DCパワーアンプ電源改良(製作編6)

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製作編6

電圧増幅段用の安定化電源の通電確認が終わったので、特性の測定を行います。

測定項目

具体的には、出力インピーダンスの周波数特性の測定を行います。過去に何度か測定を行っていますが、概要を改めて説明します。負荷電流の平均を30mAとして正弦波状に制御します。正弦波の波高値を60mAppとします。この状態で安定化電源の出力の変動を観測して、出力の等価インピーダンスを算出します。仮に出力の変動が60mVppとすると、この状態の等価出力インピーダンスは1Ω(60mVpp/60mA/pp)となります。測定用のジグの回路は以下のとおりです。

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回路は、+電源用と-電源用に分かれています。制御信号として外部から正弦波を入力し、その周波数とレベルをパラメーターとして調整します。平均電流は回路中の半固定抵抗で調整します。ジグ回路中の負荷抵抗は50Ωなので、所定の負荷電流に調整すると、平均電圧が1.5Vで、3Vppの信号波形となります。安定化電源の出力変動は小さいので、波形観測用に10倍のプリアンプ(下記)を通してオシロで観測します。

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+電源出力インピーダンス測定

製作した安定化電源へは、ユニバーサル電源から18.45Vを供給します。出力変動観測用のプリアンプへは、ユニバーサル電源から+/-6.15Vを供給しました。もっと高い電圧を供給すべきですが、ユニバーサル電源のサブチャンネルのMax出力電圧による制限です。配線を間違えずに慎重に接続します。

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負荷電流をモニタしながら発信器の出力レベルを調整しました。下記はch1へ1KHzの負荷設定したときの波形です。

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青の波形は負荷電流波形です。黄色の波形はプリアンプで10倍に増幅した出力変動波形です。増幅後の変動レベルは40mVppと、過去の結果に比べてレベルがやや大きくなっています。原因は黄色の波形に乗っているノイズと考えられます。環境をいろいろ変えて確認しましたが、状況は変わりません。念のため安定化電源をオフして確認してみました。

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約10KHzで18mVppのノイズが確認できました。このノイズは安定化電源起因ではなく、測定系起因と考えられます。結果は少し悪く見えてしまいますが、この状態で測定を進める事にしました。10KHz以上で変動量が大きくなりますが、誤差アンプに取り付けた位相補償用の470pF起因です。470pF無しの方が、測定帯域の結果は良くなりますが、矩形波応答特性が著しく悪くなるため、取り付けています。10Hzから100KHzまでの観測結果は以下のとおりです。

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ピンクのラインは、以前に製作した同回路12V電源の測定結果です。この時は測定系のノイズ発生がなかった事から、全帯域で今回の結果よりもやや良くなっています。このノイズの影響を除くと、3枚の基板の特性は揃っています。下のグラフは、現行の回路構成と同等の12V電源の測定結果と比較したグラフです。

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現行電源の特性は、1KHz以下で約1Ωと安定化電源に比べて10倍以上等価出力インピーダンスが高くなっています。20KHz以上では、特性が逆転していますが、出力部に取り付けた電解コンデンサによる効果です。安定化電源では、動作が不安定となるので同様の対策はとれません。今回の対象のアンプは、マルチアンプシステムのウーハーを担当するため、使用帯域は700Hz以下です。この用途ではこの帯域の影響はあまりないと考えます。

-電源出力インピーダンス測定

同様に-電源の特性も測定します。測定結果は以下のとおりです。

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+電源と同様に過去に製作した-12V電源に比べてやや特性が悪化しているように見えますが、ノイズの影響を除くと基板3枚ともに特性は揃っています。同様に現行回路同等電源の結果と比較してみます。

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+電源と同様の比較結果となっています。今回のアンプの使用帯域では、インピーダンスが0.1Ω以下と音への効果が期待できます。BTL方式のアンプは電源インピーダンスの影響を受けにくいと考えられますが、各アンプが理想動作をした上でのBTL動作なので、早く完成させて音を聴いてみたいとおもいます。次回はアンプ本体の改造を行う予定です。

 

つづく(製作編7)