設計編1
前回の記事で構想した誤差アンプにオペアンプを使った安定化電源を設計します。
基本回路
現行回路のトランジスタ1発の誤差アンプを単純にオペアンプで置き換えます。基本回路は以下のようになります。
この回路の設計及び動作概要は以下のとおりです。
1)安定化電源定格出力時に、オペアンプ-入力端子電圧が+入力端子電圧と同じになるように出力の分圧比と基準電圧を設定します。
2)安定化電源出力が変動すると、オペアンプのゲインは高い為、+と-の入力端子電圧が同じになるように動作し、出力変動が抑え込まれます。
回路設計
基本回路の定数決定および部品選定を行います。今回の用途では、+/-の両電源が使用可能ですが、片電源のみの構成もとれるように、誤差アンプ用に単電源用のオペアンプを選定します。オペアンプ+入力端子の基準電圧はツェナーダイオードの在庫の流用を考えて9.1Vとしました。ツェナーダイオードには最低でも5mAは流したいので、CRDを5.6mAとしました。定格出力時のオペアンプの-入力端子が9.1Vとなるように、バイアス電流も考慮してR3=1.2kΩ、VR1=500Ω、R4=4.7KΩとしました。この時のバイアス電流は約1.9mAとなります。以上を回路図に反映しました。他定数は現行安定化電源の定数を踏襲します。
トランジスタの選定
トランジスタのCobの等価回路は以下のとおりです。
このトランジスタのベースを駆動する場合、常にCobの充放電が伴います。強制的に駆動する場合、駆動の安定度を考慮すればいいですが、ダーリントン接続等、トランジスタ1発で駆動する場合、充放電の一方が自身のベース電流とCobの充電時の時定数で高域の特性が決まってしまいます。この影響を減らすためにCobの小さなトランジスタを選定します。「安定化電源の製作」記事でも触れたとおり、手持ち在庫に手頃なもの(2SC3422)があったので、これを使用したいとおもいます。下記は現行の安定化電源で使用しているドライバ2SC3581との特性比較表です。
2SC3422は、今回気になる特性全てにおいて現行品に比べて勝っています。(表中の2SC3422のhfeは最小値を掲載しています)
オペアンプの選定
今回の用途に最低限要求される仕様を整理してみました。
1)単電源動作が可能な事
2)ゲイン(GB積)が十分大きい事
まずは手持ちの単電源用オペアンプの在庫を確認してみます。以前何れ使うだろうと購入しておいたNJM2904Dです。特性は以下のとおりです。
正直、あまり使ってみたいような特性ではありませんでした。このオペアンプ設計が古いためか、データシートに等価回路が載っていました。
出力段は一応コンプリメンタリ構成となっています。他にいいものがないか、秋月電子の通販サイトを検索してみました。見つけた候補はNJM2742Dです。(アイキャッチ写真参照)手持ち在庫のNJM2904Dと特性比較をしてみます。
NJM2742Dの特性は最新オペアンプと比較すると見劣りしますが、我慢できるレベルなので、今回はこれを使ってみたいとおもいます。以上の選定結果を回路図に反映しました。
マイナス電源回路設計
マイナス電源回路もプラス電源回路と極性が異なるだけで、回路構成は同じです。
電源出力は電流が流れ込む事になり、プラス電源回路と見方を完全に切り替えないと頭が混乱します。マイナス電源の動作も簡単に整理します。
1)負荷電流が減少し、出力電圧が下がるとオペアンプマイナス入力電圧が下がりオペアンプ出力が上がります。ドライバのベース電圧が上がり出力電圧が上がる方向に制御されます。
2)負荷電流が増加し、出力電圧が上がるとオペアンプマイナス入力電圧が上がりオペアンプ出力が下がります。ドライバのベース電圧が下がり出力電圧が下がる方向に制御されます。
部品の選定
オペアンプはプラス電源と同じ物を使用します。電源のプラス端子にGNDをマイナス端子に-16Vを入力する予定ですが、特に問題はないでしょうか?トランジスタは、プラス電源とコンプリメンタリ品の2SA1359を使用します。現行の安定化電源で使っている2SA1488と特性比較をします。
これも今回気になる特性は全てにおいて現用のトランジスタに比べて勝っています。これら選定結果を回路図に反映しました。
これで設計が完了しました。次回は特性検討環境準備の為の試作を開始します。
つづく(試作編1)