安定化電源製作(評価編12)

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評価編12

電源の特性測定および結果の比較の続きを行います。

矩形波応答観測条件

ダミー負荷ジグへの入力信号を正弦波から矩形波に切り替えて、波高値が矩形波状の負荷電流時の出力変動をオシロで観測します。負荷電流は平均値を40mAとし、波高値を10mAと70mAで矩形波状に振っています。矩形波の周波数は1KHzです。被電源基板は前回紹介の測定条件と同様にチャンネルデバイダに搭載し、負荷電流は測定電流以外、電源ランプのみとしています。

ディスクリート安定化電源矩形波応答

位相補償コンデンサ値の決定をした際に観測済みなので簡単におさらいします。写真は+12V電源の矩形波応答5周期分の観測結果です。青のラインがダミー負荷の印加電圧で、負荷抵抗50Ωで表示電圧を割ると負荷電流となります。黄色のラインが電源出力変動をプリアンプで10倍に増幅した波形です。

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写真のとおり、負荷電流の立ち下がりで大きなオーバーシュートが発生している点が特徴です。立ち下がり、立ち上がりをそれぞれ拡大してみます。

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負荷電流立ち下がり時のオーバーシュートのレベルは約72mVppです。逆に立ち上がり時は7.4mVpp程度で良好です。紙面の関係で-12Vの波形は省略します。

三端子レギュレータ電源矩形波応答

電源基板を三端子Reg.仕様に載せ替えて同様に矩形波応答波形を確認しました。写真は+12Vおよび-12V電源の矩形波応答1周期分です。

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等価出力インピーダンス特性と同様に+12Vと-12Vで応答波形が大きく異なります。+12V電源はレベルが静定するまでに矩形波半周期まるまるかかっています。次の写真は立ち下がり部の拡大波形です。負荷電流の立ち下がり、立ち上がり共にほぼ同等の波形です。

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変動量は上記2枚の写真からは読みとれませんが約30mVppです。立ち上がり時の応答波形も拡大してみます。

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写真から変動量のトータルレベルは約33mVppです。続いて-12V電源の負荷電流変化時の応答波形を拡大してみます。

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変動量のトータルレベルは立ち下がり時が40mVppで、立ち上がり時が約33mVppです。矩形波の応答波形としては、今まで確認した中で一番良好です。

定電圧電源矩形波応答

最後に定電圧電源方式の物に載せ替えて矩形波応答を確認しました。

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定電圧電源は、ドライバ段のトランジスタで負荷インピーダンスをhfe倍とした1次フィルタなので、1次フィルタのステップ応答波形となっています。変動量は47mVppとなっています。-12V電源も同じ応答をするので紹介は省略します。

特性と音の考察

オリジナル電源から三端子レギュレータ電源に載せ替えたときの音の印象は、派手な感じで高音の抜けが良く、低音は基音が明瞭と言うか、芯のある鳴り方でした。定電圧方式の電源に比べて少なくとも10KHz以下の領域のインピーダンスは圧倒的に低くなっています。低音の鳴り方の違いと、高音の抜けが良く派手な鳴り方の違いは、この特性差に起因していると推察しています。さらに電源をディスクリート方式の安定化電源に載せ替えた時の音の印象は、低音の鳴り方はそのままで、中域の響きがより美しく、鳴り方に奥行きが感じられました。三端子レギュレータ電源に比べてインピーダンスはやや高くなるものの可聴帯域の特性がフラットな事に起因しているのかもしれません。機会があれば、この比較の中にバッテリーも加えてみたいと思いました。ディスクリート電源の矩形波応答が良くなかった点は、ドライバで採用したトランジスタのCob特性に関連していると考えています。スペックは以下のとおりです。機会があればこれを定電圧方式電源で使用した2SC3422/2SA1359やさらに高速スイッチング用途のものに変えて確認してみたいとおもいました。

・2SC3851A:Cob=60pF → 2SC3422:Cob=35pF

・2SA1488A:Cob=90pF → 2SA1359:Cob=35pF

まとめ

現時点は、チャンネルデバイダの電源をディクリート方式のものにしています。音の評価の記事でも紹介したとおり、今まで気に留めなかった楽器の音がきれいに聴こえたり、低音が素直に伸びていることが新鮮で、普段聴かないCDをいろいろ引っ張り出して聴きまくっています。些細な変化かもしれませんが、オーディオ製作止められません。

 

おわり(評価編12)