女神たちの争い(構想編1)

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構想編1

昨年(2017年)に発売された高級オーディオ用オペアンプMUSES03を使ったチャンネルデバイダを構想します。

MUSES03

ミューゼスはギリシャ神話で文芸を司る女神(ムーサ)達の事です。このMUSESを使った製作なので大層なタイトルを付けてしまいました。以前、MUSES01にデスクリートアンプで挑みましたが(2017-01-06「音楽の女神への挑戦」)今回はMUSESシリーズ同士の勝負となります。MUSES03については2017-08-08の記事「A級バランスHPアンプ製作(製作編5)」で簡単に紹介しましたが、このオペアンプを使ったチャンネルデバイダを構想するにあたり、改めて紹介します。MUSES03は、2017年3月24日に販売開始のプレスリリースが行われました。このプレスリリースの中では、「MUSESシリーズの新しいフラグシップモデル」と唱われていて、下記の用途を想定されています。

・高級オーディオ機器

・プロ用オーディオ機器

パッケージはDIP8ピンのみで、今ではめずらしい1パッケージに1回路仕様です。従って、従来のMUSESシリーズのオペアンプとの差し替えはできませんが、最良の状態で動作をさせるための仕様と理解しています。ピンアサインは以下のとおりです。

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MUSES03特長

プレスリリースの中で、3つの特長が説明されています。それぞれについて紹介します。

■高音質回路

高音質回路として説明されているのは、「フルバランス型差動増幅回路」の採用です。バランス型差動増幅のメリットは本ブログの今までの製作の中で何度も紹介してきましたが、プレスリリースの中では、「応答性、ダイナミックレンジ、歪率の特性向上」と説明されています。

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■高音質組立技術

この具体的な対応は、「入力段と出力段をそれぞれ別チップとした2チップ構成」です。メリットとして「入力と出力を分離し相互干渉を低減」と説明されています。この構造に伴うスペックに関しては後で確認してみたいとおもいます。

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■高音質素材

これは「リードフレームに高純度の無酸素銅を採用(MUSES01/02と同様)」です。メリットとして「最小限の劣化で信号を伝達」と説明されています。

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今まで同素材が使われたMUSES01を使用してきて、無酸素銅リードフレームの大きな欠点は強度です。ソケット使用時の装着の際に、慎重に差し込まないとあしを曲げてしまいます。

MUSESシリーズオペアンプ仕様比較

2017-08-08の記事に掲載した比較表を再度掲載します。

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比較の対象は、MUSESシリーズのオペアンプの中でJ-FET入力のMUSES01とMUSES8920としています。以前のフラグシップMUSES01は、音質重視の観点からかスペックにはこだわないように見えます。この結果殆どの項目でMUSES03の数値が上回っています。特に今回のチャンネルデバイダ用途で考えると、GB積の値が気になりました。チャンネルデバイダのアプリケーションは、アクティブフィルタとして動作させているため使用帯域で理想オペアンプ動作する事が前提となります。データシートに掲載されたGB積はf=10KHz時のゲインとの積で、MUSES01の3.3MHzに対してMUSES03は12MHzとなっています。言い換えると、10KHz時の裸ゲインは、MUSES03の方が3.6倍高い事になります。次に目につく項目は、全高調波歪です。MUSES01の0.002%に対して0.00003%と圧倒的に低歪率となっています。これはフルバランス型差動増幅の恩恵でしょうか?

負荷電流仕様

MUSES03の大きな特長は、その負荷電流仕様と考えます。前出の3種類のMUSESシリーズオペアンプの負荷仕様について整理してみました。

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上記の比較を見ると、MUSES03のドライブ能力の高さがわかります。ディスクリート構成のラインアンプに見劣りしないスペックと言えます。ひとえに、「入力段と出力段の2チップ構成」がこのドライブ能力に寄与していると考えられます。この仕様にともなって、データシートに以下の注意事項が追加されていました。

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仕様の詳細を確認した事で、このオペアンプへの期待が高まりましたが、チャンネルデバイダへの適用の構想は次回とします。

 

つづく(構想編2)