真空管HPアンプの製作(製作編13)

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製作編13

動作確認を完了させて、前回の記事の最後で触れたハムの対策をします。

動作確認残り

ハム対策の前に、残り2点の動作確認を行います。最初に入出力の位相確認です。入力をUSB-DACに接続し、ヘッドフォンを接続して電源オンします。EIAJのTEST CDをセットして1KHzの正弦波をリピート再生させます。

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恐る恐る入力のボリュームを上げていきます。装着せずに置いたヘッドフォンから1KHzの音が聞こえます。ポケットオシロを信号の入力と出力のHotラインに接続して、位相確認をしました。下記が観測結果です。

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青が入力信号で黄色が出力信号です。残念ながら逆相となっていました。一旦電源を切って出力トランスの2次配線を逆につなぎ変えました。これで位相は正しくなりました。最後は、完成後まで確認を保留していた出力のHot/Coldバランス信号の確認をします。現状の構成は、トランス2次側の8Ω端子をGNDに接続して、16Ω端子とCom端子をヘッドフォンに接続しています。確認は、GND基準に正しくバランス出力をしている事を波形をモニタします。確認結果は以下のとおりです。

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あれれ?レベルが異なります。青が16Ω端子側波形で黄色がCom側の波形です。しばらく考えて、勘違いをしていた事に気づきました。2次側の各インピーダンスの端子は、伝送される電力が一定となるように巻き線が設定されている事から、今回のアプリケーションの場合、4Ω端子をGNDに落とすべき事に気づきました。下記は、出力トランスの説明書ですが、よく見ると各端子のタップ位置が2次巻き線上にモデル化されて表現されています。(4Ωがセンター)

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早々に、GNDの接続変更を行いました。4Ω用電線(黄色)は不使用電線として短くカットしてしまっていたので継ぎ足して接続しています。

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改めて出力波形を確認しました。

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正しくバランス出力している事が確認できました。二次側はGND接続せずに浮かせておいても問題ないかもしれませんが、拘わりです。組立前に2次巻き線の抵抗値測定を行いましたが、Hot-GND間とCold-GND間の抵抗値のバランスが崩れていた事に改めて納得しました。その際におかしなコメントをしてしまった事をお詫びします。これで全ての動作確認が完了しました。

音出し

ハム対策に進むまえに、現状を確認しておきます。ボリュームを絞り電源オンしてヘッドフォンを装着します。酷いハムです。L-chの方が大きく発生していますが、R-chも発生しています。各ボリューム位置のハムの発生状況は下記のとおりです。

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実際に信号を入力して普通に音楽再生をすると音楽でハムはマスクされる状況です。音はいい感じで鳴っています。但し、アンプのゲインが高すぎて、ボリュームを8時の位置までさえも上げられません。アイキャッチ写真が音楽再生時のボリュームの位置です。ハムの一因は、このゲイン設定にもある事もわかりました。

ハム対策

ボリューム位置MidのR-chは、ボリュームのノブに触れるだけでレベルが高くなります。そう言えばシャーシGNDをとっていない事に気づき、ノイズが発生している状態でワニグチジャンパ線でシャーシをGNDに落としてみました。この対応によってボリュームのノブに触れる事によるノイズレベルの悪化は解消しました。具体的なシャーシGND接続はラグ端子を使って電源端子版のスタッド部分で行いました。

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次に負荷抵抗を変えてトータルのゲインを下げます。具体的には、現状は出力トランスの2次側に、47Ωとヘッドフォン(インピーダンス45Ω)を並列接続しています。負荷抵抗は、約23Ωとなり16Ωよりもやや高い値となっていました。そこへさらに47Ωを並列接続する事で負荷抵抗は15.4Ωとなります。この変更でアンプのゲインが15.4/23=0.65(-3.7dB)下がり、ヘッドフォンに並列に47Ωが接続される事で、入力パワーが1/2から1/3に下がります。ゲイン換算すると-1.8dBとなり、トータルで約5.5dBゲインが下がるはずです。この変更によってヘッドフォンのA級動作範囲が0.3Wまで下がるはずですが、目をつぶります。計算は自信がありませんが、回路変更してみます。先に掲載した2次側のGND接続変更の写真には、すでに47Ωが1本追加されています。結果は、音楽再生時のボリューム位置はやや上がりましたが、抜本的な対策にはなりませんでした。次回は泥沼にはまる予感を感じつつハム対策を継続します。

 

つづく(製作編13)