構想編
バランス方式の真空管ヘッドフォンアンプの製作を構想します。
現状のヘッドフォン再生環境
バランス押しの私としては、ヘッドフォン再生環境もバランス化すべきと考えて2017年に環境構築しました。「A級バランスHPアンプ製作」(2017-07-11~)で紹介しています。その際に購入したヘッドフォンはパイオニアのSE-MHR5です。
リーズナブルナ価格ながら、φ40mmのユニットが採用され、バランス接続用のケーブルも付属しているため、購入後すぐにバランス再生する事ができます。コネクタはφ2.5の4極タイプでした。ヘッドフォンアンプはこの仕様に合わせてジャックを選択しました。アンプ自体は、オーソドックスなFET入力の差動2段構成で、プリドライバとドライバはバイポーラトランジスタのコンプリメンタリ構成で、これを2台使ってBTL接続してバランス出力しています。
アンプ内には、アンバランス-バランス変換回路および、アンバランス出力も持っていますが、今までのところ全く使っていません。
現状は机の上に設置した10インチTVの音声再生に使っています。HDMI信号から光デジタル信号として音声を取り出し、それをUSB DACに入力してバランスアナログ信号に変換しています。この用途が主なので、現状に全く不満はありませんが、真空管アンプを一番最初に自作した時に、再生音の響きが美しい事に驚きましたが、ヘッドフォンでも同様な体験をしてみたいと思った事が今回の製作の動機です。
ヘッドフォンの仕様
下記がSE-MHR5の仕様です。
アンプの設計に関連する数値は、インピーダンス45Ωと最大入力レベル1000mWです。この数値を前提にアンプの設計を進めたいとおもいます。
ヘッドフォンアンプの構想
製作するアンプの仕様に関して漠然と思った事も含めて箇条書きしてみました。
・終段はプッシュプル構成とする
・終段を含めて3極管を使ってみたい
・できるだけコンパクトに納めたい
・出力は1W程度あればいい
・入出力は当然ながらバランス仕様
・安全に運用できるようにボンネットが必須
ざっとこんなところです。今まで2台の真空管アンプを製作しましたが、どちらも出力管にEL34を選択し、5極管を3結接続して使用しています。
せっかくなので今回はオール3極管で設計してみたいと考えています。上記の仕様を設計製作の観点でキーとなるポイントととしてリストアップしてみました。
・出力管の選定
・アウトプットトランスの選定
・電源トランスの選定
ネット販売で入手できる部品を見てみると、トランジスタアンプに比べて真空管アンプの部品の方が遙かに入手しやすい状況ですが、ヘッドフォンアンプが前提となると、部品の選択肢一気に減ると思われます。
市販真空管HPアンプ
数年前の展示会でFostexのHP-V8を見かけた事があり、仕様を参考にするために検索してみました。すでに生産終了していましたが、仕様の確認ができました。
主な仕様は以下のとおりです。
価格はヘッドフォンアンプとしては破格で、880,000円でした。製品が良かったとしても、商売にならなければ生産終了とせざる得ないのは、市販品の宿命ですね。仕様には明記されていませんでしたが、終段は300Bのシングル構成だとおもいます。こんなところも参考にしつつ、次回は部品の選定を行い設計に着手したいとおもいます。
つづく(設計編1)