ物を半田面に仮付けしました。

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負荷抵抗に印加した矩形波は1KHz/2.5Vppとしたので、電流換算すると50mAppの振幅となります。それでは初めに、電流立ち下がり時の応答波形をコンデンサ追加前後で比較します。最初は負荷電流が下がりでフィードバックがかかるまでの応答比較です。電圧変動は黄色の波形で、プリアンプで10倍に増幅しているため、それぞれ72mVと80mVの電圧変動量です。

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次はフィードバックがかかり過度に応答している波形の比較です。

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電圧変動量は、440mVと400mVで容量を増やした方が10%下がっています。続いては過度の応答からリカバリするタイミング比較です。

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0.02uF時の電圧カーソル位置が間違っていますが、オリジナルの電圧変動量は、372mVで0.02uF時は320mVです。リカバリ時間は15.4uSと28.5uSで圧倒的にオリジナル容量時の方が復帰が早くなっています。このメカニズムを理解するためにC3=0.02uF時のTr3のコレクタ電圧をモニタしました。

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負荷が軽くなると出力電圧が上がり、それに伴いTr3のベース電圧が上がりIbが増え、Icも増えます。C3の電荷はコレクタ電流で強制的に放電されます。出力電圧が所定の電圧に戻るとIb、Ic共に減少し、コレクタ電位が元の電圧に戻ろうとします。戻る速度はC3の容量が小さい方が早いため、終段トランジスタの寄生容量分をチャージして出力電圧を上昇に転じさせる点で不利になります。一方、C3の容量が大きい場合は出力電圧を上昇に転じさせる点では有利ですが、その後出力電圧を所定の電圧に復帰させる点では不利になります。それぞれの波形の違いを理解するために下記の時間と電圧で比較を行いました。

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C3=0.01uF時のt2が大きな値となっている事で電圧変動量v2が大きくなります。一方、C3=0.02uF時のt3が大きな値となり電圧の復帰までの時間がかかります。

負荷電流立ち上がり時の応答

同様に両容量時の応答波形を比較します。

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出力変動、リカバリ時間ともに0.01uF時の方が良好です。C3の容量が小さくTr3のコレクタ電位の応答が早い事が良好な結果に寄与しています。負荷電流立ち下がり時と同様に応答波形をパラメータ別に比較します。

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まとめ

負荷変動時の電圧応答の仕組みがおおよそ理解できました。このC3容量2つの比較では一長一短があり、レベルの差も大きくないため、オリジナルの容量(C3=0.01uF)で一旦進める事にします。次回は製作した電源をチャンネルデバイダに搭載し、音の比較をします。

 

つづく(評価編10)