High-ch用アンプ製作(設計編2)

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設計編2

終段の仮設計が終わったので初段の設計を進めます。

初段の設計方針

初段の回路構成は、今までの設計を踏襲して双三極管を使った差動方式とします。従来は初段の利得を稼ぐ観点から12AX7を使用してきましたが、今回は初段の出力インピーダンスを下げる為に使用する真空管を変更してみます。現状アンプの終段から見た初段の等価出力インピーダンスは約45KΩですが、これを半分以下にしたいと考えています。電源回路は、終段の設計前提とした真空管ヘッドフォンアンプ用の電源を流用します。参考に真空管ヘンドフォンの電源の回路図を掲載します。

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B電源出力は166Vです。C電源はいつものとおり-5Vです。

初段の双三極管の選定

構想編で事情を説明したとおり、初めに在庫を持っている12AU7を検討します。ロードラインを検討する為にIp-Vp特性を仕様書から拾ってみました。

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初段のゲインをできる限り稼ぐ事を考えると負荷抵抗RLは100KΩ程度にしたいとおもいます。この場合B電源電圧が166Vなので、初段のIpは1mA以下に押さえなければ初段の真空管に十分な電圧がかかりません。上記のIp-Vp特性を見ると、Ip=1mAでは良好な特性を得られるとは思えません。仕方がないので入手可能な別の双三極管を探してみる事にしました。次の候補はアマゾンでも入手可能な12AT7です。これも同様にIp-Vp特性を初めに見てみます。

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この特性も若干12AU7よりも構想中のアンプの初段に使いやすくなっている感じもしますが、大差はありません。さらに次の候補を探してみました。次は12AY7です。これも同様にIp-Vp特性を確認します。

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この特性であればIp=1mA程度でロードラインが引けそうです。まずは現物の確保ということで、アマゾンで注文をしようとしたところ、在庫が1個のみで近日入荷予定となっていました。仕方がないので他を検索して、コイズミ無線に注文しました。このショップの通販による購入は初めてでしたが、アマゾンペイというシステムが導入されていて、送料は別途かかりますが、アマゾンでの購入とほぼ同じ手軽さで注文手続きが完了しました。注文した物は、ElectroHarmonix社のEH-12AY7EHです。価格は税込みで1本2,356円で別途送料が750円かかります。参考に今回検討した型式が兄弟みたいな4つの真空管のパラメータをまとめておきます。

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表を見ると、μ値と許容プレート損失及びrpのトレードオフのような関係になっています。早速ロードラインを引いてみます。今回はIpを現行のアンプから少し上げて1mAとする事にしました。RL=100KΩとしますが、終段入力部のバイアス回路のインピーダンスを400KΩとすると、交流の負荷抵抗は80KΩとなります。下記がこの条件下のロードラインです。

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動作点がVg=-1Vとやや浅めの値ですが、この特性図を見るとVg=1Vまで許容されており、浅めでも問題ないと判断しました。一旦この条件で特性を算出してみます。

12AY7初段特性

初めに上記条件下の裸利得を計算してみます。

裸利得 = 40 x 80K / (22.8K + 80K) = 31倍(30.0dB)

終段入力から見た初段の等価出力インピーダンスは以下となります。

初段出力インピーダンス = 22.8K x 80K / (22.8K + 80K) = 17.7KΩ

この値と、前回の記事で算出した終段の入力容量値から終段入力部のカットオフ周波数は以下となります。

カットオフ周波数 = 1 / (2 x 3.14 x 64.6E-12 x 17.7E3) = 140KHz

前回の記事で作成した各段の利得表に初段の裸利得を入力すると、アンプトータルの利得は約23dBとなり、設計的にはいい感じとなりました。

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この特性を大川電子設計様のフィルター設計ツールに入力してボード線図を作成してみました。

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20KHzの位相遅れ量は下式で計算できます。

位相遅れ = 1 / (2π x 20E3 x C x R) - 90 = -8.2deg.

現行アンプの-22deg.に対して-8.2deg.へ改善される事が設計上確認できました。次回はこれまで検討した結果を整理して、回路図を作成します。

 

つづく(設計編3)