構想編
「安定化電源の製作」記事で安定化電源の設計、製作を紹介しましたが特性改善の余地を残していたので検討します。
チャンネルデバイダ用電源
「安定化電源の製作」記事(2017-11-10~2018-01-23)で、3方式(低電圧方式、ディスクリート安定化電源、三端子レギュレータ式)の電源を製作し、音質の比較を行い、最終的にチャンネルデバイダの電源にディスクリート安定化電源を搭載しています。その際に、3方式の特性比較を行いましたが、安定化電源の特性に改善検討が必要な点を残していました。
現行安定化電源の課題
当時の記事の測定結果を振り返ってみます。
1)矩形波応答
下記の波形は、負荷電流を矩形波状に振った際の安定化電源出力をモニタしたものです。矩形波のそれぞれの電流値は、70mAと10mAです。
青のラインが出力電流を、黄色のラインが出力電圧変動レベルを示しています。電流の立ち下がり時に大きな出力電圧変動(4.6V)が発生しています。出力電流の立ち下がりと立ち上がり時のレベルを拡大してみてみます。
左が電流立ち下がり時、右が電流立ち上がり時のものです。左の波形は、電流減少に過度に応答し、一旦電圧が下がってしまい、その後の電圧復帰に時間がかかっています。このような負荷変動は音楽を聴いている範囲では起こらないとおもいますが、あまり気持ちのいいものではないので改善させたいとおもいます。
2)出力インピーダンス周波数特性
グラフはマイナス電源の出力インピーダンスの周波数特性の測定結果です。
茶色のラインは三端子レギュレータ版、青がディスクリート安定化電源、ピンクが定電圧電源の測定結果で、現行のディスクリート安定化電源の出力インピーダンスは、可聴帯域全域で三端子レギュレータの結果よりも高くなっています。少なくとも同等レベルまで改善させたいと思います。プラス電源のインピーダンス比較結果も参考に再掲載します。
三端子レギュレータの出力インピーダンスはご覧のとおり、3~4KHz付近に大きなピークが発生していました。この影響のためか、音はディスクリート電源の方が良く聴こえました。但し、200Hz以下ではマイナス電源と同じ結果となっています。
原因推定
図は現行の安定化電源の回路図です。
オーソドックスなバイポーラトランジスタ式の安定化電源です。課題1の「矩形波電流立ち下がり時の過度応答後の復帰が遅い」の原因として以下が考えられます。
1.ドライバ段のバイポーラトランジスタのCobの影響で応答が遅れる
2.誤差アンプがトランジスタ1段のため電流正負の駆動がアンバランス
課題2の「出力インピーダンスの周波数特性が可聴帯域内で高い」の原因としては以下が考えられます。
3.誤差アンプがトランジスタ1段のためゲインが低い
これらの改善検討を行います。
対策検討
1項は、ドライバ用のトランジスタにCobの小さい物を選択し、誤差アンプの駆動力を上げて、ダーリントン接続を止めてトランジスタ1段にしてみたいとおもいます。2項、3項は、誤差アンプをトランジスタ1発から、オペアンプに変更することを対策としたいと思います。2項に対しては、オペアンプの終段は通常コンプリメンタリ構成の為、正負の電流駆動力のアンバランスの改善を狙います。3項に対しては、十分なゲインを持つオペアンプの選定により改善を狙います。次回はこの構想に基づいて回路化を行い、部品の選定も行います。
つづく(設計編)