2018アナログオーディオフェア(番外編22)

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番外編22

前回に引き続きアナログオーディオフェア2018協賛雑誌社主催の講演を紹介します。

伝説のカセットデッキを聴く

中学生時代にAIWAカセットデッキ(AD-7350)を購入してから、途中でYAMAHA(K-1d)のデッキに買い換えましたが大学を卒業するまで、カセットは毎日使っていました。主にFM放送のエアチェックやレコードのダビングでしたが、録音レベルやバイアス量などダビングする人の技量が問われる部分があった事がおもしろかった気がします。今回の講演は、その懐かしさから聴いてみる事にしましたが、進行の方が始まる前に、参加者へカセットデッキの試聴会である事を再確認するほどにお客様が集まっていました。主催は音楽の友社で、講師として月刊Stereoから吉野編集長が、ステレオ時代から澤村編集長が参加されました。(写真は吉野編集長)

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今回試聴するカセットデッキの紹介に入りますが、そのデッキの所有者がそのまま進行に加わりました。

AIWA KX-S9000(福田先生)

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AIWA最後のカセットデッキフラグシップモデルとの事で、4モータークローズドループデュアルキャプスタンメカ、12層ラミネートピュアアモルファス録再ヘッド、センダスト消去ヘッド。発売は1991年、定価は135,000円で、福田先生の倉庫に眠っていたものを1年かけて修理されたとの事でした。

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ナカミチ RX-505/DRAGON(生島店長)

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RX-505はオートリバースデッキですが、この機能をカセット自体を反転させる事で実現したモデルです。このモデルは、リバース動作を見せたいが為に持ち込んだと説明されていました。DRAGONは、言わずと知れたナカミチカセットデッキの集大成と言えるデッキで、カセットデッキの最大の弱点だと私が考える、アジマス調整をNAACシステムで再生テープ毎に自動調整する機能を搭載しています。所有者はディスクユニオンJazz東京の生島店長です。

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TANDBERG TCD-3014A(加藤館長)

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TANDBERGノルウェーのメーカーで、今回持ち込まれた機種は1980年代中頃に発売されたモデルで定価は破格の49万円との事でした。所有者は、Web上でなつかしのカセットテープ博物館を主催する加藤館長です。(はじめに掲載した吉野編集長写真の左奥の方です)オークションで競り落として、調整をされた物とのことでした。ここからは条件別の比較対決、およびデモンストレーション紹介をします。最初は各デッキを使った自己録再比較試聴です。

■自己録再比較
・KX-S9000自己録再

事前に福田先生が自宅で'75年録音のブラザースフォーのCDからダビングしたものの再生です。使用テープはTDKメタルテープMA-XGです。

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録音にドルビー等のノイズリダクション機能は使っていないとの事ですが、比較的大音量の再生にもかかわらず、ハイポジション同等のEQ設定のため、ヒスノイズもそんなに気になりませんでした。ちなみに私も学生時代にカセットを使っていた時もノイズリダクション機能を使いませんでした。音量によってヒスノイズのレベルが不自然に変動する点が気持ち悪かったためです。最近のデジタルTV放送に、DBXのような?ノイズリダクション機能がかかっているようで気になっています。余談はこのくらいにして、肝心の音の印象ですが、厚い低音、安定した再生でしたが、昔使っていたAIWAのデッキの音を思い出すなつかしい音だと感じました。

・RX-505/DRAGON自己録再

所有者の生島店長のこだわりで、使用テープはマクセルのUD-Ⅰです。ナカミチのデッキは、ノーマルテープの音がいいということが選択の理由です。

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録音はRX-505で行ない、ソースはエセル・エニスのデビューアルバム「Sings for Lullabys for Losers」からです。RX-505の再生は自己録再のためバランス良くかつ安定して鳴っていました。さすがにノーマルテープのヒスノイズは大きく無音時の音量調整をおっかなびっくり行っているのが印象的でした。続いてそのテープをDRAGONで再生します。NAACシステムにより、高域の再生は問題ありませんでしたが、自己録再のRX-505よりも窮屈ななり方をしていました。

・TCD-3014A自己録再

ソースはマドンナCDで、使用テープはマクセルのメタルバーテックスでした。

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ビートの利いた楽曲で、バランス、ダイナミック感は申し分ありませんでした。webで確認しましたが、このデッキはドルビー回路を除き、すべての回路がディクリートで構成されているとの事で、私好みのしっかりした音で鳴っていました。欲を言えば、繊細な部分の音を別の楽曲で聴いてみたいとおもいました。

■ミュージックテープ再生比較

福田先生が温存していた、メタルマスターシリーズが持ち込まれて、各機種の再生比較が行われました。1984年発売の伊藤たけしの「ディアハーツ」です。この比較では、NAACシステムが有効に働いたDRAGONの圧勝だと感じました。

■39年前のエアチェックテープ再生

生島店長が中学生時代にエアチェックしたテープをDRAGONで再生しました。当時YAMAHAのチューナー&ビクターのデッキを使用していたとの事です。テープはTDKの初代ADでした。ソースは当時目黒のパイオニアスタジオからライブ放送された物とのことで、デビューしたての尾崎亜美さんが歌っていました。39年前の録音とは思えない鳴り方で、経時劣化はほとんど感じられませんでした。

■生録会テープ再生

生島店長が企画した生録会で録音されたテープを持ち込みDRAGONで再生しました。録音はSONYのカセットデンスケTC-D5Mとの事です。

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シュアーのダイナミックマイクによるワンポイントステレオ録音されたものですが、アコースティックギターの演奏が目の前に広がるようなダイナミックな鳴り方で、カセットの実力を改めて認識させられました。

まとめ

紙面の関係で、会場での録再対決の紹介は省略させていただきましたが、カセットの楽しさ、実力が伝わる比較イベントが順序良く並べられ、講師人数の多い進行を生島店長がうまくまとめられて、なつかしくまた楽しい時間を過ごす事ができました。このような企画を今後も期待したいとおもいます。

 

おわり(番外編22)