真空管HPアンプの製作(設計編2)

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設計編2

前回選定した真空管でロードラインを引いてみます。

終段のロードライン

前回の記事の出力トランスの選定で検討したパラメータを前提としてロードラインを引いてみます。仮にIp=15mAとすると、出力トランスの一次側の交流の最大電流は+/-15mA(Ipmax)となります。トランス一次側のインピーダンスRL1が11.5kΩなので、この時の最大出力は以下となります。

RL1 x (Ipmax/sqr2)^2 = 11.5E3 x (15E-3/1.41)^2 = 1.3 W

この設定でロードラインを引いてみます。グラフは仕様書に掲載されていたIp-Ep特性を使わせてもらいました。ロードラインの傾きは、真空管1本当たりRL1/2となるので、5.2kΩとしました。(0V/15mAと86V(11.5k/2*15mA)/0mAを結ぶ直線を平行移動)動作点は、仮に160Vとしています。Ip=15mA時のVgは-6Vとなるので、この場合の電源電圧は166Vとなります。これで設計がフィックスではありませんが、全体の設計を見るために次は初段のロードラインを引いてみます。

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初段のロードライン

初段は12AX7を使った差動アンプとします。今回の設計は、2段構成なので初段でゲインを稼ぎたいと考えて負荷抵抗を120kΩとしてみます。仕様書に掲載されたIp-Ep特性を眺めてロードラインを引いてみます。終段のロードラインから仮設定した電源電圧を考慮すると以下のとおり引けます。

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Ip=0.55mAとすると、Vgのバイアスが-1.0Vとなります。できれば1.5Vくらいとっておきたいところですが、ヘッドフォンアンプという事で今回は妥協します。ここで一旦電源トランスを選定する為に、電源回路を検討します。

電源回路

下図は、私の真空管アンプ製作1号機のEL34ppアンプ用の電源回路です。

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この回路で特段問題なかったので、今回もトランジスタを使ったリップルフィルター方式としたいとおもいます。ロードライン検討から電源電圧要求は166Vです。リップルフィルタのトランジスタに約15Vをかけるとすると、整流後の電圧は約180V必要です。理想的には、トランスの出力電圧のルート2倍の電圧が整流後の電圧となりますが、電圧ドロップを見込み、1.35倍でトランスの2次電圧を計算してみました。

180 / 1.35 = 133V

2次電圧として130~140Vの電源トランスを探してみます。必要な電流容量は、片チャンネルあたり31mA(1 + 30mA)で、ステレオ分で62mAとなります。ヒーターの要求は6.3Vで電流は片チャンネルあたり1050mA(750 + 300)で、ステレオ分でこの2倍となります。これ以外に、バイアス&電源ランプ用に-5Vを生成するための電源が必要です。この仕様でトランスを探してみました。電源電圧が低く、電流容量の割にヒーター電流が大きいことで、適当なトランスがなかなか見つかりません。HPを検索した会社は、春日無線、東栄変成器、橋本電気などです。いまひとつ今回の仕様にしっくりこない点はありますが、下記が候補としてみつかりました。

■電源トランス仕様比較表

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どちらも定格仕様にあまり違いがありませんが、今回はPT-22Nを選択しました。備考のHPVはハムプルーフベルトの略で磁性体でコアを囲み漏洩磁束を減らします。このトランスを使ってEL34ppアンプ電源回路を修正してみます。

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ヒーターを1つの巻き線にまとめるか迷いましたが、巻き線の定格電流を5%越えるので、2つの巻き線に分けました。B電源は当初の要求電圧よりやや高く、175Vとなりました。この電源回路の設計をロードラインに反映します。具体的には、電源電圧がやや上がりましたので、微調整をしました。

■初段ロードライン

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■終段ロードライン

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次回は、アンプの回路設計を行います。

 

つづく(設計編3)