安定化電源製作(評価編11)

f:id:torusanada98:20180118123107j:plain

評価編11

3種類の電源の特性を測定して、結果を比較します。

概要

電源の特性測定は、製作済みのダミー負荷用のジグを使用して行います。測定項目は以下の3点です。それぞれの項目ごとに結果の比較を行い、最後にまとめとして音質の評価結果と特性の比較結果の関連について考えてみます。

(1)負荷電流(DC)と出力電圧変動特性

(2)交流負荷(正弦波)と出力変動特性

(3)矩形波応答

測定システム

すでに紹介済みですが、測定システムのおさらいを簡単にします。希望の負荷電流を流す為にジグを製作しました。回路は以下のとりです。

f:id:torusanada98:20180118123125p:plain

+電源、ー電源用が独立していますが、回路構成は同じです。ジグ中のVRでDCの負荷電流を設定できます。Sig-Inに信号入力すると、その信号で波高値を制御する事ができます。測定システムのブロック図は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180118123201p:plain

早速測定を始めます。

DC負荷電流特性

測定は5mA刻みで、0~50mAのレンジで行いました。各負荷電流を流した際の電源出力電圧はマルチメーターで測定しました。測定時の被評価電源は、チャンネルデバイダに搭載し、電源の負荷は測定電流以外、電源ランプのみとしています。各電源の測定結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20180118123238p:plain

フィードバックがかかっている2種類の電源は、さすが測定した負荷電流の範囲では電圧変動しません。結果をわかりやすくするため、電圧変動量をグラフ化してみました。

f:id:torusanada98:20180118123313p:plain

この結果から等価出力インピーダンスを算出します。安定化電源は出力が50mAの範囲ではほぼ電圧変動がしなかったため以下のとおり計算できます。

測定限界10mV / 50mA = 0.2Ω以下

定電圧電源の等価出力インピーダンスも算出します。電流の流れ初めの出力変動が大きいので、上記のグラフから傾きが安定する領域として15mAと50mAの差分で算出しています。

+12V定電圧電源:40mV / 35mA = 1.1Ω

-12V定電圧電源:40mV / 35mA = 1.1Ω

DCの等価インピーダンスでは、フィードバックがかかっている三端子レギュレータを含めた安定化電源方式が圧勝となりました。

正弦波負荷電流特性

各電源は上記のDC負荷電流測定時と同じ条件で動作させています。負荷電流は、平均値を40mAとして10mAから70mAの範囲で正弦波状に振っています。測定周波数範囲は10Hzから100KHzとしました。写真は+12Vディスクリート電源の100Hz電流負荷時の観測波形です。

f:id:torusanada98:20180118123357j:plain

青のラインがダミーの負荷抵抗にかかる電圧です。負荷抵抗は50Ωなので、この電圧を50で割ると負荷電流となります。黄色のラインが出力電圧変動をプリアンプで10倍に増幅した波形です。それぞれの波形の振幅は3Vppと2.4mVpp(24/10)となっています。この測定を3種類の+/-電源に対して10Hzから100KHzの範囲で行いました。それぞれの出力変動レベルをグラフ化してみました。出力電圧変動が聴感と合うように縦軸も対数表示としています。

■+12V電源出力変動

f:id:torusanada98:20180118123443p:plain

■-12V電源出力変動

f:id:torusanada98:20180118123521p:plain

興味深い結果がとれました。せっかくなので縦軸を等価インピーダンス表示に変換します。計算の方法は、電圧変動ピーク電圧を負荷電流変動ピーク値の60mAでわり算します。結果は以下のとおりです。

■+12V電源等価出力インピーダンス

f:id:torusanada98:20180416122103p:plain

■-12V電源等価出力インピーダンス

f:id:torusanada98:20180416122147p:plain

一番の特徴的な結果は、三端子レギュレータの+12V電源の等価出力インピーダンスが200Hz付近から上昇を始め、約3KHz付近でピークに達し、さらに周波数が上がると逆に下がっている点です。参考に+12Vディスクリート電源と+12V三端子レギュレータ電源の10KHz負荷電流時の観測波形を掲載します。(左右で測定レンジが異なります)

f:id:torusanada98:20180118124113p:plain

一方、三端子レギュレータの-12V電源はこのような現象は観測されず、素直な特性となっています。次に目につくのが、+/-12V定電圧電源は、低周波数領域で等価インピーダンスが高く、200Hz付近がら下がり始め、可聴帯域外では3種類の電源の中で一番低インピーダンスとなっています。写真は100KHz時の-12Vディスクリート電源と定電圧電源の波形観測結果です。

f:id:torusanada98:20180118123827j:plain

それぞれの電源の特性には一長一短がありますが、ディスクリート方式の安定化電源が可聴帯域内で比較的等価インピーダンスが低く、且つ一番フラットな特性となっています。特性測定は途中ですが切りがいいので続きは次回に紹介します。

 

つづく(評価編12)